第4章|認知・言語・社会性の発達

人間発達学 第4章

4-1 認知の発達 — 4段階の枠組み

ピアジェは、外界を取り込む枠組み(シェマ)を同化(既存の枠に当てはめる)と調節(枠のほうを作り変える)で更新しながら、思考が4段階で質的に変わるとした。順序は不変で、飛び越しはない。

段階年齢思考の特徴この時期に成立するもの
感覚運動期0〜2歳感覚と運動で世界を知る。循環反応の反復対象の永続性・遅延模倣・道具の使用
前操作期2〜7歳象徴機能は使えるが論理は未熟。自己中心性・アニミズム・中心化ごっこ遊び・言葉・描画。保存はまだできない
具体的操作期7〜11歳脱中心化・可逆性。ただし具体物の範囲に限る保存概念・分類・系列化
形式的操作期11歳〜抽象的・仮説演繹的思考、命題の操作「もし〜ならば」の推論、組合せ的思考

前操作期の自己中心性は「わがまま」ではなく、他者の視点に立てないという認知的な制約を指す。アニミズム=無生物にも心があると考える。

4-2 対象の永続性と保存概念 — 混同しない

対象の永続性

  • 見えなくなっても物は存在し続ける、と分かること。生後8か月〜1歳頃に成立(感覚運動期)。
  • 成立前:布をかぶせると探さない。成立後:布をめくって探す。
  • 養育者を「その場にいなくても存在する特定の相手」として保持できるようになるため、同じ時期に人見知り・分離不安が現れる。認知と社会性は連動する。

保存概念

  • 見た目(形・並べ方)が変わっても数・量・重さは変わらない、と分かること。7歳前後・具体的操作期で獲得。
  • 獲得順は数 → 液量 → 重さ → 体積(ずれて順に獲得される)。

保存概念を感覚運動期・前操作期の獲得とするのは誤り → 正しくは具体的操作期。「永続性=乳児期/保存=学童期」で桁を分けて覚える。

4-3 言語の発達 — 前言語期から二語文へ

時期音声・言語
〜1か月叫喚(泣き)・反射的発声
2〜3か月クーイング(「アー」「クー」など母音的な発声)
4〜6か月声遊び・過渡的喃語。声のやりとりを楽しむ
6〜8か月規準喃語(「ばばば」のように子音+母音を反復)
8〜10か月音声の模倣・ジャーゴン、指さしの出現
10〜12か月初語(意味のある一語)。「ちょうだい」など簡単な言語理解
1歳〜1歳半一語文。有意味語が2語言える(3語は1歳半頃)。絵本の物の名前を言う
1歳半〜2歳語彙爆発・二語文(「ワンワン きた」)。第一質問期(「これなに」)
2〜3歳多語文・助詞の使用・自分の姓名を言う
3〜4歳三語文以上、第二質問期(「なぜ」)
4〜6歳構文はほぼ成人型。しりとりができる(音韻意識の完成)

理解は産出に先行する。話せる語数より分かる語数のほうが常に多い。クーイング=母音中心、喃語=子音を含む反復、で区別する。

4-4 共同注意 — 言葉が出る前の土台

  • 生後9か月頃、自分・もの・他者の三項関係が成立する(それ以前は自分と相手の二項関係のみ)。
  • 指さし:要求の指さし(1歳前後)→ 叙述・共感の指さし(1歳〜)。相手と関心を共有するための指さしが言語獲得の前提になる。
  • 視線追従・社会的参照(不安な場面で養育者の表情を確認する)も同時期。
  • 共同注意・指さし・呼名反応の乏しさは自閉スペクトラム症の早期サインになる。

4-5 情緒と自己の発達

  • 情緒の分化:出生時は未分化な興奮のみ → 生後3か月頃に快・不快に分かれる → 不快から怒り・嫌悪・恐れ、快から愛情・得意が分かれ、2歳頃までにほぼ出そろう。
  • 微笑:生理的微笑(新生児期・自発的で相手と無関係)→ 社会的微笑(2〜3か月・人の顔に反応)→ 選択的微笑(6か月頃〜・見知った人にだけ)。
  • 鏡に映った自分を自分と分かる(鏡像自己認知)のは1歳半〜2歳。
  • 第一次反抗期(2〜4歳)=自我の芽生え。学童期に自尊心が育ち、思春期の第二次反抗期でアイデンティティを問い直す。

4-6 愛着(アタッチメント)と人見知り

段階時期特徴
前愛着〜3か月相手を選ばず、誰にでも同じように反応する
愛着形成3〜6か月見慣れた人に多く微笑む(選択的な反応の始まり)
明瞭な愛着6か月〜2歳人見知り・分離不安が出現。養育者が安全基地になり、そこを拠点に探索する
目標修正的協調3歳〜養育者の意図を推測し折り合える。内的ワーキングモデルの形成
  • 人見知り(8か月不安)は生後6〜9か月頃に出現する。特定の養育者への愛着と、見知らぬ人との区別ができた証拠で、正常な発達
  • 愛着の質はストレンジ・シチュエーション法(1歳前後)で分類:安定型・回避型・アンビバレント(抵抗)型・無秩序型。

