第2章|呼吸器疾患

内科学 第2章

2-1 換気障害の型と呼吸機能検査

呼吸器の問題は、まず閉塞性か拘束性かを決めることから始まる。判定に使う数値は2つだけ。

  • 1秒率(FEV1.0%)=FEV1÷FVC×10070%未満で閉塞性
  • %肺活量(%VC)=実測VC÷予測VC×10080%未満で拘束性
  • 両方低下すれば混合性
項目閉塞性換気障害拘束性換気障害
代表疾患COPD・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎間質性肺炎・肺線維症・肺切除後・神経筋疾患・側弯
1秒率(FEV1.0%)低下(70%未満)正常〜上昇
%肺活量(%VC)正常〜低下(80%未満)
残気量・残気率増加(エアトラッピング)減少
全肺気量(TLC)増加(過膨張)低下
機能的残気量(FRC)増加減少
肺コンプライアンス増加肺胞壁が壊れる肺気腫での話。弾性を失って膨らみやすくなる。気管支喘息のように気道が主体の閉塞では増加しない)低下(硬く膨らみにくい)
気道抵抗増加正常
肺拡散能(DLCO)低下(気腫で拡散面積↓)低下(間質肥厚)

用語の取り違えに注意

  • 1秒率=FEV1÷FVC(同一人の実測どうしの比)
  • %1秒量(%FEV1)=実測FEV1÷予測FEV1×100(予測値との比)

計算の手順 FVC 5.00 L・1秒率80%・予測FEV1 3.46 Lのとき、①実測FEV1=5.00×0.80=4.00 L ②%FEV1=4.00÷3.46×100≒116%。先に実測FEV1を出してから予測値で割る2段階。

生理学的な対応関係(正誤問題の定番)

条件起こること
呼吸筋力が低下する肺活量が低下(=拘束性パターン)
気道抵抗が増加する1秒率が低下(上昇ではない)
肺コンプライアンスが低下する機能的残気量が減少(増加ではない)
肺拡散能が低下する最大呼気流量は変わらない(流量は気道の通りやすさで決まり拡散とは独立)
換気血流比が不均等になるA-aDO2が増大(開大)(低下ではない)

静肺コンプライアンスの基準値は0.15〜0.30 L/cmH2O。0.09なら低下=肺が硬い=拘束性。%VC低下と組めば拘束性換気障害と断定できる。

2-2 呼吸不全・血液ガス・呼吸商

呼吸不全の定義は室内気でPaO2 60 Torr以下。PaCO2で2型に分ける。

Ⅰ型呼吸不全Ⅱ型呼吸不全
PaO2低下低下
PaCO2正常〜低下(45以下)上昇(45超)
A-aDO2増加(開大)正常
本態ガス交換障害(拡散障害・換気血流比不均等・シャント)肺胞低換気
代表肺炎・間質性肺炎・肺塞栓・ARDSCOPD急性増悪・ALS・筋ジストロフィー・重症筋無力症クリーゼ

「Ⅱ型では正常でⅠ型で増加するもの=A-aDO2」。PaO2は両型とも低下、PaCO2はⅡ型で上昇するので、鑑別に効くのはA-aDO2だけ。1秒率・肺活量は換気障害の型の指標であって呼吸不全の型分類には対応しない。

COPD急性増悪の血ガス

換気が保てず酸素を取り込めない・CO2を出せない → PaO2低下+PaCO2上昇=Ⅱ型。「PaO2低下+PaCO2低下」は過換気の像で逆。

CO2ナルコーシス CO2が貯留している例(Ⅱ型)に高濃度酸素を投与すると、低酸素刺激による呼吸ドライブが消えて自発呼吸が抑制され、CO2がさらに上昇して意識障害に至る。呼吸困難時に患者が自己判断で酸素流量を上げるのは禁忌。酸素は低流量から慎重に。

酸塩基平衡の読み方

  • pH 7.45超=アルカレミア/pH 7.35未満=アシデミア
  • PaCO2が動いていれば呼吸性、HCO3−が動いていれば代謝性
  • 過換気 → PaCO2低下 → pH上昇 = 呼吸性アルカローシス
  • 肺胞低換気 → PaCO2上昇。PaCO2が低い時点で肺胞低換気は否定できる
  • 拡散障害では低酸素は起こるが高CO2血症は生じない(CO2はO2より拡散しやすい)

