第2章 評価・検査

言語発達障害学 第2章|対応過去問 68問

2-1 知能・発達検査

田中ビネー知能検査V

  • 精神年齢(MA)・知能指数(IQ = MA ÷ CA × 100)を算出。成人では偏差知能指数を用いる
  • 開始は生活年齢と等しい(相当する)年齢級から。通過状況に応じて上下の年齢級へ広げる
  • ある年齢級の項目が全問不通過で中止
  • 基底年齢=すべて通過した最高の年齢級をもとに定める(=全問できた年齢級に1を加えた年齢)
  • 「用途による物の指示」は1歳級の問題
  • 1歳級で正答が得られない場合は発達チェックへ
  • 適用年齢:2歳〜成人

「IQはCA÷MA×100で算出される」は誤り(正しくは MA÷CA×100。分子・分母が逆)。開始年齢級・基底年齢・中止基準・1歳級の発達チェックの記述はいずれも正しい内容である。

田中ビネーVの精神年齢(MA)の求め方

精神年齢は基底年齢+上位年齢級で通過した問題に応じた加算月数で求める。結果の図を読ませて精神年齢を計算させる出題があるため、加算のルールを覚えておく。

手順内容
①基底年齢を決めるその年齢級の問題をすべて通過した最高の年齢級を基底年齢とする(月数に直す)
②加算月数を出す基底年齢より上の年齢級で通過した問題1問ごとに月数を加える
③加算の単位2・3歳級=1問1か月4歳級以降=1問2か月
④合計を年月に直す例:合計49か月 → 4歳1か月

加算漏れが誤答の原因になる。基底年齢より上の級で通過した問題をすべて拾うこと、年齢級によって1問あたりの月数が違うことの2点を落とさない。

WPPSIシリーズ

  • 適用年齢:2歳6か月〜7歳3か月
  • 言語理解指標の下位検査:知識・単語・理解・語の推理

「絵の名前」はWPPSIの言語理解指標に含まれない。前言語期の評価にWPPSI-IIIは不適切(言語的回答が必要)。

WISCシリーズ

検査指標数指標名適用
WISC-IV4つ言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度5歳0か月〜16歳11か月
WISC-V5つ言語理解・視空間流動性推理・ワーキングメモリ・処理速度5歳0か月〜16歳11か月
  • WISC-IVの言語理解指標(VCI)=類似・単語・理解の3下位検査
  • WISC-IVのワーキングメモリー指標(WMI)=数唱・語音整列(VCIではない)
  • WISC-Vのワーキングメモリー関連の下位検査で視覚的短期記憶を評価できる
  • WPPSIの言語理解指標(知識・単語・理解・語の推理)と構成が違うので混同しない

WISC-Vに「知覚推理指標」「知覚統合指標」「注意記憶指標」はない。WISC-IV・WISC-Vとも日本版の適用年齢は5歳0か月〜16歳11か月で同じ(4歳には使えない。米国版WISC-Vの6歳0か月〜と混同しない)。WISC-IVの指標は4つ、WISC-Vの主要指標は5つ。ワーキングメモリー指標をもつのはWISC-IV(WISC-V)で、DN-CAS・KABC-II・WPPSI-III・田中ビネーVはワーキングメモリー指標という構成をもたない

指標間の差(ディスクレパンシー)から学習の困難を読む

WISC-IVは指標ごとの高低差から、どの教科・場面でつまずくかを予測する。低い指標が要求される活動が困難になり、保たれている指標が支える活動は比較的行える。

低い指標困難になりやすい活動比較的保たれる活動
言語理解(VCI)が低い文章読解漢字を使った作文意見をまとめて発表するなど、ことばで考え表現する課題知覚推理が保たれていれば字をきれいに書く図画工作の課題を仕上げるなど視覚・運動系の活動
知覚推理(PRI)が低い図形・空間の課題、視覚的な構成言語理解が保たれていれば会話・語彙課題
ワーキングメモリー(WMI)が低い口頭指示の保持、暗算、聞き取りながらのメモ
処理速度(PSI)が低い板書の書き写し、制限時間のある作業

