第7章|感覚・反射・運動と自律神経

生理学 第7章

7-1 感覚受容器と求心性線維の分類

  • 受容器ごとに反応しやすい刺激(適刺激)が決まっている。刺激→受容器→求心性線維→脊髄・脳幹→視床→大脳皮質感覚野。嗅覚だけ視床を経由しない
  • 順応=同じ刺激が続くと感覚が弱まる現象。触圧覚・嗅覚は順応しやすく、痛覚は順応しにくい(危険信号なので減弱させない)
線維受容器伝える情報関与する反射
Ⅰa群筋紡錘の一次終末筋の長さ+伸張の速度伸張反射・H反射の求心路
Ⅰb群Golgi腱器官筋の張力自原抑制(多シナプス)
Ⅱ群筋紡錘の二次終末筋の長さ(静的)介在ニューロン経由の多シナプス
Ⅲ群(Aδ)自由神経終末速い痛み・冷覚屈曲反射(侵害受容)
Ⅳ群(C)自由神経終末遅い痛み・温覚屈曲反射(侵害受容)
筋紡錘は筋線維と並列に並び「長さ」を検知。Golgi腱器官は筋と腱の間に直列で入り「張力」を検知。Ⅰa=紡錘、Ⅰb=腱器官と一対一で覚える。

視覚(受容器・屈折・順応)

部位役割
視神経乳頭(視神経円板)視神経線維が眼球を出る場所で視細胞(錐体・杆体)がない=視覚受容器を欠く。ここが盲点(Mariotte盲点)で光を感じない
中心窩錐体が最も密集し視力が最高の部位。網膜のうち最もよく見えるのは乳頭ではなく中心窩
錐体(cone)明所視・色覚。中心窩に集中
杆体(rod)暗所視。視物質はロドプシンで、その材料がビタミンA。周辺網膜に多い
項目正しい姿
明順応暗所→明所。数分(速い)で完了
暗順応明所→暗所。20〜30分(遅い)かかる。杆体のロドプシン再生に時間がいるため
夜盲症(鳥目)ビタミンA欠乏でロドプシンが作れず暗所で見えない。ビタミンC欠乏は壊血病で夜盲症ではない
近視眼軸が長いなどで網膜の前方に焦点を結ぶ。凹(凹面)レンズで矯正
遠視眼軸が短いなどで網膜の後方に焦点を結ぶ。凸レンズで矯正
老視水晶体の弾性低下で近方調節ができなくなる。加齢変化
調節(近くを見る)毛様体筋が収縮→Zinn小帯が緩む→水晶体が厚くなる。副交感神経(動眼神経)の作用で縮瞳も伴う
調節(遠くを見る)毛様体筋は弛緩→Zinn小帯が張る→水晶体は薄くなる(7-9の交感神経の欄と一致)
順応は「明るいほうが速い(明順応=数分/暗順応=20〜30分)」。所要時間を入れ替える設問が定番で、「明順応には20分程度かかる」と書いてあれば暗順応の値をすり替えた誤り

明順応には20分程度かかる」は誤り → 20〜30分かかるのは暗順応で、明順応は数分。「ビタミンC欠乏で夜盲症となる」は誤り → 夜盲症はビタミンA欠乏。「近視では網膜の後方に焦点を結ぶ」は誤り → 近視は前方、後方は遠視。「毛様体筋は遠くを見るときに収縮する」は誤り → 収縮するのは近くを見るとき。正しいのは「視神経乳頭は視覚受容器を欠く」

7-2 伸張反射=単シナプス反射

  • 筋が伸ばされる→筋紡錘が伸張を検知→Ⅰa群求心性線維→脊髄でα運動ニューロンに直接シナプス→同名筋が収縮。介在ニューロンを挟まない単シナプス反射で、ヒトで単シナプス性なのはこの反射だけ。中枢は脊髄で、脳を介さない
  • 引き金は伸張という機械刺激なので固有受容(深部感覚)反射。侵害受容反射ではない
  • 錘外線維(筋本体)が伸ばされると、その中の錘内線維も引き伸ばされてⅠa発火が増える
  • 臨床応用:運動を始める直前に目的と反対方向へ徒手的な伸張を加えると、主動筋の筋紡錘が働き伸張反射でその筋の収縮が促通される(PNFのストレッチ反射・リズミックイニシエーション)

「伸張反射は多シナプス反射」「求心性線維はⅠb群」「侵害受容反射である」はいずれも誤り → 正しくは単シナプス反射・Ⅰa群・固有受容反射

7-3 α運動ニューロンとγループ

要素支配・走行役割
α運動ニューロン錘外筋線維(骨格筋の本体)筋を収縮させる=反射・随意運動の遠心路
γ運動ニューロン錘内筋線維(筋紡錘の中)筋紡錘の感度を調節する
Ⅰa群求心性線維筋紡錘→脊髄紡錘が伸びたことを中枢へ伝える
  • α-γ連関(γループ)=随意収縮ではαとγが同時に活動し、筋が短縮しても筋紡錘がたるまず感度が保たれる
  • γ運動線維が支配するのは同名筋の錘内線維であり、拮抗筋ではない