呼吸商(RQ)

  • 定義はCO2産生量 ÷ O2消費量(比であって差ではない)。換気障害の指標ではない
  • 糖質1.0 > 蛋白質0.8 > 脂質0.7。安静空腹時は約0.8
  • 糖質の燃焼が増えると上昇/長時間運動では脂質利用が増えて低下

呼吸商はCOPDの栄養指導につながる。脂質は呼吸商が低くCO2産生が少ないため、CO2を出しにくいCOPDでは高脂肪・低炭水化物が理にかなう。

2-3 フローボリューム曲線と胸部画像の読み分け

フローボリューム曲線は縦軸=流量、横軸=肺気量。形で換気障害の型が読める。

病態曲線の形
正常ピークフローが高く、下降脚はほぼ直線
閉塞性(COPD・喘息)ピークフロー低下+下降脚が下に凸(coving=陥凹)。重症ほどピークが低く曲線全体が小さい
拘束性(肺線維症・肺葉切除後)横軸(肺気量)が縮小して全体が小型・縦に細長い。下降脚の形自体は保たれる
上気道狭窄呼気・吸気とも流量が頭打ちでプラトー(台形)
肺癌曲線に典型像はない。腫瘍の場所と進行度しだいで、中枢気道を塞げば上気道狭窄型、末梢や切除後なら拘束性型と、いろいろな形をとる=「肺癌の曲線」という決まった形を問われたら選べない
気管支拡張薬 吸入後ピークフローと流量が改善=気道抵抗の低下(喘息の可逆性)

吸入後にフローボリューム曲線が改善しても、それは気道が広がった=気道抵抗低下を意味するだけ。呼気筋力の増強・肺拡散能の改善・胸郭柔軟性の改善・肺コンプライアンスの増加はいずれも曲線からは言えない(拡散能は流量−容量曲線では評価できない)。

胸部画像の典型像

疾患・状態画像所見
COPD・肺気腫単純Xp:肺野透過性亢進・横隔膜平低化・滴状心・肋間腔拡大/CT:上肺野優位の低吸収域、血管影の減少
間質性肺疾患・IPF両側下肺野・胸膜直下優位の網状影、蜂巣肺(ハニカム)、牽引性気管支拡張
大葉性肺炎肺葉単位の均一な浸潤影(consolidation)、シルエットサイン陽性
誤嚥性肺炎片側(多くは右)下肺野の浸潤影
気胸患側に肺血管影のない黒い領域+虚脱肺の縁を示す線状影
肺葉切除後切除側の容積減少・局所的欠損(拘束性)
肺水腫両側肺門部中心のびまん性浸潤影(バットウィング像)
うっ血性心不全心陰影拡大(CTR 50%超)+肺門部中心の蝶形陰影(バタフライシャドウ)+胸水、上肺野の血管陰影増強(cephalization)、Kerley B線
気管切開術後気管カニューレの陰影が写るだけ。肺野にびまん性の異常影は出ない(出たらVAPなど別の合併症)
びまん性汎細気管支炎両肺びまん性の小粒状影
肺癌結節・腫瘤影、無気肺、閉塞性肺炎など部位しだいで多彩(決まった一つの像はない)

COPDのXp所見はすべて「肺が膨らみすぎる方向」。したがって横隔膜挙上・肋間腔狭小化・心陰影拡大はいずれも逆向きで誤り。シルエットサイン(心・横隔膜の輪郭消失)は肺炎の所見でCOPDの特徴ではない。

2-4 呼吸音・副雑音の聴き分け

正常呼吸音は聴取部位が中枢に近いほど呼気が強く長くなる。

正常呼吸音聴取部位吸気と呼気
肺胞呼吸音末梢肺野吸気>呼気(呼気は弱く短い。呼気終末に強くなることはない)
気管支呼吸音胸骨上部・肩甲間部吸気≒呼気(両相で聴取。吸気のみではない)
気管呼吸音頸部気管上吸気<呼気(呼気が長く大きい)
副雑音時相代表疾患
笛音 wheezes(連続性・高調)呼気主体(吸気初期ではない)気管支喘息・COPD(気道狭窄)
いびき音 rhonchi(連続性・低調)呼気主体太い気道の分泌物・狭窄
捻髪音 fine crackles(断続性・細かい)吸気終末(後期)(呼気ではない)間質性肺炎・特発性肺線維症(velcroラ音)
水泡音 coarse crackles(断続性・粗い)吸気早期肺炎・気管支拡張症・肺水腫(分泌物が多い病態)

