第1章|温熱・寒冷・超音波

物理療法 第1章

1-1 熱の伝わり方と深達度

温熱療法はまず「どうやって熱が伝わるか」で分類される。ここが単独で出題される。

伝達様式しくみ代表
伝導熱高温の物体が皮膚に直接触れて熱が移るホットパック・パラフィン浴・湯たんぽ
対流熱温められた流体が流動して体表に触れる気泡浴・渦流浴・サウナ
輻射(放射)熱電磁波が体表で吸収され熱になる赤外線
変換熱エネルギーが組織内で熱に変換される超音波・極超短波(マイクロ波)・短波

深達度は 超音波・極超短波(深部・数cm)> ホットパック・赤外線・パラフィン(表在)。「極超短波はホットパックより深達度が浅い」は逆。

照射系の2法則(赤外線・紫外線・極超短波)

  • 逆二乗の法則=強度は距離の2乗に反比例。距離2倍で強度は1/4。
  • 余弦の法則=強度は入射角の余弦に比例。垂直入射が最大。
  • 両方を掛ける。距離2L・入射角30°なら (1/2)2×cos30°=0.25×0.866=0.2165=21.7%。距離を2乗し忘れると43.3%、余弦だけだと86.6%になる。

1-2 温熱療法 — 生理作用と各論

項目加温するとどうなるか
血流/血液の粘性血流は増加、血液粘性は低下(「粘性が増加」は誤り)
代謝率組織温1℃上昇で約13%(約1.13倍)増加。2〜3倍ではない
神経伝導速度組織温1℃上昇で約2 m/sec 増加。0.2 m/secは桁違い
結合組織伸張性が増す(拘縮へのストレッチ前に有効)
反射性血管拡張ある部位を加温すると離れた非加温部位の血管が拡張する現象。加温部位そのものの循環増加を指す語ではない
神経線維有髄のAδ線維のほうが無髄のC線維より温度変化の影響を受けやすい

温熱の各論 — 部位の形で選ぶ

手技選ばれる場面
パラフィン浴手指・足趾など複雑な凹凸。溶けた蝋が密着して均一に加温し保湿もできる。関節リウマチの手指変形での第一選択
ホットパック広く平らな部位。変形した手指の細部には密着しない
赤外線・遠赤外線平面的な照射。凹凸のある手指全体の均一加温には不向き
渦流浴・気泡浴温熱+水中での自動運動・浮力を同時に使える。骨端線への影響がなく小児のギプス除去後の拘縮・筋力低下に安全
極超短波深部加温。金属・水分・汗に熱が集中しやすい
交代浴亜急性期以降の循環改善。急性期に使うと出血・腫脹が悪化

温熱療法の禁忌=急性炎症・出血傾向・悪性腫瘍・感覚(知覚)障害部位・循環障害肢(閉塞性動脈硬化症など熱放散が悪く熱傷しやすい)・体内金属やペースメーカー(極超短波)・小児の骨端線(深部温熱)・多発性硬化症(Uhthoff現象)。

極超短波で「悪性新生物に治療効果がある」「金属プレート挿入部へ照射可能」「閉塞性動脈硬化症の患肢に効果的」はいずれも誤り=すべて禁忌側。正しいのは「汗・水分・金属への蓄熱で熱傷を起こしうる」。

水治療法 — 水位と浮力による免荷

水中では浮力が働くため下肢にかかる荷重が減る。水位が高い(深く浸かる)ほど免荷は大きく、免荷率はおおむね水に浸かった体積の割合に一致する。荷重制限のある術後早期や疼痛の強い例の歩行練習に使う。

水位一般的な免荷の目安
頸部(第7頸椎)約80〜90%免荷(荷重は体重の1〜2割)
剣状突起・胸部中央約60〜70%免荷
臍・上前腸骨棘約40〜50%免荷
大腿中部約30〜40%免荷
膝約10〜20%免荷

基準は割れていない。上の表がそのまま使える。体重の約50%が免荷される水位=臍・上前腸骨棘(腰部)レベルと覚える。腋窩・胸部まで浸かれば60%以上、大腿・膝までなら40%以下で、どちらも50%にはならない。

図で水位を選ぶ問題の解き方

国試では立位の人体図が5枚並び「体重の約◯%が免荷されるのはどれか」と問われる。図の番号は深さ順に並んでいないので、次の手順で解く。

  • ① 5枚を頸部 → 胸部(乳頭・剣状突起)→ 臍・腰部 → 大腿 → 膝の深さ順に並べ替える。水面が体のどの高さを横切っているかだけを見る。
  • ② 上の表を当てる。約50%なら臍・腰部レベルの図=水面が臍(へそ)を横切り、下着の上端のすぐ上に来ている図を採る。
  • ③ 残りを消す。水面が首・胸にある図は60〜90%で深すぎ、下着より下(大腿・膝)にある図は10〜40%で浅すぎる。

迷ったときの目印は臍(へそ)1点でよい。水面が臍を横切る図=約50%免荷。加えて「水位が高いほど免荷が大きい/浅いほど荷重が増える」という関係は常に成り立つので、%の絶対値があいまいでも並べ替えだけで残りの肢は消せる。

