第2章|義肢・切断と福祉用具

義肢装具・福祉用具 第2章

2-1 義足歩行のアライメント異常

大腿義足

現象原因
義足膝の不安定(膝折れ)股関節伸展筋(大殿筋)の筋力低下、アライメント不良(後方バンパーが軟らかすぎる)
過度の腰椎前弯股関節屈曲拘縮、後方支持の不足
外転歩行義足が長すぎる、股関節外転拘縮、内転筋力低下、ソケット内側壁の不適合
分回し歩行義足が長すぎる、遊脚相で短縮できない(膝が屈曲しにくい)
伸び上がり歩行義足が長すぎる、遊脚相の膝制御不良
「腰椎前弯=股関節伸展拘縮」「外転歩行=股関節屈曲拘縮」「伸び上がり=内転筋力低下」「分回し=内転拘縮」はいずれも誤りの組合せ。

下腿義足の前額面アライメント(初期内転角)

初期内転角ソケットの傾き荷重足部断端の圧迫
不足外方へ傾く外側荷重内側が床から浮く外側遠位部に圧迫感
過大内方へ傾く内側荷重外側が浮く内側遠位部に圧迫感
  • toe-out角=水平面の足尖の外向き角。前額面の内外側の浮きの主因ではない。踵接地時に義足足部が回旋するのはこの水平面のアライメント不良(toe-out/toe-inの設定不良)や踵の硬さ(クッションが硬すぎる)が原因で、前額面の内転角とは別系統。
  • 歩隔(歩幅ではなく左右の足の間隔)が広くなるのは、義足が外転位に設定された(=ソケットの外転・足部の外方設置)場合や断端外側の疼痛を避ける場合。初期内転角の不足そのものは歩隔を広げない(内転角の過不足は足底の内側/外側の浮きと断端遠位の圧迫として出る)。
  • 初期屈曲角=矢状面のアライメントで、膝の安定性に関与する。
  • ソケット外壁の高さは適合・圧迫の問題であり、内外側の浮きの直接原因ではない。
  • 足部が外側に位置しすぎる → 内側荷重になり、むしろ外側が浮く方向。ソケットが内側に位置しすぎる場合も外側が浮く。
「どちら側が浮くか」から荷重方向を逆算し、荷重側と同じ側の断端遠位に圧が集中すると考えると一貫して解ける。

2-2 義肢・切断と、装具使用者の生活場面

切断レベル製作する義足
足部部分切断(リスフラン等)足根中足義足・靴型装具
足関節離断(サイム切断)サイム義足。踵部の脂肪組織を残すため断端末で全荷重が可能
下腿切断PTB式・TSB式・KBM式
大腿切断四辺形/坐骨収納型ソケット、吸着式(陰圧で懸垂し懸垂帯が不要)
下腿義足ソケット特徴
PTB式膝蓋腱を中心とした部分荷重。荷重部=膝蓋腱・脛骨前内側面・腓骨頭周囲・膝窩部(軟部組織が厚く圧に強い所)。除圧部=脛骨稜・脛骨粗面・脛骨顆部隆起・腓骨頭頂・断端末端
TSB式断端全表面で荷重。シリコンライナー+ピン固定が目印。糖尿病・末梢循環障害例で選ばれやすい
KBM式膝蓋骨上を覆い側壁を高くして懸垂(カフ不要)
在来式差し込み式+断端袋、大腿コルセットで懸垂する旧来型

シリコンライナーの利点=密着によるピストン運動の減少・懸垂性向上(トリムラインを低くできる)・皮膚保護。欠点=発汗と蒸れ・接触皮膚炎・装着の手間・コスト。「装着の簡便性」「発汗促進」「皮膚への刺激」「トリムラインの上昇」はいずれも利点ではない。義足部品ではターンテーブル=体幹回旋補助、トルク吸収装置=ねじれの吸収。

義足の部品名 — 写真で何が見えたらその部品か

「写真の義足に使われている部品はどれか」型は、ソケット・膝継手・下腿部・足部が1枚に全部写っているのがふつう。だから「写っていない部位の語だから切る」という消去法は使えない。部品ごとに「写真で見えるはずの形」を1つずつ持っておき、実際に写っているものだけを残す。

部品付く場所と働き写真での目印(無ければ切る)
吸着式ソケット大腿義足のソケット(懸垂方式)。ソケット内を陰圧にして断端を吸い付け保持するソケット前面の下部〜断端末に、丸いバルブ(排気弁)が1つ付くのが決め手。空気を抜いて陰圧をつくる部品なので必ず外から見える。あわせて懸垂帯・ベルト・肩吊りが一切ない
ターンテーブルソケットと膝継手の間に入れる回旋軸。体幹の回旋・あぐらを可能にするソケット下端と膝継手の間に円筒形の回旋ユニットが1段挟まる。ソケットが膝継手へ直に連結されていれば無い
多節リンク膝膝継手の一種。複数のリンク(4節など)で瞬間回転中心が移動し、立脚期の安定と遊脚期のクリアランスを両立する膝継手を側面から見て前後2本のリンクが平行四辺形状に並ぶ。軸が1本だけ(+手動ロックレバー)なら単軸膝で、多節リンク膝ではない
トルク吸収装置膝継手と足部の間(下腿部)に入れ、下腿のねじれ(回旋)を吸収する下腿の支柱(パイプ)の途中に太い筒状のユニットが割り込む。支柱がただの連結パイプ1本なら無い
ドリンガー足部足部の型式名。ソケットの懸垂方式でも膝継手でもないまず足部の写真を見る。下腿パイプにボルトで直結された継手も緩衝子もない一体成形の足部(SACH足)なら、特殊な足部機構は使われていないので切る

