第8章|腎・泌尿器・生殖器系

臨床医学総論 第8章
収録 29問(第31〜39回)CKDのCGA分類・透析導入原疾患・ネフローゼ4徴・AKIの腎前性/腎性/腎後性・電解質異常・腎性貧血・CKD-MBD・尿路結石とESWL・前立腺と子宮の腫瘍

血液浄化(透析)は臨床工学技士の中心業務なので、この章は血液浄化療法装置の章の土台になる。出題が多いのは急性腎障害の3分類、透析導入の原疾患とCKDの重症度分類、腎性貧血とCKD-MBD(長期透析の合併症)、尿路結石の4つ。同じ趣旨の問題が何度も出るので、表の対応をそのまま覚えれば点になる。

8-1 腎臓の疾患と慢性腎臓病(CKD)

CKDの定義と重症度分類(CGA分類)

慢性腎臓病(CKD)は、蛋白尿などの腎障害か、GFR 60 mL/min/1.73m²未満の腎機能低下が3か月以上続く状態。重症度はCGA分類で決める。

軸中身国試の語形
C(Cause)原因(原疾患)基礎疾患
G(GFR)GFR区分 G1〜G5。G5(15未満)が末期腎不全推算糸球体濾過量/eGFR
A(Albuminuria)蛋白尿区分 A1〜A3(糖尿病はアルブミン尿、それ以外は蛋白尿で区分)蛋白尿/尿タンパク定量

eGFRは血清クレアチニン・年齢・性別から推算するので、「年齢」は重症度分類に用いる側に入る。血圧・尿量・血中尿素窒素(BUN)は分類の軸ではない(血圧は管理目標・危険因子として大事だが、分類には使わない)。

GFR区分G1G2G3aG3bG4G5
eGFR(mL/min/1.73m²)90以上60〜8945〜5930〜4415〜2915未満

透析導入の原疾患

原疾患の順位は「新しく透析を始めた人(導入)」と「透析を受けている人全体」で違う。

第1位第2位第3位
新規の透析導入糖尿病性腎症腎硬化症慢性糸球体腎炎
慢性透析患者全体糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症

慢性糸球体腎炎はかつて第1位だったが、新規導入では減っている。透析を長く続けている人には慢性糸球体腎炎の人が多く残っているので、患者全体ではまだ第2位。腎硬化症は高齢化と高血圧を背景に増え、新規導入では第2位になった。多発性囊胞腎・間質性腎炎・急速進行性糸球体腎炎は少数。「慢性透析患者の原疾患で最も多い」と聞かれても答えは糖尿病性腎症。

糖尿病性腎症

正しい記述として出るもの誤りとして出るもの(切る)
早期診断には微量アルブミン尿の測定が有用早期から顕性蛋白尿が出る
網膜症・神経障害の合併が多い(細小血管障害の三大合併症=網膜症・腎症・神経障害)網膜症の合併はまれ
発症リスクは糖尿病の罹病期間や血糖コントロールと相関する罹病期間と相関しない
透析導入原疾患の第1位で、腎代替療法になることは多い透析が必要になることはまれ
治療は血糖と血圧の管理(RAA系阻害薬など)副腎皮質ステロイドで治療する(血糖を上げるので使わない)

糖尿病性腎症は高血糖による代謝と血行動態の異常が本態で、免疫の関与は小さい。これに対し、IgA腎症・膜性腎症・膜性増殖性糸球体腎炎・ループス腎炎は免疫複合体や自己抗体が関わる。「免疫の関与が小さいのは」なら糖尿病性腎症。

糸球体腎炎・膠原病の腎障害・腎硬化症

疾患押さえる点(代表例)
急性糸球体腎炎溶連菌感染の1〜2週後に血尿・浮腫・高血圧で発症する(小児に多い)
IgA腎症メサンギウムにIgAが沈着する。我が国で多い慢性糸球体腎炎の代表。血尿が主体
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)数週〜数か月で腎機能が急速に低下する。ANCA関連血管炎などが原因
ループス腎炎SLEの自己抗体・免疫複合体による腎障害(膠原病に合併する腎障害の代表)
腎硬化症長年の高血圧で腎の細い動脈が硬くなり、腎機能が落ちる
腎細胞癌(腎臓癌)血尿・腹部腫瘤・側腹部痛が代表的な症状。長期透析では、後天性の囊胞(多囊胞化萎縮腎)から腎癌が出ることがある
多発性囊胞腎(囊胞腎)遺伝性で、両側の腎に囊胞が多発して腎が大きくなる。脳動脈瘤の合併に注意

