第4章|免疫・アレルギー
病理学 第4章
4-1 自然免疫と獲得免疫
| 自然免疫 | 獲得免疫(適応免疫) |
| 特異性 | 非特異的(相手を選ばず同じ反応) | 抗原ごとに特異的 |
| 速さ | 即座(数分〜数時間) | 遅い(初回は数日かかる) |
| 記憶 | なし(何回目でも同じ) | あり=2回目は速く強い |
| 担い手 | 好中球・マクロファージ・樹状細胞・NK細胞・補体 | B細胞(→形質細胞)・T細胞 |
- 獲得免疫は液性免疫(B細胞→形質細胞が抗体を出す)と細胞性免疫(T細胞が細胞ごと攻撃する)に分かれる。
- 流れは、抗原提示(樹状細胞・マクロファージ)→ヘルパーT細胞が指令→B細胞が抗体産生・キラーT細胞が感染細胞を破壊。
4-2 免疫にはたらく細胞の分業
| 細胞 | 系統 | 役割 |
| 好中球 | 自然 | 細菌を貪食する食細胞。急性炎症の主役。抗体は作らない |
| マクロファージ | 自然 | 貪食+抗原提示。抗体は作らない |
| 樹状細胞 | 自然 | 最も強力な抗原提示細胞。自然免疫と獲得免疫の橋渡し |
| NK細胞 | 自然 | ウイルス感染細胞・腫瘍細胞を抗原提示なしで傷害 |
| 好酸球 | 自然 | 寄生虫感染・アレルギーの遅発相に関与。抗体は作らない |
| 肥満細胞・好塩基球 | 自然 | 表面のIgEに抗原が結合すると脱顆粒しヒスタミンを放出。抗体は作らない |
| B細胞 | 獲得 | 抗原刺激で形質細胞へ分化する。抗体産生の「もと」 |
| 形質細胞 | 獲得 | 抗体(免疫グロブリン)を産生・分泌するのはこの細胞だけ |
| ヘルパーT細胞(CD4) | 獲得 | B細胞・マクロファージを活性化する司令塔。HIVの標的 |
| キラーT細胞(CD8) | 獲得 | 感染細胞を直接破壊する細胞性免疫の実行役 |
「抗体を産生するのはどれか」の答は形質細胞。好酸球・好中球・好塩基球・マクロファージはいずれも抗体を作らない。B細胞と迷ったら「実際に分泌するのは分化後の形質細胞」で切る。
「T細胞が抗原の刺激を受けて免疫グロブリンを産生する」は誤り → 抗体を作るのはB細胞系(形質細胞)のみ。T細胞はサイトカイン分泌と細胞傷害を担当し、抗体は作らない。
4-3 免疫グロブリンの5クラス
| クラス | 構造 | 血中割合 | 存在場所・特徴 |
| IgG | 単量体 | 約75%(最多) | 唯一胎盤を通過し母体から胎児へ受動免疫を渡す/二次応答の主役/Ⅱ型・Ⅲ型アレルギーに関与 |
| IgA | 二量体(分泌型) | 約15% | 唾液・涙・母乳(初乳)・腸液など分泌液に多く粘膜免疫を担う |
| IgM | 五量体(分子量最大) | 約10% | 一次応答で最初に産生/補体活性化が最も強い/胎盤は通過できない |
| IgE | 単量体 | ごく微量(最少) | 肥満細胞・好塩基球に結合=Ⅰ型アレルギー/寄生虫感染で上昇 |
| IgD | 単量体 | 微量 | B細胞表面の抗原受容体。分泌はほとんどなく機能の詳細は不明 |
一語で引ける対応:胎盤=IgG/唾液・母乳=IgA/最初=IgM/肥満細胞・アレルギー=IgE/B細胞表面=IgD。
よくある誤り → 正しくは
- 「IgMは唾液に含まれる」→ 唾液に出るのはIgA。IgMは血中にとどまる。