この型の正答は「4つを消す」より「1つを見つける」ほうが速い。大腿義足の写真でソケット前面下部の丸いバルブが見えたら、その時点で答えは吸着式ソケット。バルブ=吸着式ソケットの動かぬ証拠で、他の懸垂方式(懸垂帯・シレジアバンド・シリコンライナー+ピン)にはバルブが付かない。

幻肢痛

  • ミラーセラピーが有用(視覚フィードバックで大脳皮質を再組織化)。
  • 患者に幻肢痛の部位をイラストで図示させるのは症状の可視化・評価に有用。
  • TENSは禁忌ではなく有用。義肢装着練習も増悪させず、むしろ軽減させる。
  • 神経障害性疼痛なので、薬はNSAIDsよりプレガバリンなどを優先する。

片麻痺の移乗・環境設定(健側が軸)

  • 車椅子は健側がベッド側になるよう約30〜45度に配置。ベッドと平行には置かない。
  • 殿部を座面の前方へ出し足底を接地させて重心を前方へ移す。下肢装具は装着したまま行う。
  • 介助は前方または麻痺側から。後方からでは立ち上がりと方向転換を支えられない。
  • 移乗先は同じ高さかやや低く。ベッドを車椅子より高くすると負担が増える。
  • 手すり・ベッド柵・ポータブルトイレは健側でつかめる側に置く。左片麻痺なら右側、右片麻痺なら左側。起き上がりも健側を下にして肘で押し起こす。

普通型電動車椅子

項目正しい姿
駆動輪後輪駆動が標準的(「前輪駆動が標準」は誤り)
手動への切替クラッチを切るなどして手押し(手動)に切り替える機構がある(「切り替える機構はない」は誤り)。介助者が押せる
操縦装置から手を離すと電磁ブレーキが作動して自動的に停止する。坂道でも止まる安全機構
操縦装置の操作部位上肢に限定されない。あご・頭部・足など上肢以外で操作する特殊な操縦装置がある
操縦装置でできること前進・後退・方向転換だけでなく速度も調整できる(「進む方向のみ操作できる」は誤り)

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6などで「電動車椅子操作の練習」を行う際の前提知識。後輪駆動・手動切替あり・手を離すと自動制動・上肢以外でも操作可・速度も操作可の5点を押さえれば全肢が切れる。

FIMの点数(歩行・食事)

  • 7点=完全自立/6点=修正自立(補助具使用・時間延長・安全配慮)/5点=監視・準備/4点=最小介助(本人が75%以上)。
  • 歩行には距離の基準がある。補助具の有無にかかわらず50m自立で6点、15m以上50m未満の自立は5点。短下肢装具と四脚杖で20m歩ける例は5点。
  • 食事は普通のスプーン・フォークで介助なく食べられれば7点。箸が使えないことは減点対象にならない(自助具を使えば6点)。

視覚障害者の介助

  • 平地は介助者の腕(肘の上)を把持させ、介助者が半歩〜一歩先を歩く。手を握らせるのではない。
  • バスや混雑した電車は介助者が先に乗る(座席・車内状況を確認するため)。
  • 階段を下りるときは介助者が一段先に下りる。上りは介助者が後ろから支える。
  • 手前に引いて開けるドアは視覚障害者を先に通し、介助者が後方から支える。

大腿切断後の断端管理

断端管理は浮腫の管理・拘縮の予防・脱感作の3本柱。目的はソケットが適合する円錐形の成熟した断端をつくること。

  • 弾性包帯(ソフトドレッシング)で浮腫を軽減し断端の成熟を促す。遠位から近位へ斜め(8字状)に巻き、末梢ほど圧を高くする。
  • rigid dressing(ギプスによる硬性包帯)は浮腫抑制に優れ早期の義足装着に有利だが、断端を覆うので観察できない。観察・巻き直しが容易なのはソフトドレッシング。
  • 大腿切断で起こりやすい拘縮は股関節の屈曲・外転・外旋(内旋拘縮ではない)。予防は伸展・内転位の保持で、腹臥位をとらせる。外旋位に保つのは誤り。下腿切断では膝関節屈曲拘縮に注意し膝伸展位を保つ。
  • 創部の伸張痛があっても安静固定にはしない(拘縮を助長)。疼痛を管理しながら早期からROM運動を続ける。
  • 軽擦・タッピングなどの皮膚刺激は断端の知覚過敏・幻肢痛に対する脱感作として行う。発汗異常への対処ではない(清潔保持やソケット内環境・ライナーの調整で対応)。

