第1章|切断の評価・断端管理と動作指導

切断・義肢 第1章

1-1 切断レベルと義足の対応

切断レベルが決まれば義足の種類はほぼ決まる。まず「どの高さの切断に、どの義足か」を表で固める。

切断レベル主な義足・ソケット要点
足部部分切断(Lisfranc切断=足根中足関節/Chopart切断=横足根関節)足根中足義足・靴型装具など残った足部が尖足・内反変形をきたしやすい
Syme切断(足関節離断)サイム義足断端末荷重が可能(下の表)
下腿切断PTB式・TSB式・KBM式など(2-1)膝関節が残る。PTB式は膝蓋腱を中心とした部分荷重
膝関節離断膝離断義足大腿骨顆部で末端荷重・自己懸垂が可能
大腿切断四辺形ソケット・坐骨収納型ソケット(IRC/ICS)、吸着式など股関節の屈曲・外転・外旋拘縮に注意(1-3)
股関節離断・片側骨盤切断カナダ式股義足骨盤を包むソケット+股継手

Syme切断(サイム切断)

  • 足関節(距腿関節)レベルの離断。脛骨・腓骨の果部を切除し、踵部の皮膚・脂肪組織で断端を覆う
  • 利点:断端末で全荷重できる・断端が長い・断端末の膨らみを利用した自己懸垂が容易(カフベルトなどが要らない)・義足歩行能力は良好で健常者に近い
  • 欠点:断端末が球状に膨らみ義足の足関節部も太くなる=外観(美容性)が不良。足部の選択肢も限られる

Syme切断は足関節(距腿関節)レベルの離断で、「足根間関節の切断」ではない(横足根関節での切断はChopart切断、足根中足関節での切断はLisfranc切断)。また「断端荷重できない」「懸垂が下腿義足より難しい」はどちらも逆。足部の開放骨折後の骨髄炎などで足関節離断となったら作る義足はサイム義足で、PTB式・TSB式(下腿切断用)や足根中足義足(より遠位の切断用)ではない。

膝離断義足

利点欠点
大腿骨顆部での断端末荷重/顆部の張り出しによる自己懸垂(懸垂性良好)/回旋方向・前後方向の安定性/長いてこ断端が長いため膝継手を生理的な高さに置けず、義足側の膝が下がって左右非対称になりやすい=膝継手の設定は難しい

断端末で体重を受けられる切断の代表=Syme切断・膝関節離断(ほかに足部部分切断〈Chopart・Lisfranc〉やBoyd・Pirogoff切断も末端荷重できる。股離断は坐骨で支持)。下腿切断・大腿切断の通常のソケットは断端末に荷重を集中させない。

カナダ式股義足

  • ソケットは両側の腸骨稜上部と坐骨の3点で固定し、懸垂は切断対側の腸骨稜で行う
  • 股継手は正常股関節軸より前下方に取り付ける(「前上方」は誤り)。股継手と膝継手を結ぶ線が踵の後方(25〜40 mm程度)を通るように組み、体重で継手が伸展位に安定する
  • 股の過屈曲を防ぐ股屈曲制限バンドを付ける

1-2 断端の計測(断端長・周径)

断端長の起点

切断部位断端長の計測
上腕切断肩峰〜断端末
前腕切断上腕骨外側上顆〜断端末
大腿切断坐骨結節〜断端末(大腿長)
下腿切断膝関節裂隙(膝蓋腱中央)〜断端末

上腕切断を「大結節から」、前腕切断を「肘頭から」、下腿切断を「膝蓋骨上縁から」とするのはひっかけ。膝関節離断の起点に大転子は使わない。

大腿切断の計測

  • 大腿長=坐骨結節から断端末まで。断端末の軟部組織を押し上げて測るのではなく、軟部組織を含めた断端末までを測る
  • 機能的断端長(会陰部〜断端末)=義足を動かす力源となる実質的な「てこ」の長さを確認するために測る
  • 坐骨収納型ソケットの適合で重要な前後径は坐骨結節レベル(ソケット入口部)で測る。大転子レベルではない
  • 計測は背臥位に限らない(立位・座位で行い健側と比べる)

断端周径(成熟度の評価)

  1. 基準点を決める:大腿切断=坐骨結節、下腿切断=膝関節裂隙(膝蓋骨下縁)
  2. 基準点から一定間隔(例:5 cmごと)で複数か所を測る
  3. 毎回同じ部位・同じ肢位で測り、経時的に比べる(下腿切断は膝裂隙を触れやすい座位で)
  4. 義足作製前は断端が急速に変化するので頻回に測る(月2回では少ない)

周径が安定した(=断端が円錐形に成熟した)ことが、本義足ソケット作製の目安。「1か所だけ測る」「最大膨隆部を基準にする」「月に数回」はすべて誤りの定番。

1-3 術後の断端管理と拘縮予防

ドレッシング(断端の包み方)

