呼吸器の病気の章。出題の中心はCOPD、ARDS、CO2ナルコーシス、睡眠時無呼吸症候群の4つで、どれも人工呼吸器・NPPV・CPAP・ECMOといった臨床工学技士の装置につながる。病気ごとに「肺が硬いのか、気道が狭いのか」「CO2がたまるのか、減るのか」を押さえると、肢の多くは理屈で切れる。
かぜ症候群は上気道(鼻・のど)の炎症で、多くはウイルスによる。肺炎は、肺胞や間質に起こる炎症で、原因で細菌性肺炎(肺炎球菌など)、ウイルス肺炎(インフルエンザなど)、マイコプラズマ肺炎(若い人に多く、乾いた咳が長引く)に分ける。結核は空気感染し(結核菌以外の抗酸菌による非結核性抗酸菌症は人から人へうつらない)、肺化膿症は肺の中に膿がたまって空洞をつくる。
| 高齢者の細菌性肺炎で正しい | 誤り(若い人の典型像) |
|---|---|
| 症状がはっきりせず、意識の混濁や食欲低下で気づかれることが多い 予後が悪い 嚥下の反射が落ちるので、誤嚥性肺炎が多い | 高熱が出やすい 咳の症状が目立つ 食事量は変わらない |
肺癌は喫煙が最大の危険因子。ほかの臓器からの転移性肺腫瘍も多い。胸膜中皮腫はアスベスト(石綿)の吸入と関係が深い。縦隔(左右の肺にはさまれた部分)の腫瘍は場所で種類が決まる。
| 縦隔の区分 | 好発する腫瘍(代表例) |
|---|---|
| 上縦隔・前縦隔 | 胸腺腫・甲状腺腫(胸骨の後ろに伸びたもの)・奇形腫(胚細胞腫瘍)・リンパ腫 |
| 中縦隔 | 気管支嚢胞・心膜嚢胞・リンパ節の腫大 |
| 後縦隔 | 神経原性腫瘍(神経性腫瘍) |
「上部縦隔に好発する腫瘍」を問われた出題では、甲状腺腫・神経性腫瘍・リンパ腫・奇形腫が正答扱いとなり、気管支嚢胞だけが中縦隔の腫瘍として外れた。神経原性腫瘍は後縦隔の代表だが、上縦隔の後ろ寄り(背骨の近く)にもできるので「上部」に含めて扱われた。上縦隔は前後に分けない区分である点に注意する。
%肺活量(%VC)は肺の広がりやすさ(拘束)の指標、1秒率(FEV1.0%・FEV1/FVC)は気道の通りやすさ(閉塞)の指標。
| 型 | %VC | 1秒率 | 代表的な疾患 |
|---|---|---|---|
| 拘束性換気障害 | 80%未満 | 70%以上 | 間質性肺炎・肺線維症・サルコイドーシス・放射線肺炎・じん肺、胸郭や呼吸筋の病気 |
| 閉塞性換気障害 | 80%以上 | 70%未満 | COPD(肺気腫)・気管支喘息(発作時) |
| 混合性換気障害 | 80%未満 | 70%未満 | 進行した例 |
COPDは、主にたばこの煙で末梢の気道と肺胞が壊れ、元に戻らない気流の閉塞が起こる病気(肺気腫と慢性気管支炎)。確定診断はスパイロメトリーで、気管支拡張薬を吸った後の1秒率が70%未満であること。高分解能CTは肺気腫の広がりを見るのに役立つが、確定診断の検査ではない。
| COPDで正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 最大の危険因子は喫煙(加齢・アスベスト・アトピー素因ではない) 男性に多い 喫煙者の一部(15〜20%程度)に発症する 治療=禁煙・気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬)・呼吸リハビリテーション・インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチン・在宅酸素療法 | 喫煙者の80%以上に発症する 気道の閉塞は可逆的である(喘息との取り違え) |
肺が膨らみすぎる(過膨張)のが、COPDの画像の基本。
| COPDの胸部X線・CT所見(正しい) | 逆の所見(誤りの肢。心不全・肺うっ血などの所見) |
|---|---|
| 肺の過膨張・横隔膜の平低化・肋間腔の拡大・肺血管陰影の減少・肺野の透過性亢進・滴状心(心臓が細長く小さく見える)・胸骨後腔の拡大 | 心陰影の拡大・肺血管陰影の増強・胸骨後腔の縮小・縦隔陰影の拡大・肺門リンパ節の腫大(サルコイドーシスの所見) |
身体所見は樽状胸郭・口すぼめ呼吸。肺の弾性が失われて息が吐ききれないので、残気量が増え、拡散能は低下する。
| 気管支喘息 | COPD | |
|---|---|---|
| 気道の狭窄 | 可逆性(発作がおさまると元に戻る) | 不可逆性(元に戻りにくい) |
| 背景 | アトピー素因・好酸球による気道の炎症・気道過敏性の亢進 | 喫煙 |
| 換気障害 | どちらも閉塞性換気障害(拘束性ではない)。発作時はピークフローが低下する | |
治療:発作のときは短時間作用性β2刺激薬(SABA)を吸入する。長期管理の基本は吸入ステロイド薬(ICS)で、経口ステロイド薬ではない。診断と管理には呼気中一酸化窒素(NO)濃度(FeNO)が役立つ(「呼気中CO濃度」は誤り)。ダニ・ほこり・たばこなどの生活環境に注意する。
