第2章|医療安全・感染対策・記録と診療報酬
作業療法管理学・地域作業療法学 第2章
2-1 医療安全とインシデントレポート
インシデントレポート
| 論点 | 正しい理解 | ひっかけ |
| 報告者 | 当事者本人(気づいた者)が報告する | 部署の管理者が報告する/医師の指示で報告する |
| 報告対象 | 患者への実害の有無を問わない。スタッフ間の伝達ミス・ヒヤリハットも対象 | 治療の必要がない事象は報告不要は誤り |
| 目的 | 組織で共有・分析し再発を防ぐ。個人の責任追及ではない | 本人が十分反省していれば報告不要は誤り |
精神科作業療法でのリスク管理
| リスク | 適切な対応 | 不適切 |
| 無断離院のおそれ | 当面は1対1で見守りながら行う | — |
| 自傷行為 | はさみ・刃物など鋭利な道具を使う作業を避ける。作業種目の選択にリスク評価を入れる | 本人の希望があるからと切り絵などをさせる |
| 易怒性 | 個別または少人数で、刺激の少ない環境で始める | 多くの患者と同じ場で行う |
| 過負荷 | 疲労・負荷を見て量を調整する | 早く良くするために過負荷でも励まして続ける |
| 行動の自由 | 安全を確保しつつ自由度は保つ | 作業療法室内を自由に移動することを一律に禁止する |
2-2 訓練中の急変(意識消失)への対応
- 周囲の安全を確認し、その場で反応(意識)を確かめる。
- 反応がなければ大声で応援を呼び、救急対応(院内の救急コール・119番)とAEDを持ってくることを周囲に頼む。
- 呼吸・脈拍などのバイタルサインを確認する。
- 普段どおりの呼吸がなければ胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始め、AEDが届いたら使う。
57B082の選択肢の中で「まず行うこと」はバイタルサインの確認(その場での状態確認)。意識のない患者をベッドへ移動させるのは危険。その場を離れて主治医へ報告に行くこと、自分でAEDを準備しに行くこと、確認前の心臓マッサージは状態確認より先には来ない。AEDは応援を呼ぶときに周囲に持ってきてもらい、使うのは呼吸の確認の後。
2-3 標準予防策と経路別予防策(感染対策)
標準予防策(スタンダードプリコーション)=感染症の有無にかかわらずすべての患者の血液・体液・分泌物・排泄物・傷のある皮膚・粘膜を感染性ありとみなして扱う。中心は手指衛生。
| 場面 | 正しい | 誤り |
| 手指衛生のタイミング | 患者に触れる前後。患者の周囲環境(ベッド柵・器具)に触れた後も | 患者に直接触れなければ不要 |
| 手洗いの方法 | 石けんと流水で手指全体を15秒以上こすり洗い | 5〜10秒水に浸す・5秒程度で終える |
| 手を拭く | ペーパータオル(個人用) | 共用の布タオル |
| 血液・体液 | 出血の処置など接触が予想されるときは手袋。汚染が広がりそうならガウン・エプロンも | 屋外の作業療法なら予防不要(場所を問わず行う) |
| 器具・道具の消毒 | 使用ごと・汚染ごと(患者間で共用するとき) | 1日1回まとめて |
| 環境 | 適切に換気する。乾燥させすぎない | 外気が入らないよう閉め切る/湿度を40%以下に下げる |
病原体別のポイント
| 病原体・場面 | 主な経路 | 対策 |
| ノロウイルス(嘔吐物・便) | 接触(嘔吐物の飛散・乾燥でも広がる) | アルコールが効きにくいので石けんと流水で洗い流す。陰圧室は不要 |
| 便で汚染した衣類の交換 | 接触 | ガウン+手袋を着用 |
| インフルエンザ | 飛沫 | マスク。解熱直後はまだ感染力があるので、すぐに作業療法室での訓練に戻さない |
