第3章|二分脊椎・Down症候群・小児整形疾患

脳性麻痺・小児 第3章

3-1 二分脊椎の残存レベルとSharrardの分類・移動手段

二分脊椎(脊髄髄膜瘤など)では、損傷レベル以下の弛緩性麻痺・感覚障害・膀胱直腸障害が生じる。理学療法の中心は、残存レベルに応じて装具・杖・車椅子を選び移動動作を獲得・維持すること(移動動作訓練)。あわせて褥瘡予防、側弯・拘縮の管理を行う。顕在性・潜在性のどちらでも、考え方は「どの筋まで働くか」で装具と移動手段が決まる。

Sharrard分類残存髄節働く主な筋・運動装具・移動手段の目安
Ⅰ群胸髄(Th12以上)下肢は完全麻痺骨盤帯付き長下肢装具+歩行器での治療的立位・歩行。実用移動は車椅子
Ⅱ群L1〜L2股関節屈曲(腸腰筋)・内転は残る。大腿四頭筋は働かない骨盤帯付き長下肢装具(HKAFO)+歩行器(PCWなど)・クラッチ。両側長下肢装具+杖での歩行はL2前後
Ⅲ群L3〜L4膝伸展(大腿四頭筋)が働く。L4では前脛骨筋も働き始めるL3前後=長下肢装具(KAFO)+クラッチ。L4=短下肢装具(AFO)で歩行(杖併用も可)
Ⅳ群L5足背屈(前脛骨筋)あり。中殿筋・下腿三頭筋は弱い短下肢装具や靴型装具で実用歩行。杖なしで歩けることが多い。Trendelenburg歩行
Ⅴ群S1以下足底屈(下腿三頭筋)が働き、踵離地ができる装具なし〜足底装具程度で、ほぼ正常に近い歩行

短下肢装具で自立歩行できる上限=L4(大腿四頭筋と前脛骨筋が働き、膝伸展と足背屈が成り立つ)。
図や写真から判定するときは「どこまで装具が要るか=どの筋が残っているか」。骨盤帯が要る→Ⅰ〜Ⅱ群/膝を固定する長下肢装具+杖→L2〜L3/短下肢装具→L4〜L5/ほぼ装具不要→S1以下。

群の番号が大きいほど(障害レベルが下位=仙髄寄りほど)歩行能力は高く、装具は軽い。L4やⅣ群の児に長下肢装具・骨盤帯付き長下肢装具・PCWを選ぶのは過剰。Ⅴ群は「神経学的異常がない」という意味ではない。

3-2 二分脊椎の筋の髄節と足部変形・装具の部品

下肢の主な筋と髄節(目安)

運動主な筋髄節の目安
股関節屈曲腸腰筋L1〜L3
膝関節伸展大腿四頭筋L2〜L4
足関節背屈前脛骨筋L4〜L5
股関節外転中殿筋L5〜S1
足関節底屈下腿三頭筋S1〜S2

MMTの結果から残存レベルを判定するときは、最も遠位で十分に働いている筋を探す。大腿四頭筋が正常で、前脛骨筋が中等度、後脛骨筋や内側ハムストリングスが弱い→L4残存=Ⅲ群。

筋力増強の優先

L5レベルで装具なしでも歩けるが、バランスを崩して不安定な児では、中殿筋(股関節外転筋)を最優先で強化する。中殿筋が弱いと骨盤が側方へ動揺し(Trendelenburg歩行)、歩行が不安定になる。腸腰筋・大腿四頭筋・前脛骨筋はL5では保たれている。

足部変形と装具

筋のアンバランス足部変形対応
前脛骨筋(L4〜L5)が残り、下腿三頭筋(S1〜S2)が麻痺踵足(足関節が強く背屈し踵が突出)。立脚期に下腿が前に倒れ、膝屈曲位のしゃがみ込み歩行になる背屈制動つき足継手(背屈を止めて立脚中期以降の下腿前傾を抑える)
前脛骨筋が麻痺し底屈筋が優位尖足背屈補助
S1以下軽度の凹足・鉤爪趾(claw toe)など足底装具・靴の工夫

踵足に踵補高は変形を助長する。外側ウェッジ(後足部を外反させる・内側荷重の軽減)、中足骨バー(中足骨頭部の免荷)、外側Tストラップ(内反の矯正)は、いずれも背屈を止める部品ではない。