ネフローゼ症候群

4徴は高度タンパク尿(3.5 g/日以上)・低アルブミン血症(3.0 g/dL以下)・浮腫・高脂血症(高LDLコレステロール血症)。浮腫は低アルブミン血症で膠質浸透圧が下がって起こる。高脂血症は肝でリポ蛋白の合成が増えて起こる。

ネフローゼでないもの(切る肢)

血尿は腎炎症候群(糸球体腎炎)の特徴で、ネフローゼの4徴に入らない。高血圧も必発ではない。「易出血性」は逆で、アンチトロンビンなどが尿に失われるので、血栓ができやすい。合併症は感染症・血栓症・急性腎障害。

8-2 急性腎障害(AKI)と電解質異常

腎前性・腎性・腎後性

急性腎障害(AKI)=旧称の急性腎不全。原因の場所で3つに分ける。毎年のように「腎前性の原因はどれか」「病型と原因の組合せで誤っているのは」が出る。

病型しくみ代表的な原因(出る肢)
腎前性腎へ来る血流が減る(腎そのものは正常)出血・出血性ショック、熱傷(体液喪失)、脱水、心不全
腎性腎の実質・尿細管が傷む造影剤(造影剤腎症)、横紋筋融解症(ミオグロビン)、高カルシウム血症、急性尿細管壊死、溶血性尿毒症症候群(HUS)、糸球体腎炎
腎後性尿の通り道がふさがる両側性の尿路結石・尿管結石、前立腺肥大、尿管閉塞、腫瘍
いちばん間違えやすいところ

造影剤は「腎性」で、腎後性ではない(造影剤は尿路をふさがない。尿細管を傷める)。熱傷は血漿が失われるので「腎前性」。腎前性は早く輸液すれば元に戻るが、放置すると尿細管壊死(腎性)に移る。鑑別にはFENa(腎前性で低い)や尿沈渣を使う。

AKIの診断(KDIGO基準)の目安は、血清クレアチニンが48時間以内に0.3 mg/dL以上上がる、または7日以内に1.5倍以上になるか、尿量が0.5 mL/kg/h未満の状態が6時間以上続くこと。

腎不全でみられる検査の異常

異常なぜ起こるか
代謝性アシドーシス酸を尿に出せず、重炭酸も作れない(「代謝性アルカローシス」は誤りの肢)
高カリウム血症カリウムを尿に出せない
高リン血症リンを尿に出せない
低カルシウム血症活性型ビタミンDが作れず、高リン血症も加わる
貧血(低ヘモグロビン血症)エリスロポエチンが作れない(腎性貧血)
BUN・クレアチニン上昇老廃物を出せない(尿毒症)

AKIの治療と合併症

AKIでは溢水(肺水腫)・高カリウム血症・代謝性アシドーシス・尿毒症症状が命にかかわる合併症で、薬や輸液で抑えられないときは血液浄化(透析・持続的血液濾過透析など)を始める。腎前性なら輸液、腎後性なら閉塞の解除がまず先。

電解質異常

基準値の目安:Na 135〜145 mEq/L、K 3.5〜5.0 mEq/L。

異常代表的な原因症状・所見
高ナトリウム血症水分の喪失(脱水)、尿崩症口渇、意識障害
低ナトリウム血症SIADH、水分の過剰、利尿薬頭痛・意識障害・けいれん。急いで補正すると浸透圧性脱髄症候群を起こす
高カリウム血症腎不全、アシドーシス、組織の崩壊(溶血・横紋筋融解)心電図でテント状T波、進むと致死的不整脈・心停止。治療はグルコース・インスリン療法、カルシウム製剤、陽イオン交換樹脂、透析
低カリウム血症嘔吐・下痢、利尿薬、アルカローシス筋力低下、心電図でU波が出る
高カルシウム血症副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍多尿・口渇・意識障害、QT短縮、腎障害
低カルシウム血症腎不全、副甲状腺機能低下症テタニー、QT延長
高リン血症腎不全CaとPの積が上がり、血管などに異所性石灰化が起こる
低リン血症低栄養のあとの急な栄養再開(リフィーディング症候群)など筋力低下・呼吸筋の力の低下

8-3 CKDの治療と長期透析の合併症

保存期の治療

食事療法の柱は食塩制限(3 g以上6 g未満/日)・たんぱく質制限・進行例のカリウム制限とリン制限、透析患者では水分制限。血圧管理とRAA系阻害薬で蛋白尿を減らし、腎機能の低下を遅らせる。

