第4章|発達心理学

臨床心理学 第4章

4-1 発達の原理と遺伝・環境

  • 発達の順序は一定だが、進む速さには個人差がある。方向は頭部→尾部中枢→末梢・粗大運動→微細運動
  • 成熟優位説(ゲゼル)=レディネス(準備性)が整ってから学習させるほうが効率がよい。双生児の階段のぼり実験が根拠
  • 環境優位説(ワトソン)=経験と学習がすべてを決めるとする立場。成熟優位説と対をなす
  • 輻輳説(シュテルン)=遺伝と環境の足し算で決まるとする説
  • 環境閾値説(ジェンセン)=遺伝的素質が現れるのに必要な環境水準(閾値)は特性ごとに違う。身長は閾値が低くどんな環境でも出るが、絶対音感や外国語の発音は閾値が高く恵まれた環境でしか出ない
  • 臨界期・敏感期=その時期を逃すと同じ能力を獲得しにくくなる限られた期間。発達を「いつ」働きかけるかが問われる根拠になる

4-2 Piagetの認知発達段階

認知(考え方の枠組み)がどう変わるかを4段階で示したもの。年齢と段階名の対応がそのまま出題される

段階年齢この段階でできること
感覚運動期0〜2歳感覚と運動を通して外界を認識する。対象の永続性を獲得(見えなくなっても物は在り続けると分かる)
前操作期2〜7歳象徴機能・ことば・ごっこ遊び。自己中心性が強く、論理的操作はまだできない。保存は未成立
具体的操作期7〜11歳目の前の具体的な事象なら論理的に扱える。保存概念・可逆性・脱中心化を獲得
形式的操作期11〜12歳以降抽象的・仮説演繹的思考。目の前にないことも論理で扱える

「感覚運動期→前操作期→具体的操作期→形式的操作期」の順で、区切りは2歳・7歳・11歳。0〜2歳を問われたら感覚運動期。

4-3 Piagetのキーワード

  • シェマ=外界を理解する枠組み。既存の枠に当てはめるのが同化、枠のほうを作り変えるのが調節。両者の釣り合いが均衡化
  • 対象の永続性=感覚運動期に獲得。獲得前は、隠されたおもちゃを探そうとしない
  • 自己中心性=前操作期の特徴。他者の視点に立てない(三つ山課題で、向かい側から見た山の形を答えられない)。わがままという意味ではない
  • アニミズム=前操作期。物にも心があると考える
  • 保存概念=見た目が変わっても量・数・重さは変わらないという理解。具体的操作期で成立

保存概念を前操作期の特徴と書くのは誤り → 正しくは具体的操作期。前操作期の子は、同じ量の水を細長い容器に移すと「増えた」と答える(見た目に引きずられる=中心化)。

4-4 Freudの心理性的発達段階

リビドー(性的欲動)が向かう身体部位で区分する。Piagetとは別の理論なので、段階名を混ぜない。

段階年齢特徴
口唇期0〜1歳半吸う・噛むなど口による満足
肛門期1歳半〜3歳排泄のしつけ。ためる/出すの自己コントロール
男根期(エディプス期)3〜6歳エディプス葛藤=異性の親への愛着と同性の親への敵意をめぐる幼児期の葛藤
潜在期(潜伏期)6〜12歳性的欲動が抑圧され、同性の仲間関係・学習・遊びに関心が向かう
性器期思春期(12〜18歳ころ)以降成熟した対象愛が成立する

6〜12歳を問われたら、Freudなら潜在期、Piagetなら具体的操作期、Eriksonなら学童期(勤勉性)。同じ年齢で理論ごとに答えが変わるので、まず誰の理論かを読む。

4-5 三大理論の用語を取り違えない

選択肢に別理論の段階名を混ぜる引っかけが定番。用語を見た瞬間に提唱者が言えるようにする

用語誰の理論か対応する年齢
感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期Piaget(認知発達)0〜2/2〜7/7〜11/11歳〜
口唇期・肛門期・男根期・潜在期・性器期Freud(心理性的発達)0〜1.5/1.5〜3/3〜6/6〜12/12歳〜
基本的信頼・自律性・自発性・勤勉性・同一性・親密性・生殖性・統合Erikson(心理社会的発達)乳児期〜老年期の8段階

「Piagetの発達論で0〜2歳は?」に潜在期を選ぶのは誤り → 潜在期はFreudの用語で、Piagetの段階に潜在期は存在しない。逆に「Freudの発達論で6〜12歳は?」に感覚運動期・前操作期・形式的操作期を選ぶのも誤りで、これらはすべてPiagetの用語。

4-6 Eriksonの心理社会的発達段階(8段階)

