第2章|切断と義手

作業療法治療学 第2章

2-1 切断レベルと断端長・義手の種類

上肢切断か下肢切断か

上肢下肢(足部・足関節)
フォークォーター切断(肩甲胸郭間切断:肩甲骨・鎖骨ごと切除する最高位の上肢切断)、肩関節離断、上腕切断、肘関節離断、前腕切断、手関節離断、手部切断Syme切断(足関節離断。踵部の皮膚で断端を覆う)、Pirogoff切断・Boyd切断(踵骨の一部を残して脛骨と固定する)、Chopart関節離断、Lisfranc関節離断

ここに挙げたSyme・Pirogoff・Boyd・Chopart・Lisfrancは足部・足関節(下肢)の切断。上肢の最高位の切断はフォークォーター切断。

「人名の付いた切断=すべて下肢」ではない。上肢にもKrukenberg切断(前腕の断端を橈骨側と尺骨側に分け、つまめるようにする形成術)がある。

断端長の測り方(%)

部位計算式
上腕切断断端長 ÷ 上腕長(肩峰〜上腕骨外側上顆) × 100
前腕切断断端長 ÷ 前腕長(上腕骨外側上顆〜橈骨茎状突起)× 100

例:断端10cm・健側上腕長25cm → 10÷25×100=40%。分母は全上肢長でも前腕長でもなく、その切断部位の骨の長さ。

断端の区分と義手の種類

上腕の残存区分義手
30%未満(上腕骨頸部レベルを含む)極短断端肩義手に準じる
おおむね30〜50%短断端上腕義手
おおむね50〜90%標準断端上腕義手
90%以上長断端上腕義手
肘関節離断—肘義手
前腕・手義手
前腕切断(極短断端〜長断端。35%程度の短い断端でも前腕義手)前腕義手
手関節離断手義手(手関節離断用。手部義手ではない)
手根骨レベルの切断(手部切断)手部義手(指義手ではない)

上腕骨70%残存は肘義手ではなく上腕義手。肘義手は肘関節離断用。義手の名前は「残っている所」ではなく「切断した高さ」で付く。

切断後に起こりやすい拘縮・変形

切断起こりやすい拘縮・変形
前腕切断肘の屈曲拘縮(伸展拘縮ではない)
Chopart関節離断尖足・内反変形(背屈・外反の筋の付着部が失われ、下腿三頭筋と内反筋が優位に残る)
Lisfranc関節離断尖足・内反の傾向(外反ではない)
大腿切断股関節の屈曲・外転・外旋拘縮(内転ではない)

2-2 断端管理と幻肢

術後の断端管理(ドレッシング)

ソフトドレッシング(弾力包帯法)リジッドドレッシング(ギプスソケット法)
方法弾性包帯を巻く術直後からギプスで断端を覆う
長所創部の観察が容易(巻き直せる)浮腫を抑える、断端の成熟が早い、疼痛が少ない、早期の義肢装着ができる
短所巻き方で圧が不均一になりやすい創が観察できない
  • 弾性包帯は末梢(先端)ほど強く、中枢へ向かって圧を弱めながら巻く。先端ほど緩い・中枢から末梢へ巻く、は誤り(浮腫が先端にたまる)
  • 創がある間は創傷治癒を優先する。創治癒を確かめてから断端形成・義手装着へ進む
  • 上腕切断の術後は肩関節を外転位に保たない。内転位(中間位)で管理し、外転拘縮を防ぐ

幻肢・幻肢痛

  • 早期の義手装着・義手の使用訓練は幻肢・幻肢痛を軽減させる(悪化させる、は誤り)
  • ミラーセラピーは幻肢痛に用いる治療法

「上腕切断後は肩を外転位に保つ」「早期の義手装着は幻肢痛を悪化させる」「リジッドドレッシングは創の観察が可能」「弾性包帯は先端ほど緩く巻く」はいずれも逆。

2-3 能動義手の構成とソケット・継手の選び方

能動(体内力源・ケーブル式)義手の部品

部品役割
ソケット断端を収める。差し込み式など
ハーネス肩甲帯・体幹の動きをケーブルに伝え、義手を懸垂する。上腕義手は8字(8の字)ハーネスが標準
コントロールケーブル・ケーブルハウジング体の動きを手先具・肘継手に伝える。ハウジングはケーブルの通り道(さや)
ベース・プレート、リテーナーケーブルハウジングをソケット・前腕部に固定する金具
手継手・手先具手先具は能動フック・能動ハンドなど。随意開き式はケーブルを引くと開き、ゴムの力で閉じる