腎代替療法の導入:血液透析(HD)と腹膜透析(PD)

透析導入は、保存療法(食事・薬)では抑えられない尿毒症症状・溢水(体液過剰)・高カリウム血症・代謝性アシドーシスが出たときに考える。腎機能(GFR)の低下だけでなく、症状と検査値を合わせて判断する。腎代替療法は血液透析・腹膜透析・腎移植の3つ。

血液透析(HD)腹膜透析(PD)
膜ダイアライザ(人工の膜)腹膜(自分の体の膜)
血液の通り道バスキュラーアクセス(内シャントなど)腹腔に入れたカテーテルから透析液を出し入れ
場所・頻度多くは施設で週3回・1回4時間前後自宅で毎日、連続して行う(CAPD・APD)
残腎機能落ちやすい残腎機能が保たれやすい
主な合併症シャントのトラブル、透析中の血圧低下、不均衡症候群腹膜炎、出口部感染、長期では被囊性腹膜硬化症

装置と回路の詳しい仕組みは血液浄化療法装置の章で扱う。

腎性貧血

腎性貧血は腎からのエリスロポエチン(EPO)の産生が減って起こる貧血(正球性正色素性)。治療薬は次のとおり。

薬使う場面
遺伝子組換えヒトエリスロポエチン(ESA製剤・注射)腎性貧血の中心の治療。鉄剤を併用
HIF-PH阻害薬(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬)経口で使える腎性貧血の治療薬である。体内のEPO産生を促す
活性型ビタミンD・カルシウム受容体作動薬CKD-MBD(二次性副甲状腺機能亢進症)の薬で、貧血の薬ではない
カルシウム拮抗薬・ACE阻害薬降圧薬(ACE阻害薬は腎保護)
葉酸・ビタミンB12巨赤芽球性貧血の薬

「腎性貧血の経口治療薬」と聞かれたらHIF-PH阻害薬。エリスロポエチンは注射薬なので「経口」の答えにならない。

CKD-MBD(骨・ミネラル代謝異常)

流れで覚える:腎機能低下 → リンがたまり、活性型ビタミンDが減る → 低カルシウム血症 → 副甲状腺が刺激されPTHが増える =二次性副甲状腺機能亢進症 → 骨がもろくなる(腎性骨異栄養症)。長期透析で起こるのは副甲状腺機能「亢進症」で、「低下症」ではない。

正しい治療誤りとして出るもの
活性型ビタミンD製剤を投与する副甲状腺ホルモン(PTH)を投与する(PTHは過剰で抑える対象)
リンの摂取を制限し、リン吸着薬を使うリン摂取量を増やす
カルシウム・リン積を下げて異所性石灰化を防ぐカルシウム・リン積を上昇させる
透析時間を十分にとる(リンは時間をかけないと抜けない)透析時間を短縮する
カルシウム受容体作動薬(シナカルセトなど)でPTHを抑える

長期透析の合併症と死因

合併症しくみ・中身
腎性貧血EPOの産生低下
二次性副甲状腺機能亢進症・活性型ビタミンD欠乏上のCKD-MBD
透析アミロイドーシスβ2ミクログロブリンがたまり、手根管症候群や破壊性の関節・脊椎の病変を起こす
掻痒症透析患者の代表的な皮膚症状
動脈硬化・心不全溢水・高血圧・石灰化が背景
多囊胞化萎縮腎腎癌が出ることがある

慢性透析患者の死因で最も多いのは心不全(出題時点の統計・出題の正答)。感染症・悪性腫瘍が続く。近年は感染症が心不全を上回って最多の年もある(統計の年によって順位が動く)。導入期の不均衡症候群(頭痛・悪心)は、急に溶質を除くと血液と脳の間に浸透圧の差ができて起こる。

腎移植

腎代替療法は血液透析・腹膜透析・腎移植。拒絶反応は起こる時期で超急性・急性・慢性に分ける。免疫抑制薬の代表はカルシニューリン阻害薬(タクロリムス・シクロスポリン)・副腎皮質ステロイド・代謝拮抗薬(ミコフェノール酸など)。免疫抑制中は感染症にかかりやすい(第14章も参照)。

8-4 尿路の疾患(感染症・結石症・膀胱癌)

腎盂腎炎と膀胱炎

急性単純性腎盂腎炎急性単純性膀胱炎
多い人基礎疾患のない若年〜中年女性若い女性
起因菌大腸菌が多い
感染経路尿道から膀胱、さらに腎盂へ上がる上行感染
症状38℃以上の高熱・悪寒・腰背部痛がある(肋骨脊柱角の叩打痛)排尿痛・頻尿・残尿感があり、発熱はふつうない
尿検査膿尿・細菌尿

