学習とは経験によって生じる比較的永続的な行動の変化。国試では「その技法・現象がどの学習型に属するか」を問う出題が中心で、まず次の3つに割り振れるかが勝負になる。
| 型 | 提唱者 | 成立のしくみ | 代表的な技法 |
|---|---|---|---|
| 古典的(レスポンデント)条件づけ | Pavlov | 刺激と刺激の連合。反応は誘発される(受動的) | 系統的脱感作法・曝露法・フラッディング法・暴露反応妨害法・嫌悪療法 |
| オペラント(道具的)条件づけ | Skinner(源流はThorndike) | 自発した行動とその結果(報酬・罰)の連合(能動的) | トークンエコノミー法・シェイピング・行動活性化技法 |
| 観察学習(モデリング) | Bandura | 他者の行動と結末を観察するだけで成立。自分が強化を受けなくてよい | モデリング法・社会生活技能訓練〈SST〉 |
一言で判別する。刺激で反応が勝手に引き出される=古典的/結果しだいで行動が増減する=オペラント/他人を見て学ぶ=観察学習。
生得的な反射に、本来は無関係な刺激を対提示して新しい反射をつくる。
| 用語 | 意味(イヌの唾液分泌の例) |
|---|---|
| 無条件刺激(US) | もともと反応を引き起こす刺激(餌) |
| 無条件反応(UR) | 生得的な反応(餌で唾液が出る) |
| 条件刺激(CS) | もとは中性の刺激(メトロノーム音) |
| 条件反応(CR) | 学習によって生じた反応(音だけで唾液が出る) |
消去は「忘れる」ことではない。連合そのものは残り、抑制が上乗せされた状態。だから自発的回復が起こる。
自発された行動に結果が伴い、その行動の生起頻度が変わる。行動が増えれば強化、減れば弱化(罰)。刺激を与えるなら正、取り除くなら負。
| 刺激を与える(正) | 刺激を取り除く(負) | |
|---|---|---|
| 強化=行動が増える | 正の強化(できたらほめる、トークンを渡す) | 負の強化(痛みや叱責がなくなるので行動が増える) |
| 弱化(罰)=行動が減る | 正の罰(叱る、不快刺激を与える) | 負の罰(好きなものを取り上げる) |
「負の強化」は罰ではない。不快なものが除かれた結果として行動が増えるのが負の強化。増えるか減るかを先に見て強化/罰を決め、その後で正負を決める。
| スケジュール | 与え方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 連続強化 | 毎回強化 | 習得は速いが消去も速い。新しい行動の獲得期に使う |
| 固定比率(FR) | 一定回数ごと | 強化直後に反応が休止しやすい |
| 変動比率(VR) | 平均○回ごと(不規則) | 反応率が最も高く、消去抵抗が最も強い |
| 固定間隔(FI) | 一定時間後の最初の反応 | 期限直前に反応が集中する |
| 変動間隔(VI) | 平均○分ごと(不規則) | 低いが安定した反応が続く |
Banduraの社会的学習理論。他者(モデル)の行動を観察するだけで新しい行動が獲得される。自分が直接強化を受けなくても成立する点が、古典的条件づけ・オペラント条件づけとの決定的な違い。
| 過程 | 内容 |
|---|---|
| 注意 | モデルの行動に注意を向ける |
| 保持 | 観察した内容をイメージ・言語で記憶する |
| 運動再生 | 記憶をもとに実際に動いてみる |
| 動機づけ | やってみようという動機が生じて実行に移る |
設問文に「他者の模範行動を観察して」とあれば答えはモデリング法。系統的脱感作法(曝露と筋弛緩)、行動活性化技法(自分の活動量を増やす)、マインドフルネス(今ここへの注意)、問題解決技法(手順を学ぶ)はいずれも観察が主体ではない。
自己効力感(セルフエフィカシー、Bandura)=「自分はその行動をやり遂げられる」という見込み。運動療法の継続や自主トレの定着を左右する。
| 情報源 | 内容 | 臨床での例 |
|---|---|---|
| 遂行行動の達成(成功体験) | 最も強力 | 類似課題での過去の成功、達成可能な課題をこなす |
| 代理的経験 | 他者の成功を見聞きする | 同じ疾患で退院した患者の経過を伝える |
| 言語的説得 | できると言葉で励まされる | 運動中に医療者が声をかける |
| 生理的・情動的状態 | 身体感覚の解釈が変わる | 運動後の疲労は問題ないと説明する |
逆に自己効力感を下げるのは、初めから達成困難な高い目標を設定すること、失敗体験の反復、疲労や不安を放置すること。目標は達成可能な水準から段階的に上げる(スモールステップ)。
| 技法 | 基盤 | 内容 |
|---|---|---|
| 系統的脱感作法 | レスポンデント | 不安階層表をつくり、筋弛緩と組み合わせて弱い刺激から段階的に。逆制止(Wolpe) |
| 曝露法(エクスポージャー) | レスポンデント | 不安刺激に持続的に直面させ、不安反応を消去・馴化させる |
| フラッディング法 | レスポンデント | 強い不安刺激に一気に長時間さらす曝露法 |
| 暴露反応妨害法 | レスポンデント | 強迫症に用いる。曝露しながら儀式行為(確認・洗浄)を止める |
| 嫌悪療法 | レスポンデント | 問題行動に不快刺激を対提示して行動を減らす |
| トークンエコノミー法 | オペラント | 望ましい行動にトークン(代用貨幣)を与えて正の強化をする |
| シェイピング | オペラント | 目標行動へ近づく行動を段階的に強化する |
