第5章|末梢神経系
解剖学 第5章
5-1 脳神経12対 — 性質と機能の対応
末梢神経系の出題の半分は脳神経で決まる。まず「番号・名称・性質(感覚のみ/運動のみ/混合)・副交感の有無・具体的な仕事」の5列を丸ごと覚える。
| 番号 | 名称 | 性質 | 副交感 | おもな働き |
| Ⅰ | 嗅神経 | 感覚のみ | — | 嗅覚 |
| Ⅱ | 視神経 | 感覚のみ | — | 視覚。対光反射の求心路 |
| Ⅲ | 動眼神経 | 運動 | あり | 上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋+上眼瞼挙筋/縮瞳(瞳孔括約筋)・水晶体調節(毛様体筋) |
| Ⅳ | 滑車神経 | 運動のみ | — | 上斜筋のみ(眼球を下内方へ) |
| Ⅴ | 三叉神経 | 混合 | — | 顔面の皮膚感覚(眼神経・上顎神経・下顎神経の3枝)+咀嚼筋=下顎の運動 |
| Ⅵ | 外転神経 | 運動のみ | — | 外側直筋のみ(眼球外転) |
| Ⅶ | 顔面神経 | 混合 | あり | 表情筋(閉眼・口唇閉鎖・口角挙上)/舌前2/3の味覚/涙腺・舌下腺・顎下腺の分泌/アブミ骨筋 |
| Ⅷ | 内耳神経 | 感覚のみ | — | 聴覚・平衡覚。前庭眼反射の求心路 |
| Ⅸ | 舌咽神経 | 混合 | あり | 舌後1/3の味覚・一般感覚/咽頭粘膜の知覚/耳下腺分泌/頸動脈洞・頸動脈小体 |
| Ⅹ | 迷走神経 | 混合 | あり | 胸腹部内臓/軟口蓋挙上・嚥下・発声/喉頭蓋の味覚/咳反射 |
| Ⅺ | 副神経 | 運動のみ | — | 胸鎖乳突筋・僧帽筋 |
| Ⅻ | 舌下神経 | 運動のみ | — | 舌筋(同側支配・両側支配ではない) |
感覚のみ=Ⅰ・Ⅱ・Ⅷ/運動のみ=Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ・Ⅺ・Ⅻ/混合=Ⅴ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ。副交感を含むのはⅢ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ(3・7・9・10)。滑車・内耳・舌下・副神経は副交感を含まない。
「運動線維のみの脳神経はどれか」に動眼神経(Ⅲ)が並んでいたら注意。Ⅲは外眼筋を動かす運動神経だが副交感線維(瞳孔括約筋・毛様体筋)を含むため、副神経・舌下神経・滑車神経のような副交感を持たない神経が同じ選択肢にあれば、そちらが答えになる。
味覚を運ぶ3神経
| 部位 | 神経 |
| 舌前2/3 | 顔面神経(Ⅶ・鼓索神経) |
| 舌後1/3 | 舌咽神経(Ⅸ) |
| 喉頭蓋・咽頭部 | 迷走神経(Ⅹ) |
舌は仕事ごとに神経が違う。味覚=Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ/一般感覚(前2/3)=三叉神経/運動=舌下神経。三叉神経は舌の触・温・痛は伝えるが味覚は伝えない。副神経も舌下神経も味覚とは無関係。
組合せ問題で入れ替えられる定番 → 正しくは:
- 顔面神経-軟口蓋の挙上 は誤り → 軟口蓋挙上は迷走神経・舌咽神経。顔面神経は表情筋。
