心疾患の理学療法では、モニター心電図・12誘導心電図を見て「運動を続けてよいか」を判断する。国試の心電図問題は、まずQRS幅と先行P波の有無、次にRR間隔が整か不整かを見る順で解ける。
| 部分 | 意味 | 変化したときに考えること |
|---|---|---|
| P波 | 心房の興奮 | 消失して基線が細かく揺れる(f波)=心房細動 |
| PQ(PR)間隔 | 房室伝導時間 | 0.20秒を超える延長=Ⅰ度房室ブロック。房室伝導の抑制はPRの延長で見る |
| QRS幅 | 心室内の伝導 | 0.12秒以上の幅広いQRS=心室起源(心室期外収縮・心室頻拍)または脚ブロック |
| ST部分 | 心筋虚血の指標 | 上昇=貫壁性虚血(急性心筋梗塞など)/低下=心内膜下虚血(労作性狭心症・運動誘発性虚血) |
| QT間隔 | 心室の脱分極+再分極=心室筋の活動電位持続時間 | QT延長=再分極の遅れ=活動電位持続時間(不応期)の延長。Ⅲ群抗不整脈薬などで起こる |
心電図は電気活動の記録であり、心収縮力の増強は心電図の間隔からは判定できない。治療前後の比較問題では「どの間隔が変わったか(RR=心拍数、PR=房室伝導、QT=再分極)」だけを見る。
| 所見 | 先行P波 | QRS幅 | その他の特徴 |
|---|---|---|---|
| 心室期外収縮(PVC) =心室性期外収縮 | なし | 幅広く変形(0.12秒以上) | 予定より早く出る。T波がQRSと逆向き。代償性休止を伴うことが多い |
| 心房期外収縮(PAC) =心房性(上室性)期外収縮 | あり(形がやや異なる早期のP波) | 狭い(正常) | 基本調律は整で、その中に早期の拍が混じる |
| 心房細動 | 消失(基線がf波で細かく揺れる) | 通常は狭い | RR間隔がバラバラ(絶対性不整)。冠動脈バイパス術後など開心術後に起こりやすい |
| 心房粗動 | 鋸歯状の粗動波 | 狭い | 心室応答は規則的なことが多い |
| 心室頻拍 | なし | 幅広い | 幅広いQRSが3拍以上連続 |
| 心室細動 | なし | QRSとして判別できない | 規則的な波形がなく基線が不規則に揺れる。心拍出が失われる |
| 洞性徐脈 | あり | 狭い | 規則的で60/分未満 |
判断の軸=「幅が広い=心室性、幅が狭い=上室性(心房性)」「P波が消えてRRがバラバラ=心房細動」。画像問題では「早期に出た幅広いQRS」を探すとPVCが見つかる。
WPW症候群は短いPR間隔とデルタ波が特徴で、RRの不整そのものを表す所見ではない。Ⅱ度房室ブロックは規則的なP波の一部にQRSが続かない(脱落する)所見で、全体がバラバラになる心房細動とは違う。
| グレード | 内容 |
|---|---|
| 0 | 心室期外収縮なし |
| 1 | 散発性(30個/時未満)・単源性 |
| 2 | 多発性(30個/時以上)・単源性 |
| 3 | 多源性(多形性)=形の異なるPVCが混在 |
| 4A | 2連発(couplet) |
| 4B | 3連発以上(心室頻拍) |
| 5 | R on T(先行するT波の上に出現) |
Lown分類は心室期外収縮だけの分類。グレード3以上は危険な不整脈として扱い、運動を中止して医師に報告する。同じ形のPVCが散発するだけ=単源性(グレード1〜2)で、形の違うPVCが混じる=多源性(グレード3)と見分ける。
| 型 | 心電図所見 | 主なブロック部位 | 運動療法との関係 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ度 | PQ間隔が0.20秒を超えて延長。脱落なし | 房室結節 | 血行動態への影響が乏しく、これだけでは中止基準にならない |
| Ⅱ度 Wenckebach型(MobitzⅠ型) | PQが徐々に延長して1拍脱落。休止は直前のRRの2倍未満。QRS幅は狭い | 房室結節 | 迷走神経緊張でも生じ、比較的予後良好 |
| Ⅱ度 MobitzⅡ型 | PQ一定のまま突然脱落 | ヒス束以下 | 中止対象。Adams-Stokes発作の危険 |
| Ⅲ度(完全) | P波とQRSが無関係(房室解離)、補充調律 | 房室結節〜ヒス束以下 | 中止対象。ペースメーカ適応 |
洞結節の異常では、洞房ブロックは休止が基本のP-P間隔の整数倍になり、洞停止は整数倍にならない。どちらもP波ごと脱落し、休止の前にR-R間隔が段階的に短縮する変化はない(Wenckebach型との違い)。ヒス束以下・Purkinje線維など心室内の伝導障害ではQRS幅が広がる。QRSが狭いまま脱落していれば房室結節を考える。
| 誘導 | 見ている部位 | 主な責任血管 |
|---|---|---|
| Ⅱ・Ⅲ・aVF | 下壁 | 右冠動脈 |
| V1〜V4 | 前壁中隔 | 左前下行枝 |
| Ⅰ・aVL・V5・V6 | 側壁 | 左回旋枝 |