細かい音=間質(拘束性)粗い音=分泌物(肺炎)。発熱+片側の水泡音なら細菌性肺炎、乾性咳+両下肺の捻髪音なら間質性肺疾患、と反射で結べるようにする。

2-5 COPD ― 病態と検査所見

  • 最大の原因は喫煙Brinkman指数=1日本数×喫煙年数(400以上で肺癌リスク、700以上で高リスク)
  • 症状:労作時呼吸困難・慢性の咳と痰(湿性咳嗽)・進行例のるい痩(低BMI)
  • 身体所見:樽状胸郭・呼吸音低下・打診で鼓音(過共鳴音)・胸郭可動性と柔軟性の低下・呼気延長・口すぼめ呼吸
COPDで増加するものCOPDで低下するもの
残気量・残気率/機能的残気量/全肺気量/肺コンプライアンス/気道抵抗/進行期のPaCO2FEV1・1秒率肺拡散能(DLCO)/PaO2/%VC(進行例)

「COPDで低下するもの」を問われたら肺拡散能1秒率。残気率・全肺気量・肺コンプライアンスはいずれも増加で、低下と答えると誤り。PaCO2も進行期には上昇する。

COPDの咳は湿性咳嗽乾性咳嗽・捻髪音は間質性肺疾患の所見であり、COPDの身体所見として選ぶと誤り。打診も濁音ではなく鼓音

覚え方 「気腫=肺がスカスカ」→ 膨らみやすい(コンプライアンス増)が吐けない(残気量増・1秒率低下)、壁が壊れているのでガス交換の面積は減る(拡散能低下)。この1本の筋でCOPDの検査値はすべて説明できる。

急性増悪ではⅡ型呼吸不全(PaO2低下+PaCO2上昇)となり、感染が誘因になることが多い。だからインフルエンザ・肺炎球菌ワクチンが強く推奨される。

2-6 COPDの理学療法・ADL・生活指導

口すぼめ呼吸

機序は一本道。呼気時に口をすぼめる → 気道内圧を高く保つ → 末梢気道の虚脱(早期閉塞)を防ぐ → 呼出改善・エアトラッピング軽減

項目正しい内容
延長させるのは呼気(吸気の2倍程度かけて吐く)。吸気は鼻から。吸気の延長は誤り
呼吸数1回換気量が増えるため減少(増加は誤り)
機能的残気量・全肺気量減少方向(増加は誤り)
呼吸仕事量軽減(増加は誤り)
口の形軽くすぼめてゆっくり呼出。頬は膨らませない
適応閉塞性(COPD・気管支喘息)。喫煙歴と閉塞性障害のある術後例の合併症予防にも有効
適応外拘束性(肺線維症・間質性肺炎)神経筋疾患(ALS・Duchenne型筋ジストロフィー)。気道虚脱が病態でないため効果が乏しい

息切れが起きやすい動作

最も息切れするのは両上肢を頭上に挙上して保持する動作=洗髪。理由は、僧帽筋・前鋸筋・胸鎖乳突筋などの呼吸補助筋が上肢と肩甲帯の固定に取られて呼吸に使えなくなることと、胸郭運動が制限されること。食事・排尿・歯磨きは上肢挙上の保持がなく軽い。

負担の大きい要素具体例指導
上肢挙上の保持洗髪・洗濯物干し・高所の物を取る洗濯物は肩より低い位置に干す
前屈・腹部圧迫靴下着脱・洗体・低い椅子からの立ち座り高めの椅子・シャワーチェアにする。低い椅子は不適
息こらえ(努責)荷物の持ち上げ・排便いきみ荷物は分けて運び、労作は呼気に合わせる
床上の起居布団からの起き上がり布団よりベッドが負担が少ない
階段昇段のタイミング呼気時に昇る(吸気時に昇るは誤り)。口すぼめ呼気でゆっくり

