徒手筋力検査(MMT)は重力と徒手抵抗を操作して筋力を0〜5の6段階で判定する。段階の定義そのものが繰り返し問われる。
| 段階 | 呼称 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 5 | Normal | 最大抵抗に抗して全可動域を動かし、最終肢位を保持できる |
| 4 | Good | 中等度の抵抗に抗して全可動域を動かせる |
| 3 | Fair | 抵抗なしで、重力に抗して(抗重力位で)全可動域を動かせる |
| 2 | Poor | 重力を除いた肢位(運動面を水平にする)で全可動域を動かせる |
| 1 | Trace | 筋収縮を触知できるが、関節運動は起こらない |
| 0 | Zero | 筋収縮を触知できない |
段階1と0の差は収縮を触知できるかどうかであって、関節が動くかどうかではない。段階1でも関節運動は起こらない。
段階3以上=抗重力位(運動方向が重力と逆になる肢位を組む)/段階2以下=重力除去位(運動面を水平にして重力の影響を消す)。同じ運動でも判定したい段階によって肢位が変わる、これが肢位問題の解き方の全部である。
| 肩関節の運動 | 段階2(重力除去位) | 段階3以上(抗重力位) |
|---|---|---|
| 屈曲 | 側臥位 | 座位(または立位) |
| 外転 | 側臥位 | 座位 |
| 伸展 | 側臥位 | 腹臥位 |
| 外旋・内旋 | 腹臥位で上肢を台の外に垂らす | 腹臥位または座位(段階4は抵抗を加えて判定) |
| 水平内転 | 座位(前腕を支持台にのせ水平に動かす) | 背臥位 |
| 水平外転 | 座位(同上) | 腹臥位 |
組合せ問題で狙われる誤りの型。屈曲の段階2=背臥位は誤り → 背臥位では重力が抵抗になる。正しくは側臥位。伸展の段階3=座位は誤り → 腹臥位。水平内転の段階2=腹臥位・水平外転の段階2=側臥位はいずれも誤り → どちらも座位で支持面上を水平に動かす。
座位で抗重力位になるのは持ち上げる向き(重力と反対向き)に動く運動だけ。この視点で消去法が使える。
| 可否 | 筋と運動 |
|---|---|
| 座位で段階3を判定できる | 上腕三頭筋(肘伸展。前腕を下垂位から伸展させる)/縫工筋(股屈曲+外転+外旋+膝屈曲で踵を対側の膝へ運ぶ)/腸腰筋(股屈曲=大腿を座面から持ち上げる)/大腿四頭筋(膝伸展) |
| 座位では判定できない | 大胸筋(肩水平内転→抗重力位は背臥位)/肩甲下筋(肩内旋→腹臥位)/ハムストリングス(膝屈曲→腹臥位。座位では下腿が下垂し重力に抗さない)/下腿三頭筋(足底屈→立位の片脚踵上げ) |
下腿三頭筋は頻出のひっかけ。段階3以上の標準肢位は立位での片脚踵上げ(自分の体重が負荷)。座位で足を底屈させても負荷が軽すぎ、正しい段階3判定にならない。
「上位頸椎の運動を測定する」は誤り → 下顎を引いた状態で頸椎全体の屈曲をみる。「両腕を胸の前で組ませて行う」は誤り → 体幹屈曲の代償が入るので上肢は体側。「段階2は下顎を頸部に引き付ける運動で判断する」は誤り → 段階2の基準はあくまで重力除去位での全可動域。
腹筋群は抵抗を手で加えず、上肢の肢位で負荷量を変えて段階を分けるのが特徴。
| 上肢の位置 | 完了できたときの段階 |
|---|---|
| 手を体側に置く | 段階3 |
| 腕を胸の前で組む | 段階4 |
| 手を頭の後ろで組む | 段階5 |
| 項目 | 正しい手順 |
|---|---|
| 肢位 | 検査側を上にした側臥位。検査側下肢は伸展位・回旋中間位で外転させる |
| 固定 | 骨盤が回旋・挙上しないように固定する |
| 抵抗 | 大腿遠位外側(膝の直上)に加える |
| 段階 | 4=中等度の抵抗に抗して全可動域保持/5=最大抵抗に抗して保持 |
| 非検査側 | 下側の下肢は安定のため軽度屈曲させてよい |
| 段階2 | 背臥位で水平面の外転(重力除去位) |
検査側を外旋位にするのは誤り → 股屈筋群・大腿筋膜張筋の関与が増して純粋な外転にならない。回旋中間位で行う。抵抗を足関節に加えるのも誤り → テコが長くなり誤差が大きい。大腿遠位に加える。骨盤挙上・股関節屈曲外旋はいずれも代償のサイン。
「側臥位で行う」こと自体は正しい記述だが、適切な測定を1つ選ぶ設問では代償を排除する骨盤固定が核心になる。正しい記述が複数並ぶときは「その検査の精度を決めている条件」を選ぶ。
| 髄節 | key muscle | 髄節 | key muscle |
|---|---|---|---|
| C5 | 肘屈筋(上腕二頭筋) | L2 | 股屈筋(腸腰筋) |
