神経と筋肉の病気の章。収録は6問と少ないので、出題基準の全項目を4節でひととおり押さえる。出題の型は「病気と症状・原因の組合せ」がほとんどで、どこが壊れる病気か(脳・脊髄の運動ニューロン・神経筋接合部・末梢神経・筋肉)を言えれば、組合せの誤りはすぐ見抜ける。人工呼吸器や血漿交換など、臨床工学技士の装置を使う病気も多い。
意識の程度は、決まった物差しで点数にして伝える。日本でよく使うJCS(Japan Coma Scale)と、世界で使うGCS(Glasgow Coma Scale)の2つがある。JCSは数字が大きいほど重く、GCSは点数が小さいほど重い。向きが逆なので取り違えない。
| JCS(3-3-9度方式) | 状態 |
|---|---|
| Ⅰ(1・2・3) | 刺激しなくても目を開けているが、意識がはっきりしない |
| Ⅱ(10・20・30) | 刺激すると目を開ける |
| Ⅲ(100・200・300) | 刺激しても目を開けない(300が最も重い) |
| GCS | 見るところ | 点数 |
|---|---|---|
| E(Eye) | 開眼 | 1〜4 |
| V(Verbal) | 言葉の反応 | 1〜5 |
| M(Motor) | 運動の反応 | 1〜6 |
| 合計3〜15点。15点が正常、3点が最も重い。8点以下は重い意識障害で、気道確保(気管挿管)を考える目安 | ||
運動障害は、壊れた場所で型が分かれる。大脳皮質から脊髄へ下りる運動ニューロン(上位運動ニューロン・錐体路)が壊れると、筋肉はつっぱり(痙性麻痺)、腱反射は強くなる。脊髄前角から筋肉へ向かう運動ニューロン(下位運動ニューロン)や末梢神経が壊れると、筋肉はだらりとして(弛緩性麻痺)やせ、腱反射は弱くなる。体の半分の麻痺は片麻痺、両下肢の麻痺は対麻痺と呼ぶ。
| 言語障害の種類 | どこの障害か |
|---|---|
| 失語症 | 大脳の言語の中枢の障害。言葉を理解する・組み立てる働きが失われる(運動性失語・感覚性失語など) |
| 構音障害 | 言葉は組み立てられるが、口・舌・のどの動きが悪くて発音がうまくできない(ALS・脳血管障害など) |
けいれんは、筋肉が意思と関係なく強く縮むこと。脳の神経細胞が一斉に興奮するてんかん発作のほか、低血糖・低カルシウム血症(テタニー)・高熱・脳の病気でも起こる。けいれんが長く続くてんかん重積状態は、呼吸が止まるおそれがあり、気道確保と酸素投与を急ぐ。
| 種類 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| アテローム血栓性脳梗塞 | 太い脳の動脈の動脈硬化 | 段階的に悪くなることがある |
| 心原性脳塞栓症 | 心房細動などで心臓にできた血栓が飛ぶ | 突然発症し、梗塞が広く重い(予防は抗凝固療法・第4章) |
| ラクナ梗塞 | 細い血管が詰まる(高血圧) | 小さい梗塞で、症状は軽いことが多い |
| 脳出血 | 主に高血圧で細い動脈が破れる | 頭痛・片麻痺・意識障害 |
| くも膜下出血 | 脳動脈瘤の破裂 | 突然の激しい頭痛(人生最大の頭痛)・項部硬直・嘔吐 |
発症時に激しい頭痛を伴うことが多いのはくも膜下出血。脳梗塞は、麻痺や言語障害などの症状が中心で、頭痛は目立たないことが多い。脳梗塞か出血かは、まず頭部CTで出血の有無を見て分ける。
髄膜炎は脳と脊髄を包む膜の炎症で、発熱・頭痛・項部硬直がみられ、髄液検査で診断する。脳炎は脳そのものの炎症で、意識障害・けいれんが加わる(単純ヘルペスウイルスによるものが多い)。脳腫瘍は頭の中の圧(頭蓋内圧)を上げ、頭痛・嘔吐・視神経乳頭のむくみ(うっ血乳頭)を起こし、できた場所によってけいれんや麻痺も起こる。
アルツハイマー病は、脳にβアミロイドがたまり、神経細胞が減って脳が縮む病気(神経原線維変化も起こる)。最も多い認知症で、もの忘れ(記憶障害)から始まる。アルツハイマー病の症状は認知障害。
βアミロイドの沈着=アルツハイマー病。中脳黒質の神経細胞の変性=パーキンソン病。パーキンソン病にβアミロイド、アルツハイマー病に黒質の変性、を組み合わせた肢は入れ替えの誤り。
| 疾患 | 壊れるところ・原因 | 正しい組合せの症状 |
|---|---|---|
