臓器ごとに「原因」「特徴的な所見」「治療」を対にして覚える章。いちばん出るのはヘリコバクター・ピロリ菌が関わる病気と関わらない病気の線引きで、次が肝硬変の所見。臨床工学技士が関わる血液浄化(白血球除去療法・血漿交換・持続的血液濾過透析)の適応もここで問われる。
食道炎の原因は胃液(胃酸)の逆流(最多)、化学物質(酸・アルカリの誤飲、薬剤)、真菌の感染(カンジダ食道炎。免疫が落ちたとき)など。唾液の嚥下は食道を守る側で、食道炎の原因にならない。高血圧も無関係。
| 逆流性食道炎(GERD)で正しいもの | 誤りとして出るもの(切る) |
|---|---|
| 胃液(胃酸)の逆流によって発生する | ヘリコバクター・ピロリの除菌により改善する |
| 高齢者・肥満者に多い(括約筋の衰え、食道裂孔ヘルニア、腹圧の上昇) | 治療は経口血糖降下薬 |
| アルコール摂取は増悪因子(下部食道括約筋をゆるめる) | 白血球除去療法の適応になる |
| 治療の中心はプロトンポンプ阻害薬(PPI)で胃酸を抑えること |
ピロリ菌を除菌すると胃酸の分泌が戻るので、逆流性食道炎はむしろ悪化しうる。「ピロリ菌と関連しないのは」の答えは逆流性食道炎。
我が国の食道癌は扁平上皮癌が多く、危険因子は飲酒と喫煙で、男性に多い。「食道癌は女性に多い」「食道癌とヒトパピローマウイルス(HPV)」は誤りの肢(HPVは子宮頸癌)。逆流性食道炎が長く続いてできるバレット食道は食道腺癌の母地になる。
| 急性胃炎 | 慢性胃炎(萎縮性胃炎) | |
|---|---|---|
| 主な原因 | NSAIDs・アルコール・ストレス・薬剤など | ヘリコバクター・ピロリ菌の長い感染(多くは子どもの頃に感染) |
| 経過・所見 | 急な上腹部痛・吐き気。びらんや出血を伴うものは急性胃粘膜病変(AGML) | 胃粘膜が薄くなり(萎縮)、胃酸の分泌が減る |
| その後 | 原因を除けば短期間で治る | 萎縮性胃炎は胃癌の母地になる(除菌で胃癌のリスクを下げる) |
消化性潰瘍の二大原因はヘリコバクター・ピロリ菌と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)。NSAIDsはプロスタグランジンを減らし、胃粘膜の防御を弱める。重い熱傷ではストレス潰瘍(カーリング潰瘍)ができる(頭部外傷ではクッシング潰瘍)。カンジダ・黄色ブドウ球菌・マイコプラズマ・ボツリヌス菌・ムンプスウイルスは胃潰瘍の原因ではない。
| 胃潰瘍で正しいもの | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| ヘリコバクター・ピロリ菌が原因となる(除菌で再発を防ぐ) | 黒色便は生じない(出血するとタール便(黒色便)・吐血が出る) |
| 組織の欠損は粘膜筋板を越える(粘膜にとどまるのは「びらん」) | 組織欠損は粘膜にとどまる |
| プロトンポンプ阻害薬(PPI)が第一選択の治療薬 | PPIは禁忌である |
| 痛みにNSAIDsは使わない(潰瘍を悪くする) | 疼痛時はNSAIDsを投与する |
除菌はPPI+抗菌薬2剤。診断は尿素呼気試験・便中抗原など。
| 関連する(代表例) | 関連しない(切る) |
|---|---|
| 胃・十二指腸潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫(胃の悪性リンパ腫)、萎縮性胃炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP) | 逆流性食道炎、クローン病、食道癌 |
