ホルモンと代謝の病気の章。出題の中心は副腎の病気と血圧(二次性高血圧・二次性低血圧で6問)と糖尿病の急性合併症・低血糖。どちらも「ホルモンが多すぎるのか、足りないのか」で症状が正反対になるので、亢進と低下を対にして覚えると肢が切れる。
| 部位 | ホルモン | 多すぎる | 足りない |
|---|---|---|---|
| 前葉 | 成長ホルモン(GH) | 末端肥大症(大人)・巨人症(骨端線が閉じる前) | 小人症(下垂体性低身長) |
| 前葉 | ACTH・TSH・LH/FSH・プロラクチン | ACTH過剰=クッシング病 | 下垂体機能低下症 |
| 後葉 | 抗利尿ホルモン(ADH・バソプレシン) | SIADH(低ナトリウム血症) | 尿崩症(薄い尿が大量に出る) |
下垂体ホルモンの異常で起こるのは、尿崩症・末端肥大症・小人症。橋本病は甲状腺そのものの病気、骨軟化症はビタミンD不足の病気で、下垂体とは関係しない。
| 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) | 甲状腺機能低下症(橋本病など) | |
|---|---|---|
| 甲状腺ホルモン | 上昇 | 低下 |
| TSH | フィードバックで低下する | 上昇する(甲状腺が原因のとき) |
| 体 | 食欲は増すのに体重は減る・頻脈・発汗・手指振戦・眼球突出 | 体重増加・徐脈・寒がり・むくみ |
| 重い状態 | 甲状腺クリーゼ | 粘液水腫性昏睡 |
バセドウ病で低下するのは、体重とTSH(食欲・脈拍数・甲状腺ホルモンは上がる)。バセドウ病は甲状腺を刺激する自己抗体(TRAb)でホルモンが作られすぎる病気。
| 甲状腺クリーゼでみられる | みられない(低下症の極型=粘液水腫性昏睡の所見) |
|---|---|
| 高体温・頻脈(心房細動)・多汗・呼吸困難・心不全・低血圧(ショック)・意識障害 | 低体温は、甲状腺機能低下の極型でみられる 徐脈・低換気 |
副甲状腺ホルモン(PTH)は、血中カルシウムを上げ、リンを下げる。
| 副甲状腺機能亢進症 | 副甲状腺機能低下症 | |
|---|---|---|
| 血中Ca・P | 高Ca・低P | 低Ca・高リン血症 |
| 症状 | 尿路結石・多飲多尿・胃十二指腸潰瘍・骨の病変 | 低カルシウムで神経と筋肉が興奮しやすくなり、テタニー(手足のけいれん)・しびれ |
尿路結石・多飲多尿・消化性潰瘍は、亢進症(高カルシウム)の合併症で、低下症の合併症ではない。
| 疾患 | ホルモン | 血圧 | 主な所見 |
|---|---|---|---|
| 原発性アルドステロン症 | アルドステロン過剰(副腎皮質) | 高血圧 | 低カリウム血症 |
| クッシング症候群 | コルチゾール過剰(副腎皮質) | 高血圧 | 中心性肥満・満月様顔貌・高血糖・骨粗鬆症 |
| 褐色細胞腫 | カテコラミン過剰(副腎髄質) | 高血圧(発作性) | 頭痛・発汗・高血糖・代謝亢進 |
| アジソン病(副腎不全) | 副腎皮質ホルモン不足 | 低血圧 | 色素沈着・低ナトリウム・体重減少 |
| 二次性高血圧の原因になる | 二次性低血圧の原因になる |
|---|---|
| 原発性アルドステロン症・クッシング症候群・褐色細胞腫・甲状腺機能亢進症 腎性:腎動脈狭窄(腎血管性)・糸球体腎炎(腎実質性) 睡眠時無呼吸症候群・薬剤 | 脱水・出血(循環血液量の減少) 心不全・心タンポナーデ(心拍出量の低下) アジソン病(副腎不全) 甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症 |
副腎不全(アジソン病)は、二次性高血圧の原因にならない(低血圧側)。原発性アルドステロン症と褐色細胞腫は、低血圧の原因にならない(高血圧側)。Ebstein奇形は三尖弁の生まれつきの異常で、高血圧の原因ではない。甲状腺は、機能亢進症が高血圧側、機能低下症が低血圧側の肢として出ている(機能低下症は拡張期高血圧を起こすこともあるが、二次性高血圧の原因を選ぶ問題では正答に入らず、二次性低血圧の原因として扱われている)。
褐色細胞腫でみられるのは、高血圧・頻脈・高血糖・発汗・体重減少。徐脈・血圧低下・体重増加は逆向きの肢。診断は血中・尿中のカテコラミンとメタネフリンの上昇。
コルチゾールは、視床下部のCRH→下垂体のACTH→副腎のコルチゾールの順に分泌が指令される。血中のコルチゾールが多いと、上にあるCRHとACTHの分泌は抑えられる(負のフィードバック)。
| 原因 | CRH | ACTH | コルチゾール |
|---|---|---|---|
| 副腎の腫瘍(副腎性クッシング症候群) | 減少 | 減少 | 増加 |
| 下垂体の腫瘍(クッシング病) | 減少 | 増加 | 増加 |
副腎の腫瘍が勝手にコルチゾールを出すので、上の2つはどちらも減る。
1型糖尿病は膵臓のβ細胞が壊れてインスリンがほとんど出なくなるもので、若い人に多い。2型糖尿病はインスリンの出が悪いことと効きにくさ(インスリン抵抗性)によるもので、生活習慣と関係が深く、糖尿病の大部分を占める。診断の目安は空腹時血糖126 mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上など。
