第54回 作業療法士国家試験 午後 第14問
精神障害作業療法第54回午後
45歳の男性。アルコール依存症。家で飲酒し酔って妻を怒鳴ってしまい、翌日に強い罪悪感を覚えることが増えている。反省して飲酒を減らそうとしたがうまくいかなかった。このままではいけないと思い、精神科を受診した。患者は妻の強い希望を受け入れて、しぶしぶ入院治療を受けることにした。治療プログラムの1つとして作業療法が処方された。初回の面接で、患者は、断酒しなければならないのはわかるが、コントロールして飲みたいという気持ちもあると述べた。治療への動機付けの目的で、面接の中で取り上げるべき話題として最も適切なのはどれか。
1. 妻との関係
2. 作業療法の必要性
3. 飲酒による身体的な問題
4. 断酒について迷っている気持ち
5. ストレス発散のための飲酒の必要性
- 1. 妻との関係
- 2. 作業療法の必要性
- 3. 飲酒による身体的な問題
- 4. 断酒について迷っている気持ち ✓
- 5. ストレス発散のための飲酒の必要性
正答:4番
解説
■ 正答:4番 — 断酒について迷っている気持ち
アルコール依存症の治療では、患者の変化への準備状態(ステージ・オブ・チェンジ)を理解し、現在の葛藤や両価性に焦点を当てることが動機付けの基本です。患者が「断酒の必要性は理解しているが、飲みたい気持ちもある」という相反する感情を抱いている状態に対して、その迷いや葛藤そのものを丁寧に扱うことで、患者の内発的動機付けを高めることができます。
---
【各選択肢の解説】
1. 妻との関係
❌ 誤り。妻の希望による入院であり、家族との関係は現在の治療への内発的動機付けとは直結しません。
2. 作業療法の必要性
❌ 誤り。治療プログラムの説明も重要ですが、まず患者自身の変化への動機付けが優先されるべきです。
3. 飲酒による身体的な問題
❌ 誤り。身体的害の教育は有効ですが、患者が既に理解している「断酒の必要性」の再説明に過ぎず、現在の葛藤解決にはなりません。
4. 断酒について迷っている気持ち
✅ 正しい。患者の両価性(アンビバレンス)に焦点を当て、「なぜ飲みたいのか」「断酒を望む気持ちの根拠は」などを一緒に探索することで、内発的動機付けが促進されます。
5. ストレス発散のための飲酒の必要性
❌ 誤り。飲酒の正当化につながり、治療的に逆効果です。
---
【試験対策ポイント】
・アルコール依存症の動機付けには患者の両価性・葛藤に焦点を当てる(動機付け面接法の基本)
・「~しなければならない」と「~したい」の相反する感情を扱うことが内発的動機付けを高める
・初期段階では教育や説教より、患者の気持ちの整理と自己効力感の醸成が重要