第1章|発達障害の分類と特徴

高頻出/難易度 ★★★★☆

1-1 DSM-5の神経発達障害

分類主な内容
知的能力障害(知的発達症)知的機能+適応機能の双方の障害
コミュニケーション障害言語症・語音症・吃音・社会的コミュニケーション障害
自閉症スペクトラム障害(ASD)社会的コミュニケーション+限定的反復行動
注意欠如・多動性障害(ADHD)不注意・多動性・衝動性
限局性学習症(LD)読字・書字・算数の特異的困難
運動症群発達性協調運動症・チック症など
「広汎性発達障害(PDD)」はDSM-5にない。DSM-IVまでの分類。アスペルガー障害もDSM-5ではASDに統合。

1-2 自閉症スペクトラム障害(ASD)

DSM-5の診断基準:2領域

領域① 社会的コミュニケーション・対人相互作用の持続的欠如
  • 非言語的コミュニケーション(視線・表情・ジェスチャー)の障害
  • 対人関係の発展・維持の困難
領域② 限定された反復的な行動・興味・活動
  • 同一性へのこだわり
  • 限局した強い興味
  • 感覚刺激への過敏さ・または鈍感さ(DSM-5で追加)
「衝動的な行動」「運動機能の欠如」「同一性への無関心」はASD診断基準に含まれない。

Wing の「三つ組」の障害

  1. 社会性の障害
  2. コミュニケーションの障害
  3. 想像力の障害(+反復的行動パターン)
タイプ特徴
孤立型他者への関心が乏しい
受動型働きかけには応じるが自発性が低い
積極・奇異型一方的に話しかけるなど積極的だが場にそぐわない
「過敏型」「拒否型」はWingの分類に含まれない。

ASDの神経心理学的理論

理論提唱者内容
心の理論の障害Baron-Cohen, S.他者の心的状態の推測困難
中枢性統合の弱さFrith, U. / Happé, F.全体より部分に注目しやすい
実行機能障害Ozonoff, S.計画・柔軟性・抑制の困難
三つ組の障害Wing, L.社会性・コミュニケーション・想像力
TEACCHプログラムSchopler, E.構造化による支援
Kanner,L. は自閉症を最初に記載した人物であり、特定の理論の提唱者ではない。

ASDの言語・コミュニケーションの特徴

  • 語用(文脈に合わせた言語使用)の障害が中心
  • 非言語的コミュニケーションの発達の遅れ
  • 文法習得・語彙の即時マッピング(fast mapping)は比較的保たれる
  • 関連する脳部位:扁桃体・上側頭溝が機能低下に関与

ASDを合併する頻度が高い疾患

脆弱X症候群・レット症候群・結節性硬化症・ダウン症候群
ターナー症候群はASDの合併頻度が低い

1-3 ADHD

3症状:不注意 / 多動性 / 衝動性
  • DSM-5では「12歳以前に症状が存在」(DSM-IVは7歳以前)
  • 男児に多い(男:女 = 3〜4:1)
  • 幼児期は多動が目立つ、学童期以降は不注意が前景化
  • 女児では不注意優勢型が多い(多動性優勢型ではない)
  • 成人期まで症状が持続することがある

中心的認知障害:実行機能障害・ワーキングメモリ障害

人格障害はADHDの二次障害ではない。行為障害は二次障害。
治療法内容
メチルフェニデート副作用:食欲不振・不眠
アトモキセチン副作用は比較的少ない
薬物+行動療法組み合わせが最も有効

1-4 知的能力障害

IQ分類(ICD-10)

程度IQ範囲
境界域70〜84
軽度50〜69
中等度35〜49
重度20〜34
最重度20未満
ICD-10の境界域は「75〜84」ではなく「70〜84」。
境界知能(IQ 71〜84)は特別支援学級の対象ではない。

1-5 ダウン症候群

  • 21番染色体トリソミーが95%
  • 筋緊張が低い(高くない)
  • 伝音難聴の合併が多い
  • 先天性心疾患が40〜50%に合併
項目内容
語用語用は統語より優れている
文法受動態の使用制限あり
語彙ボキャブラリースパートがある

1-6 特異的言語発達障害(SLI)

  • 表出が理解より重く障害される
  • 文法(統語)障害が中心
  • 対人関係の障害はない(←ASDとの鑑別点)
  • ADHDの併発が最多
  • 聴覚性ワーキングメモリ障害を伴う
項目SLIASD
対人関係正常障害あり
語用比較的保たれる中心的障害
文法中心的障害比較的保たれる

1-7 発達性読み書き障害(ディスレキシア)

最も支持される仮説:音韻認識障害仮説
遂行機能障害仮説・弱い中枢性統合仮説はディスレキシアの仮説ではない(ASDの理論)。

1-8 その他の疾患・症候群

疾患名特徴
レット症候群女児特有。言語症状が進行性
脆弱X症候群X染色体異常。男児に多い
ウィリアムズ症候群言語性短期記憶は比較的保たれる
プラダー・ウィリー症候群摂食障害(過食)が特徴
先天性風疹症候群聴力障害が特徴
ターナー症候群ASD合併頻度は低い
超重症心身障害児:大島分類1〜4が該当。超重症児判定スコアで合計25点以上

確認問題

Q1. DSM-5でASDの診断基準は何領域から構成されるか。
Q2. Wingの「三つ組の障害」の3つを答えよ。
Q3. ADHDのDSM-5での症状出現時期の基準は何歳以前か。
Q4. ICD-10の知的障害のIQ分類で「境界域」は何から何か。
Q5. SLIで最も併発しやすい障害は何か。
Q6. 発達性ディスレキシアで最も支持される仮説は何か。
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