FeNO(呼気NO)=喘息。スパイロメトリー=COPDの確定診断。IGRA(インターフェロンγ遊離試験)=結核。
拘束性肺疾患は、肺そのものが硬くなるか、胸郭が広がりにくくなって肺活量が減る病気。代表は間質性肺炎・肺線維症(肺胞の壁が厚く硬くなる)とじん肺(粉じんの吸入)。間質が厚くなるので、酸素の拡散も悪くなる。放射線肺炎も間質に線維化を起こす拘束性の病気。
%VC<80%・1秒率≧70%(拘束性)の疾患を選ぶ問題では、放射線肺炎・サルコイドーシス・肺線維症が該当し、肺気腫と喘息発作は閉塞性なので外れる。
| 正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 原因不明の、全身に肉芽腫ができる病気(肺・リンパ節・眼・皮膚・心臓) 胸部X線では両側肺門リンパ節腫脹(BHL)が特徴 組織では乾酪壊死のない類上皮細胞肉芽腫(非乾酪性)がみられる(結核は乾酪壊死あり) 血清アンギオテンシン変換酵素(ACE)は上昇する 血清・尿中のカルシウムが上昇することがある 多くは自然に軽快する | 高カリウム血症が多い 血清ACEが低下する 自然治癒はまれ |
その他の呼吸器疾患として、過敏性肺臓炎(カビや鳥の羽毛などの吸入によるアレルギー)、気管支拡張症(気管支が広がったまま戻らず、痰が多い)、胸膜炎(胸水がたまる)も押さえておく。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 呼吸不全 | 室内気を吸っているときにPaO2が60 Torr(mmHg)以下 |
| Ⅰ型呼吸不全 | PaCO2が45 Torr以下(CO2はたまらない。酸素化の障害) |
| Ⅱ型呼吸不全 | PaCO2が45 Torrを超える(換気が足りずCO2がたまる) |
| 慢性呼吸不全 | 呼吸不全の状態が1か月以上続くもの |
ARDSは、肺炎・敗血症・重症外傷・重症熱傷・誤嚥などをきっかけに、肺の微小血管の透過性が高まって起こる非心原性の肺水腫。新生児の新生児呼吸促迫症候群(肺サーファクタントの不足)とは別の病気。
| ARDSで正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 肺微小血管の透過性が亢進する 肺は硬くなり、肺コンプライアンスは低下する 病態=拡散障害・換気血流比不均等・シャント率の増加(気道抵抗も上がる) 重症熱傷は原因疾患の一つ | 肺コンプライアンスが増加する 心原性肺水腫が原因となる 基本病態は肺の線維化である PaO2/FIO2が300 mmHgより大きい 発症時期は重症度分類に含まれない |
診断(ベルリン定義):①発症から1週間以内、②胸部画像で両側の陰影、③心不全や輸液過剰で説明できない、④P/F比(PaO2/FIO2)≦300(PEEP 5 cmH2O以上で)。診断に要るのはPaO2・FIO2・胸部X線画像で、PaCO2や中心静脈圧は要らない。重症度はP/F比で分ける(軽症 200〜300、中等症 100〜200、重症 100以下)。ベルリン定義は、発症時期・胸部画像・原因・P/F比を1つの表(重症度分類の表)にまとめたもので、発症1週間以内は、軽症・中等症・重症のどれにも共通の必須項目として表に入っている。重症度の段階を分ける物差しはP/F比だが、「発症時期は重症度分類に含まれない」は、誤りの肢。
治療:肺を傷めない換気(肺保護換気)では、一回換気量を低く(約6 mL/kg)、プラトー圧を30 cmH2O以下にし、適切なPEEPをかける。人工呼吸で肺がさらに傷つく人工呼吸器関連肺傷害(VALI)に注意する。腹臥位療法、重症ではECMOも使う。
基準値 pH 7.40・PaCO2 40 Torr・HCO3⁻ 24 mEq/L(第1章参照)。
例題:pH 7.69・PaCO2 28 Torr・HCO3⁻ 33 mEq/L → pHは強いアルカレミア。PaCO2の低下はアルカローシス側、HCO3⁻の上昇もアルカローシス側。両方がアルカローシスの向きに働いているので、呼吸性アルカローシスと代謝性アルカローシスの混合障害。
CO2ナルコーシスは、慢性のⅡ型呼吸不全(COPDなど)の人に高濃度の酸素を与えたときなどに、呼吸が抑えられてCO2がたまり、意識障害を起こした状態。三つの柱は高CO2血症・呼吸性アシドーシス・意識障害(CO2の麻酔作用)。自発呼吸は弱くなる。
| 治療で正しい | 誤り |
|---|---|