人見知りを「情緒の問題」「関わり不足」と読むのは誤り → 正しくは愛着形成が進んだサイン。乳幼児の発達項目の中でもかなり早期(6〜9か月)に出る点が繰り返し問われる。

4-7 遊びの発達

社会的な関わり方目安内容
ひとり遊び〜2歳他児と関わらず一人で遊ぶ
傍観的行動2歳前後他児の遊びを見ているが加わらない
平行遊び2〜3歳同じ場で似た遊びをするが、やりとりはない
連合遊び3〜4歳一緒に遊ぶが役割分担はない
協同遊び4〜5歳〜役割分担とルールがあり、目的を共有する

遊びの形式は、機能遊び(感覚運動期)→ 象徴遊び(ごっこ遊び・2歳〜、前操作期の象徴機能)→ ルールのある遊び(学童期)と進む。

4-8 遠城寺式乳幼児分析的発達検査 — 6領域

  • 適用は0か月〜4歳7か月。3分野を各2領域、計6領域で評価する。
  • 運動=移動運動・手の運動/社会性=基本的習慣・対人関係/言語=発語・言語理解
  • 結果は折れ線グラフで結ぶため、領域間のばらつき(どこが遅れているか)が一目で分かる。
月齢対人関係・基本的習慣発語・言語理解運動(比較用)
2〜3か月あやすと声を出して笑うクーイング首がすわる
4〜6か月鏡に映った自分に反応する喃語・人の声で振り向く寝返り
6〜7か月人見知りをするおもちゃを見て声を出す座位(お座り)
7〜8か月ビスケットを自分で食べる声の調子をまねるずり這い
8〜9か月いないいないばあを喜ぶ・身振りをまねる音声をまねようとするつかまり立ち
10〜12か月コップを自分で持って飲む・バイバイをする初語・「ちょうだい」が分かる伝い歩き
1歳〜1歳半つつみ紙をとって食べる2語言える(3語は1歳半頃)・絵本の物の名前を言う独歩・積み木を2つ重ねる(手の運動)
1歳半〜2歳スプーンで食べる・排尿を知らせる簡単な指示に従う走る・階段を這って昇る
2〜2歳半排尿を予告する(2歳半)二語文が安定する・自分の姓名を言う階段を1段ずつ昇る
3歳〜排泄が自立する・衣服を着脱する三語文・色の名前を言う片足立ち・三輪車

出題は2型に絞られる。①ある項目が何か月か(早い/遅いの比較)②同じ時期に他領域で何ができるか(横並び)。6領域の名称はそのまま選択肢になるので丸暗記する。なお遠城寺式はスクリーニングであり、知能指数(IQ)は算出しない。

4-9 「12か月の壁」で前後を振り分ける

この検査の出題は「どちらが早いか」「1歳前か後か」に集約される。個々の月齢を丸暗記するより、1歳を境に二分したほうが速い。

生後12か月以前にできる12か月を過ぎてからできる
人見知りをする(6〜9か月)積み木を2つ重ねる(1歳〜1歳半)
お座り(7か月)/ずり這い有意味語を2語言える(1歳〜1歳半)・3語言える(1歳半頃)
ビスケットを自分で食べる(7〜8か月)独歩(1歳〜1歳3か月)
いないいないばあを喜ぶ(8〜9か月)走る(1歳半〜2歳)
つかまり立ち・伝い歩き(8〜11か月)二語文(1歳半〜2歳)
コップを自分で持って飲む(10〜12か月)スプーンで食べる(1歳半〜2歳)
バイバイをする・初語(10〜12か月)排尿を予告する(2歳半)

「積み木を2つ重ねる」「有意味語を2〜3語言える」を12か月以前としてしまうのが最頻の誤り → 正しくはいずれも1歳を過ぎてから。数字を1つだけ持つなら人見知り=6〜9か月が最も早いを覚える。排尿の予告は選択肢の中でほぼ常に最も遅い

4-10 まぎらわしい対比のまとめ

紛らわしい組区別のしかた
生理的微笑/社会的微笑新生児期の自発的なもの/2〜3か月・人の顔に対する反応
クーイング/喃語2〜3か月・母音中心/6か月頃・子音を含む反復
人見知り/分離不安見知らぬ人への警戒/養育者と離れることへの不安。どちらも6〜9か月から
対象の永続性/保存概念8か月〜1歳(感覚運動期)/7歳前後(具体的操作期)
平行遊び/連合遊びそばで似た遊び・やりとりなし/一緒に遊ぶが役割分担なし
遠城寺式/デンバー式(JDDST-R)6領域・0か月〜4歳7か月・折れ線で領域差を見る/4領域・0〜6歳・通過率75%で判定

認知・言語・社会性は別々に進むのではなく同じ時期に噛み合って進む。生後6〜9か月=対象の永続性・人見知り・喃語、1歳前後=初語・指さし・コップ飲み、1歳半〜2歳=二語文・象徴遊び・鏡像自己認知。この3つの束で覚えると領域をまたぐ問題にも対応できる。