設問は「今後の教科学習で困難になるのはどれか」の形で問われる。低い指標=ことばか/視覚かを見極め、その力を強く要する活動を選ぶ。言語理解が低い児では、読解・作文・発表が困難で、図画工作や字を整えて書くことは相対的に困難になりにくい

新版K式発達検査2020

  • 姿勢・運動 / 認知・適応(C-A) / 言語・社会(L-S)の3領域
  • 発達指数(DQ)に加え発達年齢(DA)も算出できる
  • 検査は生活年齢(暦年齢)相当の課題群から開始し、通過・不通過に応じて上下へ広げる(基底年齢の検査項目から開始するのではない
  • 「四角模倣」は4歳相応(4歳台)の検査項目
  • 「数選び」は認知・適応(C-A)の検査項目ではない
  • 0歳〜成人に適用可能(4歳児にも適用可)
  • 子どもを直接検査して客観的に発達を評価できる → 保護者と担任教諭で情報が食い違う場面では、回答者に左右される質問紙(KIDS・乳幼児精神発達診断法)ではなく新版K式発達検査2020を選ぶ

K-ABC II(KABC-II)

  • 認知尺度:継次・同時・計画・学習の4尺度
  • 習得尺度:語彙・読み・書き・算数
  • 「知覚」はKABC-IIの尺度にない
  • 「位置さがし」は短期記憶の評価(構成能力ではない)
  • 漢字音読の評価が可能
  • 適用:2歳6か月〜18歳

DN-CAS認知評価システム

  • PASS理論(プランニング・注意・同時・継次)に基づく
  • ADHDや学習障害の評価に有用
  • 適用:5〜17歳4歳児には適用できない(ことばの遅れた4歳児への適用不可の代表例)
  • 言語学習年齢はDN-CASの指標ではない

その他の発達・知能検査

検査名特徴適用年齢
KIDS乳幼児発達スケール保護者への質問紙(子どもに直接実施しない)0〜6歳
遠城寺式乳幼児分析的発達検査法運動・社会性・言語の発達を評価0〜4歳7か月
コース立方体組み合わせテスト非言語性の知的発達水準を測定。言語能力不要(動作性IQを算出)。言語を使わない検査だが低年齢には使えない学齢期以降(おおむね6歳〜成人)。4歳児には不適
ピープショウ検査のぞき窓の絵を見せることを報酬にして反応を引き出す幼児の聴力検査(遊びを通した聴力評価)幼児
遊戯聴力検査遊びの動作を反応として用いる幼児の聴力検査。ことばの遅れの背景に難聴がないかを確かめる幼児
DAM(人物画知能検査)人物画による動作性知的発達水準の推定3〜13歳
フロスティッグ視知覚発達検査視知覚能力(線の描画含む)を評価4〜7歳
乳幼児精神発達診断法(津守・稲毛式)養育者からの聞き取りによる検査(回答者に左右される)。発達遅滞傾向児向きの専用用紙はない乳幼児
ITPA言語学習能力診断検査言語学習能力を評価。結果は評価点で表す(IQは用いない)幼児〜学齢期
JMAP(日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査)幼児の発達全般のスクリーニング(運動・言語・非言語を幅広くみる)。構文に特化した検査ではない幼児
WCST(Wisconsin Card Sorting Test)前頭葉機能(遂行機能)の評価

フロスティッグ視知覚発達検査は「非言語性の知的発達水準」ではなく視知覚能力を評価する。M-CHATは「発達プロフィール」ではなくASDのスクリーニングツール。

遠城寺式乳幼児分析的発達検査法の6領域とプロフィールの読み方

遠城寺式は次の6領域を、それぞれ発達年齢で表してプロフィール(折れ線)にする。

大区分領域
運動移動運動手の運動
社会性基本的習慣対人関係
言語発語言語理解
  • 各領域の最後に通過した項目の位置がその領域の発達年齢になる
  • 領域どうしを縦に見比べて、同じ発達年齢の領域・遅れている領域を読み取る
  • 発達指数(DQ)=発達年齢 ÷ 生活年齢 × 100。生活年齢と同じ発達年齢なら100