AEDのショック適応リズム=心室細動(VF)と無脈性心室頻拍(pulseless VT)。心静止(asystole)と無脈性電気活動(PEA)はショック非適応で、胸骨圧迫を中心としたCPRを絶え間なく続ける。
| リズム | 除細動 | 理由・対応 |
|---|---|---|
| 心室細動 | 適応 | 心室が無秩序に細動し心拍出が失われている |
| (無脈性)心室頻拍 | 適応 | AEDが自動解析でショック適応と判定する |
| 心静止 | 適応外 | 電気活動がないので除細動は無効。CPRを続ける |
| 洞性頻脈 | 適応外 | 心拍出は保たれている。原因への対応 |
| 房室ブロック | 適応外 | 徐脈にはペーシングで対応する |
「除細動は無秩序に痙攣しているリズムを止めて整えるもの」と考えると、電気活動のない心静止や、心拍出が保たれている洞性頻脈に使わない理由が分かる。
心疾患の運動療法では「始めてよいか」「続けてよいか」を数値で判断する。基準は循環・呼吸・意識が安定しているかで一貫している。
| 項目 | 運動を行わない・中止する目安 |
|---|---|
| 心拍数 | 安静時120/分以上 |
| 血圧 | 安静時の収縮期200mmHg以上/拡張期120mmHg以上。著明な低血圧(収縮期60mmHgなど)も不可 |
| 体温 | 38℃以上の発熱 |
| 酸素化 | SpO₂(SaO₂)90%未満 |
| 呼吸 | 頻呼吸(おおむね30回/分以上) |
| 不整脈 | 心室頻拍、多源性・連発する心室期外収縮などの危険な不整脈 |
| 自覚症状・徴候 | 胸痛・胸部不快感、強い呼吸困難(喘鳴を伴うものなど)、めまい、チアノーゼ、顔面蒼白、冷汗 |
「開始してよい状態はどれか」では、基準内の値(例:SpO₂ 94%)を選ぶ。単発(散発性)の心室期外収縮は健常者にもみられ、それだけでは中止しない。危険度は「単発か、多発・多源性・連発か」で分かれる。
顔面紅潮は運動時の皮膚血管拡張による正常反応。中止のサインは顔面蒼白・チアノーゼ・冷汗(末梢循環不全)の方である。
| 指標 | 中止のライン(目安) |
|---|---|
| 収縮期血圧 | 負荷を上げても上昇しない、または低下する(前値より10mmHg以上の低下)/過度の上昇 |
| 心電図ST | 水平型・下降型のST低下が0.2mV(2mm)以上 |
| 不整脈 | 心室頻拍、多源性・連発する心室期外収縮、Ⅱ度MobitzⅡ型以上の房室ブロック |
| 症状 | 胸痛、強い呼吸困難、めまい、失神、下肢疲労で継続困難 |
運動中の収縮期血圧の低下は心拍出量を保てない(重症の心筋虚血・左心機能不全)サインで、直ちに中止する。「血圧は上がるのが正常、下がるのが異常」が最重要の判断軸。
Ⅰ度房室ブロック(PQ延長のみ)や上室性期外収縮の散発は、それだけでは負荷試験の中止理由にならない。ST低下1mmは虚血を疑わせる所見だが、運動負荷試験の中止ラインとしては水平型・下降型0.2mVが目安とされる(急性期プログラムの進行基準とは数値が違う→1-5)。
急性心筋梗塞の急性期リハは、負荷(座位→立位→室内歩行→病棟歩行…)を1段階ずつ上げ、そのたびに進行基準を満たせば次の段階へ進む。
| 項目 | 次の段階へ進めない目安 |
|---|---|
| 自覚症状 | 胸痛、強い息切れ、動悸、めまい、強い疲労感の出現 |
| 心拍数 | 120/分以上、または安静時より40/分以上の増加。安静時から120/分以上なら当然不可 |
| 収縮期血圧 | 負荷で20mmHg以上の上昇または低下(室内トイレ使用の段階まで) |
| 心電図 | 0.1mV(1mm)以上の虚血性ST低下、著明なST上昇、新たな危険な不整脈 |
進行基準の項目は自覚症状・心拍数・血圧・心電図(ST変化・不整脈)という循環器の指標。SpO₂(経皮的動脈血酸素飽和度)は項目に含まれない(SpO₂ 90%未満は呼吸器リハで重視される中止基準)。
訓練時に収縮期血圧が10mmHg程度上昇するのは負荷に対する正常な反応で、次の段階へ進んでよい。20mmHg以上の上昇は進行不可。
| 活動 | おおよそのMETs |
|---|---|
| 安静臥床・座位での読書(ソファーで新聞など)・食事 | 1.0〜1.5 |
| 室内便器(ポータブルトイレ)・室内歩行・立位での体重測定 | 1.5〜2.0 |
| 平地歩行(時速3〜4km)・シャワー浴 | 約3 |
| 入浴(全身浴)・階段昇降・軽い荷物運び | 4〜5 |
入浴指導の定番:湯温40℃前後、みぞおちまでの半身浴、長湯を避ける、脱衣所と浴室の温度差をなくす、食後すぐ・飲酒後は避ける。
| 相 | 時期 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 第Ⅰ相 | 急性期(入院中) | 段階的離床・院内ADLの再獲得 |
| 第Ⅱ相 | 回復期 | 監視下の運動療法・社会復帰 |
| 第Ⅲ相 | 維持期(生涯) | 再発予防・運動習慣の定着・危険因子の是正 |