病期の問題は「その時期にまだ早いもの」を消していけば解ける。早い時期ほど休息・刺激の調整・身体と生活の土台、後の時期ほど対人技能・役割・社会参加・QOL。
| 時期 | 状態 | 作業療法の目的・役割 | まだ早いもの |
|---|---|---|---|
| 急性期 | 陽性症状が前景。消耗しやすい | 休息の援助・安全の保障、現実への移行の準備(現実との接点を保つ) | 身辺処理能力の回復・生活管理・対人交流技能 |
| 亜急性期 (急性期を脱した直後) | 幻覚妄想は減弱。疲れやすく、外的刺激への敏感さが残る | 疲労度の調整(活動量・刺激量の調整)、定期的な実施(予測できる枠)、回復のイメージについての心理教育 | 自信の回復・達成感・対人交流の拡大、役割の付与、行動範囲の急な拡大、身体的負荷の高い活動 |
| 回復期前期 | 現実感が少し戻り始める。無為・抑うつ・過眠が残る | 身体感覚の回復、基本的な生活リズムの回復、現実生活への移行(保護的な場から現実の生活へ橋をかける) | 仲間づくり・社会生活技能の習得・対人交流技能の向上 |
| 回復期後期 | 生活が安定してくる | 身辺処理・生活管理(服薬・金銭)、生活技能・対人交流技能の改善、自信の回復、達成感 | — |
| 維持期(生活期) | 地域生活・就労 | 生活の質(QOL)の向上、社会参加、就労支援 | — |
「現実への移行の準備」は急性期、「現実生活への移行」は回復期前期と語形で分けて出る。回復期前期に「現実への移行準備」「休息の援助」を選ぶのは1段階前。施設内生活の自立は回復期前期の目標ではなく、QOL向上・社会参加は維持期。
事例の読み方:「入院1か月で幻聴・妄想が減弱したところで作業療法開始」⇒疲労度の調整。「入院2か月で症状は改善したが無為が続く」⇒基本的な生活リズムの回復。「急性の幻覚妄想が軽減して1週間・復学が目標の外来導入」⇒生活リズムの獲得(余暇・社会参加・対人スキル・デイケア移行はその後)。
急性期後の導入時は低負荷・少人数・短時間・定期的。行動範囲を速やかに広げる、身体的負荷の高い活動から始める、対人交流の多い活動を多く入れる、役割を与える、はいずれも再燃のリスク。作業療法士は同じ担当者が一貫して関わる(複数の担当者で対応しない)。
作業中に「見られている」「見張られているからやめたい」と訴えられる場面は定番。答えの軸は否定も肯定もせず、深入りせず、いまの作業へ注意を戻す(継続を支える)。
| 対応 | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 作業活動に注意を向け直す声かけ・手工芸を継続できるような声かけ | ○ | 現実の作業が安心の足場になる。症状は軽減しており、作業療法は無為への働きかけとして始まった段階 |
| 「勘違いだ」「事実はない」と説明する・その都度訂正する | × | 妄想は説得で消えない。否定は自我を脅かし関係を壊す |
| 妄想の内容を詳しく聞き出す・主治医報告のために訴えを詳細に聴く | × | 内容への深入りはとらわれを強める |
| 作業療法の参加を直ちに中止する | × | 活動から遠ざかり無為が固定する。中止は主治医と相談する事項 |
| 作業種目を変更する | × | 原因は種目ではなく症状。本人が希望して安定参加できていた種目なら続ける |
「本人が困っていることを聴く」「興味・関心を把握する」は○だが、「妄想の内容を詳しく聞き出す」は×。聴く対象は本人の困りごと・希望で、妄想の中身ではない。
| 特性 | 作業療法士の対応 |
|---|---|
| 環境の変化・刺激に弱い | 作業環境を一定にする(同じ場所・同じ時間・同じ担当者)。緊張度は低く保つ |
| 一度に多くの情報を処理できない | 指示は短く・具体的に・一つずつ。まとめて指示しない。指示の前後に無関係な話をしない |
| 状況判断・臨機応変が苦手 | 手順を決めておく(構造化)。状況に応じて判断させない |
| 同じ失敗を繰り返す・並行処理が苦手 | 工程を分ける、1工程ずつ確認する、見本・手順書を使う |
| 用語 | 正しい理解 |
|---|---|
| オープングループ | メンバーの出入りが自由(固定しない)。離脱が起こりやすい |
| クローズドグループ | メンバーを固定。結束が高まりやすく離脱は起こりにくい |
| 規模 | 治療者1名に15名程度は多すぎる(小集団は数名〜10名前後) |
| 同質集団/異質集団 | 共感が得られやすいのは同質集団 |
| 集団と個人 | 作業療法の集団は個人の回復のための手段。集団の凝集性よりもメンバー個人の主観的体験を優先する |