第2章|胎児期・原始反射・姿勢反射

人間発達学 第2章

2-1 胎児期・新生児期のとらえ方

  • 受精から出生まで約40週。受精後8週までが胎芽期、以降が胎児期
  • 器官がつくられる受精後3〜8週(器官形成期)は催奇形因子にもっとも弱い臨界期
  • 新生児期=生後4週(28日)まで。乳児期=1歳未満
  • 新生児は原始反射が優位。大脳皮質の成熟につれて原始反射は抑制(統合)され、入れ替わりに姿勢反応が出現する

胎児期に数が決まるもの=卵巣の原始卵胞。卵巣の実質は表層の皮質(卵胞が並ぶ)と深部の髄質(血管・神経が豊富)に分かれる。原始卵胞は胎生期につくられ出生時に最多(約100〜200万個)、以後は減る一方で新生されない(1万個は少なすぎる)。成人卵巣は片側約5〜7g(50gは大きすぎる)。成熟卵胞にできる腔は卵胞腔(卵胞洞)であり「卵巣腔」という構造はない。排卵後の黄体はプロゲステロンが主だがエストロゲンも産生する。

2-1b 低出生体重児・早産児のポジショニング(NICU)

  • 出生体重で低出生体重児=2,500g未満/極低出生体重児=1,500g未満/超低出生体重児=1,000g未満。在胎37週未満が早産児
  • 子宮内で四肢を折りたたむ生理的屈曲在胎34週頃からできあがる。在胎30週前後で生まれた児にはまだ屈曲がなく、重力下では伸展・外転・外旋へ崩れる
  • 放っておくと頸部・体幹の伸展(反り返り)、肩甲骨の挙上・後退(W肢位)、股関節の外転・外旋(カエル肢位)が固定化し、正中で手を合わせる・手を口へ運ぶといった動きが育たない

ポジショニングの狙いは子宮内に近い「屈曲・正中位指向」を外からつくり直すことネスティング(タオル等で囲いをつくる)で身体の境界を感じさせ、手が口や正中に届く位置に保つ。

部位とるべき肢位(○)避ける肢位(×)
頭・頸部正中位でごく軽い屈曲伸展位(頭部伸展・後屈)
体幹軽度屈曲・丸みをもたせる伸展位(反り返り)
肩甲帯前方突出(プロトラクション)挙上位・後退(引き込み)
肩関節内転・内旋、上肢は正中へ(手が口に届く)外転・外旋
股関節屈曲・内転〜内外転中間位・軽度内旋外転・外旋(カエル肢位)
膝・足屈曲位、足底が支持面に触れる伸展位で突っ張らせる

選択肢の見分けは「屈曲・内転・内旋・前方突出」なら○/「伸展・外転・外旋・挙上」なら×の一本で足りる。「頸部伸展位」「体幹伸展位」「肩甲骨挙上位」「肩関節外転位」はいずれも誤り

2-2 反射・反応の中枢レベル(階層)

中枢神経の成熟につれ、支配は脊髄→脳幹→中脳→大脳皮質へ移る。

レベル代表性質
脊髄屈筋逃避反射・交叉性伸展反射・Galant反射出生時からあり最も早く消える
脳幹(橋・延髄)ATNR・STNR・緊張性迷路反射(TLR)・Moro反射・陽性支持反射緊張性反射。多くは4〜6か月で消失(STNRだけは3〜4か月に出現し8〜12か月で消失=2-3表)
中脳立ち直り反応(Landau反応・視性/迷路性立ち直り)遅れて出現し持続
大脳皮質平衡反応(ホッピング・傾斜反応)最後に出現し生涯持続

Landau反応は立ち直り反応の一つなので中脳。Moro反射・ATNR・陽性支持反射は脊髄〜脳幹(橋・延髄)、Galant反射は脊髄。中脳を選ぶ設問では立ち直り系を探す。

2-3 原始反射の出現・消失時期

反射出現消失メモ
交叉性伸展反射出生時1〜2か月最も早く消える部類
自動歩行(原始歩行)出生時1〜2か月立たせると歩行様の下肢運動
Galant反射出生時2〜3か月早期に消える
探索(ルーティング)反射出生時4か月頃哺乳関連
吸啜反射出生時4〜6か月哺乳関連
Moro反射出生時4〜6か月
手掌把握反射出生時4〜6か月随意的な把握に置き換わる
緊張性迷路反射(TLR)出生時4〜6か月
非対称性緊張性頸反射(ATNR)出生時4〜6か月残存は寝返り・正中位指向を妨げる
対称性緊張性頸反射(STNR)出生時にはない/3〜4か月で出現8〜12か月頃残存は四つ這い獲得を妨げる
足底把握反射出生時9〜12か月消失が最も遅い。独歩開始と重なる
Babinski反射出生時1〜2歳以後は足趾底屈が正常

