第1章 発達障害の分類と特徴

言語発達障害学 第1章|対応過去問 77問

1-1 DSM-5の神経発達障害

DSM-5の「神経発達障害」に含まれる分類は以下の通り。

分類主な内容
知的能力障害(知的発達症)知的機能+適応機能の双方の障害
コミュニケーション障害言語症・語音症・吃音・社会的コミュニケーション障害
自閉症スペクトラム障害(ASD)社会的コミュニケーション+限定的反復行動
注意欠如・多動性障害(ADHD)不注意・多動性・衝動性
限局性学習症(LD)読字・書字・算数の特異的困難
運動症群発達性協調運動症・チック症など

「広汎性発達障害(PDD)」はDSM-5にない。DSM-IVまでの分類であり、DSM-5ではASDに統合された。アスペルガー障害も同様。

DSM-5の言語症/言語障害の症状

DSM-5に記載された言語症/言語障害の症状として正しいのは「限定された構文」

  • 語音の算出の困難さ → 語音症
  • 音声と音節の繰り返し → 吃音(小児期発症流暢障害)
  • 特定の状況で話すことの困難さ → 場面緘黙
  • 話術のルールに従うことの困難さ → 社会的コミュニケーション障害

1-2 自閉症スペクトラム障害(ASD)

DSM-5の診断基準:2領域

領域① 社会的コミュニケーション・対人相互作用の持続的欠如

  • 非言語的コミュニケーション(視線・表情・ジェスチャー)の障害
  • 対人関係の発展・維持の困難

領域② 限定された反復的な行動・興味・活動

  • 同一性へのこだわり
  • 限局した強い興味
  • 感覚刺激への過敏さ・または鈍感さ(DSM-5で追加)

「衝動的な行動」「運動機能の欠如」「同一性への無関心」はASD診断基準に含まれない。

「三つ組」の障害と社会性タイプ

三つ組の障害:①社会性の障害 ②コミュニケーションの障害 ③想像力の障害(+反復的行動パターン)

社会性のタイプ分類(3タイプ):

タイプ特徴
孤立型他者への関心が乏しい
受動型働きかけには応じるが自発性が低い
積極・奇異型一方的に話しかけるなど積極的だが場にそぐわない

「過敏型」「拒否型」は3タイプ分類に含まれない。

ASDの神経心理学的理論

理論内容
心の理論の障害他者の心的状態の推測困難
中枢性統合の弱さ全体より部分に注目しやすい
実行機能障害計画・柔軟性・抑制の困難
三つ組の障害社会性・コミュニケーション・想像力
TEACCHプログラム構造化による支援

ASDの理論の組み合わせ問題:「三つ組の障害」が正しい組み合わせ。TEACCHプログラムを発展させたのはエリクソンではなく別人物。

ASDに関連する脳部位

  • 扁桃体・上側頭溝が機能低下に関与
  • ウェルニッケ野・ブローカ野・海馬はASDの主要機能低下部位ではない

ASDの言語・コミュニケーションの特徴

  • 語用(文脈に合わせた言語使用)の障害が中心
  • 非言語的コミュニケーションの発達の遅れ
  • 相手に合わせた話題維持が難しい
  • 文法習得・語彙の即時マッピング(fast mapping)は比較的保たれる
  • 文法役割と意味役割の結びつけは比較的保たれる

語用の障害が特徴とされるのはASD。知的能力障害・限局性学習障害・吃音・ADHDは語用が中心的障害ではない。

ASDの特性に基づく行動の理解

「活動と興味の範囲が著しく限局している」行動の例:

  • 初めての食べ物は食べない(同一性へのこだわり)
  • 指さしたものを見ない・アイコンタクトがない・まねをしない → 社会性・コミュニケーションの問題

ASDで誤っている記述の典型例:

  • 「指さす方向を見る」→ ASDでは困難(共同注意の障害)
  • 「身振りによる意思伝達は円滑である」→ 非言語コミュニケーションの障害があるため誤り

ASDを合併する頻度

高い:脆弱X症候群・レット症候群・結節性硬化症・ダウン症候群

ターナー症候群はASDの合併頻度が低い。

1-3 注意欠如・多動性障害(ADHD)

主な特徴

3症状:不注意 / 多動性 / 衝動性

  • DSM-5では「12歳以前に症状が存在」(DSM-IVは7歳以前)
  • 男児に多い(男:女 = 3〜4:1)
  • 幼児期は多動が目立つ、学童期以降は不注意が前景化
  • 女児では不注意優勢型が多い(多動性優勢型ではない)
  • 成人期まで症状が持続することがある(自然治癒しない)
  • 順序立てた活動が難しい・交通事故のリスクが高い

「3歳以前に徴候がみられる」は誤り(DSM-5では12歳以前)。「成人になると大部分自然治癒する」は誤り。「不注意優勢型は男児に多い」は誤り(女児に多い)。

ADHDの中心的認知障害

  • 実行機能障害(計画・抑制・ワーキングメモリの困難)
  • ワーキングメモリ障害

DSM-5の不注意症状 vs 多動・衝動性症状

不注意症状多動・衝動性症状
課題に必要なものをなくす着席中にそわそわした動き
書類の記入漏れ・うっかりミスしゃべりすぎ
注意がそれやすい順番待ちが苦手
忘れ物が多い静かに余暇を過ごせない

