第4章|作業療法の評価・作業分析・面接
作業療法評価学 第4章
4-1 作業療法の理論・モデルとCOPM
作業遂行は人・環境・作業の相互作用で決まる(PEOモデル)。理論とモデルを評価に使う目的は情報の整理・問題の焦点化・説明と共有で、医学的な診断をつけることではない。
CMOP(カナダ作業遂行モデル)
| 要素 | 中身 |
| 人 | 身体・認知・情緒の遂行要素と、中心のスピリチュアリティ |
| 作業 | セルフケア・生産活動・レジャー |
| 環境 | 物理的・制度的・社会的・文化的環境 |
COPM(カナダ作業遂行測定)
- CMOPに基づく半構成的面接。クライエントの主観的な作業遂行の経験を測る。
- 手順:作業の問題を特定 → 各作業の重要度を10段階で評定 → 重要な作業(最大5つ)を選ぶ → 遂行度と満足度を10段階で評定。
- 再評価で遂行度・満足度の変化を見る(おおむね2点以上の変化が臨床的に意味がある目安)。
- 対象者に直接満足度を問う評価法(MTDLPも同じ)。
OTPF(作業療法実践の枠組み)
| 領域 | 例 |
| 作業 | ADL・IADL・休息と睡眠・教育・仕事・遊び・余暇・社会参加 |
| クライアント因子 | 価値・信念・スピリチュアリティ、心身機能、身体構造 |
| 遂行技能 | 運動技能・処理技能・社会交流技能 |
| 遂行パターン | 習慣・ルーティン・儀式・役割 |
| 文脈と環境 | 文化・個人・時間・仮想/物理・社会。個人因子(年齢・性別・生活歴など)はこの文脈に入る(クライアント因子ではない) |
| 作業要件(活動の要求) | 使う物・空間・社会的要求・手順・必要な動作 |
「意志」はMOHOの用語でOTPFの項目ではない。モデル名と用語の取り違えを狙う問題が多い。
4-2 人間作業モデル(MOHO)と作業遂行の評価法
MOHOは人を意志・習慣化・遂行能力の3つのサブシステムと環境でとらえる。役割の変化・環境の影響も扱う。「重要度の10段階評定」はCOPMの手順でMOHOではない。
| 評価法 | 方法 | 見るもの |
| OSA(作業に関する自己評価) | MOHOに基づく自己評価(質問紙) | 自己(作業遂行・意志・習慣化)と環境の項目を、4段階で「どのくらいできるか」「どのくらい大切か」を評定し、変えたいことの優先順位を示す |
| 意志質問紙(VQ) | 観察 | 意志(動機づけ)の表れ。言語表出が乏しい人にも使える |
| 興味チェックリスト | 自記式 | 活動への興味の有無・強さ・過去と現在 |
| 役割チェックリスト | 自記式 | 10の役割について過去・現在・未来の有無と価値(重要度) |
| OPHI-Ⅱ | 半構成的面接 | 作業生活の歴史(作業同一性・作業有能性・環境) |
| AMPS(運動とプロセス技能評価) | 観察 | なじみのADL・IADL課題を行う様子から運動技能と処理(プロセス)技能を評価 |
| COPM | 半構成的面接 | 重要度・遂行度・満足度(4-1) |
| AIMS | 観察 | 抗精神病薬による遅発性ジスキネジアなどの異常不随意運動 |
「観察に基づく」と問われたらAMPS・VQ・AIMS。「自己評価」ならOSA・興味チェックリスト・役割チェックリスト。COPMは面接。
4-3 生活行為向上マネジメント(MTDLP)
MTDLPは日本作業療法士協会が、作業療法士の臨床思考過程を分析して作った支援の手法。本人が大切にしている生活行為の実現を目標にする。
| 正しい特徴 | 誤りの選択肢の形 |
| 日本で開発(日本作業療法士協会) | 海外で開発された |
| 本人が重要と考える生活行為に焦点をあてる | 作業療法士が重要と考える生活行為を選ぶ |
| 生活行為聞き取りシートで、合意目標の実行度と満足度(各10段階)を本人に直接聞く。家族にも聞き取る | 質問紙だけで評価する/「遂行度を聞き取る」(遂行度はCOPMの用語) |
