第7章|歩行
運動学 第7章
7-1 歩行周期の相と用語
- 1歩行周期=一側の初期接地から同側の次の初期接地まで(=重複歩・ストライド)
- 立脚相 約60%・遊脚相 約40%(約6:4)。7:3ではない
- 両脚支持期は1周期に2回(荷重応答期と前遊脚期、各約10%・計約20%)
- 単脚支持期=立脚中期と立脚終期(計約40%)。初期接地・荷重応答期・前遊脚期は両脚支持
- 両脚支持期は速度が上がるほど短縮し、走行では消失(両脚遊離期が出現)
| 相(Rancho Los Amigos) | % | 区間の定義(右下肢を基準) | 従来用語 |
| 初期接地 IC | 0 | 右踵が床に触れた瞬間 | 踵接地 |
| 荷重応答期 LR | 0〜10 | 右踵接地〜左爪先離地(両脚支持) | 足底接地 |
| 立脚中期 MSt | 10〜30 | 左爪先離地〜右踵離地(単脚支持) | 立脚中期 |
| 立脚終期 TSt | 30〜50 | 右踵離地〜左踵接地(単脚支持) | 踵離地・立脚後期 |
| 前遊脚期 PSw | 50〜60 | 左踵接地〜右爪先離地(両脚支持) | 爪先離地 |
| 遊脚初期 ISw | 60〜73 | 右爪先離地〜右足部が左下腿を通過するまで | 加速期 |
| 遊脚中期 MSw | 73〜87 | 右足部が左下腿を通過〜右下腿が垂直になるまで | — |
| 遊脚終期 TSw | 87〜100 | 右下腿が垂直〜次の右踵接地まで | 減速期 |
「立脚相の後半は抑制期」は誤り → 立脚前半が制動(抑制)期・後半が推進期。「遊脚相で下肢が体幹の後方にある時期を減速期という」も誤り → それは加速期。減速期は下肢が体幹の前方にあり着地に向かう時期。
相の名前は「対側で何が起きているか」で決まる。荷重応答期と前遊脚期はどちらも両脚支持で、前遊脚期=対側の初期接地から同側の爪先離地まで(第2両脚支持期)。組合せ問題では「右前遊脚期=左踵接地〜右爪先離地」が正しい形になる。
立脚終期は踵が離れ前足部で身体を前方へ押し出す(ロールオーバー・蹴り出し)相。装具の底屈制動を軽くし中足足根関節以遠の可撓性を高めると、この相の押し出しが伸びて歩幅が増える。逆に足尖まで覆う継手なしAFOではこの相がつぶれ、立脚後期が極端に短くなる。
相ごとの機能的な役割で覚えると筋活動とつながる。荷重応答期=衝撃吸収(膝が軽度屈曲し四頭筋・前脛骨筋が遠心性に働く)/立脚中期〜終期=単脚支持と前方への重心移動(下腿三頭筋が下腿前傾を制動し、最後に蹴り出す)/遊脚期=下肢の前方移動と足のクリアランス(前脛骨筋が足を持ち上げ、遊脚終期にハムストリングスが減速)。
7-2 時間・距離因子と計算
| 用語 | 定義 | 単位・目安 |
| 歩幅(ステップ長) | 一側踵接地から反対側踵接地までの前後距離 | m/歩 |
| 重複歩距離(ストライド長) | 同側踵接地から次の同側踵接地までの距離=歩幅の約2倍 | m。身長・下肢長が大きいほど長い |
| 歩隔(ステップ幅) | 進行方向に垂直な左右方向の足の間隔 | 約7〜10cm |
| 足角 | 進行方向と足の長軸がなす角 | 約7度 外向き |
| 歩行率(ケイデンス) | 単位時間あたりの歩数 | 歩/分。成人110〜120歩/分 |
| ステップ時間/重複歩時間 | 片側踵接地〜反対側踵接地/同側〜同側 | 秒/歩 |
| 歩行速度 | 歩幅×歩行率 | m/分・m/秒。快適1.2〜1.3m/秒 |
