第5章|内分泌・代謝系

臨床医学総論 第5章
収録 21問(第31〜39回)下垂体・甲状腺・副甲状腺の病気・副腎の病気と血圧(二次性高血圧・二次性低血圧)・ホルモンのフィードバック・糖尿病の急性合併症と低血糖・アニオンギャップ・肥満とメタボリックシンドローム・ビタミン欠乏症

ホルモンと代謝の病気の章。出題の中心は副腎の病気と血圧(二次性高血圧・二次性低血圧で6問)と糖尿病の急性合併症・低血糖。どちらも「ホルモンが多すぎるのか、足りないのか」で症状が正反対になるので、亢進と低下を対にして覚えると肢が切れる。

5-1 下垂体・甲状腺・副甲状腺の病気

下垂体の病気

部位ホルモン多すぎる足りない
前葉成長ホルモン(GH)末端肥大症(大人)・巨人症(骨端線が閉じる前)小人症(下垂体性低身長)
前葉ACTH・TSH・LH/FSH・プロラクチンACTH過剰=クッシング病下垂体機能低下症
後葉抗利尿ホルモン(ADH・バソプレシン)SIADH(低ナトリウム血症)尿崩症(薄い尿が大量に出る)

下垂体ホルモンの異常で起こるのは、尿崩症・末端肥大症・小人症。橋本病は甲状腺そのものの病気、骨軟化症はビタミンD不足の病気で、下垂体とは関係しない。

甲状腺の病気

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)甲状腺機能低下症(橋本病など)
甲状腺ホルモン上昇低下
TSHフィードバックで低下する上昇する(甲状腺が原因のとき)
体食欲は増すのに体重は減る・頻脈・発汗・手指振戦・眼球突出体重増加・徐脈・寒がり・むくみ
重い状態甲状腺クリーゼ粘液水腫性昏睡

バセドウ病で低下するのは、体重とTSH(食欲・脈拍数・甲状腺ホルモンは上がる)。バセドウ病は甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)でホルモンが作られすぎる病気。

甲状腺クリーゼでみられるみられない(低下症の極型=粘液水腫性昏睡の所見)
高体温・頻脈(心房細動)・多汗・呼吸困難・心不全・低血圧(ショック)・意識障害低体温は、甲状腺機能低下の極型でみられる
徐脈・低換気

副甲状腺の病気

副甲状腺ホルモン(PTH)は、血中カルシウムを上げ、リンを下げる。

副甲状腺機能亢進症副甲状腺機能低下症
血中Ca・P高Ca・低P低Ca・高リン血症
症状尿路結石・多飲多尿・胃十二指腸潰瘍・骨の病変低カルシウムで神経と筋肉が興奮しやすくなり、テタニー(手足のけいれん)・しびれ

尿路結石・多飲多尿・消化性潰瘍は、亢進症(高カルシウム)の合併症で、低下症の合併症ではない。

5-2 副腎の病気と血圧

疾患ホルモン血圧主な所見
原発性アルドステロン症アルドステロン過剰(副腎皮質)高血圧低カリウム血症
クッシング症候群コルチゾール過剰(副腎皮質)高血圧中心性肥満・満月様顔貌・高血糖・骨粗鬆症
褐色細胞腫カテコラミン過剰(副腎髄質)高血圧(発作性)頭痛・発汗・高血糖・代謝亢進
アジソン病(副腎不全)副腎皮質ホルモン不足低血圧色素沈着・低ナトリウム・体重減少

二次性高血圧と二次性低血圧

二次性高血圧の原因になる二次性低血圧の原因になる
原発性アルドステロン症・クッシング症候群・褐色細胞腫・甲状腺機能亢進症
腎性:腎動脈狭窄(腎血管性)・糸球体腎炎(腎実質性)
睡眠時無呼吸症候群・薬剤
脱水・出血(循環血液量の減少)
心不全・心タンポナーデ(心拍出量の低下)
アジソン病(副腎不全)
甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症
左右を取り違えさせる肢

副腎不全(アジソン病)は、二次性高血圧の原因にならない(低血圧側)。原発性アルドステロン症と褐色細胞腫は、低血圧の原因にならない(高血圧側)。Ebstein奇形は三尖弁の生まれつきの異常で、高血圧の原因ではない。甲状腺は、機能亢進症が高血圧側、機能低下症が低血圧側の肢として出ている(機能低下症は拡張期高血圧を起こすこともあるが、二次性高血圧の原因を選ぶ問題では正答に入らず、二次性低血圧の原因として扱われている)。

褐色細胞腫でみられるのは、高血圧・頻脈・高血糖・発汗・体重減少。徐脈・血圧低下・体重増加は逆向きの肢。診断は血中・尿中のカテコラミンとメタネフリンの上昇。

ホルモンのフィードバック(クッシング症候群)

コルチゾールは、視床下部のCRH→下垂体のACTH→副腎のコルチゾールの順に分泌が指令される。血中のコルチゾールが多いと、上にあるCRHとACTHの分泌は抑えられる(負のフィードバック)。

原因CRHACTHコルチゾール
副腎の腫瘍(副腎性クッシング症候群)減少減少増加
下垂体の腫瘍(クッシング病)減少増加増加

副腎の腫瘍が勝手にコルチゾールを出すので、上の2つはどちらも減る。

5-3 糖尿病と急性合併症(ケトアシドーシス・高浸透圧・低血糖)

1型糖尿病は膵臓のβ細胞が壊れてインスリンがほとんど出なくなるもので、若い人に多い。2型糖尿病はインスリンの出が悪いことと効きにくさ(インスリン抵抗性)によるもので、生活習慣と関係が深く、糖尿病の大部分を占める。診断の目安は空腹時血糖126 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上など。