設問は「◯◯の発達年齢は△歳△か月である」「◯◯と□□とは発達年齢が同じである」の形で問われる。領域名を6つ言えることと、プロフィールの高さを横並びで比較することが読み取りの基本になる。

検査の年齢適応まとめ

対象年齢主に使用できる検査
0〜2歳新版K式・遠城寺式・KIDS・LCスケール・日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙・ピープショウ検査(聴力)・〈S-S法〉(年齢帯の表記は0歳〜6歳。実際の適用開始は1歳前後で、前言語期の評価にも用いる)
2歳台適用可:新版K式・KIDS・遠城寺式・LCスケール・〈S-S法〉・遊びのやりとりの観察・ピープショウ検査/適用不可:PVT-R(3歳〜)
3〜4歳上記+PVT-R(3歳〜)・WPPSI(2歳6か月〜7歳3か月)・田中ビネーV(2歳〜)・KABC-II(2歳6か月〜)・DAM(3歳〜)・J.COSS(3歳〜)
4歳適用可:新版K式・PVT-R・〈S-S法〉・LCスケール・PEP-3・KABC-II・DAM/適用不可:WISC-IV(5歳〜)・DN-CAS(5歳〜)コース立方体(学齢期以降)
5〜6歳(就学前)適用可:J.COSS・新版構文検査 小児版・PVT-R・質問-応答関係検査/適用不可:LCSA(小学1〜6年)・SCTAW(学齢児〜)
小学生〜WISC-IV/V・KABC-II・DN-CAS・STRAW-R・LCSA・SCTAW・RAN・教研式Reading-Test・コース立方体など
高校生〜(16歳〜)WAIS(16歳〜)STRAW-R・教研式Reading-Test・SCTAW(抽象語理解力検査)・DN-CAS(17歳まで)

WISC-IVは3歳には使えない(5歳〜)。LCスケールは6歳以上ではなく6歳まで。フロスティッグは小学校高学年以上ではなく4〜7歳。PVT-Rは3歳〜なので2歳6か月児には適用できないコース立方体は言語を使わない検査だが学齢期以降が対象で、4歳児には適さない

K-ABCは版によって上限年齢が違う。旧K-ABC=2歳6か月〜12歳11か月高校生には使えないKABC-II=2歳6か月〜18歳11か月で高校生にも使える。「16歳の高校生に実施できる検査はどれか」の型では、WAIS(16歳〜)・DN-CAS(5〜17歳)・SCTAW(抽象語理解力検査)が適用可で、LCスケール(0〜6歳)・旧K-ABC(〜12歳)は年齢で外れる。

各検査で「線を描く評価を含むか」

含む:新版K式・〈S-S法〉・フロスティッグ視知覚発達検査・遠城寺式

含まない:絵画語彙発達検査(PVT-R)(絵を指さすだけ)

結果をIQで表せる検査・表せない検査

  • IQで表せる:ウェクスラー系(WPPSI・WISC・WAIS)、コース立方体組み合わせテスト(動作性IQ)、田中ビネーV
  • IQは用いないK-ABC(認知処理・習得度の標準得点)・DN-CAS(PASS理論に基づく標準得点)・ITPA(言語学習能力・評価点)

偏差知能指数について

偏差知能指数は同年齢の集団の中における位置を示す(正規分布上の相対的位置)。

2-2 言語・コミュニケーション検査

PVT-R(絵画語い発達検査)

  • 受容語彙(理解語彙)を評価(表出語彙ではない)
  • 4枚の絵から選択(6枚ではない)
  • 語彙年齢を算出(語彙指数・コミュニケーション指数ではない)
  • 適用:3〜12歳・線を描く評価は含まない