運動処方と生活管理

  • 重症例(%VC低下・FEV1%低下・CO2貯留・HOT中)は低強度・長時間が原則。最大酸素摂取量の40〜60%、修正Borg 4〜5(ややきつい)
  • 7 METs・最大仕事量の75%・修正Borg 7・目標心拍数130/分はいずれも過負荷で不適
  • SpO2 90%未満で中止
  • 栄養は高エネルギー・高脂肪・低炭水化物。やせは予後不良因子なので低脂肪食は推奨されない
  • 推奨されるもの=在宅酸素療法(HOT)・上肢と下肢の筋力トレーニング・インフルエンザ/肺炎球菌ワクチン・禁煙
  • 在宅管理の柱は症状日誌によるセルフモニタリング。体調・呼吸器症状・SpO2を記録し増悪を早期に見つける
  • リラクセーションの主目的は呼吸補助筋の過緊張軽減と呼吸困難の緩和であって心理的効果ではない

COPDに「推奨されないもの」を問われたら低脂肪食。脂肪制限は誤りで、むしろ脂肪の割合を高める。上肢の筋力トレーニングは推奨される(ADLで上肢を使うため)。ただし急性期や呼吸困難時に上肢挙上動作を反復させる指導は不適切で、両者を混同しない。

mMRC息切れスケール

Grade内容
0激しい運動をしたときだけ息切れ
1平坦な道を急ぐとき、または緩やかな上り坂で息切れ
2息切れのため同年代より平地歩行が遅い、または自分のペースでも立ち止まる
3平地を約100m、または数分歩くと息切れで立ち止まる
4息切れがひどく外出できない、着替えでも息切れする

2-7 間質性肺疾患・特発性肺線維症

  • 間質の炎症と線維化が本体。拘束性換気障害(%VC・FVC低下、FEV1/FVCは正常〜上昇)
  • 症状は乾性咳嗽と労作時呼吸困難。湿性咳嗽は誤り
  • 聴診は両側下肺野背側の捻髪音(fine crackles・velcroラ音)水泡音(coarse crackles)は誤り
  • ばち指、拡散能(DLCO)低下による労作時低酸素血症、肺コンプライアンス低下
  • 画像は下肺野・胸膜直下優位の網状影と蜂巣肺、牽引性気管支拡張
  • 血液マーカーはKL-6・SP-Dの上昇
  • 特発性肺線維症(UIPパターン)は特発性間質性肺炎のなかで最も予後不良急性増悪をきたすことがあり予後を大きく悪化させる

特発性肺線維症で誤りやすい記述 →「予後が最もよい」(最も予後不良が正)/「湿性咳嗽が主症状」(乾性咳嗽)/「閉塞性換気障害を示す」(拘束性)/「急性増悪は稀」(起こりうる重要病態)。

血液検査項目と疾患の対応

検査項目対応する疾患・病態
KL-6・SP-D間質性肺疾患
CK-MB・トロポニン心筋梗塞
BNP・NT-proBNP心不全
Dダイマー深部静脈血栓症・肺塞栓症
eGFR・クレアチニン腎機能

間質性肺疾患の理学療法

介入可否理由
徒手的な胸郭可動域拡大硬くなった胸郭の柔軟性を保ち換気効率を維持。呼吸補助筋が過活動で吸気時に胸骨上切痕・鎖骨上窩が陥凹する努力性呼吸の例では最優先
吸気筋トレーニング状況次第安定期には呼吸困難軽減・運動耐容能改善に有効。ただし安静時から頻呼吸で補助筋が疲労している状態に高負荷を加えるのは不適
上肢の筋力増強「行わない」は誤り。ただし呼吸困難が強い時期は酸素需要が増すため避ける
神経筋電気刺激(NMES)運動耐容能が低い例の選択肢になる。禁忌ではない
体位排痰法・気道吸引不適線維化が主体で分泌物過多の病態ではない
有酸素運動目標はSpO2 90%以上の維持。「SpO2 60%を目標」は論外の低値
腹部引き込み(ドローイン)的外れ腹横筋を選択的に働かせる体幹安定化=腰痛の運動療法。呼吸練習として使うものではなく、換気量や酸素化の改善には直結しない

悪性腫瘍の合併がない初発の皮膚筋炎・多発性筋炎で死因として最も頻度が高い合併症は間質性肺炎(特に急速進行性)。予後因子は間質性肺炎・悪性腫瘍・嚥下障害(誤嚥性肺炎)。

