第4章|腎・消化器・肝疾患

内科学 第4章

4-1 腎の働きと慢性腎臓病〈CKD〉

腎は排泄だけの臓器ではない。内分泌・代謝機能の低下が、腎不全・透析患者の合併症の正体。

腎の機能低下したときに起こること
老廃物・水・電解質の排泄尿毒症、高カリウム血症(致死的不整脈)、高リン血症、体液貯留
エリスロポエチン産生腎性貧血。ESA製剤・鉄剤で治療
ビタミンDの活性化低カルシウム血症、骨ミネラル代謝異常(腎性骨症)
レニン分泌・体液量調節高血圧、浮腫
酸の排泄代謝性アシドーシス

CKDは蛋白尿などの腎障害またはGFR低下が3か月以上続く状態。進行すると末期腎不全となり透析または腎移植が必要。

腎性貧血は透析の方法によらず起こる。原因はエリスロポエチン産生低下という腎そのものの障害なので、血液透析でも腹膜透析でも合併する。

ネフローゼ症候群

  • 高度蛋白尿 → 低アルブミン血症 → 膠質浸透圧の低下 → 圧痕性浮腫
  • 脂質異常症を伴い、易感染性・血栓症を合併しやすい

4-2 透析療法 ― 血液透析と腹膜透析

血液透析〈HD〉腹膜透析〈PD〉
場所医療施設在宅(本人・家族が行う)
頻度・通院週3回程度の通院連日自宅で交換し、通院は月1〜2回
除水の仕方間欠的・短時間に一気に引く持続的・緩徐に引く
循環動態血圧変動が大きい(透析後の低血圧)血圧変動は小さく安定
アクセス内シャント(動静脈瘻)腹腔カテーテル
固有の合併症不均衡症候群、シャント閉塞腹膜炎、被囊性腹膜硬化症
共通の合併症腎性貧血・高カリウム血症・骨ミネラル代謝異常・高血圧同左(腎性貧血はどちらでも起こる)

「腹膜透析は週2回程度の通院が必要」は誤り → 通院は月1〜2回。週2〜3回通うのは血液透析。
「腹膜透析は血液透析より血圧変動が大きい」は誤り → 持続的に緩徐に除水するのでむしろ小さい
「透析患者は身体障害者手帳を取得できない」は誤り → 透析を要する腎機能障害は内部障害として手帳の対象

4-3 透析患者の生活指導とシャント肢の管理

運動

  • 低〜中強度の有酸素運動は推奨される。運動耐容能・心肺機能・QOLの改善に有効で、禁忌ではない
  • 「透析導入後は運動制限が大きくなる」は誤り。状態が安定すれば活動はむしろ勧められる

食事

  • 制限するもの=塩分(ナトリウム)・カリウム・リン・水分、および蛋白質(適正量に管理)
  • 塩分制限は体液貯留・高血圧、カリウム制限は高カリウム血症による致死的不整脈の予防が目的

内シャント肢

  • 避けるもの=血圧測定・採血・駆血・点滴・圧迫(腕枕・重い荷物・きつい袖)
  • 手指の運動・ROM運動は禁忌ではない。過度の圧迫と閉塞・感染を避ければ動かしてよい

「シャント側の手の運動は禁忌である」は誤り → 運動そのものは可。禁じられているのは血圧測定・採血・圧迫。

透析の生活指導の選択肢で「〜の摂取は制限しない」と書いてあるものは、まず誤りと判断してよい。制限をひっくり返す誤答が定番。

4-4 浮腫の鑑別 ― 圧痕性と非圧痕性

機序代表疾患
圧痕性(押すと凹む)血管内から水が漏れ出る=膠質浸透圧の低下・静脈圧の上昇・血管透過性の亢進ネフローゼ症候群、肝硬変、心不全、熱傷、低栄養
非圧痕性(押しても凹まない)ムコ多糖類・ヒアルロン酸が間質に沈着し、水が自由に動かない甲状腺機能低下症(粘液水腫)

非圧痕性浮腫=粘液水腫=甲状腺機能低下症。他の候補(ネフローゼ・肝硬変・心不全・熱傷)は機序が違っても全部「水が漏れる型」=圧痕性なので一つだけ浮く。

4-5 食道の疾患 ― 食道静脈瘤

  • 成因=門脈圧亢進(肝硬変が代表)。門脈血が側副血行路をつくり、食道粘膜下の静脈が拡張する
  • 好発部位=食道の中部〜下部(胃に近い側)。頸部食道ではない
  • 内視鏡所見=初期は青色(静脈色)RC sign(発赤所見)が出たら破裂の危険サイン
  • 破裂すると鮮紅色の大量吐血となり、生命に関わる
  • 治療の第一選択=内視鏡的静脈瘤結紮術〈EVL〉・内視鏡的硬化療法〈EIS〉。食道離断術は限定的な適応
吐血の性状意味
鮮紅色の大量吐血食道静脈瘤破裂など、胃酸に触れる時間が短い出血
コーヒー残渣様胃・十二指腸からの出血。胃酸で血色素が変性した色

