第12章|救急・集中治療

臨床医学総論 第12章
収録 24問(第31〜39回)トリアージタッグの優先順位・一次救命処置(BLS)とAED・二次救命処置・ショックの分類・アナフィラキシーとアドレナリン・FAST・熱傷・SOFAスコア・脳死判定基準・ICUのモニタリング・臓器機能代替療法

出題はくり返しが多く、SOFAスコアに含まれる項目(6問)と脳死判定基準(5問)の2つで半分近くを占める。どちらも「似ているが違うもの」(SIRSの項目、瞳孔の縮小や不同、脳波の徐波化)が誤答肢になるので、対比で覚える。トリアージの色の順も2回出ている。

12-1 救急医療体制とトリアージ・災害医療

1次・2次・3次救急と救命救急センター

区分対象担う施設の例
1次救急(初期)入院のいらない軽症休日夜間急患センター・在宅当番医
2次救急入院や手術が必要な中等症病院群輪番制の病院
3次救急命に関わる重篤な患者救命救急センター

救命救急センターは重篤な患者を24時間受け入れる3次救急の施設。広範囲熱傷・指肢切断・急性中毒など特殊な重症にも対応する施設は高度救命救急センターと呼ぶ。

トリアージ

トリアージは多数の傷病者がいるとき、限られた人手と資源で救える人を最も多くするために、治療の優先順位を決めること。結果はトリアージタッグ(トリアージ・タッグ)の色で示す。

色区分状態
赤Ⅰ(最優先治療)命の危険があるが、すぐ治療すれば救える
黄Ⅱ(待機的治療)すぐには命に関わらない中等症
緑Ⅲ(保留)歩ける軽症
黒0(死亡・救命困難)すでに死亡、または救命が難しい
優先順位は「赤>黄>緑>黒」

黒は最も重いが救命が難しいので、優先順位は最後。「最優先は黒」「黒>赤>…」は誤り。一次トリアージのSTART法は、歩けるか→呼吸→循環→意識の順に見る。

災害医療(DMAT)

DMAT(災害派遣医療チーム)は災害の急性期(おおむね48時間以内)に現場で活動できる、専門の訓練を受けた医療チーム。医師・看護師・業務調整員で構成し、現場でのトリアージや治療、広域搬送を担う。

12-2 救急処置(一次救命処置・二次救命処置・蘇生)

★ この節が正本:横断知識「救急処置(一次救命処置・二次救命処置)」。他のノートの同じ話題はここへ寄せてある(リサーチ書「横断知識の正本一覧」)

一次救命処置(BLS)

一次救命処置は特別な器具や薬を使わず、資格がなくても誰でも行える救命処置。柱は119番通報・胸骨圧迫・AEDの使用(と人工呼吸)。AEDは一般市民も使える(「一般市民はAEDを使用できない」「一次救命処置は有資格者が行う」は誤り)。

  1. 反応がなければ大声で応援を呼び、119番通報とAEDの手配を頼む。
  2. 普段どおりの呼吸がなければ心停止とみなす。あえぐような呼吸(死戦期呼吸)も心停止のサイン。
  3. すぐに胸骨圧迫を始める。強く(約5 cm)・速く(100〜120回/分)・絶え間なく。人工呼吸ができるなら30:2で組み合わせる。
  4. AEDが届いたら電源を入れ、心電図の解析と電気ショックの指示に従う。

脈が触れずあえぐような呼吸をしている人に直ちに準備するのはAED。心室細動や無脈性心室頻拍は電気ショックでしか止まらない。心エコー・人工呼吸器・ペースメーカは蘇生のあとの話。

二次救命処置(ALS)

二次救命処置は医療者が器具と薬を使って行う救命処置で、設備の整った施設や救急の現場で行う。気管挿管などの高度な気道確保、アドレナリンなどの薬の投与、静脈路の確保、モニタ下での除細動、心停止の原因の検索と治療が含まれる。アドレナリン投与と気管挿管は一次救命処置には含まれない。