- 舌咽神経-舌の運動 は誤り → 舌の運動は舌下神経。
- 舌下神経-唾液分泌 は誤り → 唾液分泌は顔面神経(舌下腺・顎下腺)・舌咽神経(耳下腺)。
- 迷走神経-口唇閉鎖 は誤り → 口輪筋は顔面神経。
5-2 脳神経の起始高位と脳幹病変
| 高さ | 出る脳神経(核の位置) | 障害でみられる症状 |
| 中脳 | Ⅲ 動眼・Ⅳ 滑車(下丘の高さ) | 眼瞼下垂、散瞳、対光反射の障害、眼球の外下方偏位 |
| 橋 | Ⅴ 三叉・Ⅵ 外転・Ⅶ 顔面(Ⅷ 内耳は橋延髄移行部) | 兎眼・顔面麻痺、外転障害(内斜視)、側方注視障害=共同偏視 |
| 延髄 | Ⅸ 舌咽・Ⅹ 迷走・Ⅻ 舌下(Ⅺ 副神経は延髄〜上位頸髄C1〜C5) | 舌の運動障害(偏位・萎縮)、嚥下障害、構音障害。Wallenberg症候群 |
番号が小さいほど上(吻側)と覚える。滑車神経(Ⅳ)は脳の背側から出る唯一の脳神経。舌下神経は延髄の前外側(腹側)から出る。
「延髄の障害でみられやすい症状はどれか」→ 舌の運動障害。兎眼は橋(Ⅶ)、眼瞼下垂と対光反射障害は中脳(Ⅲ)、共同偏視は前頭眼野・橋の側方注視中枢で、どれも延髄の症状ではない。
5-3 外眼筋・眼球運動と瞳孔
| 筋 | 支配神経 |
| 外側直筋 | 外転神経(Ⅵ) |
| 上斜筋 | 滑車神経(Ⅳ) |
| 上直筋・下直筋・内側直筋・下斜筋 | 動眼神経(Ⅲ) |
| 上眼瞼挙筋 | 動眼神経(Ⅲ)(麻痺で眼瞼下垂) |
語呂「LR6・SO4・残りは全部3」。外側直筋(Lateral Rectus)=Ⅵ、上斜筋(Superior Oblique)=Ⅳ、それ以外の外眼筋と上眼瞼挙筋=Ⅲ。眼球運動に関わる脳神経はこの3本だけで、視神経(感覚)・三叉神経(感覚と咀嚼)・顔面神経(表情筋)は関与しない。
下斜筋-外転神経/下直筋-視神経/内側直筋-眼神経 はいずれも誤り → 3つとも動眼神経。眼神経は三叉神経の第1枝で感覚神経であり、筋は動かさない。
| 麻痺 | 所見 |
| 動眼神経(Ⅲ) | 眼瞼下垂+散瞳+眼球が外下方を向く(内転・上下転が不能) |
| 滑車神経(Ⅳ) | 眼球が外旋位。内下方視=階段を下りるときの複視 |
| 外転神経(Ⅵ) | 患側方向を見ても眼が外転しない=内斜視。外転時に複視が増悪 |
右方視で右眼だけ外転しない図は右外転神経麻痺。眼瞼下垂も散瞳もなければ動眼神経は除外でき、外転が障害されている時点で滑車神経麻痺(内下方視の複視が特徴)では説明できない。橋の病変で起こりやすい。
瞳孔と視覚器
- 虹彩には瞳孔散大筋(交感神経=散瞳)と瞳孔括約筋(副交感・動眼神経=縮瞳)の2つの筋がある
- 眼球壁は外膜=角膜+強膜/中膜=ぶどう膜(虹彩・毛様体・脈絡膜、血管に富む)/内膜=網膜の3層
- 角膜は無血管組織で、房水・涙液から栄養を受ける。毛様体は逆に血管が豊富
- 眼動脈は内頸動脈の分枝(外頸動脈ではない)
5-4 顔面・口腔・咽喉頭の脳神経と検査法
| 検査・動作 | みている脳神経 |
| 眼球運動を追わせる | Ⅲ 動眼・Ⅳ 滑車・Ⅵ 外転 |
| 調節反射(縮瞳・水晶体調節)/眼瞼下垂の有無 | Ⅲ 動眼(眼瞼はMüller筋=交感神経も関与) |