「消失が最も遅いのはどれか」型は足底把握反射で確定。手掌把握(4〜6か月)と足底把握(9〜12か月)で時期が違うのが引っかけどころ。

「出生時に出現していないのはどれか」→STNRだけが生後3〜4か月に遅れて出現する。Moro反射・Galant反射・Babinski反射・TLRは出生時から存在するので消せる。

2-4 誘発刺激と反応パターン

反射刺激反応
Moro反射頭部を急に後屈させる・落下様の刺激両上肢が外転・伸展して挙上→抱え込むように屈曲・内転
手掌把握反射手掌を尺側から橈側へこする手指が屈曲し握り込む
足底把握反射足底を圧迫する足趾が屈曲する
探索反射口角をなでる頭部を刺激側へ回旋し口で探す
吸啜反射口唇・口腔内への刺激吸う運動
Galant反射腹臥位で脊柱の側方をこする体幹が刺激側へ側屈(刺激側が凹)
屈筋逃避反射一側下肢への侵害刺激その下肢を引っ込める(屈曲)
交叉性伸展反射一側下肢への屈曲・侵害刺激反対側の下肢が伸展
陽性支持反射足底を接地させる下肢が伸展し支持する
台のせ反応(プレイシング)足背を台の縁に当てる足を背屈・挙上して台の上に乗せる

組合せ問題で毎年出る誤りと正解。

  • 「Galant反射=刺激側がになる側屈」は誤り → 正しくは刺激側が凹(刺激側へ曲がる)
  • 「Galant反射=体幹の回旋」は誤り → 正しくは側屈
  • 「探索反射=頸部の側屈」は誤り → 正しくは刺激側への回旋
  • 「台のせ反応=足関節の底屈」は誤り → 正しくは背屈して台に乗せる
  • 「Moro反射=両上肢の挙上」「交叉性伸展反射=刺激反対側の下肢の伸展」は正しい

2-5 緊張性反射3つの見分け(図問題の解き方)

反射引き金上肢下肢左右差
ATNR頸部の回旋顔面側が伸展・後頭側が屈曲上肢と同じ向きあり
STNR(頸部伸展)頸を反らす伸展屈曲なし
STNR(頸部屈曲)頸を曲げる屈曲伸展なし
TLR(腹臥位)頭位=うつ伏せ屈曲屈曲なし
TLR(背臥位)頭位=あお向け伸展伸展なし

図問題は①左右差があるか ②屈曲か伸展か、の2つだけ見る。左右差あり=ATNR(顔を向けた側の腕が伸び反対が曲がる=フェンシング肢位)。左右対称で腹臥位が屈曲・背臥位が伸展=TLR。頸の前後屈で上下肢が逆向きに動く=STNR

3つとも「逆に書く」形で狙われる。

  • 「STNR頸部伸展=上肢屈曲・下肢伸展」は誤り → 正しくは上肢伸展・下肢屈曲
  • 「ATNR=顔を向けた側の上下肢が屈曲」は誤り → 正しくは顔面側が伸展・後頭側が屈曲
  • 「TLR=腹臥位で四肢の伸展」は誤り → 正しくは腹臥位で屈曲・背臥位で伸展

Landau反応は緊張性反射ではなく立ち直り反応。腹臥位で水平に持ち上げると頭部・体幹・下肢が伸展する(6か月頃出現)。同じ腹臥位でも屈曲していればTLR、伸展していればLandau

2-6 姿勢反応(遅れて出現し生涯持続)

原始反射が「出現して消える」のに対し、姿勢反応は遅れて出現し消えない。この非対称が判別の軸になる。

反応出現内容
立ち直り反応(頸・体幹・視性・迷路性)生後数か月〜頭部・体を正しい位置へ戻す。中脳レベル
Landau反応6か月頃腹臥位水平懸垂で頭部・体幹・下肢が伸展
前方パラシュート反応6〜7か月前方へ倒すと両上肢を伸ばして支える
側方パラシュート反応7か月頃座位で側方へ崩れると同側の手を出して支える
後方パラシュート反応9〜10か月後方へ崩れると後ろへ手をつく
背屈反応立位獲得期以降立位で後方へ傾けたときの足関節背屈。座位レベルでは問わない
平衡反応(ホッピング・傾斜反応)立位獲得期〜大脳皮質レベル。最も遅く出現し生涯持続