誤りの肢=「高齢者に多い」「高熱はみられない」(どちらも単純性腎盂腎炎には当てはまらない)。複雑性は結石・カテーテル・前立腺肥大など尿路の病気があって起こり、高齢者や男性にも出る。

尿路結石症

項目押さえる点
成分大部分はカルシウム結石で、最多はシュウ酸カルシウム。ほかにリン酸カルシウム・尿酸・シスチン・リン酸マグネシウムアンモニウム(感染結石)。コレステロールは胆石の成分で、尿路結石の主成分ではない
症状腰背部から下腹部に放散する疝痛と血尿。片腎の人では閉塞で腎不全(腎後性)になる
画像単純CTが最も有用、ほかに腹部超音波・単純X線(KUB)・点滴静注腎盂造影(DIP)。腎動脈造影は血管を見る検査で、結石の診断には使わない。尿酸結石は単純X線で写りにくい(X線陰性結石)

体外衝撃波結石破砕術(ESWL/体外衝撃波砕石術)

適応適応外・禁忌
結石が原因の繰り返す尿路感染、結石による水腎症(通過障害)、痛みのある結石妊婦(妊娠中)、易出血傾向・抗凝固療法中、腎動脈瘤などの動脈瘤、結石より先(遠位)の閉塞、コントロールできない感染、無機能腎(砕いても意味がない)

「ESWLは妊婦も施行可能」は誤り。ほかの治療は経尿道的砕石術(TUL)・経皮的砕石術(PNL)。

膀胱癌

膀胱癌は痛みのない肉眼的血尿(無症候性血尿)で見つかることが多い。組織型は尿路上皮癌が大部分で、危険因子は喫煙や化学物質。診断は膀胱鏡、表在性なら経尿道的切除(TURBT)。

8-5 生殖器の疾患と腫瘍

前立腺肥大症と前立腺癌

前立腺肥大症前立腺癌
症状肥大した前立腺が尿道を押して、頻尿(とくに夜間頻尿)・排尿困難・残尿感・尿勢低下(下部尿路症状/LUTS)早期は無症状。検診(PSA)で見つかることが多い
検査残尿測定・超音波腫瘍マーカはPSA(前立腺特異抗原)。前立腺生検で確定診断
治療α1遮断薬・5α還元酵素阻害薬、経尿道的前立腺切除(TURP)手術(ロボット支援手術が普及)・放射線・ホルモン療法
その他急性尿閉、腎後性腎不全の原因になる高齢者に多い。骨に転移しやすい
切る肢

頻尿(回数が増える)と多尿(尿量が増える)は別物。前立腺肥大症の特徴は頻尿で、多尿・発熱・血尿・腹痛ではない。「前立腺癌でCEAが上昇する」は誤り(CEAは大腸癌・胃癌のマーカ)。

女性生殖器の腫瘍

疾患押さえる点
子宮頸癌ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が主な原因で、HPVワクチンで予防が期待される。検診は細胞診。「EBウイルスが関与」は誤り
子宮体癌エストロゲン過剰が関わり、肥満・未経産(未妊)・遅い閉経が危険因子。「経産婦が危険因子」は誤り。閉経後の不正出血で見つかる
子宮筋腫エストロゲン依存の良性腫瘍で、閉経で退縮(縮小)する。過多月経から貧血になる
卵巣癌症状が出にくく、見つかったときには進んでいることが多い。腫瘍マーカはCA125。卵巣腫瘍は精巣腫瘍より発生数が多い
乳癌まれだが男性にも発症する(「男性は乳癌を発症しない」は誤り)。検診はマンモグラフィ

感染と癌・腫瘍マーカの対応

ウイルス・細菌関わる癌腫瘍マーカ癌
HPV子宮頸癌(ワクチンで予防)PSA前立腺癌
B型・C型肝炎ウイルス肝細胞癌(B型はワクチンあり)CEA大腸癌・胃癌
ヘリコバクター・ピロリ胃癌AFP・PIVKA-II肝細胞癌
HTLV-1成人T細胞白血病CA19-9膵癌
EBウイルス上咽頭癌・バーキットリンパ腫CA125卵巣癌

膀胱癌・前立腺癌・卵巣癌・子宮体癌には予防ワクチンがない。「ワクチンによる予防効果が期待される」のは子宮頸癌。