水の抵抗の種類と運動強度

  • 水中では動く速さが速いほど抵抗が急に大きくなる(およそ速度の2乗に比例)ので、速度で運動強度を調整できる(国試では粘性抵抗として問われる。酸素摂取量は反復速度に対して直線でなく急に増える)。
  • 浮力と静水圧は深さで決まり、速度には左右されない。
  • 抵抗の4種類:摩擦抵抗=体表と水の接触/粘性抵抗=水の粘り/渦抵抗=体の後ろにできる渦/造波抵抗=水面に立つ波(水面の高さにある部位、例えば前胸部に当たる)。
  • 水中運動の酸素摂取量に関わる代表例:水温・水深・動く速度・抵抗の大きさ。室内の湿度の影響は小さい。
  • 水の熱伝導率は空気の約25倍で、同じ温度でも水中では熱のやりとりが速い。

1-3 超音波療法

パラメータ正しい設定と理由
周波数1MHz=深部(3〜5cm)/3MHz=浅部(1〜2cm)。周波数が高いほど浅い。腰部の筋・筋膜なら1MHz。10MHzは治療用に使わない
強度0.5〜2.5 W/cm2(温熱目的は1.0〜2.0程度)。3.0や10 W/cm2は過大で熱傷・組織損傷
照射時間率100%(連続)=温熱効果/時間率を下げたパルス(20〜50%)=非温熱効果。急性〜亜急性には間欠照射。軟部組織の伸張性増大は温熱目的なので連続(100%)に近い高い照射率を使う=「10〜20%」では温熱がほとんど得られず不適
BNR(ビーム不均等率)低いほど均一で安全。高いとホットスポットができるので導子を速めに動かす。固定法で高BNR導子を使うのは危険
導子の大きさ有効照射面積(ERA)が小さい導子ほどビームは拡散する
治療面積1回に当てる範囲は有効照射面積(ERA)の2〜3倍以内。広げすぎるとエネルギー密度が下がり狙った効果が出ない
導子の移動速度1〜数cm/秒でゆっくり動かす(移動法)。止めたり速すぎたりすると定在波・ホットスポットや効果不足を招く
治療時間1部位あたり3〜5分程度が目安
接触空気は超音波をほとんど伝えない。カップリング剤を介して皮膚に密着させ移動法で当てる。5cmも10cmも離さない。水中法でも伝達され温熱効果は得られる
疼痛の訴え過剰な熱・強度のサイン。強度を下げる
  • 作用は温熱効果と非温熱効果の両方。機械的刺激で細胞膜の透過性は亢進し組織修復が進む(「抑制される」は誤り)。
  • 低出力超音波(LIPUS)=骨癒合促進。骨折・術後の骨癒合を早める目的では温熱・牽引・電気刺激・電磁波より優先度が高い。
  • 禁忌=成長期の骨端線(成長板)・眼・心臓・妊娠子宮・悪性腫瘍・ペースメーカー部位。

スポーツ障害の部位と照射部位

障害痛む部位
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)膝蓋骨下極〜膝蓋腱
Osgood-Schlatter病脛骨粗面
鵞足炎脛骨近位の内側
シンスプリント下腿遠位1/3の脛骨内側後縁
足関節内反捻挫前距腓靱帯(外果の前下方)
超音波は痛む軟部組織に当て、骨突出部への照射は避ける(骨膜で熱が集中し痛む)。

1-4 寒冷療法とRICE

冷やすと低下するもの冷やすと上昇するもの
組織温・代謝・組織の酸素需要量・神経伝導速度・筋紡錘の感受性・毛細血管透過性・筋緊張(痙縮)・浮腫疼痛(痛覚)閾値・血液粘稠度・滑液の粘性

「冷やすと下がる」がほぼ全部で、上がるのは疼痛閾値・血液粘稠度・滑液粘性の3つだけ。酸素需要量が減ることで低酸素による二次的損傷を抑えられる、が急性外傷で冷やす理屈。

「痛覚閾値の低下」「神経伝導速度の増加」「毛細血管透過性の亢進」「血液粘稠度の低下」「滑液粘性の低下」はすべて逆。また痙縮緩和は筋紡錘感受性・γ運動ニューロンの抑制を介するもので、「α運動ニューロン活動の抑制」を寒冷の主作用とはしない。

急性外傷の初期対応

  • RICE=Rest(安静・固定)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)。近年は適切な負荷を加えたPOLICEも提唱。
  • 受傷直後の肉ばなれ・捻挫・打撲は受傷日から固定・安静+アイシング。受傷後24〜48時間は温熱が禁忌で、ホットパック・パラフィン浴・極超短波・交代浴・入浴はいずれも出血と腫脹を助長する。
  • 冷却は1回15〜20分を間欠的に。「3日間ずっと氷水で冷やし続ける」は凍傷を招き誤り。
  • 急性期に積極的な可動域練習を行う、鎮痛薬で痛みを隠して翌日に競技復帰させる、も誤り。
  • 末梢循環障害+感覚鈍麻のある糖尿病足には寒冷療法は禁忌(血流をさらに減らし凍傷・壊死を招く)。