二分脊椎(脊髄髄膜瘤など)では、損傷レベル以下の弛緩性麻痺・感覚障害・膀胱直腸障害が生じる。理学療法の中心は、残存レベルに応じて装具・杖・車椅子を選び移動動作を獲得・維持すること(移動動作訓練)。あわせて褥瘡予防、側弯・拘縮の管理を行う。顕在性・潜在性のどちらでも、考え方は「どの筋まで働くか」で装具と移動手段が決まる。
| Sharrard分類 | 残存髄節 | 働く主な筋・運動 | 装具・移動手段の目安 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ群 | 胸髄(Th12以上) | 下肢は完全麻痺 | 骨盤帯付き長下肢装具+歩行器での治療的立位・歩行。実用移動は車椅子 |
| Ⅱ群 | L1〜L2 | 股関節屈曲(腸腰筋)・内転は残る。大腿四頭筋は働かない | 骨盤帯付き長下肢装具(HKAFO)+歩行器(PCWなど)・クラッチ。両側長下肢装具+杖での歩行はL2前後 |
| Ⅲ群 | L3〜L4 | 膝伸展(大腿四頭筋)が働く。L4では前脛骨筋も働き始める | L3前後=長下肢装具(KAFO)+クラッチ。L4=短下肢装具(AFO)で歩行(杖併用も可) |
| Ⅳ群 | L5 | 足背屈(前脛骨筋)あり。中殿筋・下腿三頭筋は弱い | 短下肢装具や靴型装具で実用歩行。杖なしで歩けることが多い。Trendelenburg歩行 |
| Ⅴ群 | S1以下 | 足底屈(下腿三頭筋)が働き、踵離地ができる | 装具なし〜足底装具程度で、ほぼ正常に近い歩行 |
短下肢装具で自立歩行できる上限=L4(大腿四頭筋と前脛骨筋が働き、膝伸展と足背屈が成り立つ)。
図や写真から判定するときは「どこまで装具が要るか=どの筋が残っているか」。骨盤帯が要る→Ⅰ〜Ⅱ群/膝を固定する長下肢装具+杖→L2〜L3/短下肢装具→L4〜L5/ほぼ装具不要→S1以下。
群の番号が大きいほど(障害レベルが下位=仙髄寄りほど)歩行能力は高く、装具は軽い。L4やⅣ群の児に長下肢装具・骨盤帯付き長下肢装具・PCWを選ぶのは過剰。Ⅴ群は「神経学的異常がない」という意味ではない。
| 運動 | 主な筋 | 髄節の目安 |
|---|---|---|
| 股関節屈曲 | 腸腰筋 | L1〜L3 |
| 膝関節伸展 | 大腿四頭筋 | L2〜L4 |
| 足関節背屈 | 前脛骨筋 | L4〜L5 |
| 股関節外転 | 中殿筋 | L5〜S1 |
| 足関節底屈 | 下腿三頭筋 | S1〜S2 |
MMTの結果から残存レベルを判定するときは、最も遠位で十分に働いている筋を探す。大腿四頭筋が正常で、前脛骨筋が中等度、後脛骨筋や内側ハムストリングスが弱い→L4残存=Ⅲ群。
L5レベルで装具なしでも歩けるが、バランスを崩して不安定な児では、中殿筋(股関節外転筋)を最優先で強化する。中殿筋が弱いと骨盤が側方へ動揺し(Trendelenburg歩行)、歩行が不安定になる。腸腰筋・大腿四頭筋・前脛骨筋はL5では保たれている。
| 筋のアンバランス | 足部変形 | 対応 |
|---|---|---|
| 前脛骨筋(L4〜L5)が残り、下腿三頭筋(S1〜S2)が麻痺 | 踵足(足関節が強く背屈し踵が突出)。立脚期に下腿が前に倒れ、膝屈曲位のしゃがみ込み歩行になる | 背屈制動つき足継手(背屈を止めて立脚中期以降の下腿前傾を抑える) |
| 前脛骨筋が麻痺し底屈筋が優位 | 尖足 | 背屈補助 |
| S1以下 | 軽度の凹足・鉤爪趾(claw toe)など | 足底装具・靴の工夫 |