| 歩行比 | 歩幅÷歩行率 | m/(歩/分) |
- 計算式は 歩行速度=歩幅×歩行率 の一本。分→秒は÷60。
例1:歩幅0.45m×80歩/分=36m/分 → 36÷60=0.6m/秒。
例2:歩行率120歩/分=2歩/秒、速度0.8m/秒 → 歩幅=0.8÷2=0.4m=40cm。
- 歩行率は幼児で最も大きい(下肢が短く歩幅が小さい分を歩数で補う)。5歳>10歳>成人。身長で補正はしない。
- 加齢では歩幅の減少が主で歩行率の変化は小さい。したがって高齢者の歩行比は小さくなる。
- 足跡(方眼紙)の読み取りでは同側→同側がストライド(重複歩距離)、左右交互がステップ(歩幅)。同側の踵から次の同側の踵までを数えるので、1歩ぶんの約2倍の値になる。
「歩行率=歩行比」は誤り → 別物(歩行比=歩幅/歩行率)。「歩行率は身長で補正する」も誤り。「高齢者では歩行比が大きくなる」も誤り → 小さくなる。「歩隔=進行方向の前後距離」も誤り → 歩隔は左右の間隔、前後は歩幅。「同側踵接地から再び同側踵接地までをステップ時間という」も誤り → それは重複歩時間。
7-3 関節運動・骨盤・重心
| 関節 | 1歩行周期の波の数 | 動きの経過 |
| 股関節 | 屈曲・伸展 各1回 | ICで屈曲約30度→立脚で伸展→立脚終期に伸展最大(約10〜20度)→前遊脚期以降は屈曲へ |
| 膝関節 | 屈曲2回(二重膝作用) | ICでほぼ伸展→LRで15〜20度屈曲(衝撃吸収)→MStで伸展→遊脚初期に約60度屈曲 |
| 足関節 | 背屈・底屈 各2回 | ICで中間位→LRで底屈→立脚中〜終期で背屈→蹴り出しで底屈→遊脚で背屈 |
骨盤・体幹・上肢
- 水平面:回旋する(約4度、遊脚側が前方)。歩幅を伸ばし重心の上下動を減らす
- 前額面:遊脚側の骨盤が下制(約5度)。水平には保たれない。これを立脚側の中殿筋が制御する
- 側方移動は立脚側(荷重側)へ。遊脚側ではない
- 上肢は下肢と逆位相。同側の踵接地時、肩は伸展位(最大屈曲位ではない)
重心(COG)
- 立脚中期で最も高く、かつ最も支持脚側へ偏位する(単脚支持で支持脚がほぼ垂直)
- 両脚支持期(踵接地付近)で最も低い。上下・左右とも移動幅は約4〜5cm
- 体重心が支持足の直上に来るのは立脚中期。荷重応答期ではまだ後方
- 上下動は1歩行周期に2回(左右の立脚中期ごと)、左右動は1回の正弦波を描く
歩行の決定因子(Saundersの6要素)=①骨盤の回旋 ②骨盤の傾斜(遊脚側下制)③立脚期の膝屈曲 ④足関節の運動 ⑤膝と足部の連動 ⑥骨盤の側方移動。いずれも重心移動幅を小さくしエネルギー消費を抑える。膝関節の回旋は決定因子に含まれず、重心移動幅の減少への関与は小さい。
歩行速度を上げたときの変化:歩幅↑・歩行率↑・関節可動域↑・重心の上下動↑・体幹の水平面回旋↑/立脚相の時間↓・両脚支持期↓・遊脚相の比率は相対的に↑。減るのは時間だけで、距離・角度・動揺はすべて増える。
7-4 歩行中の筋活動
| 筋 | 主な活動相 | 収縮様式と役割 |
| 前脛骨筋・長趾伸筋 | 遊脚全般+IC〜荷重応答期 | 遊脚では求心性(つま先を持ち上げる)。LRでは遠心性で足の落下を制動=フットスラップ防止。立脚中期以降はほぼ沈黙 |
| 大腿四頭筋 | 遊脚終期〜荷重応答期 | 遠心性で膝屈曲を制動=膝折れ防止。大腿直筋のみ二相性(LR+立脚終期〜前遊脚期の振り出し準備) |
| 大殿筋 | 遊脚終期〜立脚初期 | 股関節伸展。立脚初期にピーク |
