記憶は記銘(符号化)→ 保持(貯蔵)→ 想起(検索)の3過程で説明する。「記憶過程の要素」として選んでよいのはこの3語だけである。
| 機能 | 構成要素 | 主な担当 |
|---|---|---|
| 記憶 | 記銘・保持・想起 | 海馬・側頭葉ほか |
| 注意 | 選択性・持続性・転換性・配分性 | 前頭葉・頭頂葉 |
| 遂行機能 | 計画立案・目標設定・実行・自己修正 | 前頭前野 |
「転換」「配分」は注意の要素、「計画立案」は遂行機能の要素。記憶過程の要素として選ぶと誤り。記憶=覚える/保つ/思い出す、注意=向ける/保つ/切り替える/分ける、と唱えて区別する。
| 貯蔵庫 | 保持時間 | 容量 | 次段階への移行 |
|---|---|---|---|
| 感覚記憶 | 1秒前後(視覚は約1秒、聴覚は数秒) | 大きいが即消失 | 注意を向けた分だけ短期へ |
| 短期記憶 | 15〜30秒 | 7±2チャンク(マジカルナンバー) | リハーサル(反復)で長期へ |
| 長期記憶 | 数分〜半永久 | ほぼ無限 | — |
短期記憶の容量は7±2(近年は4±1とも)。チャンク=意味のあるまとまり単位で、数字を区切って覚えると見かけの容量が増える。
臨床で「記憶障害の程度」をみるときはこの3分類を使う。間に干渉(他の課題)を挟むかどうかが即時記憶と近時記憶の分かれ目。
| 分類 | 保持時間 | 評価法・具体例 |
|---|---|---|
| 即時記憶 | 数秒(干渉を挟まない) | 数字の順唱(digit span)、提示直後にそのまま再生 |
| 近時記憶 | 数分〜数日(干渉を挟む) | 3単語の遅延再生、「昨夜の夕食のおかず」 |
| 遠隔記憶 | 数年〜数十年 | 出身校、「結婚したのは何歳か」、以前の社会的事件 |
数字の順唱=即時記憶。順唱は保持するだけで操作を伴わないので、ワーキングメモリーではない。数字を逆唱させたときがワーキングメモリー。
MMSEの「3単語の遅延再生」は近時記憶であって即時記憶ではない。
ワーキングメモリーのキーワードは「数秒」「保持と処理を同時」の2つ。どちらか一方しか書いていない選択肢は他の記憶を指している。
| 大分類 | 別名 | 下位分類 | 内容・例 |
|---|---|---|---|
| 陳述記憶 (宣言的) | 顕在記憶 意識的に想起 言葉で説明できる | エピソード記憶 | 個人的な出来事。いつ・どこで・何が起きたか。海外旅行の思い出、教師になったきっかけ |
| 意味記憶 | 一般的な知識・言葉の意味。首都名、建物の建築方法の説明 | ||
| 非陳述記憶 (非宣言的) | 潜在記憶 意識せず再生 言語化しにくい | 手続き記憶 | 技能・運動手順。自転車に乗る、泳ぐ、器具の操作 |
| プライミング | 先行刺激が後の処理に無意識に影響する | ||
| 古典的条件づけ | 刺激と反応の連合 |
日常動作の切り分け:自動販売機で飲料を買う場面なら、財布を開ける・小銭を投入する・取出口のフタを開ける・飲料を取り出す=反復で自動化された手続き記憶。これに対しつり銭を確認するのは金額が正しいかを知識と照合して判断する作業なので陳述記憶が必要。「運動の手順か、知識の照合・判断か」で分ける。
「プライミングは健忘症候群では障害される」は誤り。正しくは健忘でも比較的保たれる。「陳述記憶の1つ」「短期記憶に分類される」もいずれも誤りで、正しくは非陳述(潜在)記憶かつ長期記憶。
過去の出来事を語る=エピソード記憶/未来の予定を思い出して実行する=展望記憶。「海外旅行の思い出を語る」を展望記憶とするのは誤り。
| 課題・場面 | 該当する記憶 |
|---|---|
| 数字の順唱を行う | 即時記憶 |
| 数字の逆唱をする/紙と鉛筆を使わず暗算する | ワーキングメモリー |
| 覚えた3単語を3分後に思い出す/昨夜の夕食を答える | 近時記憶 |
| 結婚した年齢を答える/昔の社会的事件を思い出す | 遠隔記憶 |
| 自転車に乗る/小銭を投入する/泳ぐ | 手続き記憶 |
| 海外旅行の思い出を語る/教師になったきっかけを説明する | エピソード記憶 |
| 建物の建築方法を説明する/言葉の意味を答える | 意味記憶 |
| つり銭が正しいか確認する | 陳述記憶(意味記憶を使った照合) |
| 明日の会議を翌朝に思い出す/30分後に訓練を終える | 展望記憶 |
| 記憶の種類 | 主な関与部位 |
|---|---|
| ワーキングメモリー | 前頭前野(前頭葉) |
| エピソード記憶・長期記憶の固定 | 海馬・側頭葉内側 |
| 意味記憶 | 側頭葉(外側〜前方) |
| 情動を伴う記憶 | 扁桃体 |
| 手続き記憶 | 大脳基底核・小脳 |
| プライミング | 大脳新皮質 |
組合せ問題の定番の誤り。長期記憶─視床(視床は感覚の中継核)、手続き記憶─扁桃体(扁桃体は情動記憶)、プライミング─小脳(小脳は手続き記憶側)、エピソード記憶─松果体(松果体はメラトニン分泌器官で記憶とは無関係)。正しい組合せはワーキングメモリー─前頭葉。
| 相 | 学習者の状態 | 使う記憶・制御 |
|---|---|---|
| 認知相 | 何をするか言葉で理解する。教示・課題説明を受ける段階 | 宣言的(陳述)記憶 |
| 連合相 | 試行錯誤して誤りを減らす。まだ自動化されない | フィードバック制御 |
| 自動相 | 正しい運動パターンを反復練習して定着させる | 手続き記憶・フィードフォワード制御 |
手続き記憶に変換されるのは初期段階ではなく、反復練習を経た後期(自動相)。実際の生活環境での実践は、すでに手続き記憶化した運動を応用する般化・転移の段階であって、変換の段階ではない。
| 用語 | 正しい定義 |
|---|---|
| 正の転移 | 前の学習が後の学習を促進する |
| 負の転移 | 前の学習が後の学習を妨害する |
| 保持 | 学習した内容が時間経過後も維持されること(転移とは別概念) |
| 覚醒とパフォーマンス | 逆U字(Yerkes-Dodsonの法則)。最適水準があり、高すぎても低すぎても成績は下がる。難しい課題ほど最適覚醒は低め |
| 学習曲線 | 上昇したのち頭打ち(プラトー)になる負の加速曲線。逆U字ではない |
ひっかけの定番。「妨害するのが正の転移」は誤り→負の転移。「促進するのが正の保持」も誤り→正の転移。「覚醒とパフォーマンスは比例」「関係はない」も誤り→逆U字。逆U字なのは覚醒であって学習曲線ではない、と対で覚える。
スキルの分類:分離的(個別的)スキル=開始と終了が明確(野球のスウィング・ゴルフスイング・投球)/連続的スキル=反復が続き区切りがない(歩行・走行・自転車こぎ)/系列的スキル=分離的動作をつないだもの(体操の連続技)。「野球のスウィング=連続的スキル」は誤りで分離的スキル。
アルツハイマー型認知症でまず障害されるのは近時記憶(エピソード記憶)。手続き記憶と遠隔記憶は比較的保たれるため、動作の練習は成立しやすい。