第55回 作業療法士国家試験 午後 第18問
精神障害作業療法第55回午後
21歳の女性。衝動的に食器を割ったり、自身の手首を切ったりするなどの行為が続いたため精神科病院へ入院となった。夜になると両親に電話し、自分を見捨てるのではないかと脅迫的に責めたてた。また主治医を罵倒し、椅子を投げつけるなどの暴力を振るった後すぐに「先生はすばらしいお医者さんですからどうか治してください」と泣きながら懇願することもあった。この患者の作業療法を行う上で適切でないのはどれか。
1. 患者の退行的な言動を受け入れる。
2. 作業療法以外の治療状況を把握する。
3. 作業療法士の中に生じてくる感情を自覚する。
4. 行動化による自己破壊的な結果を患者に説明する。
5. 患者、作業療法士の双方が守るべき規則を明確にする。
- 1. 患者の退行的な言動を受け入れる。 ✓
- 2. 作業療法以外の治療状況を把握する。
- 3. 作業療法士の中に生じてくる感情を自覚する。
- 4. 行動化による自己破壊的な結果を患者に説明する。
- 5. 患者、作業療法士の双方が守るべき規則を明確にする。
正答:1番
解説
■ 正答:1番 — 患者の退行的な言動を受け入れる。
本患者は境界性パーソナリティ障害の特徴を示しており、対象関係の不安定性(愛する者を見捨てられると恐れ、その後理想化する)と衝動的な自己破壊行為が顕著です。作業療法では無条件の受容ではなく、治療的限界設定が必須であり、退行的言動への無批判な受け入れは治療的ではなく、かえって症状を強化する可能性があります。
---
【各選択肢の解説】
1. 患者の退行的な言動を受け入れる。
❌ 誤り。境界性パーソナリティ障害では、行動化や退行への無条件な受け入れが依存を深め、自己破壊行為を強化してしまいます。代わりに一貫した限界設定が必要です。
2. 作業療法以外の治療状況を把握する。
✅ 正しい。多職種連携の観点から、患者の全体像(精神科医の診察内容、看護師の対応など)を把握することで、一貫性のある対応が可能になります。
3. 作業療法士の中に生じてくる感情を自覚する。
✅ 正しい。患者の操作的・両価的な言動は治療者に強い感情(嫌悪感、過度な同情)を喚起します。逆転移への気づきがカウンターテランスファレンスの管理に重要です。
4. 行動化による自己破壊的な結果を患者に説明する。
✅ 正しい。現実的な帰結を患者に明示することで、衝動的行動への認知的介入となり、責任能力の発達を促します。
5. 患者、作業療法士の双方が守るべき規則を明確にする。
✅ 正しい。治療的限界設定により、患者が予測可能な環境を得られ、行動化の軽減につながります。
---
【試験対策ポイント】
• 境界性パーソナリティ障害:対象関係の不安定性、衝動的自傷・自殺行為、見捨てられることへの恐怖が特徴
• 作業療法の基本姿勢:無条件受容ではなく「治療的限界設定」が重要
• 逆転移への気づきがカウンターテランスファレンス管理の第一歩