| 血管の合併症(慢性) | 血管の合併症でないもの |
|---|---|
| 細い血管:神経障害(神経症)・網膜症・腎症(三大合併症「しめじ」) 太い血管:心筋梗塞・脳梗塞・閉塞性動脈硬化症 | 糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンが急に足りなくなって起こる急性合併症 |
糖尿病性腎症は透析を始める原因の第1位。
| 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) | 高浸透圧高血糖状態(高浸透圧性昏睡) | |
|---|---|---|
| 起こりやすい人 | 若い人・1型 | 高齢者・2型 |
| しくみ | インスリンがほぼ無く、脂肪が分解されてケトン体がたまり、代謝性アシドーシスになる | 血糖が非常に高くなり、高い浸透圧と強い脱水が起こる(ケトン体は少ない) |
| 症状 | クスマール呼吸(深く大きい呼吸)・アセトン臭・腹痛・嘔吐・脱水・意識障害 | 口渇・脱水・振戦・痙攣など神経症状・意識障害 |
高浸透圧性昏睡の症状を問われたら、アセトン臭とクスマール呼吸はケトアシドーシス側なので外れる。DKAの症状を問われたら、顔面蒼白・動悸・発汗は低血糖の症状なので外れる。
アニオンギャップ(AG)=Na⁺−(Cl⁻+HCO3⁻)で、基準はおよそ12 mEq/L。測っていない酸がたまるとAGが増える。
| AGが増加する代謝性アシドーシス | AGが増加しない(高クロール性)代謝性アシドーシス |
|---|---|
| 糖尿病性ケトアシドーシス・飢餓によるケトアシドーシス・乳酸アシドーシス・腎不全・メタノールなどの中毒 | HCO3⁻を失う病態:下痢・尿細管性アシドーシス(近位型・遠位型) |
低血糖は、糖尿病の治療薬(インスリン・スルホニル尿素薬など)の副作用で起こることが多い。血糖が下がると、まず交感神経が働き、さらに下がると脳がエネルギー不足になる。
| 低血糖の症状(正しい) | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 交感神経の症状:動悸(頻脈)・手指振戦・発汗・顔面蒼白・不安 脳の症状:意識障害・けいれん・昏睡 | 徐脈(実際は頻脈) 顔面紅潮(実際は蒼白) 下痢・多尿(多尿・口渇は高血糖の症状) |
治療はブドウ糖。意識があれば口からブドウ糖(10〜20 g)、意識がなければブドウ糖の静脈注射かグルカゴン(点鼻薬が使える)。α-グルコシダーゼ阻害薬内服中の低血糖は、ブドウ糖で治療する(ショ糖は不可)。この薬はショ糖(砂糖)の分解・吸収を遅らせるので、ショ糖では血糖が上がりにくい。
| 体重が増える(肥満の原因) | 体重が減る |
|---|---|
| クッシング症候群(中心性肥満) インスリノーマ(インスリンが出すぎて低血糖になり、食べすぎる) 甲状腺機能低下症 | 甲状腺機能亢進症・褐色細胞腫(代謝が上がる) アジソン病 コントロールの悪い糖尿病 |
内臓脂肪の蓄積が必須の項目で、腹囲(へその高さ)が男性85 cm以上・女性90 cm以上。これに次の3つのうち2つ以上が加わると診断する。
| 診断基準の項目 | 基準に含まれない(よく出る誤りの肢) |
|---|---|
| 内臓脂肪蓄積(必須) ①脂質異常:中性脂肪150 mg/dL以上 または HDLコレステロール40 mg/dL未満 ②血圧高値:130/85 mmHg以上 ③空腹時高血糖:110 mg/dL以上 | 高尿酸血症(血清尿酸高値)は基準に入らない(合併しやすいが別) 皮下脂肪の蓄積は基準に入らない(内臓脂肪だけ) LDLコレステロール・喫煙 |
脂質異常症のうち家族性高コレステロール血症は、LDL受容体の遺伝子異常で生まれつきLDLコレステロールが高く、若いうちから冠動脈疾患を起こす。重い例ではLDLアフェレシス(血液浄化)を行う。痛風は高尿酸血症で尿酸の結晶が関節にたまり、足の親指の付け根などが急に激しく痛む。
骨粗鬆症は骨の量が減ってもろくなる病気で、閉経後の女性・高齢者・ステロイドの長期使用で多い。くる病(子ども)と骨軟化症(大人)は、骨にカルシウムが沈着しない病気で、ビタミンD不足が原因になる。
| ビタミン | 欠乏症 |
|---|---|
| A(脂溶性) | 夜盲症・眼球乾燥 |
| B1(水溶性) | 脚気・ウェルニッケ脳症 |
| B2(水溶性) | 口内炎・口角炎 |
| B12・葉酸(水溶性) | 巨赤芽球性貧血(B12では悪性貧血) |
| C(水溶性) | 壊血病 |
| D(脂溶性) | くる病・骨軟化症 |
| K(脂溶性) | 出血傾向(凝固因子が作れない。新生児メレナ) |
誤りの肢は、隣のビタミンの欠乏症を入れ替えて作られる:B1に口内炎(正しくはB2)、B1に出血傾向(正しくはK)、Kに脚気(正しくはB1)、B12にウェルニッケ脳症(正しくはB1)、Aに悪性貧血(正しくはB12)。
ビタミン過剰症は、体にたまりやすい脂溶性ビタミン(A・D・E・K)で起こる(Dの過剰で高カルシウム血症など)。水溶性ビタミンは多すぎても尿に出る。
先天性代謝異常症は、生まれつき酵素が欠けて物質がたまる病気。アミノ酸代謝異常症(フェニルケトン尿症など)、脂質代謝異常症(ゴーシェ病など)、その他(糖原病など)があり、多くは新生児マススクリーニングで見つける。