| 中殿筋 | 荷重応答期〜立脚中期 | 骨盤の水平保持(遊脚側の下制を制御) |
| ハムストリングス | 遊脚終期+立脚初期の二相性 | 遊脚終期に遠心性で振り出しを減速し踵接地に備える |
| 下腿三頭筋 | 足底接地〜立脚終期 (ピーク45〜50%、爪先離地で急減、遊脚は無活動) | 立脚中期までは遠心性で下腿の前傾を制動→立脚終期に求心性で蹴り出し |
| 長母趾屈筋・長趾屈筋 | 立脚終期〜前遊脚期 | 蹴り出しの補助 |
| 腸腰筋 | 立脚終期〜遊脚初期 | 求心性。下肢の振り出し |
- 時間で言うと、下腿三頭筋は立脚が進むにつれ活動が増大し45〜50%付近でピーク、爪先離地(60%)で急減して遊脚はほぼ無活動。この山の位置がグラフ問題の決め手
- 前脛骨筋は逆に遊脚で活動し、立脚中期以降は静か。両者は活動時期がほぼ裏返しの関係
筋電図・活動グラフの判別ルール:立脚初期にピーク=大殿筋・大腿四頭筋・中殿筋/立脚終期にピークで遊脚は無活動=下腿三頭筋/立脚初期と遊脚終期の二峰=ハムストリングス・前脛骨筋。「立脚相で最大活動が最も遅い筋」を問われたら下腿三頭筋。
遠心性収縮となる代表局面(頻出)
・踵接地〜足底接地の前脛骨筋・長趾伸筋(底屈を制動)
・荷重応答期の大腿四頭筋(膝屈曲を制動)
・足底接地〜立脚中期の下腿三頭筋(下腿前傾を制動)
・遊脚終期のハムストリングス(振り出しを減速)
「立脚中期〜踵離地の大殿筋」「加速期〜遊脚中期の内側広筋」「遊脚中期〜減速期の腸腰筋」はいずれも遠心性の主局面ではない。短腓骨筋・ヒラメ筋も荷重応答期の主役ではない(ヒラメ筋は立脚中期以降)。
7-5 床反力・関節モーメント・歩行分析
- 垂直分力=2峰性(M字型)。第1ピーク=荷重応答期、第2ピーク=立脚終期でともに体重を上回る。谷=立脚中期で体重を下回る(重心が最高位で上向き加速度が減るため)。最小値が体重と等しくなるわけではない
- 前後分力:立脚前半は後向き(制動)、後半は前向き(駆動)。速度依存性が高く、歩行が遅いとピーク値は小さくなる
- 左右分力:立脚中期は支持側へ身体を保つ内向き成分が主体(外向きではない)
- 関節モーメント:膝伸展モーメント最大=荷重応答期(膝軽度屈曲位で体重を受け止め、四頭筋が膝折れを防ぐ)。足底屈モーメント最大=立脚終期
- 波形と相の対応:第1ピーク=荷重応答期/谷=立脚中期(単脚支持)/第2ピーク=立脚終期〜前遊脚期。二関節筋の大腿直筋はこの2つのピークに合わせて二相性に活動する(第1=膝屈曲の制動、第2=股屈曲で振り出し準備)
| 機器 | 測れるもの |
| 三次元動作解析(反射マーカ+赤外線カメラ) | 関節角度・重心の変化・歩幅・歩行率など運動学データ。足底圧分布は測定できない |
| 床反力計 | 床反力ベクトル、関節モーメント(運動力学) |
| 足圧分布計 | 足底各部の圧力分布 |
| 表面筋電計 | 筋活動のタイミング・大きさ |
7-6 異常歩行と原因
| 異常歩行 | 原因(弱化筋・病態) | 特徴 |
| 鶏歩(steppage gait) | 前脛骨筋麻痺=総腓骨神経麻痺(下垂足) | つま先が垂れるため膝・股を高く挙げ、爪先から接地 |
| 分回し歩行 | 脳卒中片麻痺 | 膝伸展位で振り出せず下肢を外側へ回す |
| 尖足歩行 | 片麻痺(下肢伸展共同運動・痙性) | 踵接地がなく爪先接地になる |
| 踵足歩行 | 下腿三頭筋麻痺 | 蹴り出せず踵接地のまま立脚を過ごす |
