第2章|側弯症と脊髄が圧迫される脊椎疾患

脊椎疾患・腰痛 第2章

2-1 特発性側弯症の評価と治療方針

  • 思春期の女子に多く、成長期に進行する。典型は右凸の胸椎カーブ
  • 椎体が凸側へ回旋する三次元の変形。胸椎カーブでは凸側の肋骨が後方へ突出する肋骨隆起(rib hump)、腰椎カーブでは腰部の隆起(lumbar hump)が出る
  • 学校検診のスクリーニングは前屈テスト(Adams forward bending test)で肋骨隆起をみる。モアレ写真も用いる
  • 程度はX線のCobb角、骨成熟はRisser徴候(Risser sign)で評価する
Cobb角(目安)方針
おおむね20〜25度未満経過観察+運動療法
おおむね25〜40度(骨成熟が未完了で進行する例)装具療法+運動療法
おおむね40〜50度以上手術(矯正固定術)を検討

境界の数値は資料によって数度の幅がある。国試では「30〜35度前後・成長期・進行例=装具」の判断ができればよい。運動療法だけでカーブは矯正できない。

  • 装具は骨成熟が完了する(Risser 4〜5)まで続け、1日20時間前後の装着が原則

2-2 側弯症の装具(Milwaukee・Boston)と体幹装具の仕分け

側弯症の装具は三点支持で側方の弯曲と回旋を矯正する硬性の体幹装具。選び分けは頂椎の高さで決まる。

装具覆う範囲適応となる頂椎
Milwaukee装具(ミルウォーキーブレース)=CTLSO骨盤帯〜頸部リング(ネックリング)まで。骨盤帯と頸部リングを支柱でつなぐ高位胸椎(おおむねT7より上)
アンダーアームブレース(アンダーアームブレイス)=TLSO(代表=Boston装具/ボストンブレース)骨盤〜腋窩の下までおおむねT7〜8以下の胸椎・胸腰椎・腰椎カーブ

「アンダーアーム=腋の下まで=高いカーブには効かない」。上位胸椎の側弯にはMilwaukee。図で頸部のリングが見えればMilwaukee。外観が目立ちにくいのはアンダーアーム型。

アンダーアームブレースの適合

  • 胸椎パッドは肋骨の隆起部、腰椎パッドは腰椎の隆起部に当てる
  • アップライトバー(支柱)は骨盤ガードルに垂直に立てる
  • 骨盤ガードル下端は上前腸骨棘を覆う高さにして骨盤をしっかり把持する

側弯の矯正に軟性の胸腰仙椎装具は不適(矯正力が足りない)。必要なのは三点支持の効く硬性装具。

体幹装具の仕分け(ひっかけ肢の代表例)

装具目的・対象
Milwaukee(CTLSO)・アンダーアーム/Boston(TLSO)側弯症
Jewett型胸腰椎の屈曲を制限する過伸展装具(三点固定)。圧迫骨折
Taylor型・Knight-Taylor型胸腰椎の屈曲を制限。圧迫骨折など
Knight型(LSO)腰椎の前後屈・側屈を制限。腰痛症
Steindler型硬性の体幹装具。腰痛症などに用い、側弯の矯正装具ではない
Williams型(LSO)腰椎の伸展を制限。脊柱管狭窄症・分離すべり症
SOMI装具胸骨・後頭・下顎で支える頸椎装具
Halo装具(ハローベスト)頭蓋にピンで固定し頸椎を強固に固定

2-3 側弯症の運動療法

項目正しい理解よくある誤り
代表的な体操Klapp体操(四つ這い位で脊柱の可動性を引き出す)Böhler体操は圧迫骨折の体操
腹筋運動腰椎前弯の増強を減らし骨盤を後傾方向へ導くため腹筋群を強化する—
凸側・凹側凹側=短縮している側を伸張、凸側=伸ばされて弱い側を強化「凸側の筋を伸張する」は逆
回旋運動回旋変形を戻す方向の回旋運動は治療に用いる「回旋運動は変形を助長するので行わない」と一律に禁止するのは誤り
装具との関係装具療法中も入浴時などに装具を外して体操し、体幹筋の廃用と可動域制限を防ぐ「装具期間中は外して体操してはならない」は誤り

運動療法は装具療法と併用し、姿勢保持筋の強化と体幹の柔軟性維持を図るもの。単独でカーブを矯正するものではない。

2-4 脊髄が圧迫される脊椎疾患(靱帯骨化症など)と歩行の補助

疾患好発部位主な症状
後縦靱帯骨化症(OPLL)頸椎に最多上肢のしびれ・巧緻運動障害+下肢の痙性麻痺
黄色靱帯骨化症(OYL)下位胸椎に最多(脊柱管の後方から胸髄を圧迫)下肢の痙性麻痺・痙性歩行・しびれ、体幹の帯状の絞扼感(胸部絞扼感)、膀胱直腸障害。上肢症状は出ない

上肢症状があるかどうかで頸椎病変か胸椎病変かを切り分ける。上肢を支配するのは頸髄〜第1胸髄(C5〜T1・腕神経叢)なので、黄色靱帯骨化症が多い下位胸椎の病変では上肢に症状は出ない。

胸椎の黄色靱帯骨化症の理学療法の目的

  • 痙性歩行の改善
  • 下肢の筋力の維持・増強(術前・術後とも)
  • 胸部絞扼感の軽減(呼吸法・姿勢調整・リラクセーション)
  • 骨盤底筋群の筋力増強(膀胱直腸障害に対して)
  • 胸髄は除圧後も回復が緩やかなことが多く、術後は廃用予防と歩行の再獲得が中心

下位胸椎の黄色靱帯骨化症の患者に「上肢の感覚障害の改善」を目的に挙げるのは誤り。

脊髄の障害による左右のふらつきと靴の補正

ビタミンB₁₂欠乏による脊髄障害(亜急性連合性脊髄変性症)では、下肢遠位のしびれ・深部感覚障害に、錐体路徴候(膝蓋腱反射亢進・Babinski反射陽性)と末梢神経障害(アキレス腱反射低下)が混在し、歩行時のふらつきが出る。左右へのバランス障害には接地面を広げて側方安定性を高める補正を選ぶ。

補正働き
外側フレアヒール踵の外側を張り出して接地面を広げ、外側への崩れ(側方の不安定)を抑える
Thomasヒールヒールの内側を前方に延長。扁平足・踵の回内に対する内側支持
逆Thomasヒールヒールの外側を前方に延長。内反傾向への対応
ウェッジ(内側・外側)傾斜をつけて足部の内反・外反を補正する
SACHヒール踵接地の衝撃を吸収する(義足足部の構造)

「フレア=広げて安定」「ウェッジ=傾けて矯正」「Thomas=内側を延ばして支える」。