第55回 作業療法士国家試験 午前 第19問
精神障害作業療法第55回午前
66歳の女性。歌が好きでカラオケをよく楽しんでいたが、1年前から言葉数が少なくなり夫が心配して精神科を初めて受診した。MMSEは正常範囲内であった。MRIでは前頭葉優位の限局性脳萎縮があり、SPECTでは両側の前頭葉から側頭葉に血流低下が認められた。現在は定年退職した夫と2人暮らしをしており、家事は夫が行っている。デイケアに週1回通所しており、好きだった塗り絵や和紙工芸などの作業活動に参加するが、落ち着きがなく途中で立ち去ろうとする行動が頻回にみられる。作業活動の持続を促す対応として最も適切なのはどれか。
1. 注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。
2. 顔見知りのメンバーが多いフロアに移動する。
3. 立ち去ってはいけないとはっきり伝える。
4. 初めて体験する手工芸を取り入れる。
5. セラピストを変更する。
- 1. 注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。 ✓
- 2. 顔見知りのメンバーが多いフロアに移動する。
- 3. 立ち去ってはいけないとはっきり伝える。
- 4. 初めて体験する手工芸を取り入れる。
- 5. セラピストを変更する。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。
本症例は前頭側頭型認知症(bvFTD)と考えられ、前頭葉機能低下により注意散漫や落ち着きのなさが生じています。視覚的刺激(道具・材料)を活用した声かけは、注意をタスクに再び向けさせる有効な環境調整法です。
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【各選択肢の解説】
1. 注意がそれたら道具や材料を見せながら声をかける。
✅ 正しい。前頭葉機能低下による注意散漫に対し、視覚的刺激を組み合わせた声かけは注意の再集中を促す認知リハビリテーションの基本原則です。
2. 顔見知りのメンバーが多いフロアに移動する。
❌ 誤り。環境変更は却って新奇刺激となり、落ち着きのなさを悪化させる可能性があります。
3. 立ち去ってはいけないとはっきり伝える。
❌ 誤り。認知症患者への強い指示や制止は不安や抵抗を増強し、行動問題を悪化させます。
4. 初めて体験する手工芸を取り入れる。
❌ 誤り。前頭側頭型認知症では新規学習が困難であり、未経験の活動は混乱や不安を招きます。既知の作業(塗り絵など)の継続が適切です。
5. セラピストを変更する。
❌ 誤り。信頼関係の構築に時間がかかり、変更は逆効果になります。
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【試験対策ポイント】
・前頭側頭型認知症:言葉数低下、注意散漫、落ち着きのなさが特徴
・環境調整の原則:視覚的刺激+声かけで注意を再集中させる
・認知症の行動対応:強い指示ではなく促し、既知の活動を優先する