| Trendelenburg歩行 | 中殿筋(股外転筋)弱化 | 立脚側で骨盤を保持できず遊脚側の骨盤が下がる |
| Duchenne歩行 | 中殿筋弱化の代償 | 体幹を立脚(患)側へ側方傾斜 |
| 動揺性(あひる)歩行 | 両側中殿筋弱化(筋ジストロフィー等) | 骨盤・体幹が左右に揺れる |
| 大殿筋歩行 | 大殿筋(股伸展筋)弱化・筋ジストロフィー | 立脚期に体幹を後方へ反らす(後方体幹傾斜) |
| はさみ脚歩行 | 股関節内転筋の痙性(脳性麻痺・痙性対麻痺) | 両膝が内側で交差する |
| 酩酊歩行(ワイドベース) | 小脳性運動失調 | 歩隔が広くふらつく |
| 小刻み・すくみ足・突進 | Parkinson病・正常圧水頭症 | 歩幅が小さく、すり足・開脚となる |
入れ替えの引っかけが定番。
「鶏歩=脛骨神経麻痺」は誤り → 総腓骨神経麻痺(脛骨神経麻痺では底屈・内反が障害)。
「総腓骨神経麻痺=分回し歩行」は誤り → 鶏歩。分回しは片麻痺。
「踵足歩行=脳卒中」は誤り → 下腿三頭筋麻痺。
「動揺歩行=小脳性運動失調」は誤り → 両側中殿筋弱化。小脳性は酩酊歩行。
「はさみ脚歩行=正常圧水頭症」は誤り → 内転筋の痙性。正常圧水頭症は小刻み・すり足・開脚。
図で判別するときは体幹の傾く向きを見る。前後(後方へ反る)=大殿筋/側方(立脚側へ傾く)=中殿筋。足部だけの問題(下垂足・蹴り出し低下)なら体幹は傾かない。
7-7 筋力・可動域から歩容を予測する
| 低下している筋 | 予想される歩容(出る側) |
| 中殿筋 | 同側立脚期のTrendelenburg徴候・Duchenne歩行 |
| 大殿筋 | 同側立脚期の体幹後傾 |
| 前脛骨筋 | 同側の下垂足・鶏歩・踵接地直後のフットスラップ |
| 下腿三頭筋 | 同側立脚後期の蹴り出し低下・踵足傾向・膝の過伸展傾向 |
| ハムストリングス | 遊脚終期の減速不良(踵接地が不安定) |
| 股関節の可動域制限 | 予想される歩容 |
| 伸展制限(屈曲拘縮)例:伸展−15度 | 立脚後期に伸展できない → 反対側の歩幅が減少・骨盤前傾・腰椎前弯が増強(後弯ではない) |
| 外転制限 | 遊脚期の骨盤前方回旋が制限 → 制限側の歩幅が減少 |
| 内転制限 | 下肢を正中へ寄せられない → 歩隔の増加 |
上肢は下肢と逆位相で連動して振れるので、可動域制限・疼痛・加齢などで下肢の振り出しが小さくなる病態では、上肢の振りも同時に小さくなる。歩容を問う設問で「上肢の振り幅が増加する」とある肢は誤りと切ってよい。
年齢・疾患による歩行の特徴
- 高齢者:歩幅↓・歩行速度↓・歩行率(ケイデンス)は比較的保たれる=変化は小さい(減るのは主に歩幅なので歩行比=歩幅÷歩行率 は↓)・歩隔↑・両脚支持期↑(遊脚相は相対的に↓)・腕の振り↓・体幹回旋↓・遊脚時の足尖クリアランス↓(つまずきやすい)
- 内側型変形性膝関節症:疼痛回避で歩行速度↓ → 床反力の前後成分↓・歩隔↑・両脚支持期↑・骨盤回旋↓・股関節伸展角度↓
- Parkinson病のすくみ足にはメトロノーム等の外的リズム刺激が有効で、歩行率・歩行速度が改善する
片麻痺のステップ練習をどう読むか
- 両足をそろえた位置から一方の足を前方へ一歩出す練習で狙えるのは、前後方向の歩幅の拡大、支持側となる殿筋・下腿三頭筋の強化、上肢で押す動作による肩甲帯の安定化
- 足を前後に出す運動なので歩隔(左右の間隔)の拡大にはならない。歩隔と歩幅の向きの取り違えが引っかけの定番