| 酸素は低流量から始め、SpO2 88〜92%(90%前後)を目標にする NPPVで換気を補助してCO2を出す 改善しなければ気管挿管して人工呼吸管理 | ペーパーバッグを口に当てる(CO2をさらにためる) 高濃度酸素から始める アシドーシスをできるだけ早く補正する(換気でCO2を出すのが先) 呼吸性アルカローシスを呈する |
慢性呼吸不全の原因にはほかに、原発性肺胞低換気症候群、肥満低換気症候群、呼吸筋麻痺(ALS・筋ジストロフィーなど)がある。どれも換気が足りないⅡ型で、NPPVなどで換気を補う。
| 病型 | しくみ | 呼吸努力 | 主な治療 |
|---|---|---|---|
| 閉塞型(OSAS) | 睡眠中に上気道(のど)がつぶれて気流が止まる。肥満・扁桃肥大・小さい顎 | あり(胸や腹は動く) | CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)・マウスピース(口腔内装置)・減量・外科手術 |
| 中枢型 | 呼吸中枢の指令が止まり、呼吸の動きそのものが止まる(心不全などに伴う) | なし | 原因の病気の治療・ASV(適応補助換気) |
診断は終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で行い、脳波・気流・胸腹部の動き・SpO2を一晩記録する。重症度はAHI(無呼吸低呼吸指数)=1時間あたりの無呼吸(10秒以上の気流停止)と低呼吸の回数で、5以上で診断、5〜15軽症・15〜30中等症・30以上重症。
| SASで正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 中等症以上の閉塞型では、CPAPが第一選択(NPPVも治療法に含めて正答とされた) 軽症〜中等症では、マウスピース(口腔内装置)も使う 扁桃肥大がある場合は外科手術を考える 低酸素が続くので、多血症・高血圧・肺高血圧・心血管病が増える | PSGでは酸素飽和度を測らない AHI 3回以上で診断/20回で重症 閉塞型の原因は呼吸中枢の障害 マウスピースは中枢型に使う 重症ではまずマウスピース 扁桃肥大があっても手術での改善は期待できない 貧血の原因になる(逆に多血症) TPPV・在宅酸素療法・HFNCが標準治療 |
急性肺血栓塞栓症は、下肢などの深部静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)がはがれて、肺動脈に詰まる病気。動脈の血栓ではない。長期臥床・手術後・長時間の座位(エコノミークラス症候群)・肥満・妊娠などで起こりやすく、わが国では女性に多い。
| 正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| D-ダイマーが陽性(上昇)になる(血栓が溶けてできる物質) 低酸素で過換気になり、PaCO2は下がって呼吸性アルカローシスになる 突然の呼吸困難・胸痛・頻脈・SpO2低下 確定診断は造影CT。肺血流シンチグラムで血流の欠損を見る | 呼吸性アシドーシスを呈する 肺換気シンチグラムで血栓を証明できる(換気は保たれ、欠けるのは血流) 下肢の動脈血栓がはがれて起こる |
肺循環疾患にはほかに、左心不全による心原性肺水腫と肺高血圧症がある。予防は早期離床・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法・抗凝固薬(第2章)。
自然気胸は、やせ型で背の高い若い男性に多く、肺の表面のブラ(肺嚢胞)が破れて起こる。胸部CTではブラが確認される。聴診では患側(気胸の側)の呼吸音が弱くなる(健側ではない)。陽圧換気中にも気胸は起こる(圧外傷)。緊張性気胸は、胸腔の圧が上がって縦隔が健側に押され、静脈還流が減ってショックになるので、直ちに脱気(胸腔ドレナージ)する。自然軽快を待ってはいけない。
術後無気肺の徴候は、低酸素血症・呼吸困難・頻呼吸・頻脈・発熱(高体温)。徐脈や低体温は無気肺の徴候ではない(第2章も参照)。
| 過換気症候群でみられる | みられない(逆) |
|---|---|
| PaCO2の低下(呼吸性アルカローシス・アルカレミア) アルカローシスでイオン化カルシウムが減り、手足や口の周りのしびれ・テタニーが起こる めまい・意識障害(重い例) | 高カルシウム血症 SpO2の低下(酸素化は保たれる) アシデミア |
過換気症候群の対応は、落ち着かせてゆっくり呼吸させるのが基本。ペーパーバッグ法は低酸素の危険があり、いまは勧められない。胸部外傷では、肋骨骨折・フレイルチェスト(多数の肋骨骨折で胸壁が呼吸と逆に動く)・血胸・気胸・心タンポナーデに注意する(第2章)。気管・気管支異物や窒息は第1章の誤嚥を参照。気道異物は、左より太く傾きが急な右主気管支に入りやすい。窒息では背部叩打法や腹部突き上げ法(ハイムリック法)で異物を出す。