方法内容長所短所
ソフトドレッシング(soft dressing)弾性包帯安価・創部を観察しやすい・調整が容易巻き直しが必要・巻く技術に左右される
リジッドドレッシング(rigid dressing)ギプスで断端を覆う浮腫抑制・断端保護にすぐれ、早期の義足装着に有利創部を観察できない
IPOP(術直後義肢装着法)術直後から仮義足を装着廃用予防・早期歩行適応が限られる

弾性包帯の巻き方

  • 開始は術直後(抜糸前)から。抜糸を待たない
  • 圧は遠位(断端末)ほど強く、近位ほど弱く。末梢から中枢へ斜め(8字状)に巻き上げる
  • 目的:浮腫を減らし、断端を円錐形に成熟させてソケットを適合させる(成熟まで術後おおむね2〜3か月)

弾性包帯を近位ほどきつく巻く・輪状(環状)に巻くと、駆血帯のように静脈・リンパの還流を妨げて浮腫を悪化させる。

  • 浮腫に日内変動があっても断端の運動は止めない。断端の自動運動は筋ポンプで還流を促し浮腫を減らす
  • シリコンライナーは断端周径よりやや小さいサイズを選び、伸ばした状態で密着させる(太いものは圧迫にならず、脱落・擦れの原因)
  • 創部の伸張痛があっても安静固定にしない。疼痛を管理しながら早期からROM運動・断端の運動を続ける
  • 断端の知覚過敏には軽擦などの脱感作を行う。発汗の問題は清潔保持とソケット内環境の調整で対応する

拘縮が起こりやすい方向と予防肢位

切断起こりやすい拘縮予防
大腿切断股関節屈曲・外転・外旋腹臥位(股関節伸展位を保つ)、伸展・内転位の保持
下腿切断膝関節屈曲膝伸展位の保持

拘縮を招く肢位:長時間の車椅子座位・大腿下に枕を入れた背臥位・股膝屈曲位の側臥位・両大腿の間に枕を挟む。大腿切断は「内旋拘縮が起こるから外旋位に保つ」も誤り(外旋拘縮が起こりやすい)。短断端ほど屈曲・外転拘縮を生じやすい。

1-4 幻肢・幻肢痛と小児の切断

幻肢痛への対応

対応扱い
ミラーセラピー鏡による視覚フィードバックで脳の再組織化を促す。有用
痛む部位をイラストで図示させる症状の可視化・評価に有用
経皮的電気刺激(TENS)禁忌ではない。選択肢の一つ
義肢装着練習幻肢痛を増悪させるものではなく、むしろ軽減する方向。積極的に行う
薬物神経障害性疼痛なのでプレガバリンなどが優先され、NSAIDsを優先するのではない

小児の切断の特徴

  • 先天性の四肢形成不全は上肢(一側前腕の横軸性欠損)に多く、後天性切断(外傷・腫瘍)は下肢に多い。後天性切断は活動性の高い男児に多い
  • 幻肢・幻肢痛は成人より少ない。幼小児(おおむね6歳未満)の切断や先天性欠損ではまれ
  • 小児の下腿切断・大腿切断で特徴的なのは断端骨の過成長(bony overgrowth)=骨が皮膚を突き上げ、潰瘍や再切断の原因になる。「外反膝変形を生じやすい」は誤り
  • 一側上腕切断では左右の重量と使い方が非対称になり、成長に伴って脊柱側弯を生じやすい
  • 義肢は早期に導入する:義手は座位で両手を使い始める生後6か月〜1歳前後(4歳では遅い)。成長に合わせて定期的に作り替える
  • 骨肉腫による切断は、化学療法・患肢温存術の進歩で減少傾向

小児は成人と「逆」になる所が狙われる:幻肢は少ない・骨は過成長する。

1-5 義足使用者の動作指導(ADL)

原則は「体重を支える役は健側(非義足側)」。そこから上りは健側から、下りは義足側からが出てくる(階段・坂道・段差に共通)。

動作指導理由
階段・坂道を上る健側から先に上げ、義足を引き上げる先に出す脚が上の段で体を持ち上げる
階段・坂道を下る義足側から先に下ろす(歩幅は小さく、手すり使用)健側を後ろに残して体重を支え、膝折れを防ぐ
椅子から立ち上がる義足を前に出し、健側を後ろに引いて健側で床を押す義足側の膝では立ち上がる力が出せない
床の物を拾う健側を前に出し、義足側を後ろに引いて拾う義足の膝を曲げて荷重を支えられない
ズボンを履く義足側から履く(着患脱健)更衣の原則

「椅子から立ち上がるときは健側を前に出す」は誤り。またぎ動作(溝・障害物)は過去問での扱いが一定しないので、まず階段・坂道・立ち上がりを上の原則で確かめ、確実に判断できる選択肢から決める。