慢性合併症と急性合併症

血管の合併症(慢性)血管の合併症でないもの
細い血管:神経障害(神経症)・網膜症・腎症(三大合併症「しめじ」)
太い血管:心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンが急に足りなくなって起こる急性合併症

糖尿病性腎症は透析を始める原因の第1位。

ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖状態

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)高浸透圧高血糖状態(高浸透圧性昏睡)
起こりやすい人若い人・1型高齢者・2型
しくみインスリンがほぼ無く、脂肪が分解されてケトン体がたまり、代謝性アシドーシスになる血糖が非常に高くなり、高い浸透圧と強い脱水が起こる(ケトン体は少ない)
症状クスマール呼吸(深く大きい呼吸)・アセトン臭・腹痛・嘔吐・脱水・意識障害口渇・脱水・振戦・痙攣など神経症状・意識障害

高浸透圧性昏睡の症状を問われたら、アセトン臭とクスマール呼吸はケトアシドーシス側なので外れる。DKAの症状を問われたら、顔面蒼白・動悸・発汗は低血糖の症状なので外れる。

代謝性アシドーシスとアニオンギャップ

アニオンギャップ(AG)=Na⁺−(Cl⁻+HCO3⁻)で、基準はおよそ12 mEq/L。測っていない酸がたまるとAGが増える。

AGが増加する代謝性アシドーシスAGが増加しない(高クロール性)代謝性アシドーシス
糖尿病性ケトアシドーシス・飢餓によるケトアシドーシス・乳酸アシドーシス・腎不全・メタノールなどの中毒HCO3⁻を失う病態:下痢・尿細管性アシドーシス(近位型・遠位型)

低血糖

低血糖は、糖尿病の治療薬(インスリン・スルホニル尿素薬など)の副作用で起こることが多い。血糖が下がると、まず交感神経が働き、さらに下がると脳がエネルギー不足になる。

低血糖の症状(正しい)誤りとして出るもの
交感神経の症状:動悸(頻脈)・手指振戦・発汗・顔面蒼白・不安
脳の症状:意識障害・けいれん・昏睡
徐脈(実際は頻脈)
顔面紅潮(実際は蒼白)
下痢・多尿(多尿・口渇は高血糖の症状)

治療はブドウ糖。意識があれば口からブドウ糖(10〜20 g)、意識がなければブドウ糖の静脈注射かグルカゴン(点鼻薬が使える)。α-グルコシダーゼ阻害薬内服中の低血糖は、ブドウ糖で治療する(ショ糖は不可)。この薬はショ糖(砂糖)の分解・吸収を遅らせるので、ショ糖では血糖が上がりにくい。

5-4 肥満・メタボリックシンドローム・脂質異常症・痛風

体重が増える(肥満の原因)体重が減る
クッシング症候群(中心性肥満)
インスリノーマ(インスリンが出すぎて低血糖になり、食べすぎる)
甲状腺機能低下症
甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫(代謝が上がる)
アジソン病
コントロールの悪い糖尿病

メタボリックシンドローム

内臓脂肪の蓄積が必須の項目で、腹囲(へその高さ)が男性85 cm以上・女性90 cm以上。これに次の3つのうち2つ以上が加わると診断する。

診断基準の項目基準に含まれない(よく出る誤りの肢)
内臓脂肪蓄積(必須)
①脂質異常:中性脂肪150 mg/dL以上 または HDLコレステロール40 mg/dL未満
②血圧高値:130/85 mmHg以上
③空腹時高血糖:110 mg/dL以上
高尿酸血症(血清尿酸高値)は基準に入らない(合併しやすいが別)
皮下脂肪の蓄積は基準に入らない(内臓脂肪だけ)
LDLコレステロール・喫煙

脂質異常症のうち家族性高コレステロール血症は、LDL受容体の遺伝子異常で生まれつきLDLコレステロールが高く、若いうちから冠動脈疾患を起こす。重い例ではLDLアフェレシス(血液浄化)を行う。痛風は高尿酸血症で尿酸の結晶が関節にたまり、足の親指の付け根などが急に激しく痛む。

5-5 骨代謝・ビタミン・先天性代謝異常

骨粗鬆症は骨の量が減ってもろくなる病気で、閉経後の女性・高齢者・ステロイドの長期使用で多い。くる病(子ども)と骨軟化症(大人)は、骨にカルシウムが沈着しない病気で、ビタミンD不足が原因になる。

ビタミンと欠乏症

ビタミン欠乏症
A(脂溶性)夜盲症・眼球乾燥
B1(水溶性)脚気・ウェルニッケ脳症
B2(水溶性)口内炎・口角炎
B12・葉酸(水溶性)巨赤芽球性貧血(B12では悪性貧血)
C(水溶性)壊血病
D(脂溶性)くる病・骨軟化症
K(脂溶性)出血傾向(凝固因子が作れない。新生児メレナ)
組合せ問題は「ずらし」で作られる

誤りの肢は、隣のビタミンの欠乏症を入れ替えて作られる:B1に口内炎(正しくはB2)、B1に出血傾向(正しくはK)、Kに脚気(正しくはB1)、B12にウェルニッケ脳症(正しくはB1)、Aに悪性貧血(正しくはB12)。

ビタミン過剰症は、体にたまりやすい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)で起こる(Dの過剰で高カルシウム血症など)。水溶性ビタミンは多すぎても尿に出る。

先天性代謝異常症は、生まれつき酵素が欠けて物質がたまる病気。アミノ酸代謝異常症(フェニルケトン尿症など)、脂質代謝異常症(ゴーシェ病など)、その他(糖原病など)があり、多くは新生児マススクリーニングで見つける。