「高齢者は歩隔が狭くなる/両脚支持期が短くなる/足尖と床の距離が大きくなる」はすべて誤り → いずれも逆。加齢の歩行は「安定優先・つまずきやすい」で一貫させる。
7-8 義足歩行の異常とアライメント
| 観察された現象 | 主な原因 |
| 大腿義足:立脚中期に体幹が義足側へ側屈 | ソケット外壁の高さ不足・義足側股関節外転筋力低下・初期内転角の不足・義足が短い |
| 大腿義足:立脚中期に過度の腰椎前弯 | ソケットの初期屈曲角が不足(通常5〜7度付ける)・股関節屈筋拘縮・腹筋/殿筋の弱化 |
| 大腿義足:遊脚相に健側の爪先立ち(伸び上がり)・分回し・外転歩行 | 義足が長すぎる・膝継手が屈曲しない・懸垂不良・足部の底屈位=クリアランス不足 |
| 下腿義足:立脚初期〜中期の過度の膝屈曲(膝折れ) | 足部の底屈制動が強すぎる(ヒール・後方バンパーが硬い)・ソケット初期屈曲角が過大・ソケットが足部に対し前方・膝伸展筋力の低下 |
| 下腿義足:立脚後期の膝折れ | ソケット初期屈曲角が過大・ソケット前方位 |
| 下腿義足:膝が伸びすぎる・反張膝 | 底屈制動が弱い・足部が前方位/底屈位・初期屈曲角の不足・ソケット後方位 |
大腿義足で紛らわしい設定。ソケットの初期内転角は中殿筋の張力を高めて外転筋を働かせるための設定で、不足すると立脚中期の体幹側屈を招く(過大が側屈の主因ではない)。義足長が長すぎるのは遊脚相のクリアランス不足=健側の爪先立ち・分回しとして現れ、立脚中期の側屈や腰椎前弯の主因ではない。相(立脚か遊脚か)と面(矢状面か前額面か)で切り分ける。
下腿義足の矢状面は荷重線と膝軸の位置関係で考える。荷重線が膝軸の後方を通る=膝折れ(初期屈曲角過大・ソケット前方位・底屈制動が強い)、前方を通る=膝が突っ張る。下腿切断では膝が残るため大腿四頭筋の筋力が安定の鍵。内転角は前額面の問題で、矢状面の膝折れには関与しない。
| 膝継手の機構 | 目的 |
| イールディング機構 | 立脚相で膝が屈曲するのを緩やかに制動=膝折れ防止(階段・坂の下降) |
| 荷重ブレーキ膝・固定膝 | 立脚相の安定(荷重で制動/伸展位固定) |
| バウンシング機構 | 立脚初期にわずかに屈曲して衝撃吸収 |
| 可変摩擦膝・油圧/空圧膝 | 遊脚相の下腿の振り出し速度を制御 |
PTB(膝蓋腱支持)式の圧の受け方=「圧に強い面で支持、骨突起と神経は除圧」。
支持部=膝蓋腱(膝蓋靱帯)・脛骨内側面・前脛骨筋部・腓腹部/除圧部=脛骨粗面・脛骨稜・腓骨頭(総腓骨神経)・腓骨遠位端。
7-9 装具・足部補正と歩行
- 足尖まであり足継手のないプラスチックAFOは立脚後期にMP関節が背屈できず蹴り出しが出ない → 中足指節関節部より遠位を切除してMP背屈を許すと立脚後期が改善する
- ダブルクレンザック足継手は背屈・底屈を独立に調整できる。背屈制限=膝折れ対策/底屈制限=反張膝対策
- 背屈を許しすぎる(例:背屈0〜20度)と立脚中期に下腿が前傾しすぎて膝折れ → 背屈0〜5度に絞る。踵を高くするのは逆効果
- 内反尖足+立脚中期の膝ロッキング例では足関節底屈0度(中間位)に設定する
| 足継手の設定 | 効く相 | 働き |
| 底屈制動(背屈補助) | 初期接地〜荷重応答期 | 足の急な落下を抑える=フットスラップ・下垂足の対策。強すぎると踵接地後に膝が屈曲方向へ崩れる |
| 背屈制限 | 立脚中期 | 下腿の前傾を止めて膝伸展を保つ=膝折れ対策 |