「α運動線維が筋紡錘内の錘内線維を支配する」は誤り → 錘内線維はγ、錘外線維はα。「γ運動線維は伸張された筋の拮抗筋を支配する」も誤りで、拮抗筋の抑制は相互抑制(介在ニューロン)が担う。

7-4 深部腱反射とH反射

  • 深部腱反射(膝蓋腱反射など)=腱の叩打で誘発した伸張反射。受容器=筋紡錘/求心路=Ⅰa群/中枢=脊髄・単シナプス/遠心路=α運動神経。錘外筋線維は収縮する側であって受容器ではない
  • 反射閾値は一定ではない。γによる紡錘感度の調節や上位中枢の影響で変動する
  • 上位運動ニューロン障害(脳卒中・脊髄損傷)で亢進下位運動ニューロン障害・末梢神経障害・加齢では減弱〜消失
  • 痙縮=速度依存性の筋緊張亢進。伸張反射は亢進し、腱反射亢進・クローヌス・折りたたみナイフ現象を伴う

「痙縮では伸張反射が低下する」「高齢者では深部腱反射が亢進する」はどちらも誤り → 痙縮は亢進、高齢者は減弱

刺激する線維成り立ち
H反射Ⅰa群求心性線維を電気刺激脊髄を回る単シナプス反射。潜時が長い
M波α運動線維を直接刺激反射ではなく筋の直接応答。潜時が短い
H反射はⅠa線維を刺激して導出する。γ・Ⅰb・Ⅱ群では導出できない(Ⅰbは抑制性介在ニューロン経由、Ⅱ群は多シナプス経路のため)。刺激強度を上げるとM波が増大しH反射は減弱する。

7-5 相反抑制とその他の反射

反射・機構経路内容
相反抑制Ⅰa→Ⅰa抑制性介在ニューロン→拮抗筋のα主動筋が収縮するとき拮抗筋を抑制(多シナプス)
自原抑制(Ⅰb抑制)Golgi腱器官→Ⅰb→抑制性介在ニューロン張力が高まると同名筋を抑制(多シナプス)
屈曲反射(逃避反射)侵害刺激→Ⅲ・Ⅳ群→介在ニューロン痛みから肢を引っ込める侵害受容反射(多シナプス)
対光反射視神経→中脳光を当てると縮瞳する

単シナプスなのは伸張反射だけ。相反抑制・自原抑制・屈曲反射はすべて介在ニューロンを挟む。似た用語の遠心性模写(efference copy)は、運動指令のコピーを感覚予測に用いる中枢機構であって反射ではない。

7-6 随意運動の下行路(錐体路)

  • 経路:一次運動野(中心前回)→放線冠→内包後脚→中脳の大脳脚→橋底部→延髄錐体で大多数(約75〜90%)が交差→外側皮質脊髄路→脊髄前角でα運動ニューロンとシナプス
  • 交差しなかった線維は前皮質脊髄路として同側を下行する

「錐体路は大脳の基底核を経由する」は誤り → 基底核・小脳は錐体外路系(運動の調節)に属し、錐体路本体は経由しない。錐体路が通るのは内包であって基底核ではない。

7-7 運動の企画と調節(皮質・基底核・小脳)

部位役割
前頭前野(前頭連合野)一連の動作の企画・立案
運動前野外的(感覚誘導性)刺激に基づく運動の準備・選択
補足運動野内的(自発的)な運動の計画・運動順序・両手協調
一次運動野計画された運動指令の実行(出力)
大脳基底核運動の開始・抑制、運動プランの切り替え、筋緊張の調節
小脳協調とタイミング、誤差検出と記憶に基づく運動の修飾、運動学習
後頭頂葉視覚情報を運動指令へ変換
  • 小脳核は外側から歯状核(最大・上小脳脚を出る)・栓状核・球状核・室頂核。随意運動の制御に関与するのは歯状核
  • 障害像:小脳→運動失調・測定障害・企図振戦/基底核→パーキンソン症状・不随意運動
「外的な手がかりなら運動前野、内的・自発なら補足運動野」。小脳の答えになるのは修飾・協調・学習で、企画(前頭前野)やプランの切り替え(基底核)は小脳ではない。

紛らわしい脳部位:海馬=記憶、扁桃体=情動(恐怖・不安)、松果体=メラトニン・概日リズム、青斑核=ノルアドレナリン作動性で覚醒・注意。いずれも随意運動の制御部位ではない。

7-8 自律神経の構成と二重支配

  • 二重支配=交感神経と副交感神経の両方が拮抗的に支配すること。心臓・気管支・消化管・膵臓・膀胱・瞳孔・唾液腺などが該当
  • 交感神経の単独支配=汗腺・立毛筋・大部分の血管(皮膚血管)・脾臓・副腎髄質・腎臓。数の少ない「二重支配でないもの」を丸暗記するほうが速い
  • 副腎髄質は交感神経の節前線維に直接支配され、アドレナリンを血中へ分泌する
  • 汗腺は交感神経支配だが、伝達物質は例外的にアセチルコリン