| ICFの枠組みで整理する(生活行為向上マネジメントシート・生活行為課題分析シート) | ICIDHで整理する |
| 本人・家族・支援者の協働を促す(申し送り表で地域へつなぐ) | 作業療法士だけで完結する |
| プランには心身機能へのアプローチも含む | 活動・参加だけを扱う |
| 終末期・精神障害・介護予防など幅広く使える | 身体障害の回復期だけが対象 |
4-4 作業分析と段階づけ
作業分析で見るもの
- 作業に必要な技能(運動・感覚・認知・対人)、使う道具・材料、工程、所要時間、環境。
- 工程ごとに分けて分析する。複数の方向から観察し、結果だけでなく過程を評価する。
- 観察の質は観察者の経験に左右される(観察は客観的で誰がしても同じ、ではない)。
- 作業耐久性は対象者側の能力で、作業そのものの分析項目ではない。材料や道具の分類自体も作業分析の目的ではない。
- 作業を選ぶときの要素=時間・運動範囲・対人交流・素材など。
段階づけ(グレーディング)
| 上げる方向 | 例 |
| 判断の数 | 少ない → 多い(難しくなる) |
| 工程 | 少ない → 多い |
| 時間 | 短い → 長い |
| 姿勢 | 安定 → 不安定 |
| 運動 | 単関節 → 多関節 |
| 変える条件 | 主にねらう機能 |
| 織物の模様の複雑さ | 注意(認知) |
| ビーズの大きさ | 巧緻性 |
| 粘土の硬さ | 筋力 |
| かご編み(籐細工) | 視覚と手の協調(視覚運動協応) |
活動の性質
| 活動 | 特徴 |
| 塗り絵 | 枠があり自由度は絵画より低い。中断・再開しやすい |
| 構成的な作業 | 手順・見本がはっきりしている(見本を見て塗るなど) |
| 投影的な作業 | 自由画・粘土など、自由度が高く内面が表れやすい |
道具と把持
| 道具 | 用途 |
| 錐(きり) | 小さな穴をあける |
| ボール盤 | 穴あけ(機械) |
| ノギス | 長さ・径を測る |
| ペンチ | 針金を曲げる・切る |
| 万力 | 材料を固定する |
道具の握り方:編み棒は千枚通しと同じ構えで持つ。道具の把持形態は作業分析で手の機能を見るときの手がかりになる。
4-5 面接・記録・目標設定
面接の技法
| 技法 | 中身 |
| 直面化 | 言動の矛盾を指摘して向き合わせる |
| 解釈 | 言動の背後にある(無意識の)意味を伝える |
| 感情の反射 | 相手の感情を言葉にして返す |
| 明確化 | あいまいな話をはっきりさせる |
| 要約 | 話をまとめて返す |
| 開かれた質問 | 「どのように」など自由に答えられる質問。初回面接で多用 |
初回面接では、信頼関係づくりを優先し、開かれた質問で話を引き出し、非言語的な表出(表情・姿勢)にも注意する。問題点をいきなり指摘しない。
行動変容の技法
| 技法 | 中身 |
| モデリング | 手本を見せてまねさせる |
| シェイピング | 目標に近づく行動を段階的に強化する |
| プロンプティング | 手がかり(声かけ・身振り)を与えて行動を促す |
| リフレーミング | 物事の見方の枠組みを変える |
| コーチング | 対話で本人の目標達成を支える |
SOAPと目標設定
| 項目 | 書くこと |
| S(Subjective) | 本人・家族の訴え |
| O(Objective) | 観察・検査の結果 |
| A(Assessment) | SとOをもとにした分析・解釈 |
| P(Plan) | 今後の計画 |
- 目標は具体的で測定可能に書く(SMART:具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)。質的な目標は達成の判定が難しい。
- 長期目標は退院後の生活・社会的な側面まで含める。短期目標は長期目標へ向かう段階。