心肺脳蘇生と新生児蘇生

心拍が戻ったあとも脳を守る管理が続く(心肺「脳」蘇生)。目標の体温を決めて保つ体温管理療法では、低体温管理装置(体表や血管内から冷やす装置)を使う。

新生児の心停止は多くが呼吸から始まるので、新生児蘇生法では人工呼吸(換気)を最優先する。小児は成人より酸素の予備が小さく、低酸素血症に陥りやすい(「陥りにくい」は誤り)。

12-3 ショックと外傷・熱傷

ショックの4分類

分類原因の例
循環血液量減少性出血・脱水・熱傷(血漿が漏れ出る)
心原性急性心筋梗塞・重い不整脈
血液分布異常性敗血症・アナフィラキシー・神経原性(迷走神経反射・脊髄損傷)
閉塞性肺塞栓症・心タンポナーデ・緊張性気胸

アナフィラキシーはⅠ型(即時型)アレルギー。Ⅳ型(遅延型)アレルギーはツベルクリン反応や接触皮膚炎の型で、ショックを起こさない。アナフィラキシーショックで血圧を上げる第一選択はアドレナリン(筋注)で、血管を締めて血圧を上げ、気管支も広げる。ステロイドと抗ヒスタミン薬は補助、アトロピンは徐脈の薬、リドカインは抗不整脈薬。

ショックの徴候

ショックの5P=皮膚の蒼白・虚脱(意識の低下)・冷汗・脈が触れない・呼吸不全。ほかに血圧低下・頻脈・乏尿(腎の血流が減る)・表在静脈の虚脱(循環血液量の減少)。呼吸は浅く速くなる(頻呼吸)。「過呼吸(深く大きい呼吸)」はショックの典型的な徴候ではない。

外傷(FAST)

FAST(迅速簡易超音波検査)は外傷の初期診療で、体の腔にたまった液体(ほとんどが出血)を短時間で探す検査。見る場所は心囊・モリソン窩(肝と右腎の間)・右胸腔・脾臓の周り・左胸腔・ダグラス窩で、確認するのは腹腔内出血・心囊の血液・胸腔の血液(血胸)。心囊・胸腔・腹腔の3つの腔を見ると覚える。頭蓋内の血腫は頭部CT、脱臼と骨折はX線で見る(気胸は胸まで見る拡張版のeFASTで扱う)。

熱傷

深度傷む層見た目と経過
Ⅰ度表皮赤くなる(発赤)だけ。瘢痕を残さず治る
浅達性Ⅱ度真皮の浅い層水疱ができ、痛む。瘢痕を残さず治ることが多い
深達性Ⅱ度真皮の深い層水疱。瘢痕が残る
Ⅲ度皮膚の全層白色や炭化、痛みがない。自然には治らず植皮で閉じる

水疱ができるのはⅡ度で、Ⅰ度ではない。Ⅲ度の壊死した組織はデブリードマンで取り除く。熱傷性ショックは血管から血漿が漏れ出て起こる循環血液量減少性ショックなので、早期の大量輸液が治療の柱。広さは9の法則(頭9%・片腕9%・体幹の前18%・後ろ18%・片脚18%・陰部1%)で見積もる。

12-4 重症度評価スコア(SOFAスコア)

SOFAスコアは6つの臓器の障害の程度を点数にし、ICUの重症患者や敗血症の評価に使う。敗血症は感染症によってSOFAスコアが2点以上急に上がった状態と定義される(Sepsis-3)。

臓器使う指標重症の向き
呼吸PaO2/FIO2(P/F比)低下
凝固血小板数減少
肝血清ビリルビン値上昇
循環平均血圧・昇圧薬の使用低下・昇圧薬が必要
中枢神経(脳)Glasgow Coma Scale(GCS)低下
腎血清クレアチニン値・尿量上昇・尿量の減少
SOFAに入らないもの=SIRSの項目など