LCスケール・LCSA

検査特徴適用
LCスケール言語・コミュニケーション能力を幅広く評価。語連鎖・状況画理解(心の理論)・時間的語・疑問詞理解など。知能指数は算出できない0〜6歳
LCSA(学齢版LC)リテラシー指数(音読・音韻意識・文章読解)が算出できる小学1〜6年

LCスケールは「言葉芽生え期」から適用可能。「6歳以上」は誤り。LCSAは「音読と音韻意識」だけでなく文章読解も含めてリテラシー指数を算出。

〈S-S法〉言語発達遅滞検査

  • 記号形式-指示内容関係(symbol-referent関係)の発達段階を評価する検査
  • 発達段階の順序:機能的操作 → ふるい分け → 選択 → 身振り記号 → 音声記号
  • 語順も評価可能
  • 助詞の理解も評価できる・線を描く評価を含む
  • 「かな文字音読」は評価対象ではない
  • 適用年齢帯の表記:0歳〜6歳前言語期(有意味語が出る前)の言語発達評価にも用いる
  • ただし実際の適用開始はおおむね1歳前後から「0歳前半から適用できる」は誤り

年齢について問われ方が2通りあるので区別する。検査と適応年齢の組合せとしては「〈S-S法〉―0歳〜6歳」が正しい(年齢帯の表記としてはこう覚える)。一方で「0歳前半から適用できる」は誤りで、実際に検査として成立し始めるのは1歳前後から。年齢帯の表記=0〜6歳/実際の適用開始=1歳前後、と両方を押さえる。

前言語期の評価に使えるのは新版K式発達検査・日本語マッカーサー乳幼児言語発達質問紙・LCスケール・〈S-S法〉で、WPPSI-III(2歳6か月〜の知能検査)は前言語期の評価には適切でない

検査と評価内容の対応:LCスケール=語連鎖/PVT-R=語い年齢/ことばのテスト絵本=ささやき声/J.COSS=文の理解/〈S-S法〉=記号形式-指示内容関係。「〈S-S法〉―かな文字音読」は誤った組合せ。

〈S-S法〉の段階群と、その段階でとる働きかけ

〈S-S法〉は記号形式-指示内容関係の到達段階で子どもを群に分け、群ごとに次の課題を決める。とくにT群=音声発信が未習得の段階への働きかけが問われる。

段階子どもの状態その段階でとる働きかけ
基礎概念の段階(より前の段階)事物を事物として扱う段階。記号がまだ成立していない事物の基礎概念の拡大・機能的操作・ふるい分け・選択
T群(音声発信未習得)記号は成立しつつあるが、音声による発信ができていない理解語彙の拡大語連鎖の受信の獲得発信行動の獲得音声発信の獲得
語連鎖の段階単語の理解・表出が成立し、語のつながりへ進む語連鎖の受信・表出、語順・助詞の理解

「T群への働きかけとして適切でないのはどれか」と問われたら、事物の基礎概念の拡大を選ぶ。基礎概念の形成はT群より前の段階で扱う課題で、音声発信の獲得を目指す段階の直接の働きかけにはならない。T群では理解を広げること発信手段を獲得することの2本立てで考える。

同じ考え方で、すでに成立している段階の課題を改めて重点にしないのが原則。単語の理解が成立している子ども(事物名称の受信は獲得済み・基礎概念もある程度成立)では、重点は語彙の拡大・語連鎖の受信の獲得・音声発信(発信行動)の獲得に移る。

J.COSS日本語理解テスト

  • 文の理解(構文理解)を4択図版で評価
  • ナラティブの評価ではない
  • 適用:3歳〜

新版構文検査 小児版

  • 構文(文法)の理解と表出を評価する小児用の検査
  • 幼児にも実施でき、小児失語症や言語発達障害の構文面の評価に用いる
  • 文の読解力(文章を読んで意味をとる力)の検査ではない