2-8 肺炎・誤嚥・嚥下障害

大葉性肺炎(細菌性)誤嚥性肺炎
手がかり発熱+片側の水泡音+肺葉単位の均一な浸潤影嚥下障害の経過(むせ・脳血管障害の既往)+発熱+右下肺野の浸潤影
起炎肺炎球菌など唾液・食物・胃内容の誤嚥

高齢者の肺炎

  • 誤嚥性肺炎が多い。嚥下機能と咳反射の低下が背景(咳反射は亢進ではなく低下)
  • 症状が非典型で高熱が出ないことが多い。食欲低下・元気がない・意識レベル低下で発症する。不顕性誤嚥(むせない誤嚥)も多い
  • 好発部位は下葉背側(仰臥位ではS6・S10)。肺尖部の病巣は結核を想起させるもので誤嚥性ではない
  • 右主気管支は左より太く・短く・垂直に近いため誤嚥物は右に落ちやすい
  • 予防=口腔ケア・嚥下リハ・食事姿勢と体位管理・ワクチン

死因順位は年次で動くので設問が示す年次に合わせて答える近年は1位=悪性新生物・2位=心疾患で固定されていて、動くのは3位以下。ただし「どの年次でも」ではない――悪性新生物が1位になったのは1981年(昭和56年)から、心疾患が脳血管疾患を抜いて2位になったのは1985年(昭和60年)からで、それ以前は並びが違う。

平成23〜28年(2011〜2016)=①悪性新生物 ②心疾患 ③肺炎。平成22年以前は3位が脳血管疾患で、高齢化により肺炎がこれを上回った。「平成23年以降の第1〜3位」を問う出題はこの構成を答える

平成29年(2017)=①悪性新生物 ②心疾患 ③脳血管疾患 ④老衰 ⑤肺炎。この年から誤嚥性肺炎を肺炎と分けて計上するようになり、肺炎が3位から5位へ落ちて脳血管疾患が3位に戻った。老衰はまだ4位。平成28年と平成30年のあいだにこの単年だけ別の並びが挟まるので、年次を確認して答える。

平成30年(2018)以降=①悪性新生物 ②心疾患 ③老衰 ④脳血管疾患 ⑤肺炎(覚え方「がん・心・老・脳・肺」)。老衰の増加が続き、平成30年に老衰が脳血管疾患を抜いて3位となってこの並びになった。近年の統計を問う出題ではこちらが正しく、3位を「肺炎」と答えると誤る

順位低下はこの統計上の分離と老衰の増加によるもので、高齢者の肺炎そのものが減ったわけではない。「肺炎(誤嚥性肺炎を含む)で死亡する例は減少している」は誤り

嚥下の5期と咽頭期の現象

内容障害への対応
先行期認識・食行動食事のペースを指導する
準備期咀嚼・食塊形成咀嚼時間の確保
口腔期食塊を咽頭へ送る低粘度・流動性の高い食物(高粘度食は誤り)
咽頭期嚥下反射(不随意・約0.5秒)頭頸部屈曲(顎引き)で嚥下(伸展は誤嚥リスク増)
食道期蠕動で胃へ食後の姿勢保持
  • 咽頭期に起こること=軟口蓋挙上(鼻咽腔閉鎖)・喉頭挙上と喉頭蓋反転(気道閉鎖)・嚥下性無呼吸・輪状咽頭筋の弛緩(上部食道括約筋が開く)
  • 咽頭期に起こらないこと=吸気・咀嚼・鼻咽腔開放・輪状咽頭筋の収縮
  • 飲水は冷水が原則(冷刺激が嚥下反射を促す)。ぬるま湯は誤り
  • Shaker法は喉頭挙上筋の強化と食道入口部の開大が目的。鼻咽腔閉鎖不全には適応がない

2-9 喘息・気胸・胸膜炎と神経筋疾患の呼吸障害

  • 気管支喘息可逆性の気道閉塞。発作性の喘鳴(呼気性wheeze)・呼気延長。気管支拡張薬でフローボリューム曲線が改善する
  • 原発性自然気胸やせ型・高身長・10〜30歳代の若年男性に好発。肺尖部のブラ破裂で発症し、喫煙が危険因子。再発率が高く、繰り返せばブラ切除を検討
  • 続発性気胸:COPD・肺結核など基礎肺疾患のある高齢者に生じる
  • 緊張性気胸:血圧低下を伴い緊急脱気が必要
  • 癌性胸膜炎・胸水:安静時にも呼吸困難があれば背臥位は不可(横隔膜が挙上して換気が悪化)。起座位・前傾位をとらせる