| 前足部の可撓性・MP部の自由度 | 立脚終期 | ロールオーバーと蹴り出し=歩幅に直結 |
| 短下肢装具のチェックポイント | 正しい基準 |
| 下腿半月の上縁 | 腓骨頭より2〜3横指 下(腓骨頭の高さは総腓骨神経を圧迫し下垂足を招く) |
| 下腿半月の幅 | 3〜5cm(4cmは適正) |
| 支柱と皮膚の距離 | 約5mm |
| 足継手の位置 | 内果下端と外果中央を結ぶ線 |
| 補正 | 目的 |
| 外側フレアヒール | 踵の外側を広げて接地面を拡大=左右(内外側)の安定性を高める |
| ウェッジ(内側/外側) | 傾斜をつけて足部の外反/内反を誘導する |
| Thomasヒール/逆Thomasヒール | 内側を前方延長(扁平足・回内支持)/外側を前方延長 |
| SACHヒール | 踵接地時の衝撃吸収 |
| Tストラップ | 足部の内反・外反の矯正(前額面) |
| スウェーデン式膝装具 | 膝の反張(過伸展)防止。膝折れには適応が逆 |
7-10 歩行補助具・車椅子と免荷
| 項目 | 基準値 |
| 杖先の位置(T字杖・松葉杖) | 足先(小趾)の前方 約15cm・外側 約15cm |
| 杖・松葉杖の握りの高さ | 大転子の高さ。このとき肘は約30度屈曲(=肘角度約150度)。完全伸展位は誤り |
| 松葉杖の全長 | 身長−約40cm(身長−50cmでは短すぎる) |
| 松葉杖の脇当て | 腋窩から2〜3横指(約3〜5cm)下。密着させると松葉杖麻痺(橈骨神経麻痺)。荷重は手掌で支える |
| ロフストランド杖のカフ | 前腕近位1/3。松葉杖より体幹を伸展位に保持しやすい |
| 免荷量の大小 | 松葉杖>ロフストランド杖>T字杖 |
| 階段昇降 | 昇りは健側から・降りは杖と患側から |
| 杖先ゴム | 摩耗=転倒原因。使用のたびに点検(年1回は誤り) |
| 車椅子の寸法 | 算出(身体計測値からの加減算) |
| 座幅 | 最大殿幅+左右各2〜3cm(計約5cm) |
| 座奥行き(シート長) | 殿部〜膝窩長−3〜5cm(膝窩の圧迫を避ける) |
| アームサポート高 | 座位肘頭高+約2cm |
| バックサポート高 | 座位肩高より低く(肩甲骨下角付近) |
| フットサポート | 下腿長に合わせ、床から約5cmのクリアランスを確保 |
クッションを敷くと座面がその厚みぶん上がる。したがってアームサポート高は厚みぶん高く、座面〜フットサポートの距離は厚みぶん短くする。計算問題はここが分かれ目。
- 水中歩行の免荷は水位が高いほど大きい。頸部で約90%、剣状突起で約60〜70%、臍・上前腸骨棘の高さで約50%が目安
- 歩行運動の消費エネルギー=METs×体重(kg)×時間(時間)。例:5METs×80kg×0.5時間=200kcal(≒210kcal)。1METは安静時酸素摂取量(約3.5mL/kg/分)で、1MET・1時間・体重1kgあたり約1kcal
- 杖の長さは病態・目的によって合わせ方を変える。T字杖には「大転子の高さ」「身長÷2+数cm」という別法もあり、どれも肘が約30度屈曲する高さに収束する
杖の適合でよくある誤り。「T字杖の握りは肘45度屈曲」→ 約30度。「松葉杖の脇当ては腋窩から15cm下」→ 2〜3横指(約3〜5cm)下。「脇当てと腋窩は隙間なく」→ 密着させない。「杖先はつま先の前方5cm」→ 約15cm。「杖先ゴムの点検は年1回」→ 使うたび。