3-3 Down症候群

Down症候群(21トリソミー)のキーワードは全身の筋緊張低下(低緊張、hypotonia)と関節弛緩(過可動性)、それによる運動発達の遅れ。痙性(脳性麻痺)の所見とは方向が逆である。

二次障害(不安定性の方向に出る)

起こりやすい特徴的ではない(方向が逆)
環軸関節(C1〜C2)の亜脱臼(頸髄症の危険)
股関節の亜脱臼・脱臼
体幹の側弯
扁平足・外反扁平足、膝の過伸展
足部の内反変形
膝関節の屈曲拘縮
(「硬さ」の方向の変形)

運動発達の特徴

  • 腹臥位での初期の移動(ずり這い)は、股関節が外転・外旋したカエル様肢位で効率が悪い。座位はワイドベースになりやすい。
  • 低緊張と関節弛緩から、座ったまま殿部で移動するシャフリング(いざり)になりやすい。
  • 尖足・上肢の過剰な引き込み・緊張性迷路反射の残存・下肢交互運動の欠如は、痙性(脳性麻痺)でみられる所見で、Down症児の特徴ではない。

理学療法

行う行わない
腹筋群など体幹・抗重力筋の収縮を促す(姿勢保持能力を高める)
四つ這い・つかまり立ち・歩行へ段階的に発達を促す
シャフリングを移動手段として固定する(立位・歩行の獲得が遅れる)
定頸後すぐに立位を経験させる(段階を飛ばす)
原始反射(緊張性迷路反射など)の促通
不随意運動の抑制(アテトーゼ型の課題であって主問題ではない)

環軸関節の不安定性があるため、前転など頸部に強い屈曲・負荷がかかる運動は避ける。

3-4 小児の整形外科疾患と装具

疾患治療の原則代表的な装具・治療
発育性股関節形成不全(DDH)(先天性股関節脱臼)股関節を屈曲・外転位(開排位)に保ち緩やかに整復するリーメンビューゲル装具(Riemenbügel、Pavlik harness)
Perthes病免荷+containment(外転位で骨頭を臼蓋に包み込む)股関節外転装具(トロント装具・SPC装具・Batchelor装具など)、坐骨支持免荷装具
先天性内反足生後早期からの連続ギプス矯正(Ponseti法)矯正後の保持にDenis Browne装具(足部外転装具)
大腿骨頭すべり症すべりの進行防止手術(in situ固定)が中心
二分脊椎残存レベルに応じた移動手段の獲得AFO・KAFO・HKAFO・車椅子、交互歩行装具(RGO)
脳性麻痺(股関節)股関節の外転保持S.W.A.S.H.装具
Duchenne型筋ジストロフィー尖足の進行への対応底屈を制限し背屈を補助する短下肢装具(背屈制限ではない)

写真の装具から疾患を答える問題では、両肩から吊ったベルトで両股関節を屈曲・外転位に保つ=リーメンビューゲル=DDH、股関節外転装具=Perthes病、足部外転装具(Denis Browne)=先天性内反足と画像と疾患をセットで覚える。

発育性股関節形成不全(DDH)

  • 所見:開排制限、クリックサイン、大腿皮膚溝の左右差、脚長差。エックス線で大腿骨頭が外上方へ偏位。
  • 乳児期(生後数か月)の第一選択はリーメンビューゲル装具。経過観察のみは不適切で、ギプス固定・牽引・観血的整復は装具で整復できない場合の手段。
  • 過度な外転や無理な整復は大腿骨頭壊死を招くため、緩徐な整復が原則。

Perthes病の理学療法

行う避ける
坐骨結節で荷重を受ける免荷装具での歩行練習
左右対称の姿勢・座位バランス練習
外転位での被覆(containment)、可動域(特に外転・内旋)の維持
股関節の内転位保持(骨頭外側の被覆が不足し圧が集中)
患側を下にした側方からの起き上がり(股関節に剪断・圧迫)
患部の等張性筋力増強や過荷重(骨頭の圧潰)
短下肢装具での立位(股関節を免荷できない)

免荷が原則の疾患(Perthes病)に、荷重や患部の等張性筋力増強(骨頭に圧がかかる抵抗運動)を選ばない(免荷下での可動域の維持や、等尺性運動による筋力の維持は行う)。先天性内反足を理学療法士の徒手矯正だけで治すわけではなく、DDHにトロント装具は使わない(トロント装具はPerthes病)。Down症児にシャフリング移動を練習させるのも誤り(3-3)。