最も多いのはカプノメータで検出できないもの(答えは不整脈)と、麻酔法の分類(全身麻酔か局所麻酔か、分節麻酔ができるのはどれか)。同じ形の問題がくり返し出るので、表の対比で取りきる。麻酔器の構造と安全機構は臨床工学技士の保守点検の対象でもある。
全身麻酔に必要な要素は鎮静(意識の消失)・鎮痛・筋弛緩・有害反射の抑制の4つ。1種類の薬ではそろわないので、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬(鎮静)、オピオイド(鎮痛)、筋弛緩薬を組み合わせる(バランス麻酔)。消化管運動の抑制は要素ではなく、術後の腸管麻痺はむしろ副作用。
| 全身麻酔(意識が消える) | 局所麻酔・区域麻酔(意識は残る) |
|---|---|
| 吸入麻酔・静脈麻酔 | 表面麻酔・浸潤麻酔・伝達麻酔(神経ブロック)・脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔 |
吸入麻酔薬は肺から取り込ませる。セボフルラン(気道への刺激が少なく、マスクからの導入に向く)、デスフルラン(溶けにくく覚醒が速い)、亜酸化窒素(笑気。鎮痛作用はあるが単独では麻酔が浅い。体内の閉じた空間を膨らませるので気胸・腸閉塞では使わない)。血液に溶けにくい薬は、導入と覚醒が速い。
静脈麻酔薬は静注する。プロポフォール(覚醒が速く、静脈麻酔だけで行う全静脈麻酔(TIVA)の中心。血圧低下に注意)、ケタミン(鎮痛作用があり血圧は上がる)、ミダゾラム(ベンゾジアゼピン系。フルマゼニルで拮抗)、チオペンタール(バルビツール酸系)。
気管挿管は喉頭鏡で声門を見ながらチューブを入れる。ビデオ喉頭鏡はカメラで声門を映すので、口を大きく開けにくい人や首を動かせない人で使いやすい。声門上器具(ラリンジアルマスク、LMA)は声門の上にかぶせる器具で挿入は簡単だが、胃の内容物の誤嚥は防げない。挿管後のチューブの位置はカプノメータで確かめる(11-2)。
| 部分 | はたらき |
|---|---|
| ガス供給機構 | 中央配管やボンベから酸素・亜酸化窒素・空気を受け、流量計で流量を決める |
| 気化器 | 揮発性の吸入麻酔薬を決めた濃度で気化させる。薬ごとに専用 |
| 呼吸回路 | 吸気と呼気を一方向弁で循環させる(循環式) |
| CO2吸収装置 | 呼気のCO2を吸収剤(ソーダライム)で取り除く。消耗すると色が変わる |
| APL弁 | 用手換気のときに回路の圧を調節し、余ったガスを逃がす |
| 麻酔用人工呼吸器 | 手術中の機械換気を行う |
| 余剰麻酔ガス排除装置 | 余ったガスを室外へ出し、手術室の汚染を防ぐ |
医療ガスの識別:配管とボンベはガスの種類ごとに接続口の形を変えて誤接続を防ぐ。配管端末器(アウトレット)にはピン方式とシュレーダ方式(シュレーダー方式)の両方があり、どちらもガスごとにピンの位置やソケットの径が違う。小型ボンベはピンインデックス方式。配管の色は酸素が緑、亜酸化窒素が青、空気が黄。ボンベの色は配管と違い、酸素が黒、二酸化炭素が緑、亜酸化窒素はねずみ色(灰色)。
低酸素を防ぐ安全機構は2つあり、取り違えやすい。
| 装置 | 何をするか |
|---|---|
| 低酸素防止装置(低酸素混合ガス防止装置) | 酸素と亜酸化窒素の流量を連動させ、混合ガスの酸素濃度を約25%以上に保つ(亜酸化窒素だけを増やしても低酸素のガスにならない) |
| 亜酸化窒素遮断装置(フェイルセーフ機構) | 酸素の供給圧が下がると、亜酸化窒素の供給を自動的に止める |
ほかに酸素供給圧の低下を知らせる警報、酸素を直接大量に流す酸素フラッシュがある。保守管理として、使う前には毎回始業点検を行う。点検項目の代表例は、高圧系・低圧系のリークテスト、酸素フラッシュ・APL弁の動作、CO2吸収剤の変色(消耗)の確認など。
カプノメータは呼気中のCO2(呼気終末二酸化炭素分圧、EtCO2)を連続して測り、換気の有無をその場で示す。正常は35〜45 mmHg。
| EtCO2の変化 | 検出できる異常 |
|---|---|
| 波形が消失 | 呼吸回路の脱離・食道挿管・換気の停止・心停止 |
| 上昇 | 低換気・CO2の産生増加(悪性高熱症) |
| 低下 | 肺塞栓症・空気塞栓(肺の血流が減る) |
| 波形の形が変わる | 喘息発作(呼気が延びてシャークフィン型) |