大腿義足の膝継手の選び方 — 立脚相の安定か、遊脚相の制御か

膝継手は「立脚相の安定性」と「遊脚相の制御」の2軸で選ぶ。どちらを優先するかは断端長と活動性で決まる。

優先する課題該当者対応する膝継手・工夫(代表例)
立脚相の安定性短断端・低活動者・高齢者膝軸をTKA線より後方に置くアライメント、固定膝(手動ロック膝)、荷重ブレーキ膝、多軸(多節リンク)膝
遊脚相の制御長断端・活動性の高い若年者定摩擦・可変摩擦・空気圧・油圧制御、マイクロプロセッサ制御(インテリジェント膝)
坂道・階段・不整地での膝折れ防止屋外を歩く人立脚相のイールディング機構=荷重下で膝が急に折れず、油圧抵抗でゆっくり屈曲する

誤り肢の形:「短断端 ── 遊脚相のコントロール」→ 短断端はてこが短く膝折れを防ぎにくいので立脚相の安定性/「長断端 ── 立脚相での安定性」→ 長断端は随意的に膝折れを防げるので課題は遊脚相の制御/「高齢者 ── 多軸インテリジェント(膝)」→ インテリジェント膝は歩行速度を変える活動性の高い切断者向けで、重量・価格・充電の負担もある。高齢者は立脚相の安定を最優先する。

TKA線=大転子(Trochanter)−膝(Knee)−足関節(Ankle)を結ぶ基準線。膝軸がTKA線より後方なら安定(荷重で膝伸展方向のモーメント)、前方なら膝折れしやすい。低活動者は機構に頼らずアライメントによる安定化を図る。

段差・階段・坂道・またぎ動作 — 大腿義足と片麻痺の順序

共通原則は「体重を支える脚を安全な側(健側・非義足側)にする」。上るときは先に出す脚が持ち上げる力を出すので健側から、下りるときは先に出す脚が下段で受けるので健側を後ろに残す。

動作大腿義足片麻痺(杖は健側の手)
階段・坂道を上る非義足側(健側)から杖 → 健側 → 患側
階段・坂道を下りる義足側から(小さな歩幅・手すり使用)杖 → 患側 → 健側
椅子から立ち上がる義足を前に出し、非義足側を後ろに引いてその脚で押して立つ(「非義足側を前方に出す」は誤り)健側の足を引き、健側に荷重して立つ
床の物を拾う非義足側を前に出して膝を曲げ、義足側は後ろへ引く—
ズボン・上着を着る義足側から履く(着患脱健)患側から着て、健側から脱ぐ
低い障害物・溝をまたぐ出題で扱いが分かれた(下の注意)杖 → 患側 → 健側(健側で支える時間を長く)

片麻痺で階段を患側から上るのは誤り → 麻痺した下肢だけで全体重を持ち上げることになり膝折れ・転落の危険。上りは健側から、下りは患側から。

大腿義足のまたぎ動作:49回は図の「義足側から先に障害物をまたぐ」を適切でないとした(健側から先にまたぎ、健側に体重を移してから義足を引き寄せる、という扱い)。一方46回の「30cmの溝は義足側からまたぐ」は、正答値表で2〜5のどの2つを選んでも正解の複数正答となり正答に含まれた。図で5つの動作から1つ選ぶ型では、立ち上がり・階段・坂道の4つを上の表の原則で確かめて消し、残った動作を選ぶのが確実。

車椅子のブレーキと部品の見分け

部品写真・図での目印と主な適応
トグル式ブレーキ後輪(大車輪)の前方のフレームに付く、複数のリンクとピンでできたレバー式の車輪止め。レバーを倒すとリンクが伸び切って固定され、小さな力でタイヤを押さえる最も一般的な形式
レバー延長式ブレーキブレーキのレバーを長くしたもの。片麻痺・筋力低下で小さな力で操作したい人
リクライニング式・ティルト式バックサポート背もたれを倒す調整レバー・延長支柱・ヘッドサポートが付く。座位保持困難・起立性低血圧
開き式(スイングアウト)フット・レッグサポートレッグサポートを外側へ開く継手や着脱レバーがある。移乗時に下肢を出し入れする人
デスク型アームレスト机に近づけるよう前方部分が低く切り欠かれている。前後同じ高さなら標準型
ノブ付きハンドリムハンドリムに突起(ノブ)が並ぶ。頸髄損傷など握力が弱い人。平滑なら標準型

「写真の車椅子に使われている部品はどれか」は、部品ごとに見えるはずの形を持っておき、写っていないものを消す。背もたれに調整機構がない・レッグサポートが固定式・アームレストが前後同じ高さ・ハンドリムが平滑なら、それぞれの部品は使われていない。