- 「IgDが肥満細胞を活性化する」→ 肥満細胞に結合するのはIgE。
- 「IgAが血漿中で最も多い」→ 血漿で最多はIgG。IgAが最多なのは分泌液の中。
4-4 一次応答と二次応答
| 一次応答(初回感染) | 二次応答(再感染・追加接種) |
| 先に出る抗体 | IgMが先、遅れてIgGへクラススイッチ | 最初からIgGが主体 |
| 立ち上がり | 遅い(数日〜1週間) | 速い(1〜3日) |
| 抗体量 | 少ない | きわめて多い(記憶B細胞のはたらき) |
- 「免疫反応で最初に産生される抗体」はIgM。IgGは「血中で最も多い」抗体であって「最初」ではない、という引っかけが定番。
- ワクチンや追加接種は、この二次応答(免疫記憶)を人工的に作る操作。
- 抗体検査では IgM高値=最近かかった(急性期)、IgG高値=すでに感染済みで免疫あり、と読む。
4-5 アレルギーの分類(Coombs-Gell分類)
| 型 | 別名 | 関与する因子 | 発現時間 | 代表疾患 |
| Ⅰ型 | 即時型・アナフィラキシー型 | IgE+肥満細胞・好塩基球 | 数分〜30分 | アナフィラキシー・気管支喘息・花粉症・蕁麻疹・アトピー性皮膚炎 |
| Ⅱ型 | 細胞傷害型 | IgG・IgM+補体・貪食 | 数分〜数時間 | 不適合輸血・自己免疫性溶血性貧血・特発性血小板減少性紫斑病・重症筋無力症 |
| Ⅲ型 | 免疫複合体型 | IgG(IgM)+補体 | 3〜8時間 | 血清病・SLE・急性糸球体腎炎・過敏性肺炎 |
| Ⅳ型 | 遅延型 | 感作T細胞・マクロファージ(抗体も補体も関与しない) | 24〜48時間 | ツベルクリン反応・接触性皮膚炎(金属・漆)・移植拒絶反応 |
| Ⅴ型 | 刺激型 | 抗受容体抗体 | — | Basedow病(抗TSH受容体抗体による機能亢進) |
Ⅰ〜Ⅲ型は抗体が主役(液性免疫)、Ⅳ型だけT細胞が主役(細胞性免疫)で抗体が関与しない。「即時型=Ⅰ型/遅延型=Ⅳ型」の対比が最頻出。
組合せ問題の定番の誤り → 正しくは
- 「Ⅱ型=細胞性免疫による組織傷害」は誤り → 細胞性免疫はⅣ型。Ⅱ型は抗体が細胞表面に結合して壊す細胞傷害型。
- 「Ⅱ型=免疫複合体病」は誤り → 免疫複合体はⅢ型。
- 「Ⅲ型=抗体による機能亢進」は誤り → 機能亢進型はⅤ型(刺激型・Basedow病)。
- 「Ⅳ型=補体活性化による細胞傷害」は誤り → 補体が働くのはⅡ型・Ⅲ型。Ⅳ型に補体は関与しない。
4-6 Ⅰ型アレルギーとアナフィラキシー
- 感作:初回の抗原侵入 → 形質細胞がIgEを産生 → IgEが肥満細胞・好塩基球の表面に結合して待機する。この段階では症状は出ない。
- 再侵入:同じ抗原が表面のIgEを架橋 → 肥満細胞が脱顆粒 → ヒスタミン・ロイコトリエンなどの化学伝達物質を放出。
- 症状:血管拡張と血管透過性亢進(蕁麻疹・浮腫・血圧低下)、気管支平滑筋の収縮(喘鳴・呼吸困難)、消化器症状。
「アナフィラキシーショックに関与する細胞」は肥満細胞(マスト細胞)。IgEを作るのはB細胞・形質細胞だが、即時に脱顆粒して発症させる主役は肥満細胞。好中球(細菌の貪食)・NK細胞(感染細胞の傷害)・マクロファージ(貪食と抗原提示)はいずれも別の役。