| 行動活性化技法 | オペラント | 抑うつに対し活動量を増やし、正の強化を受ける機会を増やす |
| モデリング法 | 観察学習 | 他者の行動を観察・模倣して行動変容する |
| 社会生活技能訓練〈SST〉 | 観察学習+オペラント | 教示・モデリング・ロールプレイ・フィードバック・般化課題で対人技能を学習 |
| 認知再構成法 | 認知 | 自動思考や認知の歪みを検証し、現実的な考えに修正する(条件づけではない) |
| 問題解決技法 | 認知 | 問題の同定→解決策の産出→選択→実行→評価を段階的に学ぶ |
| セルフモニタリング法 | 自己管理 | 自分の行動・気分・症状を観察して記録する |
| 漸進的筋弛緩法 | リラクセーション | 筋の緊張と弛緩を反復して全身を弛緩させる。条件づけの技法ではない |
| マインドフルネス | 第3世代の認知行動療法 | 「今ここ」の体験に評価を加えず注意を向ける |
頻出の取り違え。曝露系(系統的脱感作・曝露法・フラッディング・暴露反応妨害)はすべてレスポンデントで、オペラントではない。逆に報酬で行動を増やすトークンエコノミーはオペラント。「報酬で増やす=オペラント」「刺激に慣らす=レスポンデント」で切る。
| 人名 | 対応する理論・技法 |
|---|---|
| Pavlov | 古典的(レスポンデント)条件づけ |
| Skinner | オペラント条件づけ、スキナー箱 |
| Thorndike | 試行錯誤学習、効果の法則 |
| Köhler | 洞察学習 |
| Tolman | 潜在学習、認知地図 |
| Bandura | 社会的学習理論、観察学習(モデリング)、自己効力感 |
| Wolpe | 系統的脱感作法、逆制止 |
| Beck | 認知療法、自動思考、認知再構成法 |
| Ellis | 論理情動行動療法、イラショナル・ビリーフ |
| Liberman | 社会生活技能訓練〈SST〉 |
| Kabat-Zinn | マインドフルネス(マインドフルネスストレス低減法) |
| Miller | 動機づけ面接 |
| Seligman | 学習性無力感 |
組合せ問題は提唱者を入れ替えて出される。定番の誤り=「オペラント条件づけ―Beck」(正しくはSkinner)、「自動思考―Kabat-Zinn」(正しくはBeck)、「マインドフルネス―Miller」(正しくはKabat-Zinn)、「動機づけ―Pavlov」(Pavlovは古典的条件づけ、動機づけ面接はMiller)。
理学療法の動作練習も学習理論の枠組みで問われる。段階はFitts&Posnerの3期。
| 段階 | 特徴 | 指導のしかた |
|---|---|---|
| 認知段階 | 課題の理解が中心。誤りが大きくばらつく | 言語教示、手本の提示(デモンストレーション) |
| 連合段階 | 誤りが減り、動作が洗練される | フィードバックで細部を修正する |
| 自動化段階 | 注意を向けなくても遂行でき、二重課題にも耐える | 環境を変える、他の課題と併行させる |
| フィードバック | 内容 |
|---|---|
| 内在的 | 自分の感覚器から得られる情報(視覚・体性感覚) |
| 結果の知識(KR) | 結果が目標に対してどうだったか(何秒、何cm届いたか) |
| パフォーマンスの知識(KP) | 動作の質・フォームそのものについての情報 |
| 与える時期でのフィードバックの分類 | 内容 |
|---|---|
| 同時(並行)フィードバック | 動作を行っている最中に与える。鏡を見ながら、荷重量を音で知らせながら、など |
| 遅延(終末)フィードバック | 動作が終わってから与える。動画を撮って終了後に見せるのはこちら |
組合せ問題で狙われる4つ。①正の転移=先にやった課題が後の課題を助ける(ソフトボールの経験が投球を助ける=○)②エラーレス学習=誤りをさせない(二重課題は×)③同時フィードバック=動作中(終了後の動画確認は遅延で×)④パフォーマンスの知識(KP)=動作の質・フォームの情報。ただし「荷重量を数値で伝える」は結果の知識(KR)寄りで、フォームの良し悪しを伝えるのがKP。
運動学習の一般原則で誤りとされる言い方 →「動機づけが高いほどパフォーマンスが向上する」「覚醒レベルが高いほど向上する」(どちらも高すぎても低すぎても悪い逆U字=Yerkes-Dodsonの法則)/「向上は直線的に起こる」(プラトーを含む非直線)/「向上がみられなくなること=学習の停止」(プラトー期でも内部では学習が進んでいる)。正しいのは「2つの課題に類似性があるほど転移の影響は大きい」。
| 対 | 分ける基準 | 内容 |
|---|---|---|
| 全体練習 ⇔ 部分練習 | 課題を分割するか | 一連の動作をそのまま行う/動作の一部分(要素)だけ取り出して反復する |
| 集中練習 ⇔ 分散練習 | 休憩の取り方 | 休憩を挟まず続ける/休憩を多く挟む(疲労しやすい患者向き) |
| 恒常練習 ⇔ 多様練習 | 条件を一定にするか | 同一条件で反復する/条件を変え、般化・汎化を狙う |
| ブロック練習 ⇔ ランダム練習 | 課題の順序 | 同じ課題をまとめて行う/複数課題を順不同で行う |
車椅子とベッドの移乗練習で「離殿」だけを繰り返す=部分練習。休憩の話(分散練習)でも、条件の話(恒常・多様練習)でも、順序の話(ランダム練習)でもない。「一連動作の一部だけを反復=部分練習」と直結させる。