助詞(格関係)の理解を評価できる検査

助詞の理解は文法・構文を扱う検査で評価する。「〜が」「〜を」「〜に」といった格関係が読み取れているかをみる。

助詞の理解を評価できる助詞の理解の評価には向かない
LCスケール——助詞を含む文法・語連鎖の理解を評価する新版K式発達検査——発達全般を測り、助詞に特化しない
失語症構文検査——格助詞を含む構文理解を評価する読み書きスクリーニング検査——読字・書字が対象
〈S-S法〉言語発達遅滞検査——語連鎖・助詞の理解段階を評価する

文の読解力を評価できる検査

  • KABC-II——習得尺度の「読み」に文の理解(読解)の課題を含み、文の読解力を評価できる
  • 教研式Reading-Test——漢字読み・語彙・文法とあわせて文章読解を評価する
  • LCSA——リテラシー指数に文章読解を含む(小学1〜6年)

「文の読解力が評価できるのはどれか」で誤りやすい選択肢の整理。LCスケール=乳幼児の言語・コミュニケーション発達、DN-CAS=認知処理過程(プランニング・注意・同時・継次)、新版構文検査 小児版=構文の理解・表出、小学生の読み書きスクリーニング検査=単語・文字レベルの読み書きで、いずれも文の読解力そのものの評価ではない

読み書き関連検査

検査名評価内容特徴
STRAW-R読み書きの正確性・流暢性漢字音読年齢を算出可能
URAWSS II書字速度など読み書きの実態把握音読の流暢性ではない学校教材使用
RAN自動化能力(音韻意識の評価ではない)発達性読み書き障害の評価
WAVES視空間認知能力発達性読み書き障害の鑑別
教研式Reading-Test漢字読み・語彙・文法・文章読解(発語の明瞭さは評価しない小学生〜高校生
SCTAW(抽象語理解力検査)抽象語の理解(受容)表出性語彙能力ではない対象は学齢児〜成人就学前の5歳児には適さない/高校生には適用できる
KABC-II習得尺度に文レベルの書字を含む漢字音読の評価も可能
WISC-V視覚的短期記憶(ワーキングメモリー関連の下位検査)
WISC-IV聴覚性記憶(ワーキングメモリー指標=数唱・語音整列で評価できる)
ROCFT(Rey複雑図形検査)視覚性記憶(複雑な図形を模写させたのち再生させる)読み書き障害の背景にある視覚性記憶の把握に用いる

RAN課題は呼称の自動化能力の評価であり、音韻意識の評価ではない。誤りやすい組合せ:「URAWSS II―音読の流暢性」「SCTAW―表出性語彙能力」はいずれも誤り。「RAN―自動化能力」「WAVES―視空間認知能力」「STRAW-R―読み書きの流暢性」「WISC-IV―聴覚性記憶」「ROCFT―視覚性記憶」「WISC-V―視覚的短期記憶」「KABC-II―文レベルの書字」は正しい組合せ。

読み書きの困難を疑ったときの検査の組み立て

知能は正常域なのに読み書きだけができない場合は発達性読み書き障害(ディスレキシア)を疑い、その基盤となる呼称の自動化・音韻操作・読みの実力を直接みる検査を選ぶ。

みる力用いる検査・課題
呼称の自動化RAN(Rapid Automatized Naming)——絵・数字などを次々に呼称する速さをみる
音韻操作・音韻性ワーキングメモリ単語逆唱課題・音韻抽出/削除/混成の課題
読みの実力reading-test(教研式Reading-Test)・STRAW-R
背景の除外純音聴力検査(難聴の除外)・視力/視覚認知の確認

読み書きの主訴に対してPEP-3(心理教育プロフィール)やCARSを選ぶのは誤り——どちらもASDの評価ツールであり、読み書きの困難を直接調べる検査ではない。「知能は正常+読み書きだけ困難」という条件を読み取り、RAN・音韻操作課題・読み検査の3点セットで組み立てる。

評価したい側面と検査の対応(総まとめ)

評価したい側面対応する検査
構音新版構音検査・音節検査
語彙PVT-R・〈S-S法〉言語発達遅滞検査・SCTAW(抽象語)
統語(構文)J.COSS・新版構文検査 小児版・失語症構文検査
語用CCC-2・質問-応答関係検査
記憶・学習ReyのAVLT(聴覚言語性学習検査)——語のリストを繰り返し提示して記銘・学習をみる/ROCFT(視覚性記憶)
読み書きSTRAW-R・LCSA・教研式Reading-Test・URAWSS II