- 原因:食物(そば・卵・甲殻類・落花生)、蜂毒、抗菌薬・造影剤などの薬剤、ラテックス。装具・手袋・カテーテルを扱うリハ場面ではラテックスアレルギーに注意。
- 治療:アドレナリンの筋注(大腿前外側)が第一選択。抗ヒスタミン薬・ステロイドは補助で、単独では急変を止められない。
4-7 ショックの分類と末梢血管抵抗
| 分類 | 代表病態 | 心拍出量 | 末梢血管抵抗 | 四肢 |
| 循環血液量減少性 | 消化管出血・外傷・熱傷・脱水 | ↓ | ↑(代償性に収縮) | 冷たい・蒼白 |
| 心原性 | 心筋梗塞・重症不整脈・心不全 | ↓ | ↑ | 冷たい |
| 心外閉塞性(広義には心原性に含める) | 心タンポナーデ・緊張性気胸・肺塞栓 | ↓ | ↑ | 冷たい |
| 血液分布異常性 | アナフィラキシー・敗血症・神経原性 | 初期は↑ | ↓ | 初期は温かい |
末梢血管抵抗が低下するショック=血液分布異常性の3つ(アナフィラキシー・敗血症・神経原性)だけ。出血性も心原性も心タンポナーデも、血圧を保とうとして末梢血管抵抗は上昇する。
- アナフィラキシー=ヒスタミンによる急激な血管拡張。敗血症=細菌のLPSとTNF-α・IL-1などのサイトカインによる血管拡張と血管内皮障害。神経原性=交感神経遮断で血管トーヌスが消える(頸髄・上位胸髄損傷では徐脈も伴う)。
- 敗血症は「全身性炎症反応→敗血症→敗血症性ショック」と重症化する。
4-8 自己免疫疾患・免疫不全と日和見感染
- 自己免疫疾患=自己の成分を抗原と誤認して攻撃する病態。全身性(SLE・関節リウマチ・強皮症・Sjögren症候群)と臓器特異的(橋本病・Basedow病・重症筋無力症・1型糖尿病)に分かれ、女性に多いものが目立つ。
- 免疫不全は原発性(先天性)と続発性(後天性)。続発性の原因はHIV感染(CD4陽性ヘルパーT細胞が破壊される)・ステロイド・抗がん剤・免疫抑制薬・糖尿病・低栄養・高齢。
- 日和見感染=健常者では発症しない弱毒微生物による感染。ニューモシスチス肺炎・カンジダ症・サイトメガロウイルス感染・非結核性抗酸菌症・緑膿菌感染など。免疫不全患者のリハでは感染対策と全身状態の確認が前提になる。
- 移植拒絶反応はⅣ型(細胞性免疫)。免疫抑制薬で抑え込む代わりに日和見感染が増える、という表裏の関係にある。
4-9 加齢と免疫(免疫老化)
- 胸腺は思春期以降に萎縮し、新しいT細胞の供給が減る → T細胞機能が低下し、抗原抗体反応(獲得免疫)が低下する。高齢者で感染症が重症化しやすく、ワクチンの効きも落ちる理由。
- 一方で免疫の調節機構が乱れるため、自己抗体はむしろ増加する。「免疫は全部下がる」と単純化しない。
| 加齢で減るもの | 加齢で増えるもの |
| 肝重量・肝血流量/腎重量・糸球体濾過量・クレアチニンクリアランス/血漿アルブミン/抗原抗体反応・T細胞機能/最大心拍数・肺活量・筋量・骨量 | 自己抗体/残気量/収縮期血圧(脈圧)/体脂肪率 |
加齢の誤り選択肢 → 正しくは
- 「肝重量の増加」は誤り → 肝重量も肝血流量も減少する。
- 「自己抗体形成の低下」は誤り → 自己抗体は増加する。
- 「血漿アルブミン量の増加」は誤り → 合成能低下と低栄養で減少傾向。
- 「クレアチニンクリアランスの増加」は誤り → 糸球体濾過量の低下により減少する。
- 正しいのは「抗原抗体反応の低下」。