全身状態が安定していれば早期離床が原則。廃用症候群・深部静脈血栓症・肺炎・褥瘡を防ぐ。
| 離床を進めてよいサイン | 見合わせ・中止のサイン |
|---|---|
| 意識レベルが安定(JCS1桁程度) | JCS3桁などの重度意識障害、意識レベルの低下 |
| 神経症状の進行が止まっている | 神経症状の増悪 |
| バイタルが正常範囲(脈拍・呼吸数) | 著明な高血圧、著明な頻呼吸、頻脈 |
| 平均血圧が保たれている(65mmHg以上) | 重篤な全身性合併症 |
| 鎮静が深くなく、呼びかけに反応できる | 深い鎮静(RASS −3以下) |
運動麻痺の重さは離床を止める理由にならない。重度麻痺でも全身状態が安定していれば離床する。
リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン(2006)は、基準を4つの区分に分けている。下の表はそのうち数値の基準がある3区分の代表例(ほかに「その他の注意が必要な場合」の区分がある)。
| 区分 | 代表例 |
|---|---|
| 積極的なリハを実施しない(開始前) | 安静時SpO₂ 90%以下/安静時脈拍40/分以下または120/分以上/安静時収縮期血圧70mmHg以下または200mmHg以上/実施前から動悸・息切れ・胸痛がある |
| 途中で中止 | 運動による収縮期血圧40mmHg以上または拡張期血圧20mmHg以上の上昇/脈拍140/分を超える/中等度以上の呼吸困難・めまい・嘔気・狭心痛・頭痛・強い疲労感/意識状態の悪化 |
| いったん中止し、回復を待って再開 | 脈拍が120/分を超える、または運動前の30%を超えて増える/軽い動悸・息切れ |
脈拍は120/分超=いったん中止して回復を待つ、140/分超=途中で中止と段階が違う。SpO₂は「90%以下」で実施しない。
| 状況 | 理学療法 |
|---|---|
| 脳出血の翌日、意識障害が残り血圧も高め | まずギャッジアップ(ヘッドアップ)。角度を段階的に上げて反応を見る |
| くも膜下出血の発症早期(再出血は発症早期、特に24時間以内に多い/脳血管攣縮期は発症4〜14日) | 体位変換・他動ROMなどの廃用予防が中心。努責(いきみ)・腹筋運動・抵抗運動は避け、離床(座位)は動脈瘤の処置の有無と医師の指示で段階的に進める |
| 症状が完全に消えたTIA | 安静は不要。廃用予防の筋力増強・歩行を早期から |
| 意識清明・麻痺の進行停止の脳梗塞 | 座位練習を開始 |
離床の順序:良肢位・体位変換 → ギャッジアップ → 端座位 → 車椅子座位 → 立位 → 歩行。段階ごとに血圧・脈拍・意識・神経症状を確認する。
非麻痺側の筋力増強は麻痺の回復を妨げない。廃用予防のため行う。ただし急性期の強い抵抗運動は努責による血圧上昇に注意。
原則は痙性パターンと反対の肢位に置く。
| 部位 | 起こりやすい方向 | 保持する肢位 |
|---|---|---|
| 頸部 | — | 枕で支えた軽度屈曲位 |
| 肩 | 内転・内旋 | 外転・外旋位、肩甲骨は前方突出位で支える |
| 肘 | 屈曲 | 伸展方向 |
| 手関節・手指 | 掌屈・屈曲 | 手関節軽度背屈、手指軽度屈曲 |
| 股 | 重力で外旋 | 中間位(大転子部を支えて外旋を防ぐ) |
| 足 | 内反尖足 | 背屈0°(中間位) |
肩から手にかけての疼痛・腫脹・血管運動障害・拘縮。Steinbrocker分類でⅠ〜Ⅲ期。
| Ⅰ期(急性期)で行う | Ⅰ期で避ける |
|---|---|