原発性自然気胸を「肥満者に多い」「低身長者に多い」「60歳以上に多い」「再発は稀」とするのはすべて誤り。やせ・高身長・若年男性・再発多いが正。

神経筋疾患の呼吸障害(すべて拘束性・Ⅱ型)

疾患呼吸に関する要点
筋萎縮性側索硬化症(ALS)呼吸筋麻痺 → 肺胞低換気 → PaCO2上昇。NPPV導入の目安はPaCO2上昇(例:60 mmHg)・%FVC 50%未満・夜間SpO2低下(88%以下の持続)・起座呼吸
Duchenne型筋ジストロフィーX連鎖劣性・男児。動揺性歩行・登攀性起立(Gowers徴候)・腓腹筋仮性肥大。10歳前後で車椅子 → 側弯進行が呼吸機能をさらに悪化 → 思春期以降に呼吸不全が顕在化。咳嗽力が低下し排痰困難(カフアシスト・夜間NPPV)
重症筋無力症クリーゼ呼吸筋・球筋の急激な筋力低下。嚥下障害・咳嗽機能低下を伴う。誘因はステロイドの急激な増減・感染・手術。発症頻度は約2割

「重症筋無力症のクリーゼは閉塞性換気障害をきたす」は誤り → 筋力低下が原因なので拘束性換気障害(FVC低下)。同様に「Duchenne型に口すぼめ呼吸が有効」も誤りで、口すぼめ呼吸は閉塞性の手技。「側弯は呼吸機能に影響しない」「咳をする力は保たれる」「呼吸不全は5歳以下から生じる」もすべて誤り。

ALSの導入判定でPaO2 80 mmHg・睡眠中SpO2 94%・最大吸気圧75 cmH2O・%FVC 85%はいずれも保たれた値でNPPVの根拠にならない。酸素化が保たれていてもCO2が貯留するのがこの病態の要点で、安易な高濃度酸素投与はCO2ナルコーシスを招く。

2-10 酸素療法・人工呼吸器・体位管理と排痰

低流量系高流量系
機器鼻カニュラ・簡易マスクベンチュリマスク・ネブライザー付き機器
吸入酸素濃度患者の呼吸様式で変動する設定した一定濃度を供給
加湿低流量では不要なことが多い必要(高流量ガスで気道が乾燥するため「加湿不要」は誤り)
  • 在宅酸素療法(HOT)は据置型の酸素濃縮器が中心。外出時は酸素ボンベや液体酸素を併用
  • 医療ガスボンベの色:酸素=黒、二酸化炭素=緑、亜酸化窒素(笑気)=青、窒素=灰、空気=ねずみ色

人工呼吸器の合併症と管理

  • 合併症=①人工呼吸器関連肺炎(VAP)=最も代表的 ②圧・容量外傷(気胸・縦隔気腫) ③高濃度酸素障害 ④陽圧による静脈還流低下=循環抑制 ⑤無気肺
  • VAP予防=頭部挙上・口腔ケア・早期離脱
  • 喘息・肺線維症・COPDはもともとある慢性疾患であって人工呼吸器の合併症ではない
人工呼吸器装着患者の理学療法可否
循環・呼吸が安定していれば端座位・立位まで進める「ベッドアップ60°まで」と一律に制限するのは誤り
体位変換で気道内分泌物の移動を促す
気管吸引は挿入時に陰圧をかけず、引き抜くときにかける適(挿入時の陰圧は低酸素・粘膜損傷を招く)
気管吸引には滅菌カテーテルを使う(無菌操作)
発声できないため筆談・文字盤で意思疎通を支援

COPD急性増悪で人工呼吸器管理中、発熱・努力性呼吸がある急性期に徒手的抵抗運動は不適切(酸素消費と呼吸仕事量が増える)。この時期は呼吸介助・体位排痰法・ベッドアップ・関節可動域運動で二次的合併症(無気肺・肺炎・拘縮・廃用)の予防に徹する。

