第1章|口蓋裂の構音障害

対応過去問 22問 / 難易度 ★★★☆☆

口蓋裂の基礎知識

口蓋裂の疫学・手術

  • 発症頻度:約500出生に1例(2,000に1例は誤り)
  • 口唇裂手術:生後3か月頃(1年ではない)
  • 口蓋裂手術(口蓋形成術):1歳前後が一般的
  • 目的:裂の閉鎖+鼻咽腔閉鎖機能の回復
  • 口蓋裂に滲出性中耳炎が合併しやすい(耳管機能障害による)
  • 咽頭弁手術は口蓋裂(鼻咽腔閉鎖不全)に行う二次手術(口唇裂ではない)

「口唇裂手術は生後1年」は誤り——生後3か月頃。「咽頭弁手術は口唇裂に行う」は誤り——鼻咽腔閉鎖不全(口蓋裂)に対する二次手術。

口蓋裂に伴う問題

口蓋裂に伴うもの:声門破裂音(代償構音)、咬合の異常、共鳴の異常(開鼻声)、耳管機能障害(滲出性中耳炎)

口蓋裂に伴わないもの:開口障害(顎関節の問題であり口蓋裂とは直接関係しない)

粘膜下口蓋裂:カルナンの3徴候

  1. 口蓋垂裂(二分口蓋垂)
  2. 硬口蓋後端の骨欠損
  3. 軟口蓋正中部の菲薄化

「高口蓋」「歯列矯正」はカルナンの3徴に含まれない。

口蓋裂の構音特徴

口蓋裂術後に多くみられる構音の誤り

  • 口蓋化構音(歯茎音が後方化)
  • 声門破裂音(口腔内圧が確保できず声門で代償)
  • 鼻咽腔構音
  • 省略

側音化構音は口蓋裂に特有ではない(機能性構音障害に多い)。

口蓋裂患者の特徴

みられるもの:声門破裂音の産出、歯茎破裂音の口蓋化、咽頭摩擦音の産出、鼻音化(開鼻声)

特徴でないもの:無声子音の有声化(声門破裂音・有声化とは異なる)

術後合併症

術後合併症:開鼻声、口腔鼻腔瘻、滲出性中耳炎、上顎発育抑制

術後合併症でないもの:下顎隆起(下顎の骨の隆起は口蓋裂手術と無関係)

口蓋裂の時期別対応

乳児期(術前)の対応

  • 哺乳・摂食指導が最優先
  • ホッツ(Hotz)床の装着(哺乳補助・上顎形態誘導)
  • ブローイング訓練・構音訓練はまだ行わない

「口唇口蓋裂の1歳6か月術後」には頬を膨らませる練習・ラッパを吹く練習が適切。哺乳指導・ホッツ床は術前の対応。

術後早期(1歳6か月・術後)の対応

行うもの:ラッパを吹く練習(口腔内圧)、頬を膨らませる練習(口腔内圧のトレーニング)

行わないもの:哺乳指導(術前)、ホッツ床(術前)、構音訓練(まだ早い)、バルブ型スピーチエイドの調整

顎裂部二次骨移植術後に直ちに改善されるもの

顎裂部の骨移植により:発話時口腔内圧(口腔鼻腔間の連絡が閉鎖されるため)

歯列・肺活量・咬合力・嚥下機能は直ちには改善しない。

鼻咽腔閉鎖機能不全

鼻咽腔閉鎖機能不全の症状

  • 開鼻声(過鼻声)
  • 鼻雑音
  • 鼻渋面(鼻をしかめる代償動作)
  • 声門破裂音・咽頭摩擦音(代償構音)
  • 鼻咽腔構音

「側音化構音」は鼻咽腔閉鎖機能不全とは関係しない——側音化構音は口腔内の異常な呼気流による機能性構音障害。

重度鼻咽腔閉鎖機能不全の徴候

  • 口腔内圧が必要な場面での困難:一息で長く話せない・吹奏楽器の演奏困難
  • 固形物の鼻からの逆流
  • 早口言葉が言えない

マ行音がバ行音になるのは鼻咽腔閉鎖機能不全ではなく、閉鼻声(鼻咽腔が過閉鎖)の所見。

鼻咽腔閉鎖機能不全の検査

鼻咽腔閉鎖機能検査:鼻息鏡検査、ナゾメーター(鼻音化率の測定)、鼻咽腔内視鏡検査、ブローイング検査

鼻咽腔閉鎖機能検査でないもの:エレクトロパラトグラフィ(EPG)——舌と口蓋の接触パターンを評価(側音化・口蓋化の評価)

開鼻声の聴覚評価(口蓋裂言語検査2007年)

開鼻声の評価に用いる発話:「ア」「エ」(ア列・エ列の母音)

鼻音([m][n][ng])を含まない母音だけの発話で鼻腔への共鳴を評価する。

鼻咽腔閉鎖機能不全への手術・装具

対応内容
咽頭弁形成術咽頭後壁と軟口蓋を縫い合わせ咽頭腔を狭める手術
軟口蓋挙上装置(PLP)軟口蓋を機械的に挙上——軟口蓋が短い場合に適応
バルブ型スピーチエイド咽頭後壁に膨らみを作り閉鎖を補助——重度の開鼻声・軟口蓋切除後に適応

「リー・シルバーマン法」は運動低下性構音障害(パーキンソン病)の訓練——鼻咽腔閉鎖不全の治療ではない。「口蓋閉鎖床」は口蓋瘻孔の閉鎖に用いる(鼻咽腔閉鎖不全とは別)。

唇顎口蓋裂術後の声門破裂音の訓練:観察項目

声門破裂音が残る場合に確認すべき口腔内の状態:

  • 鼻咽腔閉鎖(閉鎖不全が残存していないか)
  • 口腔鼻腔瘻(瘻孔が残存していないか)

鼻閉と構音

高度の両側鼻閉で最も障害される語:ナミダ(鼻音[n][m]を含む)

鼻閉では鼻腔への気流が遮断されるため、鼻音の産生が困難になり閉鼻声となる。