「言語能力の総合評価―ReyのAVLT」は誤った組合せ。AVLTは言語性の記憶・学習を調べる記憶検査であって、言語能力を総合的に測るものではない。「構音―音節検査」「語彙―〈S-S法〉」「統語―J.COSS」「語用―CCC-2」はいずれも正しい組合せ。

音韻意識の課題

音韻意識とは話しことばの音を操作する力。文字を介さず、音そのものを取り出したり組み替えたりできるかをみる。測定に用いる課題は次のとおり。

課題内容
抽出語頭音などを取り出す
分解語を音単位に分ける
削除特定の音を除く
混成(ブレンディング)音をつないで語にする
置換特定の音を別の音に入れ替える

「表記」は音韻意識の測定課題ではない。表記は文字で書き表すこと=音と文字との対応の話であり、音そのものを操作する音韻意識とは区別する。「音韻意識を測定する課題でないのはどれか」と問われたら、抽出・分解・削除・混成・置換に含まれない表記を選ぶ。

質問-応答関係検査

  • 会話能力・語用の発達を評価(構文理解の評価ではない)
  • 「なぞなぞ」「説明」なども含む
  • 適用:2歳〜就学前
年齢会話の評価上の特徴
2歳前半質問の意図が十分に理解できず、質問に対して無反応が多い
3歳前半初歩的な会話が可能となる。自己経験や連想による応答が多いのもこの低年齢の特徴
4歳質問の意図に即した応答が増える(「自己経験や連想による応答が多い」は4歳の特徴ではない
5歳分からないときに再質問したり、語の意味を説明できる
6歳相手や場所に合わせて要約や省略ができ始める

年齢が上がるほど「無反応・連想的応答」から「質問の意図に即した的確な応答・聞き手に合わせた調整」へ発達する。

文法の習得状況を評価する項目

適切:動詞・語順・代名詞・時制

慣用句は文法習得状況の評価項目として適切でない。

2-3 ASD評価ツール

検査名特徴
M-CHAT乳幼児のASDスクリーニング(早期発見)。保護者への質問紙で、社会性・コミュニケーションに関する項目からなる
太田ステージ表象水準の評価(ピアジェの認知発達段階に基づく段階分け)
CARS(CARS2)観察評価が中心(親面接ではない)
ADI-R保護者への構造化面接による診断ツール
ADOS-2半構造化観察による診断ツール(直接評価)
PARS-TR保護者への面接。こだわり・社会性を評価
PEP-3発達・行動プロフィールの評価(TEACCHで使用)
FOSCOMコミュニケーション機能の評価
CCC-2語用・コミュニケーションを評価

Conners3はADHDの評価ツール(ASDの評価には適切でない)。URAWSS II(書字速度など読み書きの実態把握。音読の流暢性ではない)は読み書きの検査であり、ASDの評価法として適切でない。CARSは親面接ではなく観察評価。

心の理論課題

課題内容通過年齢
サリー・アン課題一次の心の理論4歳頃
スマーティ課題一次の心の理論4歳頃
ストレンジストーリー二次の心の理論・冗談・皮肉の理解学齢期

LCスケールでは状況画の理解課題で心の理論が評価できる。

2-4 発達段階・発達評価のポイント

検査を選ぶときの原則

「実施すべき検査はどれか」「適切でない検査はどれか」「優先順位が低い検査はどれか」は毎年の頻出型。次の3点を順に当てはめると答えが決まる。

原則具体例
対象年齢に合っているか——適用範囲を外れた検査は標準値と比較できず解釈できない2歳6か月にPVT-R(3歳〜)は不可/4歳にコース立方体(学齢期〜)は不可/5歳にLCSA・SCTAW(学齢児〜)は不可/16歳にLCスケール(〜6歳)は不可
主訴に直結する側面をみる検査か——訴えられている困りごとを直接測る検査を優先する「読み書きができない」→RAN・音韻操作・読み検査/「ことばの遅れ」→言語発達(〈S-S法〉・ITPA)・全体発達(遠城寺式)・背景の聴力(遊戯聴力検査)
包括的な検査は初期の優先度が相対的に低い——全般をひととおり測る検査は、直接的な評価のあとでよいことばの遅れの評価でWPPSIなどの知能検査/聞き取りと復唱の誤りが主訴の児でKABC-II

