第5章|幼児期・学童期・青年期

人間発達学 第5章

5-1 区分と身体発育のリズム

幼児期以降の区分は年齢でおおまかに切る。思春期は年齢でなく第二次性徴の開始から終了までで定義される時期で、青年期の前半に重なる。中学生はこの思春期のまん中にあたる。

区分年齢の目安キーワード
幼児期1〜6歳(就学前)第一次反抗期・基本的生活習慣の自立・遊び
学童期6〜12歳(小学校)勤勉性・ギャングエイジ・潜伏期
思春期おおむね10〜18歳第二次性徴・心理的離乳・第二次反抗期
青年期12〜20歳代前半自我同一性の確立・モラトリアム

身体の伸び方は一定でなく、急に伸びる時期が生涯に2回ある。

  • 第一発育急進期=乳児期。出生時に身長約50cm・体重約3kgだったものが、1歳で身長1.5倍(約75cm)・体重3倍(約9kg)になる。
  • 幼児期は発育速度がいったん緩やかになる。4歳で身長2倍(約100cm)・体重5倍(約15kg)。
  • 第二発育急進期(思春期スパート)=学童期後半〜思春期。性ホルモンにより再び急伸する。

発育の評価指数は年齢で使い分ける。乳幼児はカウプ指数=体重(g)÷身長(cm)の2乗×10、標準15〜19。学童はローレル指数=体重(kg)÷身長(cm)の3乗×10の7乗、標準115〜145。

5-2 スキャモンの発育曲線

臓器・組織を4つの型に分け、20歳(成人値)を100%としたときの発育の進み方を示したもの。型ごとに伸びる時期が違うことが問われる。

含まれるもの伸び方
神経型脳・脊髄・頭囲・感覚器乳幼児期に急伸。4〜6歳で成人の80〜90%に達し、学童期前半でほぼ完成
一般型身長・体重・筋・骨格・呼吸器・循環器・消化器乳児期と思春期の2回急伸するS字型
リンパ型胸腺・扁桃・リンパ節学童期に急伸し12歳前後で成人の約2倍(約190%)にピーク、その後低下して成人値へ
生殖型精巣・卵巣・子宮・前立腺学童期までほぼ横ばい、思春期に急伸

早い順に神経型 → リンパ型 → 一般型(2回目) → 生殖型。生殖型がいちばん遅い。

「リンパ型は成人値を超えない」は誤り。正しくは4型で唯一100%を超え、約190%まで達してから下がる。「神経型は思春期に急伸する」も誤りで、神経型が伸びるのは乳幼児期。

5-3 幼児期の運動発達

年齢粗大運動微細運動・描画
2歳走る/両足でジャンプ/階段は両足をそろえて一段ずつ上る積み木6個/なぐりがき/縦線の模写
3歳片足立ち数秒/三輪車をこぐ/階段を交互に上るの模写/はさみで紙を切る
4歳けんけん(片足跳び)/階段を交互に下りる十字の模写/ボタンをかける
5歳スキップ/ブランコの立ちこぎ四角の模写/人物画で3部分以上描く
6歳縄跳び/自転車三角の模写/ひもを結ぶ

順序で覚える。階段は両足そろえ(2歳)→交互に上る(3歳)→交互に下りる(4歳)。片脚の課題は片足立ち3歳→けんけん4歳→スキップ5歳。描画は縦線2歳→円3歳→十字4歳→四角5歳→三角6歳で、角の数が増えるほど遅い。

基本的生活習慣の自立も年齢の目安がある。コップで飲む1歳前後、スプーン1歳半、箸3〜4歳。昼間の排尿自立2〜3歳、夜間の自立3〜4歳。上着を脱ぐ2歳、前開きの服を着る3歳、ボタンをかける4歳、ひもを結ぶ5〜6歳。脱ぐほうが着るより早い

5-4 第一次反抗期と遊びの発達

第一次反抗期は2〜3歳。「イヤ」「自分でやる」と主張し、自我が芽生える。エリクソンの自律性、フロイトの肛門期と時期が重なる。正常な発達過程であり、抑え込む対応は不適切で、選べる範囲を示して自己決定させる関わりが基本。

遊びの形態(社会的参加)時期内容
一人遊び〜2歳他児と関わらず単独で遊ぶ
平行遊び2〜3歳そばで同じ遊びをするが、やりとりはない
連合遊び3〜4歳道具の貸し借りや会話はあるが役割分担はない
協同遊び4〜5歳以降役割分担とルールのある集団遊び

遊びの内容は、感覚運動遊び → 象徴遊び(ごっこ遊び。2歳頃から) → 構成遊び → ルール遊び(学童期)と進む。

平行遊びと連合遊びの違いは「同じ遊びかどうか」ではなく相互のやりとりがあるかどうか。同じ砂場で同じ玩具を使っていても交渉がなければ平行遊び。

5-5 ピアジェの認知発達段階

段階年齢特徴
感覚運動期0〜2歳循環反応/対象の永続性(生後8か月頃〜)
前操作期2〜7歳象徴機能(ごっこ遊び・延滞模倣)/自己中心性(三つ山課題)/アニミズム/保存は未成立
具体的操作期7〜11歳保存の成立・可逆性・脱中心化・分類と系列化。ただし具体物の範囲に限られる
形式的操作期11〜12歳以降抽象的・仮説演繹的思考/組合せ思考。中学生はここ