「課題や活動に必要なものをなくしてしまう」は不注意症状。「着席中にそわそわ」「しゃべりすぎ」「順番待ちが苦手」「静かに余暇を過ごせない」は多動・衝動性症状。

ADHDの二次障害

  • 不安障害・うつ状態・自尊感情の低下
  • 反抗挑戦性障害・行為障害

人格障害はADHDの二次障害ではない。行為障害は二次障害。トウレット症候群はADHDに併存しやすい。

ADHDの治療・支援

治療法内容
メチルフェニデート副作用:食欲不振・不眠
アトモキセチン有効。副作用は比較的少ない
行動療法(ABA)環境調整・強化
ペアレントトレーニング有効。保護者が対応スキルを習得
  • 薬物療法と行動療法の組み合わせが最も有効(行動療法単独が最も有効ではない)
  • 薬物療法は二次障害予防にも効果あり

1-4 知的能力障害(知的障害)

IQ分類(ICD-10)

程度IQ範囲
境界域70〜84
軽度50〜69(旧:50〜74)
中等度35〜49
重度20〜34
最重度20未満

ICD-10の境界域は「75〜84」ではなく「70〜84」。軽度は「50〜69」(旧表記「50〜74」と混同しない)。

境界知能(IQ 71〜84)

  • DSM-IV-TRでは「臨床的関与の対象となることのある他の状態」
  • 特別支援学級の対象ではない
  • 自己評価が低い児が多い
  • 広汎性発達障害を伴うと総合的な適応性がさらに低下する

知的能力障害のある子どもの特徴

  • 適応行動や生活能力に遅れがある
  • 年齢が上がると毎日繰り返している活動に関連した領域の評価は高くなる
  • 年齢とともにIQが低下するわけではない
  • 幼児期は発達検査のすべての領域に遅れがみられる
  • 検査が一部実施できない場合でも中止せず実施できる部分を行う

1-5 ダウン症候群

  • 21番染色体トリソミーが95%
  • 筋緊張が低い(高くない)
  • 伝音難聴の合併が多い
  • 先天性心疾患が40〜50%に合併
  • 眼の屈折異常(近視・斜視)の合併が多い
  • 音韻認識の発達が遅れる

ダウン症の言語発達の特徴

項目内容
発達の順序運動発達より言語発達が遅れる
語彙ボキャブラリースパートがある
文法受動態の使用制限がある
語用語用は統語より優れている(遅れるわけではない)
概念概念の広がりが狭い

1-6 特異的言語発達障害(SLI)

定義と特徴

知的障害・神経疾患・感覚障害・ASDがないにもかかわらず言語発達が遅れる状態。

  • DSM-IV-TRではコミュニケーション障害に相当
  • 表出が理解より重く障害される(表出 < 理解)
  • 文法(統語)障害が中心
  • 対人関係の障害はない(←ASDとの鑑別点)
  • 軽度知的障害は伴わない(定義上)
  • 読み書き習得の遅れを伴うことが多い
  • 実行機能障害は特徴ではない

SLIに併発しやすい障害

ADHD(注意欠如・多動性障害)が最多

SLIの認知特性

  • 音韻認識障害
  • 聴覚性ワーキングメモリ障害
  • 文法能力の低下
  • 視覚性短期記憶は比較的保たれる

SLI vs ASD の鑑別

項目SLIASD
対人関係正常障害あり
語用比較的保たれる中心的障害
文法中心的障害比較的保たれる

SLIの中心となる指導

統語指導・文法指導が中心

  • 音韻認識・聴覚性ワーキングメモリの向上も必要
  • 視覚弁別能力の向上はSLI指導の中心ではない
  • ソーシャルスキルはSLIの中心課題ではない

1-7 発達性読み書き障害(発達性ディスレキシア)

障害仮説

仮説内容
音韻認識障害仮説最も支持される。音のまとまりの操作が困難
視覚的注意スパン障害仮説複数の文字を同時に処理する困難
二重障害仮説複数の要因が重なる

遂行機能障害仮説・弱い中枢性統合仮説はディスレキシアの仮説ではない(ASDの理論)。

特徴

  • IQは正常範囲
  • 視覚認知障害がなくても生じる
  • 音韻処理・音韻意識の困難
  • 読みの流暢性(速度)の低下

音韻意識を測定する課題

音韻意識の評価に用いる課題:抽出・分解・削除・混成

「表記」は音韻意識の測定課題ではない。

1-8 その他の疾患・症候群

疾患名特徴
レット症候群女児特有。発達後退が特徴。言語症状が進行性
脆弱X症候群X染色体の異常。男児に多い。知的障害+ASD類似症状
ウィリアムズ症候群言語性短期記憶は比較的保たれる(障害されない)。社交的
プラダー・ウィリー症候群摂食障害(過食)が特徴
先天性風疹症候群聴力障害が特徴
5pモノソミー(猫なき症候群)言語障害・知的障害
ターナー症候群ASDの合併頻度は低い

ウィリアムズ症候群は「対人関係障害」はない(社交的)。誤った組み合わせ問題でよく出題される。

超重症心身障害児(超重症児)

  • 大島分類で1〜4が該当
  • 超重症児判定スコアで合計25点以上(10点以上ではない)
  • 総数は増加傾向
  • 特別支援学校への通学も可能な場合がある

脳性麻痺との鑑別

  • 脳性麻痺 → 構音不明瞭が特徴(神経心理学的理論はASDのもの)
  • 早産低出生体重児の視空間認知障害は頭頂葉・後頭葉の障害に関係