第1章|純音聴力検査の読み方
対応過去問 約45問 / 難易度 ★★★★☆
オージオグラムの基礎
軸と単位
- 横軸=周波数(Hz)。125〜8,000Hzを対数目盛で左(低音)→右(高音)に並べる
- 縦軸=聴力レベル(dB HL)。上が小さい音(良聴)・下が大きい音(難聴)。下にいくほど難聴が重い
- 0dB HL=健聴若年者の平均的な最小可聴値(基準)。マイナス値もありうる
記号
| 右耳(赤) | 左耳(青) |
| 気導(マスキングなし) | ○ | × |
| 気導(マスキングあり) | △ | □ |
| 骨導(マスキングあり) | [ | ] |
| スケールアウト(測定不能) | 記号に下向き矢印を付す |
- 右=赤・○、左=青・×が大原則。気導は隣の点と線で結ぶ(骨導は結ばない)
- スケールアウト=オージオメータの最大出力でも反応がない=矢印付き記号で「これより下」を表す
「○は左耳の気導」は誤り。○=右耳の気導、×=左耳の気導。色は右=赤・左=青。
気導・骨導と気骨導差
2つの経路
- 気導:外耳→中耳→内耳→聴神経の全経路を評価(ヘッドホン/イヤホン)
- 骨導:外耳・中耳をバイパスし、頭蓋骨の振動で内耳以降のみを評価(骨導端子を乳突部に当てる)
- 理論上骨導が気導より悪く(下に)出ることはない(出たら測定誤差・マスキング不足を疑う)
気骨導差(A−Bギャップ)で難聴を分類
| 型 | 気導 | 骨導 | 気骨導差 |
| 伝音難聴 | 低下 | 正常 | あり(≧10〜15dB) |
| 感音難聴 | 低下 | 低下(気導と一致) | なし |
| 混合性難聴 | 低下 | 低下 | あり(骨導も悪い) |
- 気骨導差=「外耳・中耳に問題あり」のサイン=伝音成分
- 骨導の低下分=感音成分。混合性は両者が重なる
「気骨導差がある=感音難聴」は誤り。気骨導差があるのは伝音(または混合性)難聴。感音難聴は気骨導差なし。
カーハートの切痕(Carhart notch)
- 耳硬化症でみられる、骨導2,000Hz付近のみが見かけ上くぼむ所見
- 真の内耳障害ではなく、アブミ骨固着による中耳機械的要因。アブミ骨手術後に改善する
マスキング
陰影聴取(クロスヒアリング)
- 検査側に強い音を出すと、非検査側(良聴耳)の蝸牛が音を拾ってしまう=陰影聴取
- これを防ぐため非検査側にマスキング雑音(バンドノイズ)を流して耳を塞ぐ
両耳間移行減衰量(IA)
- 反対側へ音が回り込むまでに減衰する量。気導は約40dB以上(挿入イヤホンではより大きい)
- 骨導はほぼ0dB(頭蓋全体が振動するため左右が分離しない)=骨導検査は原則つねにマスキングを考慮
マスキングが必要な条件・落とし穴
- 気導:検査耳の気導閾値 − 非検査耳の骨導閾値 ≧ IA(約40dB)のとき必要
- オーバーマスキング:マスキング音が強すぎて検査耳側にも回り込み、閾値が見かけ上悪化する
- マスキング・ジレンマ:両側に大きな気骨導差があると、適正マスキング量の幅が取れず正確な測定が困難
「骨導検査ではマスキングは不要」は誤り。骨導はIAがほぼ0なのでマスキングがとくに重要。
平均聴力レベルと聴覚障害の等級
平均聴力レベルの計算(4分法)
- 日本聴覚医学会の4分法=(a+2b+c)/4(a=500Hz・b=1,000Hz・c=2,000Hz、1,000Hzを2倍)
- 身体障害者手帳の認定もこの4分法で算出する
- 3分法=(a+b+c)/3 は簡便法
身体障害者手帳(聴覚)の等級
| 等級 | 基準(両耳) |
| 2級 | 両耳とも100dB以上(両耳全ろう) |
| 3級 | 両耳とも90dB以上 |
| 4級 | 両耳とも80dB以上、または両耳の最高語音明瞭度が50%以下 |
| 6級 | 両耳とも70dB以上、または一側90dB以上+他側50dB以上 |
聴覚障害の手帳は2級が最重度(1級・5級は聴覚単独では該当しない)。語音明瞭度も等級判定に使う点に注意。
オージオグラムのパターン(疾患別の型)
| 型 | 特徴 | 代表疾患 |
| 高音漸傾型 | 高音ほど悪い右下がり | 加齢性難聴・騒音性難聴 |
| 谷型(c5ディップ) | 4,000Hzに谷 | 騒音性難聴(初期) |
| 低音障害型 | 低音のみ悪い上昇型 | 低音障害型感音難聴・メニエール病初期 |
| 水平(皿)型 | 全周波数が同程度 | 遺伝性難聴・進行例 |
| 聾型・残存型 | 低音にわずか残存ほぼスケールアウト | 高度先天性難聴 |
- メニエール病は発作期に低音障害型で変動し、進行すると水平〜高音漸傾型へ
- 騒音性難聴は4,000Hzのc5ディップから始まり、進むと高音漸傾型に
「騒音性難聴は低音から障害される」は誤り。4,000Hz(c5ディップ)=高音域から始まる。