胃癌はピロリ除菌と早期発見で死亡が減っている(「胃癌による死亡は増加している」は誤り)。胃MALTリンパ腫は除菌で治ることがある。胃の悪性リンパ腫の代表の一つ(ほかにびまん性大細胞型B細胞リンパ腫も多い)がこのMALTリンパ腫で、ピロリ菌の感染が関わる。
| 疾患 | 原因・特徴 |
|---|---|
| 偽膜性腸炎 | 抗菌薬(抗生物質)の投与後に、腸内細菌のバランスが崩れてクロストリディオイデス・ディフィシルが異常に増え、毒素を出す(菌交代現象)。水様の下痢 |
| 虚血性腸炎 | 腸の血流が一時的に落ちて起こり、高齢者に多い。突然の腹痛と血便 |
| 過敏性腸症候群(過敏性腸炎) | ストレスなどによる機能性の病気。細菌が原因ではない |
| 潰瘍性大腸炎 | クローン病 | |
|---|---|---|
| 場所 | 大腸だけ(直腸から連続して広がる) | 口から肛門まで全消化管に、とびとび(非連続)にできる |
| 深さ | 粘膜が中心 | 腸の壁の全層。瘻孔ができる |
| 症状 | 血便・下痢 | 腹痛・下痢・痔瘻 |
| 癌 | 長く・広く続くと大腸癌になりやすい |
誤りの肢=「潰瘍性大腸炎は大腸癌になりにくい」「クローン病は大腸に限局する」「クローン病とヘリコバクター・ピロリ」。
白血球除去療法は血液を体外に出し、活性化した白血球(顆粒球・単球)をカラムやフィルタで除いて炎症を抑える血液浄化療法。顆粒球・単球吸着療法(GCAP)と白血球除去療法(LCAP)がある。適応の代表は活動期の潰瘍性大腸炎(クローン病にも使う)。逆流性食道炎・急性膵炎・急性胆管炎・急性肝炎・虫垂炎は適応ではない。
| 虫垂炎で正しいもの | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| みぞおち(心窩部)の痛みが右下腹部へ移る。発熱・白血球増加 | 突然の下痢で発症する |
| McBurney点=右下腹部の圧痛点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線の外側1/3)。反跳痛(Blumberg徴候) | McBurney点は左下腹部 |
| 腹部超音波検査(やCT)が診断に有用(腫れた虫垂が見える) | 血中アンモニアが上がる(これは肝不全) |
組合せ問題で同時に出る「慢性膵炎―膵臓の石灰化」は正しい組合せ(9-4の膵炎の表)。
腸閉塞(イレウス)は腸の内容が通らなくなる病気で、腹痛・嘔吐・腹部膨満・排便とガスの停止が出る。原因は手術後の癒着が最も多く、腫瘍(大腸癌など)やヘルニアの嵌頓も原因になる。血流が途絶える絞扼性イレウスは緊急手術。大腸癌の腫瘍マーカの代表はCEAで、便潜血検査が検診に使われる。大腸癌は直腸とS状結腸に多い。
同じ組合せ・正誤問題で並んで出る上部消化管の肢=「食道癌は女性に多い」は誤り(正しくは男性に多い)、「胃癌による死亡は増加している」は誤り(正しくは減少している)。詳しくは9-1。
| A型・E型 | B型・C型 | |
|---|---|---|
| 感染経路 | 経口感染(糞口感染) | 血液・体液感染 |
| 経過 | 急性だけで慢性化しない(例外:E型は臓器移植後などの免疫不全者で慢性化することがある) | 慢性化して、肝硬変・肝細胞癌に進みうる |
| ワクチン | A型はあり | B型はあるが、C型はない |
劇症肝炎=広い範囲の肝細胞が壊死し、肝性脳症とプロトロンビン時間の延長を起こす(目安は初発症状から8週以内にPT活性40%以下・Ⅱ度以上の肝性脳症)。肝で凝固因子が作れないので、プロトロンビン時間(PT)は著明に延長する(「PTは正常範囲」は誤り)。治療は人工肝補助として血漿交換・持続的血液濾過透析(CHDF)、治療抵抗例は肝移植。
| 疾患 | 押さえる点 |
|---|---|