「門脈圧の低下が原因」は誤り → 亢進。「吐血はコーヒー残渣様」は誤り → 鮮紅色。「初期は内視鏡で赤色にみえる」は誤り → 初期は青色で、赤色調は破裂前のRC sign。

肝硬変の患者の大量吐血=食道静脈瘤破裂。出血性胃炎・逆流性食道炎でも吐血はありうるが大量吐血の主因にならない。吻合部潰瘍は胃切除後の合併症、アカラシアは下部食道括約筋の弛緩不全でつかえ感・嚥下障害が主症状。

4-6 食道癌

項目食道癌
性差男性に多い
組織型扁平上皮癌が大半(日本)。欧米では腺癌が増加
好発部位胸部中部食道(頸部食道ではない)
危険因子飲酒・喫煙(併用でリスク相乗)、熱い飲食物

「ピロリ菌が食道癌の発症に関与する」は誤り → ピロリ菌は胃癌・胃潰瘍・MALTリンパ腫の因子。「高血圧が危険因子」も誤り。

4-7 消化性潰瘍とNSAIDs

胃・十二指腸潰瘍の二大原因はヘリコバクター・ピロリ菌NSAIDs。心窩部痛・吐血(コーヒー残渣様)・下血(黒色便)をきたす。

NSAIDsが胃をやられる理由

NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ〈COX〉を阻害してプロスタグランジン産生を抑える。これが鎮痛・抗炎症作用の本体だが、胃粘膜を保護するプロスタグランジンまで減るため防御が破綻する。予防にはPPIの併用が有効。

薬剤代表的な副作用
NSAIDs胃潰瘍・消化管出血、腎機能障害(腎血流低下)、アスピリン喘息
副腎皮質ステロイド多幸感などの精神症状、骨粗鬆症、中心性肥満・満月様顔貌、易感染性、高血糖、消化性潰瘍
インスリン・SU薬低血糖

「胃潰瘍/多幸感/骨粗鬆症/中心性肥満/低血糖」が並ぶ形は繰り返し出る定番。NSAIDsの答えは胃潰瘍、多幸感・骨粗鬆症・中心性肥満はステロイド、低血糖は血糖降下薬と機械的に切れる。

4-8 ウイルス性肝炎

感染経路慢性化ワクチン
A型経口(糞口)感染・生水・生カキしない(急性で治癒)あり
B型血液・体液(母子感染・性行為・針刺し)しうるあり
C型血液(輸血・針刺し)高率にするなし
E型経口感染(加熱不十分な肉)原則しない
  • 慢性肝炎・肝硬変・肝細胞癌の原因として最も多いのはC型。B型ではない
  • C型のキャリア判定はHCV抗体陽性かつHCV-RNA陽性で行う。「HCV抗原」で判定するのではない
  • 運動:急性増悪期は安静。増悪期を過ぎた安定期は過度な運動制限は不要で、適度な活動が勧められる

「A型肝炎の慢性化率は約20%」は誤り → A型は慢性化しない。「慢性肝炎の原因ウイルスで最も多いのはB型」も誤り → C型

4-9 肝硬変・肝不全

所見はすべて①肝細胞機能(合成能・解毒能)の低下②門脈圧亢進の2本から導ける。

病態生じる所見
低アルブミン血症(合成能低下)腹水貯留・下腿浮腫(圧痕性)
凝固因子の合成低下+脾機能亢進による血小板減少出血傾向・易出血性の紫斑
アンモニア解毒能の低下肝性脳症(羽ばたき振戦・意識障害・見当識障害)
ビリルビン処理能の低下黄疸
門脈圧亢進(側副血行路の発達)食道・胃静脈瘤(破裂で大量吐血)、腹壁静脈怒張、痔核、脾腫

肝不全で問われる引っかけ。
血小板は増加ではなく減少する
高アルブミン血症ではなく低アルブミン血症
・肝性脳症は炎症性の「脳炎」ではない。アンモニア蓄積による代謝性の意識障害
・門脈圧亢進で生じるのは痔核であって裂肛ではない(裂肛は便秘による肛門の裂創)