不整脈は心電図モニタの担当で、カプノメータでは分からない。呼吸回路の脱離を最も早く知らせるのはカプノメータ。パルスオキシメータ(SpO2)は体内の酸素の予備があるぶん低下が遅れ、血圧・心電図・体温はさらに遅い。
ほかの麻酔中のモニタ:麻酔ガス濃度モニタ(吸気と呼気の麻酔薬濃度)、BIS(脳波から鎮静の深さを0〜100の数値で示す)、筋弛緩モニタ(尺骨神経を4回続けて刺激して母指の反応を見るTOF)。
悪性高熱症は骨格筋の遺伝的な異常(リアノジン受容体)で、麻酔薬をきっかけに筋の代謝が暴走する。誘因は揮発性吸入麻酔薬と脱分極性筋弛緩薬(スキサメトニウム)。
劇症型の死亡率は、ダントロレンの普及で大きく下がった。「90%に及ぶ」は誤り。なお「麻酔器の回路交換は不要である」の扱いは正答が割れた肢で、出題では2つの組合せがともに正答とされた。迷ったら確実な3つ(横紋筋融解症・ミオグロビン尿・脱分極性筋弛緩薬で誘発)を軸に選ぶ。
全身麻酔の術前に全員に行うスクリーニング検査は、血算・生化学・凝固・血液型(ABO)・尿・12誘導心電図・胸部X線・呼吸機能検査など。ホルター心電図や脳波は疑う病気があるときの追加の検査で、全員には行わない。
全身状態はASA分類(米国麻酔科学会の全身状態分類)で表す。クラス1が健康な人、数字が大きいほど重く、6は脳死の臓器提供者。緊急手術には「E」を付ける。
術後の痛みは、硬膜外麻酔のカテーテルからの持続投与、神経ブロック、PCA(患者自身がボタンで鎮痛薬を追加する患者自己調節鎮痛)で抑える。痛みを抑えると、深呼吸と早期離床ができ肺の合併症が減る。
| 方法 | やり方 | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| 表面麻酔 | 粘膜に塗る・噴霧する | 気管支鏡検査・胃内視鏡検査 |
| 浸潤麻酔(局所浸潤麻酔。出題基準の語形は局所浸透麻酔) | 手術する部位の組織に直接注射する | 皮膚の小切開・気管切開術 |
| 伝達麻酔(神経ブロック) | 神経の幹や叢の近くに注射して支配域を麻酔する | 三叉神経ブロック・腕神経叢ブロック |
| 脊髄くも膜下麻酔 | くも膜下腔に1回注入 | 下腹部・下肢の手術 |
| 硬膜外麻酔 | 硬膜外腔にカテーテルを置いて注入 | 胸部・腹部の手術、術後鎮痛 |
表面麻酔は粘膜の検査に使い、皮膚を切る気管切開や神経ブロックとは別。脱臼の整復は鎮静や神経ブロックで行う。
分節麻酔ができるのは硬膜外麻酔。針を刺す高さと薬の量で、胸部・腹部など必要な範囲(分節)だけを麻酔できる。カテーテルを残せば持続投与でき、術後鎮痛にも使える。吸入麻酔・静脈麻酔は全身麻酔、表面麻酔・浸潤麻酔は限られた場所だけで、どれも分節麻酔ではない。
脊髄くも膜下麻酔は作用が速く確実だが、範囲の調節は難しい。交感神経も遮断されるので血圧低下が起こりやすく、硬膜に穴が開くため硬膜穿刺後頭痛が起こることがある。
リドカイン・ブピバカイン・ロピバカインなど。量が多すぎたり血管内に入ったりすると、局所麻酔薬中毒(口のまわりのしびれ、けいれん、不整脈、心停止)を起こす。アドレナリンを加えると血管が縮んで吸収が遅れ、作用が長くなり中毒も起こりにくくなる。
手術開始前のタイムアウトでは、チーム全員が手を止めて声に出して確認する。確認するのは患者氏名・疾患名・手術部位(左右)・術式・同意・アレルギーなど。家族の病歴は本人の取り違えを防ぐための確認項目ではない。手術部位には事前にマーキングをする。
電気メスの電流はペースメーカに入ると誤作動(ペーシングの抑制など)を起こす。できるだけバイポーラを使い、対極板は電流がペースメーカ本体の近くを通らない位置に貼る。必要なら自己心拍に関係なく一定の間隔で刺激する非同期モード(固定レート・固定モード。VOO・DOO)に設定を変え、体外ペーシングと除細動器を準備する。
周術期は正常体温を保つのが原則。低体温はシバリング・不整脈・創感染を招くので、「ペースメーカ植込み術では室温を下げる」は誤り。ほかに、術中の体位による神経損傷(腕神経叢・尺骨神経・腓骨神経の圧迫)や褥瘡にも注意する。
ペインクリニックでは、慢性の痛みに神経ブロックを使う。顔面や上肢の痛み・血流障害には星状神経節ブロック、三叉神経痛には三叉神経ブロック、帯状疱疹の痛みには硬膜外ブロックなど。疼痛緩和を目的に神経ブロックを行うのは正しい。
緩和医療は、がんなど命を脅かす病気の患者と家族の苦痛(身体・精神・社会・スピリチュアル)を和らげる。がんの痛みには、痛みの強さに応じて非オピオイド鎮痛薬からオピオイド(モルヒネなど)へ進めるWHO方式がん疼痛治療を使う。