体位と換気血流

  • 原則は重力の影響で下側(重力依存部)に血流が多く分布する。安静時は換気も下側が多い
  • 腹臥位では腹側(下側)に血流が多く分布し、虚脱しやすい背側肺の含気が回復して換気が均等化する
  • 同じFiO2のまま体位を変えただけでPaO2が改善したら、要因は換気血流比(V/Q)の不均衡是正とシャント減少。肺拡散能・解剖学的死腔・吸入気酸素濃度は体位で大きく変わらない
  • 腹臥位療法はARDS・COVID-19肺炎など重症呼吸不全の酸素化改善法
  • 肺活量は座位・立位で最大(腹臥位で増えるわけではない)。立位では換気は肺尖部でなく肺底部に多い
  • 腹臥位は背側区域の排痰に有利。舌区(前方上葉)の排痰には別の体位を用いる

腹臥位で促されるのは背側(=それまで虚脱していた側)の換気背側肺の排痰「上部胸式呼吸を促す」「腹式呼吸を促す」「肺尖部の換気を促す」はいずれも腹臥位の目的ではない。また肺動静脈奇形(肺動静脈瘻)のシャントは血管の構造そのものなので、体位を変えても酸素化は改善しない——体位で変わるのは重力で分布が動く V/Q 不均等と虚脱肺のシャントだけ。

体位排痰法(体位ドレナージ)― 区域と体位の対応

大原則は痰のある区域を上(高い位置)にして、その区域の気管支が下を向く(重力で中枢へ落ちる)ようにする。だから右肺に病変があれば左側臥位、左肺なら右側臥位になる。「病変側を下にする」は逆で誤り。

痰のある区域とらせる体位
肺尖区(上葉 S1)座位(やや前傾)
上葉 後上葉区(S2)前傾側臥位(患側を上にして腹側へ倒す)
上葉 前上葉区(S3)背臥位(水平)
舌区(左 S4・S5)/右中葉(S4・S5)患側を上にした背臥位+約45°の側臥位、頭低位(骨盤を約15〜20cm挙上)。腹臥位ではない
下葉 上−下葉区(S6)腹臥位(水平)
下葉 後肺底区(S10)腹臥位+頭低位
下葉 前肺底区(S8)背臥位+頭低位
下葉 外側肺底区(S9)患側を上にした側臥位+頭低位
片肺全体(例:右肺の病変)健側を下にした側臥位=右肺なら左側臥位
  • 覚え方=上葉は起こす(座位)・下葉は倒して頭を下げる(頭低位)・中葉と舌区は横向き+頭低位。背側の区域(S2・S6・S10)は腹臥位、腹側の区域(S3・S8)は背臥位
  • 頭低位が禁忌・不適になる状況=頭蓋内圧亢進、消化管出血・食道裂孔ヘルニア(誤嚥)、高度の呼吸困難、循環不安定、食直後

排痰と術後呼吸器合併症の予防

  • ハフィング=声門を開いたまま「ハッ」と強制呼出する。咳嗽より胸腔内圧の上昇が小さく循環負担が少ないため、痰が多く努力性咳嗽を繰り返す例に適する
  • 術後高リスク因子=高齢・喫煙(Brinkman指数高値)・低栄養(低BMI)・換気障害・上腹部や開胸手術
  • 予防の柱=早期離床・深呼吸/インセンティブスパイロメトリ・口すぼめ呼吸・創部を手や枕で押さえての咳嗽
  • 創痛のため咳嗽をしないよう指導するのは誤り(喀痰貯留と無気肺を招く)。術後1週間ベッド上に留めるのも誤り(早期離床が原則)
  • ベッドの頭側挙上は10度では不十分。ファウラー位(30〜45度以上)で横隔膜を下げ肺容量を確保する
  • 満腹時は横隔膜運動が制限されるため、運動は食直後を避ける

睡眠関連の検査 睡眠日誌(睡眠表)が最も有用なのは睡眠相後退症候群など概日リズム障害=「寝る時刻がずれている」ことそのものが病態だから、日々の就床・起床時刻の記録が診断に直結する。閉塞性睡眠時無呼吸障害とレム睡眠行動障害は終夜睡眠ポリグラフ(PSG)ナルコレプシーは反復睡眠潜時検査(MSLT)むずむず脚症候群は問診と睡眠時随伴運動の記録が要る。原発性(精神生理性)不眠症でも睡眠日誌は使うが、それは経過を追う補助であって「最も有用な検査」ではない——時刻のずれが本体ではないので、日誌だけでは診断できない。