「副交感神経は立毛筋を収縮させる」は誤り → 立毛筋は交感神経の単独支配で、副交感支配はない。汗腺・脾臓・副腎髄質も同様に二重支配ではない。

7-9 器官別にみた交感/副交感の作用

器官交感神経(闘争・逃走)副交感神経(休息・消化)
瞳孔散大(瞳孔散大筋が収縮)縮小(瞳孔括約筋が収縮)
毛様体筋・水晶体弛緩し水晶体が薄くなる(遠方視)収縮し水晶体が厚くなる(近方視)
気管支拡張(β2受容体で平滑筋が弛緩)収縮(気道が狭くなる)
心拍数・心収縮力増加・増大減少・低下(陰性変時作用)
房室伝導速度促進遅延(抑制)
血管平滑筋収縮大部分は支配なし
消化管運動・直腸平滑筋抑制促進・収縮(排便を促す)
消化液(唾液・涙液・胃液・膵液)分泌抑制分泌促進
肝臓グリコーゲン分解→血糖上昇インスリン分泌を介しグリコーゲン合成
膀胱排尿筋弛緩(蓄尿)収縮(排尿)
内尿道括約筋・内肛門括約筋収縮(ためる)弛緩(出す)
立毛筋収縮(鳥肌)支配なし
汗腺発汗促進(伝達物質はACh)支配なし

「副交感神経の作用で抑制されるのはどれか」のような逆読み設問に注意。副交感が本来促進する膵液分泌・気管支収縮・直腸収縮・グリコーゲン合成はすべて外れ、答えは心臓関連(房室伝導速度)になる。

7-10 排尿の神経支配

場面働く神経排尿筋内尿道括約筋外尿道括約筋
蓄尿交感=下腹神経(腰髄)+陰部神経弛緩収縮収縮
排尿副交感=骨盤神経(仙髄)収縮弛緩弛緩(陰部神経の活動低下)
  • 排尿反射の中枢は仙髄S2〜S4。腰髄ではない(腰髄は交感=蓄尿側の起始)
  • 外尿道括約筋は横紋筋・陰部神経(体性運動神経)支配=随意に制御できる。内尿道括約筋は平滑筋で不随意
  • 「蓄尿時に作用する体性運動神経」を問われたら陰部神経。下腹神経・骨盤神経は自律神経なので不可

「外尿道括約筋は陰部神経活動で弛緩する」は誤り → 陰部神経が活動すると収縮して蓄尿を保つ。排尿時はこの活動が低下して弛緩する。「内尿道括約筋は副交感神経で収縮」も誤りで、収縮させるのは交感(下腹神経)

7-11 排便機構と神経支配

  • 便が直腸に達して直腸壁が伸展→骨盤神経(副交感)が求心路となり仙髄S2〜S4の排便中枢へ→便意。下行結腸や結腸壁の伸展では便意は生じない
  • 排便反射は仙髄で起こるが、平常は大脳皮質から抑制を受けている。だから随意的に我慢できる
  • 排便時は内肛門括約筋・外肛門括約筋がともに弛緩し、腹筋収縮による腹圧上昇が加わる
  • 胃結腸反射=食物で胃が伸展されると結腸の大蠕動が亢進する(食後に便意が起こりやすい理由)。ただし便意そのものは直腸壁の伸展で生じる
  • 蠕動運動は輪状筋と縦走筋の協調で生じる(縦走筋単独ではない)。逆蠕動が目立つのは上行〜横行結腸で、下行結腸では肛門側へ送る蠕動が主体
括約筋筋の種類支配神経収縮/弛緩
内肛門括約筋平滑筋・不随意交感=下腹神経/副交感=骨盤神経交感で収縮(蓄便)、副交感で弛緩
外肛門括約筋横紋筋・随意陰部神経(体性・S2〜S4)随意収縮で我慢、随意弛緩で排便
排便・排尿に共通で、随意制御=陰部神経出す=骨盤神経(副交感)/ためる=下腹神経(交感)、中枢はどちらも仙髄S2〜S4(胸髄・腰髄ではない)。選択肢に紛れ込む下殿神経は大殿筋、閉鎖神経は股関節内転筋群を支配する運動神経で、排泄には関与しない。

「外肛門括約筋は平滑筋」「内肛門括約筋の弛緩は随意的に起こる」「内肛門括約筋を収縮させて排便する」はすべて誤り。外=横紋筋・随意、内=平滑筋・不随意、排便時は内が弛緩する。

7-12 胃液分泌の調節

きっかけ胃液分泌
脳相視覚・嗅覚・味覚→迷走神経促進
胃相胃壁の伸展、幽門部からのガストリン促進
腸相十二指腸への酸性内容物・脂肪の流入→セクレチンなど抑制
  • 胃内pHの低下(酸性化)はガストリン分泌を抑え、胃液分泌を抑制する(負のフィードバック)
  • 交感神経の緊張は消化液分泌を抑制する。促進するのは副交感(迷走神経)
「これから食べる・胃に入った=促進」「十二指腸へ進んだ=抑制」と流れで押さえる。胃壁の伸展とガストリンが促進側の二枚看板。