| 顔面の触覚・痛覚/咬筋・側頭筋の収縮を左右比較 | Ⅴ 三叉 |
| 強く閉眼させる(眼輪筋)/口唇を閉じさせ抵抗をかける(口輪筋)/歯をむき出しにさせる・額にしわを寄せさせる | Ⅶ 顔面 |
| 軟口蓋反射・咽頭反射 | Ⅸ 舌咽・Ⅹ 迷走 |
| 発声させ軟口蓋・口蓋垂の偏位をみる(カーテン徴候) | Ⅹ 迷走 |
| 挺舌させ舌の偏位をみる | Ⅻ 舌下(患側へ偏位) |
兎眼(強く閉眼しても閉じきれない)=眼輪筋の麻痺=顔面神経麻痺。同じ顔面神経の症状は、歯をむき出しにしたときの口角下垂・左右非対称として出る。眼球運動・開眼・軟口蓋・舌はすべて別の脳神経なので、同一神経の症状にはならない。
顔面神経麻痺は中枢性=前額のしわ寄せができる/末梢性=前額部も麻痺するで鑑別する。
咽頭・喉頭と反回神経
- 上咽頭後壁を含む咽頭粘膜の知覚=舌咽神経(Ⅸ)。咽頭反射の求心路もⅨ。第2頸神経は後頭部・頸部の皮膚感覚で、咽頭粘膜は担当しない
- 喉頭・下咽頭の感覚と咽頭筋の運動は迷走神経(Ⅹ)のテリトリー
- 頸動脈洞(圧受容器)・頸動脈小体(化学受容器)=舌咽神経(頸動脈洞神経=Hering神経)/大動脈弓の圧受容器・大動脈小体=迷走神経
反回神経は迷走神経の枝で、左は大動脈弓の下を、右は鎖骨下動脈の下を回るため左のほうが走行が長い。ほぼ全ての喉頭筋(声帯)を支配するが、輪状甲状筋だけは上喉頭神経の支配。迷走の枝なので副交感線維を含む(交感ではない)。横隔神経から分枝するのでも、味覚を伝えるのでもない。
反回神経麻痺 → 声帯閉鎖不全 → 嚥下5期のうち咽頭期が障害される。咽頭期は嚥下反射で喉頭挙上・声帯閉鎖・喉頭蓋反転が起こる気道防御の相であり、ここの破綻が誤嚥に直結する。嗄声+嚥下障害をみたら反回神経麻痺を疑う。
5-5 脳神経が関わる反射の求心路・遠心路
| 反射 | 求心路 | 遠心路 |
| 角膜反射 | 三叉神経(Ⅴ・眼神経) | 顔面神経(Ⅶ・眼輪筋) |
| 対光反射 | 視神経(Ⅱ) | 動眼神経(Ⅲ・瞳孔括約筋) |
| 咽頭反射 | 舌咽神経(Ⅸ) | 迷走神経(Ⅹ) |
| 下顎反射 | 三叉神経(Ⅴ) | 三叉神経(Ⅴ) |
| 前庭眼(前庭動眼)反射 | 内耳神経(Ⅷ・前庭神経) | 動眼神経・外転神経(外眼筋) |
| 咳反射 | 迷走神経(Ⅹ)が気道粘膜の刺激を伝える |
角膜反射は「感じるのがⅤ・閉じるのがⅦ」、対光反射は「見るのがⅡ・縮めるのがⅢ」。求心路と遠心路で神経が違う反射が多いので、設問がどちらを問うているかを先に読む。「三叉神経が関与する反射」なら角膜反射(と下顎反射)。
角膜反射-視神経/前庭動眼反射-三叉神経/下顎反射-顔面神経/咽頭反射-副神経 はいずれも誤り。副神経は胸鎖乳突筋・僧帽筋の運動だけで、反射弓には登場しない。
5-6 脊髄神経・デルマトームとASIA感覚キーポイント
- 脊髄神経は31対(頸8・胸12・腰5・仙5・尾1)
- 神経叢は頸神経叢・腕神経叢・腰神経叢・仙骨神経叢。胸神経は叢をつくらず肋間神経になる
| 髄節 | デルマトーム/ASIA感覚キーポイント |
| C4 | 鎖骨上窩 |
| C5 | 肘窩の橈側(前腕外側) |
| C6 / C7 / C8 | 母指 / 中指 / 小指 |
