「この検査は何を測るか」「この症状にはどの検査か」の対応は毎年のように問われる。略語と日本語名の両方で覚える。
| 対象 | 検査(略語) | 日本語名・要点 |
|---|---|---|
| 遂行機能(前頭葉) | BADS | 遂行機能障害症候群の行動評価。日常生活に近い課題で計画・問題解決を評価 |
| FAB | 前頭葉機能検査(Frontal Assessment Battery)。6項目・18点のベッドサイド検査 | |
| WCST | ウィスコンシンカード分類検査。概念の転換(柔軟性)・保続 | |
| 注意 | TMT(Trail Making Test) | A=数字を順に結ぶ(選択・持続)、B=数字と文字を交互に結ぶ(転換・分配)。処理速度・遂行機能も反映 |
| かな拾いテスト | 文章を読みながら特定のかなを拾う(選択・分配性注意)。正答数が少なく見落としが多いと注意障害 | |
| CAT(標準注意検査法) | 注意の総合バッテリー(持続性・選択性・転換性・分配性)。数唱・抹消課題・上中下検査・PASATなど | |
| 意欲 | CAS(標準意欲評価法)・Apathy scale | 自発性・意欲の低下(アパシー)の評価 |
| 記憶 | RBMT | リバーミード行動記憶検査。日常記憶(展望記憶を含む) |
| WMS-Ⅲ/WMS-R | ウェクスラー記憶検査。記憶の総合的・精密評価 | |
| 三宅式記銘力検査 | 対語(有関係・無関係)を覚えて再生。言語性の近時記憶 | |
| RAVLT | Rey聴覚性言語学習検査。単語リストを繰り返し聞かせ再生・遅延再生=言語性記憶・近時記憶 | |
| Rey複雑図形検査(ROCFT) | 図形の模写と再生(視覚性記憶・構成) | |
| 半側空間無視 | BIT/CBS | BIT=行動性無視検査(机上検査)、CBS=Catherine Bergego Scale(日常生活の観察) |
| 失行 | SPTA | 標準高次動作性検査 |
| 視覚失認 | VPTA | 標準高次視知覚検査 |
| 失語 | SLTA・WAB | 標準失語症検査・WAB失語症検査 |
| 知能 | WAIS(Ⅲ・Ⅳ)・Kohs立方体組み合せテスト | 成人用知能検査。Kohsは非言語性の知能 |
| 全般的認知 | MMSE・HDS-R | スクリーニング(見当識・記憶・計算など) |
TMT・CATは注意、ハノイの塔・WCSTは遂行機能で、記憶の検査ではない。近時記憶の検査を2つ選ぶならRAVLTと三宅式記銘力検査。言語性記憶を1つ選ぶならRAVLT(RBMTは日常記憶の総合検査で言語性に限らない)。Digit Span(数唱)は即時記憶・注意、Letter Cancellation(文字抹消)は注意・無視の検査。
| 言語性検査(7) | 動作性検査(7) |
|---|---|
| 単語・類似・算数・数唱・知識・理解・語音整列 | 絵画完成・符号・積木模様・行列推理・絵画配列・記号探し・組合せ |
計14項目で言語性IQ・動作性IQ・全検査IQを出す。WAIS-Ⅳは言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4指標で表す。
事例文の「困りごと」を症状名に置き換え、その症状の検査を選ぶ。運動麻痺が無いこと、言語は保たれていることなどの否定情報で選択肢を消していく。
| 事例文の表現 | 症状 | 選ぶ検査 |
|---|---|---|
| 日中ボーッとしている・促されると行う・自発話が乏しい(右前頭葉背外側) | 遂行機能障害・発動性低下 | BADS |
| 与えられた仕事はできるが自分で段取りを考えられない | 遂行機能障害 | BADS |
| 会話の内容が急に変わる・段取りよく片付けられない | 遂行機能障害 | BADS |
| 脱抑制で職場トラブル(両側前頭葉)、無視・記憶・視知覚は問題なし | 前頭葉機能障害 | BADS |
| 支度が整わず時間に遅れる+事故後の出来事を忘れる | 遂行機能障害+記憶障害 | BADS+RBMT |
| 担当者の名前・新しい出来事が覚えられない(前交通動脈瘤) | 記憶障害 | WMS-Ⅲ+MMSE |
