オージオグラムの読み方 完全ガイド

聴覚検査と聴覚障害

オージオグラム(純音聴力検査の結果グラフ)は国試で繰り返し出題されます。記号の意味から難聴タイプの判定、平均聴力の計算まで完全マスターしましょう。

1. オージオグラムの基本

オージオグラムは横軸に周波数(Hz)、縦軸に聴力レベル(dB HL)を取り、上が聞こえやすい(正常)、下が聞こえにくい(難聴重症)を示します。

記号の意味(JIS規格)
右耳・気導(マスキングなし)
× 左耳・気導(マスキングなし)
右耳・気導(マスキングあり)
左耳・気導(マスキングあり)
< 右耳・骨導(マスキングなし)
> 左耳・骨導(マスキングなし)
[ 右耳・骨導(マスキングあり)
] 左耳・骨導(マスキングあり)

右耳=赤、左耳=青。気導は○・×、骨導は<・>で示す。

2. 難聴タイプの判定

難聴タイプ気導骨導気骨導差(ABG)主な原因
伝音性難聴低下(25dB以上)正常(25dB以下)10dB以上あり中耳炎・耳硬化症・耳垢栓塞
感音性難聴低下低下(気導と同程度)ほぼなし(10dB未満)内耳炎・老人性難聴・騒音性・突発性
混合性難聴低下低下(気導より良好)10dB以上あり慢性中耳炎+内耳障害
気骨導差(ABG: Air-Bone Gap)が重要 ABG = 気導閾値 − 骨導閾値。ABGが10dB以上あれば「伝音成分あり」。伝音性難聴ではABGが大きく、感音性難聴ではABGがほぼゼロ。

3. 平均聴力レベルの計算

国試や補聴器適合に使用される「平均聴力レベル」の計算方法は2種類あります。

4分法(日本の標準)
平均聴力 = (500Hz + 1000Hz×2 + 2000Hz)÷ 4

3分法
平均聴力 = (500Hz + 1000Hz + 2000Hz)÷ 3
計算例(4分法) 500Hz: 40dB、1000Hz: 60dB、2000Hz: 70dB の場合
平均聴力 = (40 + 60×2 + 70) ÷ 4 = 230 ÷ 4 = 57.5 dB

4. 難聴の程度分類

平均聴力レベル程度日常生活への影響
25dB未満正常問題なし
25〜40dB軽度難聴小声・遠くの声が聞き取りにくい
40〜70dB中等度難聴普通の会話でも困難
70〜90dB高度難聴大きな声でも聞こえない
90dB以上重度難聴(聾)音がほとんど聞こえない

5. 特徴的なオージオグラム形状

形状特徴疾患例
高音急墜型高周波数ほど聴力低下が著しい老人性難聴・騒音性難聴・突発性難聴
低音障害型低周波数(250〜500Hz)のみ低下低音障害型感音難聴・初期メニエール病
山型(谷型)中音域(2000〜4000Hz)のみ低下騒音性難聴(C5 dip)
水平型全周波数均等に低下慢性中耳炎・先天性難聴
カップ型中音域が最も低下メニエール病(進行期)
騒音性難聴のC5 dip(4000Hz notch) 騒音性難聴では4000Hzに特徴的な聴力低下(C5 dip)がみられる。高音域から低下が始まるが会話音域(1000〜2000Hz)は保たれるため、早期には自覚症状に乏しい。

6. ティンパノグラムとの組み合わせ

オージオグラムと合わせてティンパノグラム(インピーダンスオージオメトリー)も国試で出題されます。

タイプ波形の特徴示す病態
A型0付近にピーク・振幅正常正常中耳
As型0付近にピーク・振幅小耳硬化症・鼓膜肥厚
Ad型0付近にピーク・振幅大耳小骨離断・鼓膜弛緩
B型ピークなし(フラット)滲出性中耳炎・鼓膜穿孔
C型負圧側にピーク(−200daPa以下)耳管機能不全・初期滲出性中耳炎

7. 疾患別オージオグラムの特徴

国試では「○○症のオージオグラム所見はどれか」と疾患から問う出題が多いため、疾患ごとの典型像を整理しておきましょう。

疾患難聴タイプ典型的なオージオグラム所見
耳硬化症伝音性→進行で混合性気骨導差(+)。カルハルトノッチ(2000Hzの骨導閾値が見かけ上低下)が特徴。ティンパノAs型。
滲出性中耳炎伝音性軽〜中等度の気骨導差。低音域中心の伝音難聴。ティンパノB型(平坦)またはC型。
突発性難聴感音性(一側性・急性)高音急墜型〜谷型〜聾型まで多彩。一側性・突然発症で、めまいや耳鳴を合併することがある。
メニエール病感音性(変動性)初期は低音障害型→進行でカップ型・水平型。聴力が変動するのが特徴。
老人性難聴感音性(両側対称性)高音漸傾型。両耳対称性に高音域から緩やかに低下。語音明瞭度の低下を伴う。
騒音性難聴感音性C5 dip(4000Hzの谷)。会話音域は保たれ早期は無自覚。
聴神経腫瘍(後迷路性)感音性(後迷路)一側性の高音障害。語音明瞭度が純音聴力に不釣り合いに低下(ロールオーバー現象)。
機能性(心因性)難聴他覚的検査(ABR・OAE・SISI等)と純音聴力が一致しない。閾値の再現性に乏しい。
カルハルトノッチ(Carhart notch) 耳硬化症で2000Hz付近の骨導閾値が見かけ上低下する現象。アブミ骨固着による中耳伝音系の共振変化が原因で、アブミ骨手術後に改善する。「真の感音難聴ではない」点が国試頻出。

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