生涯を8段階に分け、各段階に達成すべき課題(心理社会的危機)を置いた。課題と、対になる陰性の側をセットで覚える。国試では最頻出。

時期年齢の目安課題 対 危機
乳児期0〜1歳基本的信頼 対 不信
幼児期前期1〜3歳自律性 対 恥・疑惑
幼児期後期(遊戯期)3〜6歳自発性(積極性・自主性) 対 罪悪感
学童期6〜12歳勤勉性 対 劣等感
青年期12〜18歳同一性(アイデンティティ) 対 同一性拡散
成人前期18〜25歳ころ親密性 対 孤立
成人中期(壮年期)25〜65歳ころ生殖性(世代性) 対 停滞
老年期65歳以上統合(自我の統合) 対 絶望

順に「信頼・自律・自発・勤勉・同一性・親密・生殖・統合」。高齢者=統合学童期=勤勉性成人前期=親密性成人中期=生殖性幼児期=自律性はそのまま出題される。

4-7 各段階の中身(誤答肢を消すための材料)

  • 乳児期=基本的信頼:養育者が要求に応えることで世界への信頼が育つ。愛着形成に関連するのはこの段階で、「愛着関係の形成」は幼児期の課題ではない
  • 幼児期前期=自律性:トイレットトレーニングなど、自分の身体をコントロールできる感覚を得る。失敗すると恥・疑惑
  • 幼児期後期=自発性:自分から遊びや目標を立てる。行き過ぎを叱られると罪悪感
  • 学童期=勤勉性:学校で課題に取り組み、努力が認められて勤勉性を得る。失敗が続くと劣等感
  • 青年期=同一性:自分が何者かを定める。定まらない状態が同一性拡散、選択を猶予されている状態がモラトリアム
  • 成人前期=親密性:配偶者・友人など同年代との親密な関係を築く。築けないと孤立
  • 成人中期=生殖性:次世代を生み育て社会に貢献する。滞ると停滞
  • 老年期=統合:人生を振り返り(人生回顧)、意味あるものとして受容する。できないと絶望

4-8 愛着(アタッチメント)

  • 愛着(ボウルビィ)=特定の養育者との情緒的な絆。乳児期に形成される
  • ストレンジ・シチュエーション法(エインズワース)=母子分離と再会の場面で愛着の型を評価する。安定型(B)・回避型(A)・アンビバレント(抵抗)型(C)・無秩序型(D)
  • 人見知りは生後6〜8か月ころから出現し、愛着形成の指標となる。養育者から離れるときに生じる不安が分離不安
  • ハーロウのアカゲザルの代理母実験では、乳を出す針金製よりも布製の代理母に接触を求めた。愛着は授乳だけでは説明できず、心地よい接触が要ることを示す
  • 乳児期に養育者との関係が奪われる母性剥奪は、その後の情緒・対人関係の発達に影響する

4-9 ライフステージ別の精神保健上の問題

「その時期に特徴的な問題はどれか」という形で問われる。別の時期の課題を紛れ込ませるのが定番の誤答肢。

時期代表的な問題・キーワード
幼児期エディプス葛藤(Freudの男根期の親子葛藤)
小児〜青年期場面緘黙、不登校
青年期同一性拡散モラトリアム、自我同一性の獲得、マージナルマン(境界人)
中年期空の巣症候群(子の独立に伴う喪失感。主に母親)
老年期社会的孤立、喪失体験、抑うつ、認知症、自殺

老年期は退職・配偶者や友人との死別・身体機能低下で人間関係が縮小し、社会的孤立が代表的な精神保健上の問題になる。孤立は抑うつ・認知機能低下・自殺の危険因子。「老年期の問題はどれか」で緘黙・同一性拡散・空の巣症候群・モラトリアム・自我同一性の獲得が並んだら、いずれも他の時期の話。

4-10 補足|多様な人に向けた設計の用語

年齢や障害を問わず使えるようにするという発想の用語群。意味を入れ替えた組合せ問題が出る。

用語正しい意味
ユニバーサルデザインはじめから誰もが使えるよう設計された製品・環境(「世界基準の受注品」ではない)
アクセシブルデザイン異なる特性をもつ人でも利用できるよう配慮した設計
バリアフリー心身の障壁(バリア)を後から取り除いた環境
レディーメイド既製品
テーラーメイド個別に作製した特注品

「レディーメイド=個別に作製した特注品」「テーラーメイド=既製品」は入れ替えられた誤り → 正しくはレディーメイド=既製品/テーラーメイド=特注品。ユニバーサル=最初から万人向け、バリアフリー=後から障壁を除去、という時間の前後で区別する。