| 交代浴、ホットパックなど適度な温熱 痛みの範囲内の自己介助運動 臥床時の上肢ポジショニング(挙上で浮腫を軽減) 肩周囲筋の再教育(軽い随意収縮の促通) | 強い他動伸張運動 疼痛を増す過剰な刺激(CI療法など) |
肩の管理は「支える・整復する・肩甲骨を動かす・痛みを出さない」。
| 有効な関わり | 不適切な関わり |
|---|---|
| 視覚の手がかり(鏡・垂直の目印)で正中を認識させる 非麻痺側へのリーチで重心を非麻痺側へ移す 移乗は非麻痺側方向で行い、重心移動を動作に生かす | 閉眼での立位練習(視覚の手がかりを奪う) 手すりを押し引きする練習(押す動作の反復) 非麻痺側の筋力増強・ROM(原因ではない) 麻痺側からの強引な押し戻し |
| 左無視への有効な関わり | 不適切な関わり |
|---|---|
| 視覚探索練習(右から左へ注意を移す) プリズム順応(視野を右へずらす眼鏡) 後頸部への振動刺激・経皮的通電 カロリック刺激(前庭刺激) 体幹の左回旋 療法士は左側に位置し、左から声かけ・触覚刺激 車椅子駆動時に左へ注意を促す | 体幹の右回旋(逆方向) 右側のブレーキレバーの延長(健側への工夫は無視対策にならない) 頸部の右回旋を徒手で押し戻す 導入時の鏡(像が左右反転し空間認知を混乱させやすい) 無視が強い時期の電動車椅子 |
鏡の使い分け。姿勢の傾き(pusher・重心の偏り)には鏡が有効。左無視の導入期の空間探索には鏡は向かない。何を学習させたいかで判断する。
無視への原則は「押さえつけず、無視側へ能動的に向かわせる」。麻痺側上肢を意識させ、麻痺側下肢への荷重を促すのも有効。
| 目的になる | 目的にならない |
|---|---|
| 尖足(内反尖足)の予防:足関節背屈位で下腿三頭筋を持続伸張 覚醒レベルの向上 立位感覚の入力・維持 体幹筋の賦活 荷重による骨萎縮(骨粗鬆症)の予防 起立性低血圧への順応 | 膝伸展筋の痙縮抑制(膝は伸展位で固定され、大腿四頭筋は伸張されない) |
| 手段 | 推奨 |
|---|---|
| トレッドミル訓練 | B(勧められる) |
| 筋電図バイオフィードバック | B |
| 麻痺側手関節背屈筋への電気刺激 | B |
| 痙縮による内反尖足へのフェノールブロック | B |
| 神経筋促通手技(ファシリテーション) | C1(他の手技より優れる根拠がない) |
頭部外傷などの痙性麻痺(上肢屈曲・下肢伸展)には、持続伸張と介助下の立位バランス練習。Frenkel体操は運動失調(小脳性・脊髄性)用で、痙性麻痺には使わない。
| 期 | 内容 | 障害の例 |
|---|---|---|
| 先行期(認知期) | 食物を認識し口へ運ぶ | 嚥下機能は保たれるのに自分で口に運ばない(前頭葉障害・意識・注意) |
| 準備期 | 咀嚼・食塊形成 | 咀嚼困難 |
| 口腔期 | 食塊を咽頭へ送る | 送り込み不良 |
| 咽頭期 | 嚥下反射で食道へ | むせ・誤嚥、喉頭挙上不良 |
| 食道期 | 蠕動で胃へ | 逆流 |
| 訓練 | 主な効果 |
|---|---|
| Shaker法(頭部挙上訓練) | 舌骨上筋群の強化 → 喉頭挙上 → 食道入口部の開大 |
| アイスマッサージ(寒冷刺激) | 嚥下反射の誘発 |
| 舌の運動 | 食塊形成・送り込み(口腔期) |
| 構音・発音練習 | 口唇閉鎖・舌・鼻咽腔閉鎖 |
| 顔面頸部のマッサージ | リラクセーション・感覚入力 |
Wallenberg症候群の嚥下障害は咽頭期、特に食道入口部の開大不全(1-1)。