第3章|日本語の音韻・音声

対応過去問 約16問/難易度 ★★★★☆

3-1 日本語の異音・音素

異音と音素の関係

  • 音素:語を区別する機能を持つ最小単位(意味弁別機能あり)
  • 異音:同じ音素が環境によって異なる音声として実現したもの
  • 異音どうしは相補分布する(同じ環境に現れない)
  • 音素は異音の中の代表形(「異音の中の一つ」という表現は不正確)

「異音の中の一つが音素である」は誤り(音素は抽象的な単位)。
「音素と別の音素は相補分布する」は誤り(相補分布するのは異音どうし)。

日本語「ゲ」の子音の異音

「ゲ」の子音として現れ得るもの:[ɡ]・[ŋ](鼻濁音)・[ɣ](摩擦音)・[G](口蓋垂鼻音)

「ゲ」に現れないもの:[ɳ](そり舌鼻音)。

/b/の異音

「あぶない」の/b/の異音として現れ得るもの:[β](両唇摩擦音)

  • 語中の/b/は[β]として実現することがある
  • [ɸ]は/h/の異音(ファ行)

/ɴ/(撥音)・/Q/(促音)の異音

撥音/ɴ/の異音として出現するもの:[m]・[n]・[ŋ]・[ɴ](後続子音の位置に同化)

撥音/ɴ/の異音として出現しないもの:[ɾ](弾き音は撥音の異音にならない)。
促音/Q/の異音として出現しないもの:[n](撥音の異音であって促音ではない)。

後続母音による条件異音

音素母音「イ」行前その他
/t/[tɕ](チ)・[ts](ツ)[t]
/d/[dʑ](ジ)・[dz](ズ)[d]
/n/[ɲ](ニ)[n]
/s/[ɕ](シ)[s]
/z/[dʑ]または[ʑ][z]または[dz]

日本語の音素対立

音韻論的に対立する組み合わせ:

  • [ka]と[kja]:/k/と/kj/は別音素
  • [sa]と[ɕa]:/s/と/ɕ/は別音素

[ta]と[tha]:帯気の有無は日本語では音素対立しない(同一音素の異音)。
[za]と[dza]:語頭/語中で条件異音の関係(対立しない)。
[ga]と[ŋa]:日本語では同一音素(対立しない)。

ミニマルペア(最小対)

ミニマルペア:1音素のみが異なり意味が変わる語の対

ペア判定
「浜」[hama]―「花」[hana]○ /m/と/n/の対立
「回収」―「改修」× 同音語(同じ音)
「台」[dai]―「貝」[kai]○ /d/と/k/の対立

日本語の代表的な音声表記

  • 「しらかば」:[ɕiɾakaba]
  • 「洗面器」:[semmeŋkji](/n/が[m]に同化、[ŋ]に同化)
  • 「さっぱり」:[sap:ari](促音は後続子音の閉鎖の延長)
  • 「落ち葉(おちば)」:「葉」の語頭[h]→[b]に変化(構音位置も構音様式も変化)