「ことばの遅れ」の評価でWPPSI知能診断検査は適切でない——全般的知能を測る検査であり、ことばの遅れそのものを評価する検査ではない。同じ理由で、語の聞き誤り・復唱の誤りが主訴の学齢児ではKABC-IIの優先順位が低く、純音聴力検査・新版構音検査・PVT-R・STRAW-Rなど主訴に直結する検査が先になる。知能検査は「除外」や「認知特性の把握」のために後から使うと整理する。

ことばの遅れでは聞こえの確認を落とさない。遊戯聴力検査・ピープショウ検査など年齢に合った聴力評価を組み合わせる。低年齢で正式な検査が難しいときは、遊び場面のやりとりの観察養育者からの聞き取りで理解・表出・対人面を多面的にみる。

検査結果から「除外できる障害・できない障害」を読む

検査結果の図を示して「除外(否定)できる障害はどれか」と問う型が繰り返し出る。原則は正常域の成績が示された領域だけを除外できること。低下している領域・そもそも測っていない領域は除外できない。

示された所見除外できる除外できない
知能検査の全検査IQ・評価点が正常域知的障害
知能検査の言語性(言語理解)も正常域特異的言語発達障害(SLI)
習得度検査の算数が平均域算数障害
知能検査のみ実施発達性読み書き障害(読み書きを測っていない)/ASD・アスペルガー障害(社会性を測っていない)/ADHD(注意・行動を測っていない)
言語理解指標が境界域で低い特異的言語発達障害(言語面の問題が残る)

知能検査で言えるのは知能水準まで。読み書き・対人・注意の障害はそれぞれ別の検査を行わないと否定できない。「測っていないものは否定できない」と覚える。

初語のない2歳児の評価項目

適切な評価項目:指さし・社会的参照・見本合わせ・事物の機能的操作

「音韻意識」は初語のない2歳児の評価項目として適切でない(音韻意識は前言語期の課題ではなく幼児後期〜学齢期の課題)。

定型発達のマイルストーン(標準的な発達)

時期できるようになること
生後9〜10か月意図の伝達(指さし・視線で要求や共有を伝える前言語的コミュニケーション)が始まる。社会的参照(大人の表情を確かめる)も同時期=1歳前
2歳代二語文の時期(2歳前後で出現)。助詞の誤用がみられる
3歳代基本色(赤・青・黄・緑)がわかる長い・短いがわかる大きい・小さいがわかる同年齢の子どもと会話ができるままごとで役を演じる(役割のあるごっこ遊び)
4歳代サリー・アン課題(誤信念課題)が通過できる(心の理論の成立)
4〜5歳十字の模写ができる
5歳代音韻意識の発達によりしりとり遊びができる
5〜6歳左右の弁別(左右がわかる)ができる

1歳過ぎで意図の伝達が始まる」は誤り。意図の伝達・社会的参照・指さしは生後9〜10か月頃に出そろう(いわゆる「9か月革命」)。

左右の弁別は5〜6歳ころであり、3歳児の発達評価の項目ではない。3歳児の評価項目にあたるのは基本色の理解・長短の理解・同年齢児との会話・ままごとで役を演じることで、左右がわかるかどうかだけが年齢に対して早すぎる項目である。