| C6 | 手関節背屈筋 | L3 | 膝伸筋(大腿四頭筋) |
| C7 | 肘伸筋(上腕三頭筋) | L4 | 足背屈筋(前脛骨筋) |
| C8 | 中指末節屈筋 | L5 | 長母趾伸筋 |
| T1 | 小指外転筋 | S1 | 足底屈筋(下腿三頭筋) |
| AIS | 判定基準 |
|---|---|
| A(完全) | S4-5の運動・感覚がすべて消失 |
| B(感覚不全) | S4-5の感覚が残存し、運動は完全麻痺 |
| C(運動不全) | 損傷高位より下の主要筋の半数以上がMMT3未満 |
| D(運動不全) | 損傷高位より下の主要筋の半数以上がMMT3以上 |
| E | 運動・感覚とも正常 |
完全か不全かの決め手はS4-5(肛門)が残っているかの一点。①肛門の随意収縮 ②肛門深部圧覚 ③S4-5の感覚 —— 3つすべて消失=A、ひとつでも残れば不全。感覚の目印では乳頭部=T4、剣状突起=T6、臍=T10。
MMT3レベル以下の新たな筋力低下に筋力増強運動を行うのは誤り → 過用性筋力低下(オーバーユース)を招く。負荷量の管理・エネルギー保存・補装具の活用が原則。
| 項目 | 痙縮(spasticity) | 固縮=強剛(rigidity) | 低緊張(弛緩) |
|---|---|---|---|
| 障害部位 | 上位運動ニューロン(錐体路) | 錐体外路(基底核) | 下位運動ニューロン・小脳・脊髄ショック期 |
| 速度依存性 | あり(速く動かすほど抵抗が強い) | なし(速度に関係なく一様) | — |
| 抵抗の性状 | 折りたたみナイフ現象(途中で急に抜ける) | 鉛管様・歯車様 | 抵抗が乏しい |
| 腱反射 | 亢進・病的反射陽性 | 正常〜軽度亢進 | 減弱〜消失 |
| 代表疾患 | 脳卒中・脊髄損傷・痙直型脳性麻痺 | Parkinson病 | 末梢神経障害・小脳障害 |
Westphal現象=他動的に関節を動かしたときに急に抵抗(筋の持続収縮)が生じる現象で、Parkinson病の固縮の評価に用いる。Parkinson病の重症度はHoehn&Yahr分類(Ⅰ〜Ⅴ)・UPDRS。
Parkinson病の評価にMASを当てるのは誤り → MASは痙縮の尺度で、固縮の評価には一般的でない。紛らわしい他の徴候・尺度:Beevor徴候=腹直筋の上下の筋力不均衡で臍が偏位(腹筋麻痺・T10レベルの脊髄損傷)/Finkelstein test=de Quervain病(狭窄性腱鞘炎)/SARA=小脳性運動失調の重症度。
生理的に筋緊張が下がるのがレム睡眠。急速眼球運動を伴い、抗重力筋の筋緊張は著しく低下(消失)、脳波は覚醒時に近い低振幅速波、夢を多くみる。ノンレム睡眠は高振幅徐波で脳が休む。周期は約90分で一晩に4〜5回、入眠直後は深いノンレムが多く、レムは睡眠後半(明け方)ほど長くなる。
| MASのグレード | 所見 |
|---|---|
| 0 | 筋緊張の増加なし |
| 1 | 可動域の最終域だけに引っかかり(catch)と消失、または最小の抵抗 |
| 1+ | catchの後、可動域の1/2以下の範囲で軽度の抵抗が続く |
| 2 | 可動域の大部分(ほぼ全範囲)で抵抗が増すが、患部は容易に動かせる |
| 3 | 抵抗が著明に増加し、他動運動が困難 |
| 4 | 患部が屈曲位または伸展位で固まり、動かない |
判定の鍵は「抵抗が出る範囲」×「動かしやすさ」の2軸。最終域のみ=1/全範囲+容易=2/全範囲+困難=3。範囲だけ、あるいは重さだけで決めると1段ずれる。
MTS〈Modified Tardieu Scale〉は、速度を変えて(ゆっくり/重力に任せる速さ/できるだけ速く)他動伸張し、catchが起こる角度と反応の質で評価する。速度依存性を角度として定量できる点がMASとの違い。MTSも痙縮の尺度であり疼痛尺度ではない。
| 尺度 | 何を測るか |
|---|---|
| mRS(modified Rankin Scale) | 脳卒中後の転帰・生活自立度。0=症状なし 〜 5=重度障害(寝たきり・全介助)、6=死亡。「症状なしから死亡まで分類できる尺度」=mRSで決め打ちしてよい |
| GCS | 意識レベル。開眼E4・言語V5・運動M6の合計、最良15・最低3 |
| SIAS | 脳卒中の機能障害を運動・感覚・体幹・視空間など多項目で総合評価 |
| FMA(Fugl-Meyer assessment) | 片麻痺の運動・感覚・関節可動域/疼痛・バランスを点数化した機能障害の評価 |
| Brunnstrom stage | 片麻痺の随意運動の回復段階(Ⅰ〜Ⅵ) |