体温・脈拍数・白血球数は全身性炎症反応症候群(SIRS)の項目で、SOFAには入らない。血清アルブミン値と運動機能も入らない。重症の向きは「ビリルビンの低下」「P/F比の上昇」「血小板数の増加」では逆になる。重症を示すのは昇圧薬の使用と1日尿量の減少の側。

ベッドサイドで使う簡易版のqSOFAは、意識の変容・呼吸数22回/分以上・収縮期血圧100 mmHg以下の3項目。ここでも脈拍数は使わない。意識の評価にはGCS(開眼・言語・運動の合計3〜15点)やJCS(Japan Coma Scale)を使う。

12-5 脳死判定

脳死は脳幹を含む脳全体の機能が二度と戻らない状態。法的脳死判定では次の5項目を確かめる。

判定基準に含まれる誤答肢として出る(含まれない)
深昏睡(JCS 300・GCS 3)
瞳孔の固定と両側の散大(4 mm以上)瞳孔縮小(縮瞳)・左右瞳孔不同
脳幹反射の消失(対光・角膜・咽頭・咳反射など)腱反射消失(脊髄反射は残ることがある)
平坦脳波(電気的に活動がない)脳波徐波化
自発呼吸の消失(無呼吸テスト)

腱反射は脊髄を通る反射なので、脳死でも残ることがあり、判定には使わない。判定するのは脳幹の反射。無呼吸テストは血中のCO2を上げて呼吸が出ないかを見る検査で、最後に行う。

この5項目を、6時間以上(6歳未満は24時間以上)あけて2回確かめる。判定は移植に関わらない医師2人以上で行う。前提として原因が確定し回復の見込みがないこと、低体温・薬物中毒・代謝の異常など似た状態をつくるものを除外することが必要。

12-6 集中治療施設と患者管理・搬送

集中治療施設の種類

略称対象
ICU重い病気・大きな手術のあとなど、全身の集中管理が必要な患者
HCUICUと一般病棟の中間(高度治療室)
CCU急性心筋梗塞など冠動脈・心臓の病気
RCU呼吸不全など呼吸器の病気
SCU脳卒中
NICU新生児(早産児・低出生体重児)。保育器で温度・湿度・酸素濃度を保つ

ICUに入る適応は、命に関わる臓器の障害があり、集中治療で回復が見込める病態。入室と退室の基準を決めて病床を運用する。ICUに常に置く機器は人工呼吸器・除細動器・心電図モニタ(ほかに輸液ポンプ・シリンジポンプ、血液浄化装置、医療ガスの中央配管、非常電源)。消化器内視鏡は内視鏡室、人工心肺装置は手術室の機器で、ICUの設置機器ではない。

患者モニタ

ICUで連続してモニタリングするのは心電図・血圧・SpO2・体温・尿量・呼吸(EtCO2)・中心静脈圧など、自動で続けて測れるもの。肺活量は患者が最大の努力で吸って吐く必要がある検査で、続けて測るモニタではない。

治療法(臓器機能代替療法)

臓器機能代替療法は働かなくなった臓器の役目を機械が肩代わりする治療で、臨床工学技士が操作する生命維持管理装置そのもの。

代替療法に使う(正しい)代替ではない(誤答肢)
人工呼吸器(肺)・血液浄化装置(腎。持続的血液濾過透析など)・体外式膜型人工肺(ECMO)(肺・心)・IABP・補助人工心臓スワンガンツカテーテル(肺動脈圧や心拍出量を測るモニタ)・人工知能(診療の支援)

患者搬送

重症患者を院内や病院間で運ぶときは、搬送用人工呼吸器・搬送用モニタ・シリンジポンプを使う。搬送の前にバッテリーの残量と酸素ボンベの残量を確かめる。救急車には除細動器・人工呼吸器・吸引器・酸素・心電図モニタなどを積む。救急救命士は医師の具体的指示のもとで特定行為(器具による気道確保・静脈路確保・アドレナリン投与など)を行える。