3歳児で「発達の遅れ」を疑う所見

3歳でできないと遅れを疑う3歳でできなくても遅れではない
二語文が出ていない(二語文は2歳前後で出現)十字が書けない(十字の模写は4〜5歳ごろの課題)
大きい・小さいがわからない(大小の理解は3歳ごろまでに育つ)色の名前が言えない(色名の表出は理解よりやや後の発達)
ブランコで立ち乗りができない(立ち乗りはより年長で獲得される動作)

発達の遅れの判断は各項目のおおよその獲得時期を知っていなければできない。「3歳ですでに備わっているべき項目」と「まだ求められない項目」を分けて覚える。

所見を領域ごとの発達年齢に読み替える

症例の所見を並べて「評価として誤っているのはどれか」と問う型では、所見を領域ごとに発達年齢へ翻訳して、生活年齢と照合する。

領域所見読み替えの目安
言語理解2語連鎖の理解ができるおよそ2歳相応(2語文は2歳前後)
言語表出発語がない1歳未満相応(初語は1歳前後)
粗大運動スキップができる4〜5歳相応
描画(動作性)丸が描ける=3歳ごろ十字・四角の模写=4〜5歳ごろ4歳半で丸が描けなければ動作性は年齢相応ではない
コミュニケーション要求行動が少なく、自分でやってしまう伝達の発信が乏しく、コミュニケーションが良好とはいえない

積木でトンネルが作れる(構成はできる)ことと、丸が描けることは別。描画は年齢の目安がはっきりしているので、動作性の遅れを見抜く手がかりになる。また「大人しく手がかからない」=コミュニケーション良好ではない——要求・伝達行動の乏しさはコミュニケーション面の課題として読む。

反対語(対概念)の獲得順序

  • 早く獲得:大きい-小さい(最も早期)→ 多い-少ない高い-低いなど、量や空間として具体的に捉えやすい対
  • 遅れて獲得:広い-狭い、そして最も遅いのが厚い-薄い
  • 5歳児の反対語テストで最も正答数が低いのは「厚い-薄い」。概念が抽象的で、大きさ・量・高さに比べて獲得が遅いため

反対語は具体的・基本的なものほど早く、抽象度の高いものほど遅いという順序で獲得される。発達評価では課題の難易度配列として押さえる。

田中ビネー知能検査Vの開始手順

  • 生活年齢と等しい(相当する)年齢級から開始し、通過状況に応じて上下する
  • 基底年齢:すべて通過した最高の年齢級をもとに定める(=全問できた年齢級に1を加えた年齢)
  • ある年齢級の項目が全問不通過になったら中止
  • 1歳級で正答が得られない場合は発達チェックへ

重複障害児(知的障害+運動障害)の評価原則

  • 言語表出面より言語理解面を重視する。運動障害があると発話などの表出が制限されるため、表出量だけで判断すると内的な言語能力を過小評価してしまう
  • 身ぶりと音声の双方を評価する(表出手段を1つに限定しない)
  • 刺激に対して確実で再現性のある反応を重視する(偶発的な反応で判断しない)
  • 視覚障害・聴覚障害の有無と程度を評価する(感覚障害が反応を左右するため)
  • 家庭や集団での日常的なコミュニケーション行動を評価する(検査場面だけで判断しない)

言語理解面より言語表出面を重視する」は適切でない。運動障害があるほど表出は制限されるので、重視するのは理解面。表出は身ぶり・音声・機器など手段を広げて多面的にみる、と整理して覚える。

ここで把握した理解水準と確実な反応が、そのまま指導目標の出発点になる。指導段階での優先順位は第3章 3-8 各発達段階の指導ポイントを参照。

言語発達障害児の初期評価のまとめに必要な内容

必要なのは①障害の鑑別 ②情報の整理・統合 ③指導・支援目標の設定3点。「情報を整理・統合し → 障害を鑑別し → 指導・支援目標を立てる」という流れでまとめる。

「指導効果の測定」と「養育者への助言と支援」は初期評価のまとめには含まない。指導効果の測定は指導後の経過評価で得られるもの、養育者への助言と支援は評価後の支援を実施する段階にあたる。まとめの構成要素(鑑別・整理統合・目標設定)とは区別する。