パラシュート反応(保護伸展反応)は6か月以降に方向別に出そろい、以後は生涯持続する。「10か月の正常児にみられるのはどれか」「つかまらずに立てる乳児にみられるのはどれか」の答えはパラシュート反応で、Moro反射・手掌把握反射・ATNR・TLR・自動歩行はすべて消失済みとして消せる。

2-7 月齢マイルストーンと反射の対応

月齢運動発達この時期の反射所見
1〜2か月腹臥位で頭部をわずかに挙上自動歩行・交叉性伸展が消失(Galantは2〜3か月
3〜4か月定頸Moro・ATNR・TLR・手掌把握が消えていく/STNRが出現
6〜7か月座位(7か月頃)前方・側方パラシュートが出現/Landau反応
8〜9か月四つ這い・つかまり立ち足底把握はまだ残存/後方パラシュートが出現
12〜15か月独歩足底把握も消失し、原始反射は出そろって消えている

四つ這いから座位へ戻れる(8〜10か月)場面で「観察される反応を2つ」なら、まだ残っている=足底把握反射すでに出ている=側方パラシュート反応の組合せ。自動歩行とATNRは消失済み、背屈反応は立位獲得期の話で早すぎる。

2-8 原始反射の残存と疾患

消えるべき時期を過ぎて原始反射が残るのは中枢神経障害(脳性麻痺など)の所見。逆に姿勢反応のほうは出現が遅れる・欠如する

病態残存しやすい反射姿勢・所見の特徴
痙直型(四肢麻痺)TLR・ATNR腱反射亢進・足クローヌス陽性・下肢の伸筋共同運動・はさみ肢位・股関節外転制限・関節拘縮
アテトーゼ型緊張性頸反射(STNR・ATNR)・TLR。選択肢に緊張性反射がなければGalant反射頸の位置で四肢の筋緊張が変動・不随意運動・体幹の非対称
Down症(低緊張)原始反射の残存は特徴ではない筋緊張低下・関節弛緩性。腹臥位移動で股関節外転・外旋(カエル肢位)、座位はワイドベース

重度の痙直型四肢麻痺で「臨床症状として可能性が低いのはどれか」→パラシュート反応陽性。原始反射は残るが、防御反応(保護伸展)は出現が遅延・欠如するのが原則。クローヌス・伸筋共同運動・TLR残存・股関節外転制限はいずれも矛盾しない。

Down症児の腹臥位移動で「尖足」「上肢の過剰な引き込み」「TLRの残存」「下肢運動の交互性の欠如」はすべて痙性(緊張亢進)側の所見で誤り。Down症は低緊張なので正反対に考える。

2-9 発達段階に沿った理学療法

  • 介入は正常発達の順序に沿う:定頸→寝返り→座位→四つ這い→立位→歩行。段階は飛ばさない
  • 促通するのは立ち直り反応・平衡反応。抑制するのは原始反射(陽性支持反射・緊張性頸反射など)
  • 痙直型に抵抗運動(筋力増強)を課すと痙性を高めうるので優先しない

「頭部コントロール良好・寝返り可能」の段階で次に優先するのは座位での体幹の立ち直り反応の促通。歩行練習・椅子からの立ち上がり練習は座位未獲得で時期尚早、陽性支持反射の促通は異常な伸展パターンを助長するので誤り。

2-10 原始反射と病的反射を混同しない

病的反射は成人で出れば錐体路障害を示す。Babinski群は刺激部位が違うだけで陽性所見はすべて母趾背屈

反射刺激部位と方向
Babinski反射足底の外側縁を踵から小趾側へこする
Chaddock反射外果の下方を後ろから前へこする
Oppenheim反射脛骨前面を上から下へ強くこする
Gordon反射下腿三頭筋(腓腹筋)をつまむ
把握反射手掌を尺側から橈側へこする→手指屈曲
掌オトガイ反射母指球(手掌橈側)をこする→同側オトガイ筋の収縮

把握反射・掌オトガイ反射は前頭葉徴候で、Babinski群とは別枠。乳児期の把握反射やBabinski反射(1〜2歳まで)は生理的で、それ以降の陽性が異常。