| T1 | 前腕内側 |
| T4 | 乳頭 |
| T6 / T7 | 剣状突起 / 剣状突起と臍の中間 |
| T10 | 臍 |
| T12 | 鼠径靱帯の中点 |
| L3 | 大腿前面(膝の上内側)。膝はL3〜L4 |
| L4 | 足関節内果 |
| L5 | 足背・第3中足趾節関節部 |
| S1 / S2 | 足底外側 / 膝窩 |
| S4〜S5 | 肛門周囲(粘膜皮膚移行部) |
誤組合せの定番 → 正しくは:母指=C3✕→C6/臍=T7・T8・T12✕→T10/膝=L1✕→L3〜L4/肛門=S1✕→S4〜5/膝窩=S4✕→S2/内果=L5✕→L4/鎖骨上窩=C5✕→C4(C5は肘窩橈側)。
ゴロは「ニップル4・へそ10」。この2点を基準に体幹を補間すれば、剣状突起T6・鼠径部T12も導ける。ASIAは感覚キーポイント(触覚・痛覚)と運動キー筋で損傷高位を判定する。
5-7 腕神経叢と上肢の末梢神経
腕神経叢は根(C5〜T1)→ 幹(上・中・下)→ 束(外側・後・内側)→ 末梢神経の順に組み替わる。この4段階のどこを問われているかで答えが変わる。
| 部位 | 構成 | そこから出る神経 |
| 神経根から直接 | C5〜C7 | 長胸神経(前鋸筋) |
| 下神経幹 | C8・T1 | 尺側(環指・小指〜前腕内側)の線維を含む |
| 外側神経束 | C5〜C7主体 | 筋皮神経、正中神経の外側根 |
| 内側神経束 | C8・T1 | 尺骨神経、正中神経の内側根 |
| 後神経束 | C5〜T1 | 腋窩神経・橈骨神経の2本だけ |
正中神経だけは外側神経束と内側神経束が合流してできる。「後神経束から分岐するのはどれか」→ 腋窩神経か橈骨神経。筋皮=外側束、尺骨=内側束、長胸=神経根と区別する。
肺尖部がん(Pancoast腫瘍)が下神経幹(C8・T1)に浸潤すると、環指・小指〜前腕内側の痛み・しびれにHorner症候群(T1交感神経)を伴う。C8=小指、T1=前腕内側なので、C8神経根単独では前腕内側まで説明できず、幹レベルの浸潤と判断する。
胸郭出口症候群=腕神経叢と鎖骨下動静脈の絞扼。3つの絞扼部位は斜角筋隙(前斜角筋と中斜角筋の間)・肋鎖間隙(鎖骨と第1肋骨の間)・小胸筋下(過外転)。最も関与するのは前斜角筋で、胸骨・胸鎖乳突筋・肩甲骨・大胸筋は主因にならない(過外転症候群に関与するのは小胸筋)。誘発テストはAdson・Wright・Roos。
上肢の末梢神経 — 支配筋と麻痺徴候
| 神経 | おもな支配筋 | 感覚 | 特徴的徴候 |
| 腋窩神経 | 三角筋・小円筋 | 肩外側 | 肩関節の外転障害 |
| 橈骨神経 | 上腕三頭筋・腕橈骨筋・前腕伸筋群 | 手背橈側 | 下垂手 |
| 後骨間神経(橈骨神経の深枝) | 回外筋・総指伸筋・長母指伸筋 | なし(純運動) | 下垂指 |
| 正中神経 | 円回内筋・長掌筋・浅指屈筋・母指球筋 | 手掌橈側 | 猿手、Phalen徴候・Tinel徴候(手根管症候群) |
| 前骨間神経(正中神経の枝) | 長母指屈筋・示指の深指屈筋・方形回内筋 | なし(純運動) | 涙滴徴候(つまむと母指・示指のIP関節が屈曲できず涙のしずく型になる) |