コントロールケーブルシステム

方式制御するもの主な使用
単式手先具の開閉だけ前腕義手
複式(二重)1本のケーブルで肘継手の屈曲(肘ロック時は手先具の開閉)上腕義手

上腕義手で肘の屈曲と手先具の開閉の両方を操作したいときは、複式コントロールケーブル+能動肘ブロック継手(ロック付きの肘継手)を選ぶ。釘打ちのように肘を一定の角度で固定して使う作業にもロックが要る。

肘継手

継手適応
能動単軸肘ブロック継手上腕切断の能動義手(短断端の40%程度でもこれ)。肘の屈曲とロックをケーブルで操作
倍動肘ヒンジ継手前腕極短断端(おおむね35%未満)。肘の屈曲角を増幅して義手前腕を大きく曲げる。肘の屈曲制限がある短い前腕断端で、腹部前面での両手動作を可能にする
軟性たわみ式継手前腕の長い断端(残った回内外を生かす)

前腕ソケット

ソケット適応
差し込み式断端に十分な長さがある場合
ミュンスター式・ノースウエスタン式短断端(上腕骨の顆部をつかんで自己懸垂する)
前腕用スプリットソケット極短断端。倍動肘ヒンジ継手と組み合わせる

「前腕のごく短い断端+肘屈曲制限」と来たらスプリットソケット+倍動肘ヒンジ継手。倍動肘ヒンジは前腕義手の継手で、上腕切断には使わない。

2-4 上腕能動義手の適合判定とトラブルの原因

力源:どこの動きでケーブルを引くか

  • 切断側の肩関節屈曲:ケーブルを引いて肘継手を屈曲させる・手先具を開く
  • 両側の肩甲骨外転(肩甲帯の前方突出):8字ハーネスの反対側(残存肢=非切断側)の腋窩ループが支点となり、両肩甲骨を広げてケーブルを引く
トラブル原因として考える所
肘90°屈曲位で手先具が完全に開かない残存肢(非切断側)の肩甲帯の筋力低下(肩甲骨外転が弱い)。既往の片麻痺などで非切断側の肩甲骨外転のMMTが低い例が典型
肘継手が十分曲がらず手先具が口元に届かない切断側の肩屈曲の可動域低下、非切断側の肩甲骨外転の筋力低下
肘の最大屈曲に大きな肩屈曲角度を要するケーブルの長さの不良(長すぎて弛んでいる)

随意開き式のフックはゴムの力で閉じる。ゴムが弱ければむしろ開きやすいので「開かない」原因にならない。上腕義手には前腕支持部(前腕カフ)は無いので、前腕支持部のトリミング不良も上腕義手の原因にならない。「切断肢の肩回旋制限」もフックの開大とは関係が薄い。

適合判定の主な項目

項目基準・ポイント
義手装着時の肩関節可動域屈曲90°以上が確保されているか
肘の最大屈曲に要する肩屈曲角度大きすぎればケーブル長の不良
手先具の開大肘90°屈曲位では手先具単体の最大開き幅まで完全に開くか(半分開けばよい、ではない)。口元・ズボンのボタンの位置でも開くか
ケーブルシステムの効率(コントロールケーブルシステムの操作効率)能動義手に共通して行う。操作効率(%)=手先具(末端装置)を直接引いて開くのに要する力 ÷ コントロールケーブルを介して手先具を開くのに要する力 × 100。ケーブルとハウジングの摩擦が小さいほど100%に近づく。目安は前腕義手70%以上・上腕義手50%以上
引っ張り荷重(下垂力)に対する安定性上腕義手で行う
回旋力に対する安定性上腕切断で行う。肘離断では実施しない
ソケットの適合どの切断レベルでも行う

2-5 義手の使い方と筋電義手

能動義手は「補助手」

  • 能動義手は感覚フィードバックが無く把持力も限られる → 押さえる・保持する役割を担い、精密な操作は健手が行う
  • 例:歯ブラシを義手で持ち、健手で歯磨き粉を絞る。茶碗は義手、スプーンは健手。包丁は健手で、義手は野菜を押さえる
  • 不向き:ドアノブを回す、耳かきのように体の近くで繊細・危険な操作、重い物(米袋など)の保持、背中側で紐を結ぶ

両手動作の問題は「細かい方=健手、持つだけの方=義手」で選ぶ。針・スプーン・アイロン・ハンマーのように操作する道具を義手に持たせている組合せは誤り。

筋電義手

特徴正しい理解
制御皮膚表面の電極で筋電位を拾い、モーターで手先を動かす。1つの電極でも開閉の制御ができる
ハーネス前腕筋電義手はハーネス不要
把持力能動(ケーブル式)義手より強い
対象小児にも用いる(幼児期からの装着もある)。症例は前腕義手が多い
手先具作業用の手先具も、五指が動くハンドもある
感覚普及している筋電義手には感覚フィードバック機能は無い