自己中心性は「わがまま」という意味ではない。正しくは他者の視点に立てず、自分から見えたとおりに世界を判断してしまう認知の特徴

5-6 フロイトの精神性的発達段階

リビドー(性的エネルギー)が向かう身体部位で段階を分ける理論。年齢の境界がそのまま出題されるので、1・3・6・12という区切りで覚える。

段階年齢課題・特徴
口唇期0〜1歳吸う・噛むなど口唇への関心が中心
肛門期1〜3歳排泄のしつけ(トイレットトレーニング)を通じて自律性が育つ
男根期(エディプス期)3〜6歳性器への関心、エディプス・コンプレックス、同性の親への同一視
潜伏期(潜在期)6〜12歳性的関心が一時的に静まり、学習・社会性・仲間関係が伸びる
性器期思春期以降成熟した性的関心が現れる

1〜3歳=肛門期。口唇期(0〜1歳)と男根期(3〜6歳)が両隣にあるので、1と3の境界を取り違えないこと。

「性器期は幼児期の段階」は誤り。正しくは思春期以降で、5段階の最後にくる。「潜在期は幼児期」も誤りで、正しくは6〜12歳の学童期

5-7 エリクソンの心理社会的発達段階

時期年齢心理社会的危機獲得する徳
乳児期0〜1歳基本的信頼 対 不信希望
幼児期前期1〜3歳自律性 対 恥・疑惑意志
幼児期後期3〜6歳自主性(積極性) 対 罪悪感目的
学童期6〜12歳勤勉性 対 劣等感有能感
青年期12〜20歳代同一性 対 同一性拡散忠誠
成人期前期20〜30歳代親密性 対 孤立
成人期後期30〜60歳代生殖性(世代性) 対 停滞世話
老年期60歳代〜統合 対 絶望英知

幼児期は自律性(1〜3歳)→自主性(3〜6歳)の2段階に割れている。この2つを1つにまとめて覚えると年齢の対応を外す。

5-8 学童期 — 勤勉性とギャングエイジ

  • 課題は勤勉性 対 劣等感。学習・係活動・スポーツで成功体験を積んで有能感を得る。失敗が続くと劣等感に傾く。
  • ギャングエイジ=小学校中学年〜高学年(9〜12歳頃)。同性・同年齢の閉鎖的な仲間集団をつくり、集団の決まりを親のルールより優先する。社会性と役割取得の発達に必要な過程。
  • 9歳の壁(10歳の壁)=具体的思考から抽象的思考への移行につまずく現象。ピアジェの具体的操作期から形式的操作期への移り目にあたる。
  • フロイトの潜伏期にあたり、性的関心は静まっている。心理的には比較的安定した時期。

道徳性(コールバーグ)は、罰を避け損得で判断する前慣習水準(学童期前半)→ よい子であろうとし規則や秩序を守る慣習水準(学童期後半〜青年期)→ 社会契約や普遍的倫理で判断する後慣習水準(青年期以降)へ進む。

5-9 思春期の身体 — 第二次性徴

第二次性徴とは、性ホルモンの分泌増加により生殖器以外にも男女差が現れる変化をいう。中学生はこの変化のまっただ中にあり、急激な身体的成熟に対する戸惑いや不安を抱くことが、この時期の典型的な心理的特徴である。

出現の順序時期の目安
女子乳房発育 → 恥毛 → 身長スパート → 初経乳房発育8〜10歳、身長スパート11歳頃、初経は平均12歳前後。皮下脂肪が増え丸みを帯びる
男子精巣の容積増大 → 陰茎増大 → 恥毛 → 身長スパート → 変声・射精精巣発育11〜12歳、身長スパート13歳頃。筋量が増え肩幅が広がる

女子は男子より約2年早い。小学校高学年で女子のほうが背が高い時期があるのはこのため。男子は身長スパートが第二次性徴の後半に来る点も女子と違う。

身体像(ボディイメージ)へのとらわれが強まり、摂食障害・起立性調節障害が好発する時期でもある。身体の変化を「異常ではない」と保証する関わりが必要。

5-10 青年期の心理 — 心理的離乳と同一性

  • 第二次反抗期:親・教師など権威に対して批判的・反抗的な態度をとる。第一次反抗期と同じく健全な発達過程。
  • 心理的離乳:親への依存から離れ精神的に自立していく過程。相談相手や価値の拠りどころが親から友人・仲間へ移る
  • 自我同一性(アイデンティティ):「自分は何者か」への答え。青年期を通じて模索し続ける課題で、中学生の段階では確立していない。失敗すると同一性拡散(役割の混乱)となる。
  • 心理社会的モラトリアム:社会的な役割や責任が猶予され、同一性を試行錯誤できる期間。

中学生の心理的特徴として誤りになる記述と、その訂正。

  • 自我同一性が完成する」→ 誤り。中学生は模索の途上。確立は青年期後期以降。
  • 教師や指導者に従順である」→ 誤り。第二次反抗期で権威に批判的になる。
  • 友人関係より親子関係を重視する」→ 誤り。心理的離乳が進み友人(仲間)関係のほうを重視する。
  • 性の相違を理解する」→ 誤り。男女の性差の認識は幼児期にすでに獲得済みで、中学生に固有の特徴ではない。

4つを消せば、残る「第二次性徴への戸惑いがある」が正答になる。

思春期・青年期を一語で並べると第二次性徴・心理的離乳・第二次反抗期・同一性の模索。選択肢が「親を重視」「大人に従順」「同一性が完成」のように逆向きを言っていたら、それだけで消せる。