| 尺骨神経 | 尺側手根屈筋・深指屈筋尺側半・手内在筋 | 手掌尺側・小指 | 鷲手(鉤爪変形)、指の内外転障害 |
| 長胸神経 | 前鋸筋 | — | 翼状肩甲 |
| 肩甲上神経 | 棘上筋・棘下筋 | — | 外転初期・外旋の低下 |
| 副神経 | 僧帽筋・胸鎖乳突筋 | — | 肩甲骨の挙上・上方回旋の低下 |
徴候の入れ替えに注意 → 正しくは:下垂指=後骨間神経(腋窩神経ではない)/Phalen徴候=正中神経の手根管症候群(肩甲上神経ではない)/翼状肩甲=長胸神経・前鋸筋(副神経ではない)/下垂足=総腓骨神経(大腿神経ではない)。
前腕の原則は屈筋=正中神経(例外:尺側手根屈筋と深指屈筋の尺側半は尺骨神経)/伸筋=橈骨神経(深枝=後骨間神経)。腕橈骨筋は肘を屈曲させるのに橈骨神経支配という例外が頻出。円回内筋は尺骨神経ではなく正中神経。手掌の感覚は正中神経・尺骨神経で、橈骨神経は手背橈側のみ。前骨間神経は正中神経の枝、後骨間神経は橈骨神経の枝で、名前が似ているだけの別系統。
前腕打撲後に手指伸展だけが落ちて感覚障害がない→ 感覚枝を持たない後骨間神経麻痺。橈骨神経本幹の損傷なら手背の感覚障害を必ず伴う。感覚障害の有無が本幹と深枝を分ける決め手。
体表から触知・圧迫できる部位
| 神経 | 部位 |
| 尺骨神経 | 肘頭と上腕骨内側上顆の間(尺骨神経溝・肘部管)。圧迫で小指側にしびれが放散 |
| 正中神経 | 上腕では上腕動脈に伴走して内側を走る(烏口腕筋の外側ではない) |
| 腕神経叢 | 前斜角筋と中斜角筋の間(胸鎖乳突筋の胸骨頭と鎖骨頭の間ではない) |
| 脛骨神経 | 内果とアキレス腱の間(足根管)。外果側ではない |
| 総腓骨神経 | 腓骨頭の後外側。膝窩の半腱様筋腱内側ではない |
5-8 腰神経叢・仙骨神経叢と下肢の末梢神経
| 神経叢 | 髄節 | 出る神経 |
| 腰神経叢 | L1〜L4 | 腸骨下腹神経・腸骨鼠径神経・陰部大腿神経・外側大腿皮神経・大腿神経・閉鎖神経 |
| 仙骨神経叢 | L4〜S4 | 坐骨神経(L4〜S3)・上殿神経(L4〜S1)・下殿神経(L5〜S2)・陰部神経(S2〜S4) |
「殿筋を動かす神経=仙骨神経叢」「大腿前面の伸展と内転=腰神経叢」で振り分ける。陰部神経・坐骨神経・上殿神経・下殿神経を腰神経叢に入れる誤答が定番。
| 神経 | 支配筋 | 感覚・特徴 |
| 大腿神経(L2〜L4) | 腸腰筋・大腿四頭筋 | 麻痺で膝伸展障害 |
| 閉鎖神経(L2〜L4) | 大腿内転筋群(長内転筋・短内転筋・大内転筋・薄筋・外閉鎖筋) | 大腿内側の表在覚。閉鎖孔を通る |
| 外側大腿皮神経 | — | 大腿外側の表在覚 |
| 上殿神経 | 中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋 | 麻痺でTrendelenburg徴候 |
| 下殿神経 | 大殿筋 | — |
| 坐骨神経 | ハムストリングス〜下腿・足 | 人体最大の神経。坐骨切痕(大坐骨孔)を通る |
| 総腓骨神経 | 前脛骨筋・腓骨筋群 | 麻痺で下垂足・鶏歩。腓骨頭で圧迫されやすい |
| 陰部神経(S2〜S4) | 外肛門括約筋・外尿道括約筋 | 体性神経=随意で制御できる |