| 陰圧室が必要なもの | 空気感染(結核・麻疹・水痘) | N95マスク |
院内感染対策の考え方
- 適切=二次感染の防止・感染経路の把握・ガウンテクニック(防護具の正しい着脱)・院内ガイドラインの作成。
- 適切でない=抗菌薬の予防的投与(耐性菌を増やす)。
2-4 記録(SOAP)と診療報酬
SOAP
SOAPは問題指向型診療記録(POMR:Problem Oriented Medical Record)の経過記録の書き方。
| 項目 | 書く内容 | 例 |
| S(Subjective・主観的情報) | 患者本人・家族から得た情報(訴え・希望・自覚症状) | 「右手がしびれる」 |
| O(Objective・客観的情報) | 作業療法士が観察・測定した情報(検査結果・動作観察) | 握力・ROM・ADLの観察 |
| A(Assessment・評価) | SとOをもとにした解釈・判断(問題点・原因の分析) | — |
| P(Plan・計画) | Aに対する具体的な対応=作業療法プログラム・方針 | — |
入れ替えが定番のひっかけ。作業療法士が観察した情報はS ではなく O、家族から得た情報は O ではなく S、プログラムは A ではなく P。
疾患別リハビリテーション料
| 論点 | 正しい理解 |
| 診療報酬改定 | 2年に1度(3年ではない) |
| 単位 | 20分で1単位(15分ではない) |
| 算定日数 | 疾患ごとに算定日数の上限がある(例:脳血管疾患等180日、運動器150日) |
| 実施記録 | 実施時刻(開始・終了)を正確に記載する |
| 算定できる者 | 療法士だけではない(医師が行う場合も算定対象) |
2-5 チーム医療と作業療法士の役割
| 業務 | 主に担う職種 |
| 住環境評価(家屋評価・福祉用具・ADL環境の調整) | 作業療法士 |
| 義肢の製作 | 義肢装具士(作業療法士は使用訓練・適合確認に関わる) |
| 生体検査 | 臨床検査技師・医師 |
| 薬による疼痛管理・薬剤調整 | 医師・薬剤師 |
| 栄養管理 | 医師・管理栄養士 |
| ベッドサイドの医療機器の管理 | 臨床工学技士 |
| スタッフの配置 | 管理者 |
ICUの早期リハビリテーションでの作業療法士の役割=早期から退院後の日常生活機能を予測し、それを見すえて介入すること。摂食嚥下の治療は作業療法士も関わるが、ICUで「最も適切な」作業療法士の役割としては生活機能の予測が選ばれる。
服薬の相談を受けたとき
- まず何が心配なのかを聴く(傾聴)。
- 主治医に言いにくそうなら作業療法士から主治医へ伝えると申し出る(橋渡し)。
- 減薬・中止・「眠れない日だけ飲む」などの服薬方法の変更を作業療法士が勧めない。ベンゾジアゼピン系の急な中止は離脱症状(反跳性不眠・不安・けいれん)を起こしうる。「副作用は我慢して」と突き放すのも不適切。
2-6 精神科作業療法の運営と集団の構造
精神科作業療法(診療報酬)
| 論点 | 正しい理解 |
| 実施時間 | 患者1人あたり1日2時間を標準(「1単位20分」は疾患別リハビリテーションの話) |
| 場所 | 屋外でも実施できる |
| 材料費 | 患者の個人負担にしない |
| 記録 | 集団で行っても個々の患者の診療録に記載する |
開放集団と閉鎖集団
| 閉鎖集団 | 開放集団 |
| メンバー | 固定 | 出入り自由 |
| 凝集性 | 高まりやすい | 高まりにくい |
| 向く活動 | 調理など手順・技能・安全管理が要る活動、段階づけたプログラム | レクリエーションなど参加ルールの緩い活動(開放集団でも実施できる) |
急性期は個人作業療法が優先(集団の刺激は負担になる)。受容体験は個人より集団で得られやすい(「個人のほうが受容体験を得やすい」は誤り)。