第5章|研究法とサンプリング

対応過去問 約11問/難易度 ★★★☆☆
なぜSTが学ぶのか:臨床研究や卒業研究で「どう対象を選び、どう比べるか」を扱う章です。標準化検査の基準値がどの母集団から作られたか、スクリーニング検査の感度・特異度をどう読むか、縦断/横断のどちらでことばの発達を捉えるかは、日々の評価とエビデンスの理解に直結します。

5-1 標本抽出(サンプリング)

調べたい対象全体を母集団、そこから取り出した一部を標本(サンプル)という。母集団全体を調べるのが全数調査(悉皆調査)、一部だけ調べるのが標本調査

無作為抽出(確率抽出)

母集団の全成員が等しい確率で選ばれる方法。標本誤差を統計的に評価でき、母集団への一般化ができる。

方法やり方
単純無作為抽出乱数などで母集団から直接ランダムに選ぶ
系統抽出(等間隔抽出)名簿から一定間隔で選ぶ(例:10人ごと)
層化抽出母集団を性・年齢などの層に分け、各層から抽出。層内が均質なとき精度が上がる
多段(クラスター)抽出地域→学校→クラスと段階的に集団単位で抽出

有意抽出(非確率抽出)

  • 便宜的抽出(集めやすい人を選ぶ)/割当抽出機縁法・スノーボール法(紹介で広げる)。
  • 標本誤差を統計的に評価できない(母集団への一般化に注意が必要)。
標本誤差:標本から母集団を推定するときの誤差。標本サイズ n が大きいほど小さくなる。標本平均のばらつき=標準誤差 SE = SD / √n

「無作為抽出では母集団の全員が選ばれる確率が等しい」→正しい。
「機縁法(スノーボール法)は無作為抽出である」→誤り(有意抽出)。
「標本を大きくすると標本誤差は大きくなる」→誤り(小さくなる)。

5-2 研究デザイン

時間の扱い方:縦断と横断

縦断研究横断研究
方法同一の対象を追跡し繰り返し測定異なる年齢群を同時に測定して比較
強み発達・加齢の変化を直接とらえる短期間・低コストで実施できる
弱み時間・費用がかかる/脱落が生じる世代(コホート)差が変化と混同されやすい

観察研究と介入研究

デザイン特徴主な指標
コホート研究要因のあり群/なし群を追跡し結果の発生を比べる(前向き)相対危険(リスク比)
症例対照研究結果のあり群/なし群で過去の曝露を遡って比べるオッズ比
無作為化比較試験(RCT)対象をランダムに介入群/対照群に割り付ける因果推論に最も強い

実験計画のポイント

  • 独立変数(操作する要因)と従属変数(測定する結果)、統制すべき剰余変数
  • 無作為割付で群間の偏りを減らす。盲検化(単盲検・二重盲検)プラセボ対照で期待・偏りを抑える。
  • ST臨床では単一事例実験計画(ABAデザインなど)で個別の効果を検討する。

「同一個人を継続的に追跡=縦断研究」「異なる年齢を一時点で比較=横断研究」を取り違えない。
「横断研究は加齢による変化を直接観察できる」→誤り(それは縦断研究)。
無作為化比較試験の目的は群間の条件をそろえて因果関係を検討すること。

5-3 観察法・面接法と検査特性

観察法・面接法

  • 観察法:自然観察法・実験観察法・参加観察法。記録法として時間見本法・場面見本法・事象見本法
  • 面接法:構造化面接(質問を固定)/半構造化/非構造化面接。

スクリーニング検査の特性(感度・特異度)

疾患あり疾患なし
検査陽性真陽性 (a)偽陽性 (b)
検査陰性偽陰性 (c)真陰性 (d)
  • 感度=疾患ありを正しく陽性とする割合=a /(a+c)
  • 特異度=疾患なしを正しく陰性とする割合=d /(b+d)
  • 陽性的中率=a/(a+b)、陰性的中率=d/(c+d)。
計算例(頻出):疾患なし900人のうち810人が正しく陰性なら、特異度 = 810 / 900 = 90%。同様に疾患あり100人中90人が陽性なら感度90%。分母が「疾患あり」なら感度、「疾患なし」なら特異度と見分ける。

「感度は検査で陰性の人のうち疾患なしの割合」→誤り(感度は疾患ありを陽性とする割合)。
「特異度の分母は疾患ありの人数」→誤り疾患なしの人数)。
感度と特異度は一般にトレードオフ(カットオフを緩めると感度↑・特異度↓)。