リハでは出血傾向による打撲・転倒に注意し、腹水による横隔膜挙上で息切れ・易疲労が出ることを見込んで負荷を決める。

4-10 アルコール性肝障害

段階症状断酒による可逆性
アルコール性脂肪肝ほぼ無症状(腹痛は出ない)可逆(改善する)
アルコール性肝炎発熱・腹痛・黄疸と症状が強い。重症化しうる可逆
アルコール性肝硬変腹水・黄疸・肝性脳症など不可逆。線維化・結節は正常化しない
  • 積算飲酒量が多いほど肝障害の発症率は高い。無関係ではない
  • 肝硬変になると断酒しても組織病変は正常化しない。断酒の意義は進行の抑制
  • 発癌リスクは上がるが、ウイルス性肝硬変に比べれば低い。「肝細胞癌の発症率が健常者の3倍以上」といった高い倍率を断定する記述は誤りで、アルコール性肝障害の段階(脂肪肝・肝炎)では発癌はまれ。肝細胞癌の主因はあくまでC型・B型肝炎ウイルス

「アルコール性肝炎は自覚症状に乏しい」「アルコール性脂肪肝では腹痛がみられる」は両方とも誤り=症状の入れ替え。無症状なのは脂肪肝、症状が強いのが肝炎。

4-11 膵炎 ― 急性と慢性の切り分け

急性膵炎慢性膵炎
成因アルコールが最多、次いで胆石(女性では胆石性が多い)アルコールが最多
好発中年男性(60歳以上の女性ではない)中年男性
症状上腹部の激痛と背部への放散痛、悪心・嘔吐反復する腹痛
検査血清・尿アミラーゼ、リパーゼの上昇画像で膵石・膵管拡張
特徴的所見重症例は循環不全・呼吸不全・腎不全=多臓器不全に至り死亡率が高い膵石・糖尿病(内分泌低下)・脂肪便(外分泌低下)

急性膵炎の設問で並ぶ誤答は、ほぼ慢性膵炎の所見の混入。「膵石がみられる」「初期から糖尿病を合併する」はどちらも慢性膵炎のもの。また「重症での死亡率は1%未満」も誤りで、重症急性膵炎の死亡率は数〜十数%に達する。

4-12 イレウス(腸閉塞)― 機械的と機能的

切り分けは「腸管が物理的にふさがっているか(機械的)/動きが止まっているか(機能的)」の一点。リハ場面で問われるのは長期臥床=機能的(麻痺性)イレウス

機械的イレウス機能的イレウス
本体腸管腔が物理的に閉塞閉塞はないが腸管運動が止まる
原因開腹術後の腹腔内癒着(最多)・大腸癌などの腫瘍・腸重積・鼠径ヘルニアや内ヘルニアの嵌頓・糞塊長期臥床(不動)・麻痺性=腹膜炎・開腹術直後・脊髄損傷・低カリウム血症・抗コリン薬/痙攣性=鉛中毒など
腸雑音亢進(金属音)。閉塞部より上で腸が戦う減弱〜消失
下位分類血流障害のない単純性/血流が絞扼される複雑性(絞扼性)=緊急手術麻痺性(大多数)・痙攣性
  • 共通症状=腹痛・腹部膨満・嘔吐・排ガス排便の停止。絞扼性は持続する激痛+ショックで、時間をかけずに外科へ回す
  • 予防は早期離床。臥床が続く患者では腸蠕動が落ちるので、離床・座位時間の確保がそのままイレウス予防になる

「長期臥床 ─ 機械的イレウス」は誤り → 長期臥床は腸管が詰まっているわけではないので機能的(麻痺性)イレウス。逆に腹腔内癒着・大腸癌・腸重積・内ヘルニアはすべて機械的

4-13 病原体と発癌

病原体関連する腫瘍
B型・C型肝炎ウイルス肝細胞癌(慢性肝炎→肝硬変→肝癌)
EBウイルスBurkittリンパ腫、上咽頭癌、Hodgkinリンパ腫
HTLV-I成人T細胞白血病/リンパ腫〈ATL〉
ヒトパピローマウイルス〈HPV〉子宮頸癌(16・18型などの高リスク型。ワクチンで予防)
ヘリコバクター・ピロリ菌胃癌、MALTリンパ腫(慢性萎縮性胃炎を経る)

「A型肝炎ウイルス ─ 肝細胞癌」は誤りの組合せ。A型は経口感染で急性肝炎を起こすが慢性化せず、発癌に関与しない。肝細胞癌の原因ウイルスはB型・C型

軸は「慢性化するか」。A型・E型は急性で終わるので肝硬変にも肝癌にもならない。B型・C型は慢性化し、肝硬変→門脈圧亢進→食道静脈瘤、および肝細胞癌へつながる。