第56回 作業療法士国家試験 午前 第6問
生理学第56回午前
80歳の女性。77歳頃から物忘れが目立ち始め、今では歩行時のつまずきやすさ、書字の震えがある。日によって程度は異なるものの、自宅のテレビや窓、棚のガラス戸など、光沢のあるところに知らない人が映って見えるようになった。「テレビに知らない人の顔が見える」「変なおじいさんが裸でいる」などと家族に訴え、ガラス戸に向かって怒鳴る様子もみられた。家族と物忘れ外来を受診した。PETでは頭頂葉から後頭葉の一部に糖代謝の低下が認められた。作業療法士から家族へのアドバイスとして適切なのはどれか。
1. 部屋を薄暗くする。
2. テレビの音を大きくする。
3. 移動の際には車椅子を使用させる。
4. 興奮したときはきっぱりと幻覚であることを伝える。
5. 見えている内容を否定しないで気持ちを受け止める。
- 1. 部屋を薄暗くする。
- 2. テレビの音を大きくする。
- 3. 移動の際には車椅子を使用させる。
- 4. 興奮したときはきっぱりと幻覚であることを伝える。
- 5. 見えている内容を否定しないで気持ちを受け止める。 ✓
正答:5番
解説
■ 正答:5番 — 見えている内容を否定しないで気持ちを受け止める。
本症例はレビー小体病による視幻覚と考えられます。レビー小体病の幻覚は本人にとって現実であり、否定されるとより強い不安や興奮を招きます。作業療法士の家族指導では、患者の体験を受け入れる姿勢が認知機能の維持と精神的安定につながります。
---
【各選択肢の解説】
1. 部屋を薄暗くする。
❌ 誤り。薄暗い環境は視幻覚をさらに誘発させる可能性があります。むしろ照度を保つことが推奨されます。
2. テレビの音を大きくする。
❌ 誤り。音量増加は患者の興奮や混乱をさらに高めるリスクがあります。
3. 移動の際には車椅子を使用させる。
❌ 誤り。歩行でのつまずきがあっても、過度な制限は廃用症候群や精神的低下につながります。安全確保のうえで歩行を促進すべきです。
4. 興奮したときはきっぱりと幻覚であることを伝える。
❌ 誤り。本人にとって現実の体験であるため、否定されると不安・不信感・抵抗が強まり、かえって状況が悪化します。
5. 見えている内容を否定しないで気持ちを受け止める。
✅ 正しい。レビー小体病の幻覚対応の基本は、患者の体験を受け入れ共感することです。これが信頼関係構築と行動心理症状の軽減につながります。
---
【試験対策ポイント】
• レビー小体病:物忘れ+視幻覚+歩行障害+書字振戦の組み合わせが特徴
• 幻覚患者への対応:否定ではなく受容と共感が原則
• PET所見:頭頂葉~後頭葉の糖代謝低下がレビー小体病を示唆