| 自己免疫性肝炎 | 治療の第一選択は副腎皮質ステロイド(インターフェロンは誤り) |
| NASH(NAFLD/NASH) | アルコールによらない脂肪肝炎である(非アルコール性脂肪肝炎)。「アルコール性脂肪肝炎のこと」は誤り |
| アルコール性肝疾患 | 脂肪肝→肝炎→肝硬変と進む |
| 薬物性肝障害 | 劇症化することがある(「劇症化しない」は誤り) |
| 肝癌(肝細胞癌) | B型・C型肝炎や肝硬変が母地。腫瘍マーカはAFP・PIVKA-II |
肝硬変の所見は3つの「働きの落ち方」に分けると切りやすい。
| しくみ | 所見 |
|---|---|
| 合成能の低下 | アルブミン・凝固因子・コレステロールが下がる → 浮腫・腹水・出血傾向 |
| 解毒・処理能の低下 | アンモニアが上がり、肝性脳症(昏睡)になる。ビリルビンが上がり黄疸・皮膚掻痒感。エストロゲンが壊されず女性化乳房・くも状血管腫・手掌紅斑 |
| 門脈圧亢進 | 腹水、食道静脈瘤、脾腫 → 脾臓が血球を壊しすぎて、血小板が減る |
血小板は減少する(「血小板数の増加」は誤り)。コレステロールは低下する(「高コレステロール血症」は誤り)。血尿は肝硬変の所見ではない。非代償期の所見=黄疸・腹水・女性化乳房・肝性脳症。
重症度はChild-Pugh分類で、評価項目は血清ビリルビン・血清アルブミン・腹水・肝性脳症・プロトロンビン時間の5つ。赤血球数・尿酸は入らない。
| 正しいもの | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 胆石の疝痛発作は脂肪の多い食事の後に出る(右季肋部痛) | 疝痛発作は空腹時に出る |
| 無症状の胆石は原則として経過観察(症状・合併症があれば手術) | 胆囊内結石はほとんどが手術の適応 |
| 胆石の多く(コレステロール石)はX線に写らないので、診断は腹部超音波が第一選択(MRCP・CTも) | 胆管内結石の診断は腹部X線で行う |
| 胆石は胆囊癌の危険因子 | |
| 胆囊炎は胆石で胆囊管がふさがり、腸から上がった細菌が感染して起こる | 胆囊炎の原因は血行性感染 |
急性胆管炎は抗菌薬と胆道ドレナージで治療する(白血球除去療法の適応ではない)。胆囊癌は高齢者に多く、胆石を合併していることが多い。早期は無症状で、進むと黄疸が出る。
| 急性膵炎 | 慢性膵炎 | |
|---|---|---|
| 本態 | 活性化した膵酵素で膵臓が自己消化される | 炎症が続いて膵臓が線維化する |
| 原因 | アルコールと胆石が二大原因 | アルコール性が最多、次いで特発性(胆石性は少ない) |
| 検査 | 血清アミラーゼ・リパーゼ上昇。画像では膵臓が腫れる(腫大)、周囲に液体がたまる | 膵臓の萎縮と石灰化(膵石)。消化不良・脂肪便・糖尿病 |
| 治療 | 絶食・輸液・鎮痛。重症例には持続的血液濾過透析(CHDF)を行う | 禁酒・消化酵素の補充 |
「急性膵炎で膵臓の萎縮を認める」は誤り(萎縮は慢性膵炎)。膵癌は見つかりにくく予後が悪い。膵頭部に多く、胆管がふさがって閉塞性黄疸で見つかることがある。腫瘍マーカはCA19-9。
腹膜炎は消化管穿孔などで腹膜に炎症が起こる病気で、強い腹痛と腹膜刺激症状(筋性防御・反跳痛)が出る。腹水は蛋白の多さとでき方で2つに分ける。
| 区分 | しくみ | 代表的な疾患 |
|---|---|---|
| 滲出性 | 炎症や悪性腫瘍で血管の透過性が上がる(蛋白が多い) | 癌性腹膜炎(卵巣癌など)、急性膵炎、結核性腹膜炎 |
| 漏出性 | 静水圧が上がるか、膠質浸透圧が下がる(蛋白が少ない) | うっ血性心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群 |