閉鎖神経の誤答肢 → 正しくは:「第1仙髄神経根の線維を含む」✕→L2〜L4のみ/「大腿外側の表在覚を支配」✕→大腿内側(外側は外側大腿皮神経)/「仙骨神経叢から分岐」✕→腰神経叢/「坐骨切痕を通る」✕→閉鎖孔を通る。
大内転筋は閉鎖神経と脛骨神経(坐骨神経)の二重支配。薄筋も内転筋群の一員なので閉鎖神経支配である。
5-9 自律神経の構造・伝達物質・臓器作用
| 交感神経 | 副交感神経 |
| 起始 | 胸腰髄 T1〜L2の側角(胸腰系) | 脳幹(Ⅲ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)と仙髄 S2〜S4(頭仙系) |
| 脊髄を出る経路 | 前根(後根ではない) | — |
| 節前線維 | 有髄。末端の伝達物質は両者ともアセチルコリン(節後細胞のニコチン受容体に作用) |
| 節後線維 | 無髄・ノルアドレナリン(例外:汗腺と一部の血管はアセチルコリン) | 無髄・アセチルコリン(ムスカリン受容体) |
| 調節の性質 | 不随意。安静時も持続的にインパルスを発して臓器の緊張を保つ(断続的ではない) |
副腎髄質は交感神経の節前線維が直接シナプスを作る唯一の器官(クロム親和性細胞=変形した節後ニューロン)。肝臓・心臓・気管支・唾液腺など他の臓器はすべて節後線維の支配を受ける。
脊髄神経で副交感の機能をもつのは骨盤神経(骨盤内臓神経・S2〜S4)だけ。横隔神経(C3〜C5)・肋間神経・舌下神経・内耳神経はいずれも副交感を含まない。
節前ニューロンの起始レベル
| 作用 | 系 | 起始 |
| 瞳孔散大筋の収縮(散瞳) | 交感 | 上位胸髄 T1〜T2(毛様脊髄中枢) |
| 顔面を含む発汗 | 交感 | 胸髄(T1〜T4付近)。延髄ではない |
| 内尿道括約筋の収縮(蓄尿) | 交感 | 腰髄 L1〜L2(下腹神経)。仙髄ではない |
| 細気管支の収縮 | 副交感 | 延髄(迷走神経)。頸髄ではない |
| 消化管蠕動の亢進 | 副交感 | 上部は延髄(迷走)、下部は仙髄(骨盤神経)。腰髄ではない |
臓器ごとの作用
| 器官 | 交感 | 副交感 |
| 瞳孔 | 散大 | 縮小 |
| 心拍 | 増加 | 減少 |
| 気管支 | 拡張(β2) | 収縮 |
| 消化管蠕動・膵液分泌 | 抑制 | 促進 |
| 膀胱排尿筋 | 弛緩(蓄尿) | 収縮(排尿) |
| 肝グリコーゲン | 分解を促進し血糖上昇(合成促進はインスリン) | — |
| レニン分泌 | 促進(β受容体) | — |
| 涙腺 | — | 促進(顔面神経・翼口蓋神経節) |
| 唾液腺(舌下腺など) | 両者とも分泌を促進する例外。交感=粘液性で少量/副交感=漿液性で多量 |
| 汗腺・立毛筋・血管・副腎髄質 | 交感神経の単独支配(二重支配ではない)。汗腺だけは伝達物質がアセチルコリン |
「交感神経の作用はどれか」で瞳孔の縮小・膀胱の収縮・心拍数の減少・膵液分泌の促進を選ぶのは誤り → すべて副交感の作用。交感の作用は気管支拡張・散瞳・心拍増加・発汗・血糖上昇。