| MAS/MTS | 痙縮(筋緊張) |
| SCP(Scale for Contraversive Pushing) | pusher現象を「自発姿勢の傾き・押す動作・修正への抵抗」の3項目で定量評価 |
| SARA | 小脳性運動失調の重症度 |
| AIS | 脊髄損傷の完全/不全(A〜E) |
pusher現象(プッシャー症候群)=右半球損傷による左片麻痺で多く、非麻痺側の上下肢で座面や床を押して麻痺側へ傾き、正中位への修正に抵抗する。座位・立位のいずれでも出る。この病態を疑ったら最優先の評価はSCP(次いでBLS)。半側空間無視を合併しやすいが両者は別の病態。失語・注意・知能の検査を先に当てるのは優先順位の誤り。
| 測るもの | 指標 |
|---|---|
| 機能状態 | Steinbrockerのclass分類(Ⅰ〜Ⅳ)。身の回りのこと・仕事・余暇の3要素の遂行能力で分類 |
| 病期(進行度) | Steinbrockerのstage分類(Ⅰ〜Ⅳ) |
| 疾患活動性(病勢) | DAS28(28関節の腫脹・圧痛数、血沈/CRP、患者全般評価) |
| 関節破壊(X線) | Larsen分類(Grade0〜5)、Sharp score(骨びらん・関節裂隙狭小化の点数化) |
| (無関係) | CMI=心身の自覚症状を問う健康調査票。RAの評価法ではない |
| 尺度 | 方法と適応 |
|---|---|
| VAS | 両端を「痛みなし」「最悪の痛み」とした10cmの直線上に患者が印をつけ、端からの距離で表す |
| NRS | 0(痛みなし)〜10(最悪の痛み)の数値を患者が選ぶ。0を含めて11段階 |
| face scale | 表情のイラストで選ばせる。数値概念が不要なので小児・高齢者に使いやすい |
| VRS | 「なし/軽度/中等度/高度」など言語表現で段階を選ばせる |
| McGill疼痛質問票 | 強度に加えて痛みの性質(うずく・刺すなど)まで評価できる |
NRSでよくある誤り。「10段階で評価する」→ 誤り、0〜10の11段階。「疼痛の性質を評価する」→ 誤り、測るのは強度のみ(性質はMcGill)。「患者間の比較に有効」→ 誤り、主観的で個人差が大きく同一患者の経時変化に用いる。「幼児の疼痛評価に使用される」→ 誤り、数値概念が必要なので幼児にはface scale。尺度水準は間隔の等しさが保証されない順序尺度。
疼痛は主観的指標なので本人申告型のスケールを使う。選択肢に紛れる略語の整理:GCS=意識/mRS=生活自立度/MAS・MTS=痙縮/SLTA=失語/WCST=遂行機能。いずれも疼痛評価ではない。
| 検査 | 評価対象 |
|---|---|
| TMT(Trail Making Test) | 注意・処理速度・遂行機能。数字を順に結ぶA、数字と仮名を交互に結ぶBがあり、A・Bの差が遂行機能を反映 |
| かなひろいテスト | 注意(選択的注意) |
| WCST | 前頭葉機能・遂行機能・概念形成 |
| BADS | 遂行機能(日常場面に近い課題) |
| Stroop test | 色名と文字の干渉を使う選択的注意・抑制(前頭葉) |
| Rey-Osterrieth複雑図形検査(ROCFT) | 複雑な幾何図形の模写と遅延再生で視空間構成能力・視覚性記憶 |
| Rey聴覚性言語学習検査(RAVLT) | 単語リストの記銘・再生による言語性記憶 |
| Bender gestalt test(BGT) | 複数の単純な幾何図形カードを模写させる視覚運動構成 |
| Raven色彩マトリックス検査 | 欠けたパターンを選択肢から補充する非言語性知能 |
| WAIS-Ⅳ | 成人知能 |
| MMSE・HDS-R | 認知症スクリーニング |
| SLTA | 標準失語症検査=失語症 |
MASを高次脳機能検査の選択肢として選ぶのは誤り → MASは運動系(痙縮)の尺度。図で示された刺激の見分けは、単一の複雑な幾何図形の模写=ROCFT/複数の単純図形カードの模写=BGTで切る。
検定法は①対応の有無 ②群数 ③正規分布かの3つだけで決まる。表を丸暗記すれば取りこぼさない。
| 条件 | 2群 | 3群以上 |
|---|---|---|
| 正規分布・対応なし | 対応のないt検定 | 一元配置分散分析(ANOVA) |
| 正規分布・対応あり | Paired-t検定 | 反復測定分散分析 |
| 非正規・対応なし | Mann-WhitneyのU検定 | Kruskal-Wallis検定 |
| 非正規・対応あり | Wilcoxon符号付順位検定 | Friedman検定 |