| パーキンソン病 | 中脳黒質のドパミン神経の変性 | 筋固縮など4大症状(下の表) |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 上位と下位の運動ニューロンがともに変性する | 筋力低下・筋萎縮・構音障害・嚥下障害(球麻痺)・呼吸筋力低下 |
| 進行性筋ジストロフィー | 筋肉そのものが壊れていく遺伝性の病気(デュシェンヌ型は男児) | 筋力低下・ふくらはぎの肥大・呼吸不全・心筋障害 |
| 重症筋無力症 | 神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己抗体(胸腺腫を合併することがある) | くり返し動かすと疲れやすく、夕方(午後)に悪くなる筋力低下(易疲労性・日内変動)・眼瞼下垂・複視 |
| ギラン・バレー症候群 | かぜや下痢などの感染の1〜3週間後に、免疫が末梢神経を攻撃する(カンピロバクターなど) | 足から上へ広がる左右対称の弛緩性麻痺・腱反射の消失 |
感染を契機に発症するのはギラン・バレー症候群。重症筋無力症・パーキンソン病・ALS・筋ジストロフィーは感染がきっかけではない。
| 主要症状(正しい) | 主要症状でないもの |
|---|---|
| 安静時振戦(じっとしているときのふるえ) 筋固縮(関節を動かすと歯車のような抵抗) 無動・寡動(動きが少なく遅い) 姿勢反射障害(転びやすい) | 眼振は小脳や内耳の障害でみられる症状 |
そのほか小刻み歩行・仮面様顔貌・前かがみの姿勢がみられる。治療はドパミンを補う薬(L-ドパ)。
ALSでは、運動ニューロン以外の神経は末期まで保たれる。膀胱直腸障害・感覚障害・眼球運動障害・褥瘡は起こりにくい(陰性徴候)。呼吸筋が弱るので、NPPVや気管切開による人工呼吸(TPPV)が必要になる。
| 正しい組合せ | 誤りの組合せ |
|---|---|
| アルツハイマー病 ― 認知障害 パーキンソン病 ― 筋固縮 重症筋無力症 ― 午後に増悪する筋力低下 くも膜下出血 ― 動脈瘤破裂 重症筋無力症 ― 神経筋接合部の障害 ALS ― 運動ニューロンの変性 | ALSに昏睡(意識は末期まで保たれる) ギラン・バレー症候群にけいれん(弛緩性麻痺が主で、けいれんではない) パーキンソン病 ― βアミロイドの沈着 アルツハイマー病 ― 中脳黒質の変性 |
治療と装置:重症筋無力症とギラン・バレー症候群では、血漿交換(血液浄化)と免疫グロブリン大量療法を使う。どちらも呼吸筋が弱ると人工呼吸が必要になる。
脳や神経そのものの病気でなくても、ほかの臓器の病気で神経の症状が出る。臨床工学技士がかかわる透析・呼吸療法・高気圧酸素治療と結びつく項目が多い。
| 原因 | 神経症状 |
|---|---|
| 糖尿病 | 末梢神経障害は、手足の先からしびれや感覚の低下が始まる(手袋・靴下型)。足の感覚が鈍るので、けがや靴ずれに気づかず潰瘍・壊疽になりやすい。立ちくらみ・便秘などの自律神経障害も起こる。三大合併症の一つ |
| 腎不全 | 尿毒症の物質がたまって意識障害・けいれん(尿毒症性脳症)、末梢神経障害(尿毒症性ニューロパチー)。透析の導入期には、血液と脳の浸透圧の差で頭痛・吐き気・意識障害が起こる不均衡症候群に注意する |
| 呼吸不全 | 低酸素で落ち着きがなくなり意識が低下する。CO2がたまると、頭痛・羽ばたき振戦・意識障害(CO2ナルコーシス)が起こる(第3章) |
| 肝不全 | アンモニアなどが分解されずに脳に届き、肝性脳症が起こる。羽ばたき振戦・意識障害・昼夜逆転 |
| 一酸化炭素中毒 | COがヘモグロビンに強く結合して(CO-Hb)酸素を運べなくなり、頭痛・意識障害を起こす。回復した後に、数週間たって物忘れや異常行動が出る間欠型(遅発性)の症状もある |
糖尿病の治療中に起こる低血糖でも、脳がブドウ糖不足になって意識障害・けいれんが起こる(第5章)。意識障害の患者を見たら、脳の病気だけでなく、血糖・電解質・血液ガス・アンモニアなど全身の検査で原因を探す。
一般的なパルスオキシメータはCO-Hbと酸素化ヘモグロビンを区別できず、SpO2が見かけ上正常に出る。治療は高濃度酸素の吸入と高気圧酸素治療で、COを早く追い出す。