第13章|臨床生理学検査

臨床医学総論 第13章
収録 3問(第31〜39回)スパイロメトリ・肺気量分画・機能的残気量・1秒率・血液ガス・心電図・心エコー・脈波・脳波・誘発電位・筋電図・神経伝導速度・GFR

収録の3問はすべてスパイロメトリ(肺気量分画と1秒率)から出ている。まずここを確実にし、残りの検査は「何を測るか」「どんな異常で何が変わるか」を1行ずつ押さえる。どの検査も、計測装置の原理は生体計測の章で、病気との結び付きはこの章で問われる。

13-1 呼吸器系の検査

肺気量分画とスパイロメトリ

スパイロメトリ(スパイロメトリー・スパイログラフィ)は口元を出入りする空気の量を測る。だから吐ききっても肺に残る量は、残気量(RV)と呼び、これを含む量は測れない。

スパイロメトリで測れる測れない(残気量を含む)
1回換気量(TV)・予備吸気量(IRV)・予備呼気量(ERV)・最大吸気量(IC)・肺活量(VC)・1秒量(FEV1)・1秒率残気量(RV)・機能的残気量(FRC)・全肺気量(TLC)

関係は、機能的残気量は予備呼気量と残気量の和、全肺気量は肺活量と残気量の和。残気量を含む量は、ガス希釈法(ヘリウム)、窒素洗い出し法、ボディプレチスモグラフ(体プレチスモグラフ)で測る。

換気障害の判定とフローボリューム曲線

閉塞性は1秒率、拘束性は%肺活量

閉塞性換気障害は1秒率(FEV1%・FEV1.0%=1秒量÷努力肺活量)が70%未満。COPDや気管支喘息で、空気を吐き出しにくい。拘束性換気障害は%肺活量(予測値に対する割合)が80%未満。肺線維症・間質性肺炎で、肺が広がりにくい。両方を満たせば混合性。「%肺活量で閉塞性を判定」「1秒率80%未満」は誤り。

フローボリューム曲線は、思いきり吐くときの流量と肺気量の関係を描いたもの。閉塞性障害ではピークのあと流量が急に落ち、下に凸の形になる。

血液ガス分析

動脈血でpH・PaO2・PaCO2・HCO3−を測る。基準はおよそpH 7.35〜7.45、PaO2 80〜100 mmHg、PaCO2 35〜45 mmHg、HCO3− 22〜26 mEq/L。PaCO2は換気の量を、PaO2は酸素化を表す。

その他の呼吸機能の指標

  • 肺胞換気量=(1回換気量−死腔量)×呼吸数。死腔はガス交換に使われない気道の部分。
  • 換気血流比:換気と血流の釣り合い。ずれると酸素化が悪くなる。肺内シャントは血流があるのに換気がない部分。
  • コンプライアンス:肺の広がりやすさ(体積の変化÷圧の変化)。肺線維症で小さくなる。気道抵抗・呼吸抵抗は空気の通りにくさで、喘息やCOPDで大きくなる。気道抵抗はボディプレチスモグラフで測る。
  • 肺拡散能:一酸化炭素(CO)を吸わせて、肺胞から血液へのガスの移りやすさを見る。間質性肺炎で低下。
  • クロージングボリューム:吐いていくと末梢の気道が閉じ始める肺気量。早期の末梢気道病変で増える。
  • 呼気ガス分析:運動中の酸素摂取量や二酸化炭素排出量を測る(心肺運動負荷試験)。

13-2 循環器系の検査

心電図

P波は心房の興奮、QRS波は心室の興奮、T波は心室の興奮が元に戻る過程を表す。心筋梗塞の急性期はST上昇、労作性狭心症の発作中はST低下が目印になる。

種類目的
安静時心電図(12誘導)不整脈・心筋梗塞・肥大などの基本の検査
負荷心電図階段の昇降(マスター2階段)・トレッドミル・自転車エルゴメータで負荷をかけ、労作性狭心症のST低下を見る
ホルター心電図24時間ふだんの生活のまま記録。症状が時々しか出ない不整脈や、夜間・安静時の狭心症(異型狭心症のST上昇)をとらえる
モニタ心電図ICUや病棟で連続して監視し、不整脈を知らせる

ホルター心電図は疑う不整脈があるときの検査で、全身麻酔の術前に全員に行うものではない(術前に行うのは12誘導心電図)。

超音波検査

心臓超音波検査(心エコー)は、断層像で壁の動き・弁・心囊液を見て、ドプラ法で血流の速さと向き(逆流・狭窄)を測る。左室の駆出率(EF)で収縮する力を評価する。頸動脈超音波検査は、血管壁の内膜中膜複合体の厚さ(IMT)とプラークを見て、全身の動脈硬化の目安にする。静脈超音波検査は、下肢の深部静脈血栓症を探す(肺塞栓症の予防)。

脈波

脈波伝播速度(PWV)は動脈が硬いほど速くなる。足関節上腕血圧比(ABI)は足首と腕の血圧の比で、下肢の動脈が狭いと低くなる(0.9以下で末梢動脈疾患を疑う)。指先などの容積脈波は、パルスオキシメータの原理にも使われている。

13-3 脳・神経系と腎臓系の検査

脳波

頭皮に電極を置き(国際10-20法)、脳の電気活動を記録する。周波数でδ波(4 Hz未満)・θ波(4〜8 Hz未満)・α波(8〜13 Hz)・β波(13 Hzを超える)に分け、α波は安静にして目を閉じた成人で後頭部に出る。てんかんの診断(棘波)、意識障害の評価に使い、脳死判定では平坦脳波を確かめる(第12章)。

誘発電位

誘発電位は刺激に反応して出るごく小さな電位で、刺激をくり返して加算平均で取り出す。聴性脳幹反応(ABR。音の刺激で聴覚路と脳幹の働きを見る。新生児の聴力検査)、体性感覚誘発電位(SEP)、視覚誘発電位(VEP)、運動誘発電位(MEP。脊椎の手術中の監視)がある。

筋電図と神経伝導速度

筋電図は筋の電気活動を記録する。針を刺す針筋電図で、筋力低下の原因が神経の側(神経原性)か筋の側(筋原性)かを見分ける。表面電極の表面筋電図は運動の解析に使う。

神経伝導速度は神経の2点を刺激し、2点間の距離を反応が出るまでの時間の差で割って求める。脱髄では速度が遅くなり、軸索の障害では速度より反応の大きさ(振幅)が下がる。手根管症候群やギラン・バレー症候群、糖尿病性神経障害の評価に使う。

腎臓系の検査(GFR・腎血流量)

糸球体濾過量(GFR)は1分間に糸球体で濾過される血漿の量で、腎機能の中心の指標。正確に測るにはイヌリンクリアランス、日常ではクレアチニンクリアランスを使う。eGFRは血清クレアチニン値と年齢・性別から計算した推算値で、CKDの重症度分類(第8章)に使う。クリアランスは「尿中濃度×尿量÷血中濃度」で求める。

腎血流量は、腎臓をほぼ1回通るだけで尿へ出るパラアミノ馬尿酸(PAH)のクリアランスで腎血漿流量を求め、ヘマトクリットで補正して出す。