踵足に踵補高は変形を助長する。外側ウェッジ(後足部を外反させる・内側荷重の軽減)、中足骨バー(中足骨頭部の免荷)、外側Tストラップ(内反の矯正)は、いずれも背屈を止める部品ではない。
Down症候群(21トリソミー)のキーワードは全身の筋緊張低下(低緊張、hypotonia)と関節弛緩(過可動性)、それによる運動発達の遅れ。痙性(脳性麻痺)の所見とは方向が逆である。
| 起こりやすい | 特徴的ではない(方向が逆) |
|---|---|
| 環軸関節(C1〜C2)の亜脱臼(頸髄症の危険) 股関節の亜脱臼・脱臼 体幹の側弯 扁平足・外反扁平足、膝の過伸展 | 足部の内反変形 膝関節の屈曲拘縮 (「硬さ」の方向の変形) |
| 行う | 行わない |
|---|---|
| 腹筋群など体幹・抗重力筋の収縮を促す(姿勢保持能力を高める) 四つ這い・つかまり立ち・歩行へ段階的に発達を促す | シャフリングを移動手段として固定する(立位・歩行の獲得が遅れる) 定頸後すぐに立位を経験させる(段階を飛ばす) 原始反射(緊張性迷路反射など)の促通 不随意運動の抑制(アテトーゼ型の課題であって主問題ではない) |
環軸関節の不安定性があるため、前転など頸部に強い屈曲・負荷がかかる運動は避ける。
| 疾患 | 治療の原則 | 代表的な装具・治療 |
|---|---|---|
| 発育性股関節形成不全(DDH)(先天性股関節脱臼) | 股関節を屈曲・外転位(開排位)に保ち緩やかに整復する | リーメンビューゲル装具(Riemenbügel、Pavlik harness) |
| Perthes病 | 免荷+containment(外転位で骨頭を臼蓋に包み込む) | 股関節外転装具(トロント装具・SPC装具・Batchelor装具など)、坐骨支持免荷装具 |
| 先天性内反足 | 生後早期からの連続ギプス矯正(Ponseti法) | 矯正後の保持にDenis Browne装具(足部外転装具) |
| 大腿骨頭すべり症 | すべりの進行防止 | 手術(in situ固定)が中心 |
| 二分脊椎 | 残存レベルに応じた移動手段の獲得 | AFO・KAFO・HKAFO・車椅子、交互歩行装具(RGO) |
| 脳性麻痺(股関節) | 股関節の外転保持 | S.W.A.S.H.装具 |
| Duchenne型筋ジストロフィー | 尖足の進行への対応 | 底屈を制限し背屈を補助する短下肢装具(背屈制限ではない) |
写真の装具から疾患を答える問題では、両肩から吊ったベルトで両股関節を屈曲・外転位に保つ=リーメンビューゲル=DDH、股関節外転装具=Perthes病、足部外転装具(Denis Browne)=先天性内反足と画像と疾患をセットで覚える。
| 行う | 避ける |
|---|---|
| 坐骨結節で荷重を受ける免荷装具での歩行練習 左右対称の姿勢・座位バランス練習 外転位での被覆(containment)、可動域(特に外転・内旋)の維持 | 股関節の内転位保持(骨頭外側の被覆が不足し圧が集中) 患側を下にした側方からの起き上がり(股関節に剪断・圧迫) 患部の等張性筋力増強や過荷重(骨頭の圧潰) 短下肢装具での立位(股関節を免荷できない) |
免荷が原則の疾患(Perthes病)に、荷重や患部の等張性筋力増強(骨頭に圧がかかる抵抗運動)を選ばない(免荷下での可動域の維持や、等尺性運動による筋力の維持は行う)。先天性内反足を理学療法士の徒手矯正だけで治すわけではなく、DDHにトロント装具は使わない(トロント装具はPerthes病)。Down症児にシャフリング移動を練習させるのも誤り(3-3)。