抗コリン薬は副交感(ムスカリン受容体)を遮断する。副作用は「乾く・詰まる・出ない・ぼやける・混乱する」=口渇・便秘・尿閉・霧視(散瞳)・せん妄、加えてめまい。流涎は唾液分泌の亢進なので抗コリン薬では生じにくい(むしろ口渇になる)。縮瞳・徐脈・気道分泌亢進もコリン作動性の症状で、抗コリン薬とは逆向き。
5-10 排尿・排便・生殖の神経支配
排尿
| 神経 | 系・髄節 | 作用 |
| 骨盤神経 | 副交感・S2〜S4 | 排尿=排尿筋の収縮+内尿道括約筋の弛緩 |
| 下腹神経 | 交感・T11〜L2 | 蓄尿=排尿筋の弛緩+内尿道括約筋の収縮(ノルアドレナリンがα受容体に作用) |
| 陰部神経 | 体性・S2〜S4 | 外尿道括約筋を随意に収縮させて我慢する |
- 排尿筋(膀胱平滑筋)は平滑筋=不随意、外尿道括約筋は横紋筋=随意
- 脊髄の一次中枢は仙髄S2〜S4、脳の排尿中枢は橋(延髄ではない)
- 我慢するときは大脳皮質が橋排尿中枢を抑制し、交感神経優位になる
- 尿意は溜まり始めてすぐではなく約150〜300mLで生じる
- 尿道を尿が通る知覚は排尿筋の収縮を促進し、排尿を持続させる(抑制ではない)
誤答肢 → 正しくは:「排尿時に内尿道括約筋が収縮する」✕→弛緩する/「外尿道括約筋は下腹神経支配」✕→陰部神経/「内尿道括約筋は陰部神経支配」✕→下腹神経(交感)/「副交感神経路は第11胸髄〜第2腰髄から生じる」✕→仙髄S2〜S4/「外尿道括約筋は陰部神経活動で弛緩する」✕→収縮する/「我慢するときは副交感優位」✕→交感優位。
排便
- 排便中枢は第2〜4仙髄(S2〜S4)。腰髄でも胸髄でもない
- 便意は糞便が直腸に達し直腸壁が伸展(加圧)されて生じる。S状結腸への到達でも、内肛門括約筋の伸張でもない
- 直腸伸展の求心路は骨盤神経(陰部神経ではない)
- 骨盤神経(副交感)の興奮 → 直腸平滑筋の収縮+内肛門括約筋の弛緩。両者が同時に収縮するのではない。直腸の収縮を促す伝達物質はアセチルコリン(アドレナリンではない)
- 内肛門括約筋=平滑筋・不随意(自律神経)/外肛門括約筋=横紋筋・随意(陰部神経)
- いきみ(怒責)では横隔膜が収縮・下降して腹圧を高める(弛緩ではない)
- 大腸の運動は混和=分節運動/肛門側への輸送=蠕動運動(大蠕動)と役割が分かれる
- 大腸内容物は上行結腸では液状〜泥状で、水分吸収が進むにつれ下行結腸〜S状結腸で半固形〜固形になる
生殖(男性)
| 神経 | 髄節 |
| 勃起 | 副交感(骨盤神経)=陰茎海綿体の動脈拡張による血液流入 | 仙髄 S2〜S4 |
| 射精 | 交感(下腹神経)=精管・精嚢・前立腺の平滑筋収縮 | 腰髄 L1〜L2 |
- 語呂「Point and Shoot」=勃起はP(parasympathetic)、射精はS(sympathetic)
- 射精時は内尿道括約筋(膀胱内括約筋)が収縮して精液の膀胱への逆流を防ぐ
- 性的刺激による中枢性の勃起には大脳辺縁系が関与する。反射性勃起は仙髄が担う
- 精子形成には約70〜74日(50日ではない)。射精後の精子は女性生殖路内で2〜3日(最大5日程度)受精能を保つ(12時間でも1週間でもない)
脊髄円錐部(S2〜S4)が障害されると膀胱直腸障害が出る。排尿・排便・勃起はいずれもS2〜S4の副交感が担うため、この3つはセットで障害されると覚える。