| 右を向いていることが多い・左への気付きが遅い | 左半側空間無視 | BIT |
| 脈絡なく他者に話しかける | 前頭葉の抑制障害 | FAB |
| MMSEの図形模写(五角形)だけが崩れている | 視空間・構成の障害(無視の疑い) | BITを優先 |
CBSは半側空間無視、CASは意欲、HDS-Rは認知症のスクリーニングで、段取りの悪さ(遂行機能)の評価ではない。会話が成立しているのにSLTA、麻痺も失行症状も無いのにSPTAを選ばない。MMSEの図形模写だけが崩れている事例では、ADL・IADLの観察評価であるAMPSより先に、無視の精査(BIT)を行う。
前頭葉の損傷+「段取り・計画・自発性・時間管理」の困りごと=BADS。これが高次脳の評価問題で最も多い正答。
| 下位検査 | 内容 |
|---|---|
| 規則変換カード検査 | 途中で変わる規則に従ってカードに反応する(柔軟性) |
| 行為計画検査 | 透明な筒・ビーカー・水・針金などの道具を使い、手順を考えて中のコルクを取り出す問題解決課題 |
| 鍵探し検査 | 野原に見立てた四角の中で、なくした鍵を探す道筋を系統的に描く |
| 時間判断検査 | 日常の出来事にかかる時間を推定する |
| 動物園地図検査 | 動物園の地図上で、規則を守って施設を回るルートを計画する |
| 修正6要素検査 | 複数の課題を時間内に規則どおり配分して行う |
BADSには行動の質問表(DEX)も付く。総プロフィール得点が低いほど遂行機能障害が重い。上中下検査はBADSの下位検査ではない(注意の検査CATに含まれる課題)。
図版で「動物園の地図」が出たらBADS、ビーカー・筒・水などの道具セットの写真もBADS(行為計画検査)。
| 項目 | 内容 | みる機能 |
|---|---|---|
| 概念化(類似) | 「バナナとオレンジはどこが似ているか」 | 抽象的思考 |
| 語の流暢性(語彙の流暢性) | 特定の音で始まる語を1分間にできるだけ多く言う | 思考の柔軟性・発動 |
| 運動系列 | Luriaの拳・手刀・手掌の系列 | 運動プログラミング |
| 葛藤指示 | 検者と逆の反応をする | 干渉への抵抗 |
| Go/No-Go | 合図によって反応する・しない | 抑制 |
| 把握行動 | 検者の手を握らないよう指示 | 環境への依存・抑制 |
各3点・18点満点。計算・書き取り(MMSE・HDS-R)、色の呼称(失語・視覚の検査)、左右判別(頭頂葉)はFABに含まれない。
| 注意の種類 | 内容 | 生活での現れ |
|---|---|---|
| 持続性注意 | 一定時間注意を保つ | 作業が長続きしない、途中でミスが増える |
| 選択性注意 | 多くの刺激から必要なものを選ぶ | 周りの物音・人ですぐ気がそれる |
| 転換性注意 | 注意を切り替える | 別の作業に移れない、話が切り替わらない |
| 分配性注意 | 複数のことに同時に注意を配る | 2つのことを同時にできない |
数値の読み方は「どの検査が低いか」→「その検査が測る機能は何か」。TMT・かな拾い=注意、BADS=遂行機能、RBMT・三宅式=記憶、BIT=無視、WAIS=知能(言語性と動作性の差を見る)。
| 検査 | 形式 | 中身 |
|---|---|---|
| BIT(行動性無視検査) | 机上検査 | 通常検査(線分抹消・文字抹消・星印抹消・模写・線分二等分・描画)+行動検査(写真課題・電話・メニュー・時計・地図など)。通常検査146点満点(カットオフ131点)・行動検査81点満点(カットオフ68点)で、低いほど無視が重い |
| CBS(Catherine Bergego Scale) | 日常生活の行動観察 | 整容(顔の左側を洗い残す・剃り残す)、食事(左側の食べ残し)、移動時に左側の人や物にぶつかる、左側を向くことの困難、左の手足を忘れる、など10項目 |
CBSは生活場面での観察。「模写で左側を書き忘れる」は机上検査(BIT)の内容。「左に身体が傾く」はpusher現象、「左右を間違える」は左右失認でCBSの項目ではない。髭剃りで顔が左を向いてしまうのも無視とは逆の動き。