第2章|上肢の外傷・疾患

整形外科学 第2章

2-1 鎖骨骨折と肩鎖関節脱臼

肩を直接打った/手をついて倒れた、で分岐する。エックス線で何を見るかまで問われる。

損傷受傷機転エックス線所見治療
鎖骨骨折転倒して手をつく・肩を打つ中央1/3に最多。骨皮質の連続性が途絶え骨折線がみえる多くは保存(鎖骨バンド)
肩鎖関節脱臼肩を直接打撲(ラグビーなどコンタクトスポーツの転倒)鎖骨遠位端が上方へ偏位し肩鎖関節の裂隙が開大。骨折線はないRockwood分類(Ⅰ〜Ⅵ)で決定。軽症は保存
  • 肩鎖関節脱臼の身体所見=ピアノキー徴候(挙上した鎖骨遠位端を押すと沈み、離すと戻る)。肩鎖靱帯・烏口鎖骨靱帯の損傷を示す
  • エックス線の読み分けは部位で決める。鎖骨と肩峰に段差=肩鎖関節脱臼関節窩から骨頭が外れる=肩甲上腕関節脱臼骨皮質の連続が切れる=骨折

鎖骨骨折・観血的整復固定術後のリハ

術後翌日に可否
手指・手関節・肘の自動運動行う。固定していない遠位関節を動かして浮腫と拘縮を防ぐ=術直後から始める第一手
肩関節の他動可動域練習まだ行わない。骨接合部に剪断力がかかり再転位の危険。振り子運動などから段階的に
肩関節挙上の等張性(抵抗)運動行わない。筋収縮が骨片を引く。まずは等尺性から
患部への超音波療法行わない。金属内固定材のある部位への超音波は避ける(発熱・緩みの懸念)
全身安静のためベッド上臥床誤り。上肢の骨折で臥床させる理由はなく、離床・歩行は当日から

上肢骨折の術直後を問われたら「固定部位の遠位から動かす」の一手で足りる。骨折部そのものを動かす選択肢・安静を強いる選択肢・物理療法を当てる選択肢は全部消える。

スポーツ外傷の肩痛+単純エックス線の設問で「腱板断裂」は選べない。腱板は軟部組織なので単純エックス線に描出されない(MRI・超音波で評価する)。

2-2 肩関節脱臼と関節別の好発脱臼方向

肩甲上腕関節の脱臼は前方(前下方)脱臼が圧倒的多数。外転・外旋を強制されて骨頭が前下方へ逸脱する。若年者に多く、反復性脱臼へ移行しやすい。

関節好発する脱臼方向補足
肩(肩甲上腕)前方(前下方)外転・外旋の強制。反復性脱臼に移行
後方(約90%)手をついて肘が過伸展。前腕骨が後方へ
後方屈曲・内転・内旋位(ダッシュボード損傷)。坐骨神経麻痺に注意
胸鎖前方後方脱臼はまれだが気管・大血管を圧迫し危険
後方・後外方骨折を伴うことが多い

肩=前/肘=後/股=後/胸鎖=前。組合せ問題はこの4つで解ける。「肩=後方」「股=前方」「足=前方」はいずれも誤り。

2-3 腱板断裂と肩の徒手検査

腱板断裂は棘上筋腱の断裂が最多。中高年に好発し、挙上時痛と夜間痛を訴える。

徒手検査陽性が示すもの・方法
drop arm test腱板(棘上筋)断裂。外転位に挙げた腕をゆっくり下ろせず途中で急に落下する
painful arc(有痛弧)腱板断裂・インピンジメント。外転60〜120°で疼痛
anterior apprehension test肩関節前方不安定性(反復性脱臼)。外転・外旋で脱臼の不安感
Yergason test上腕二頭筋長頭腱炎。前腕回外に抵抗→結節間溝部の痛み
Speed test上腕二頭筋長頭腱
Morley test胸郭出口症候群。鎖骨上窩を圧迫→上肢に放散痛
Roos test胸郭出口症候群
Thompson testアキレス腱断裂。腓腹筋を把握して足の底屈が起こるかをみる

Thompson testは肩の検査ではない。肩の選択肢群に混ぜ込まれる定番の紛れ肢。

2-4 肩関節周囲炎(五十肩)

  • 好発は40〜60代の中高年。若年者に多いは誤り
  • 感染性疾患ではない。肩関節周囲の退行性変化と炎症が主因
  • 外転・外旋・内旋が制限され、結髪動作(髪を結ぶ)・結帯動作(帯を結ぶ・背中に手を回す)が困難になる
  • 経過は疼痛期 → 拘縮期 → 回復期。多くは1〜2年で自然軽快し予後は良好
  • 治療は保存療法が第一選択(運動療法・物理療法・消炎鎮痛)。手術は例外的

誤答肢は「若年者に多い/予後不良/感染性疾患/手術療法が優先」の4パターンで作られる。全部誤りと覚えてよい。

2-5 上腕骨顆上骨折 ― 小児の最重要骨折

項目内容
好発年齢小児(5〜8歳がピーク)。老年期はまれ
受傷肢位伸展位で手をついて転倒=伸展型が大多数。屈曲位受傷は少数
最重要合併症前腕の循環不全Volkmann拘縮(阻血性拘縮)
神経合併症正中神経(前骨間神経)・橈骨神経の麻痺
後遺変形内反肘(gun-stock deformity)。外反肘ではない
治療非転位・軽度転位は保存(ギプス固定)が原則。著明な転位や合併症で手術(鋼線刺入)

骨折部の腫脹による血管圧迫、あるいは鋼線刺入による損傷で前腕がコンパートメント症候群に陥る。前腕の強い疼痛・腫脹・末梢の色調不良・他動伸展時痛があれば緊急。放置すると手指屈筋群の阻血性拘縮=Volkmann拘縮を残す。

2-6 肘周辺の骨折・脱臼と後遺変形

損傷後遺変形・合併症
上腕骨顆上骨折内反肘・Volkmann拘縮
上腕骨外顆骨折外反肘 → 遅発性尺骨神経麻痺(肘部管症候群)
上腕骨内側上顆骨折尺骨神経障害。外反肘の原因にはならない
尺骨肘頭骨折肘伸展機構(上腕三頭筋)の障害
橈骨頭(小頭)骨折前腕の回旋制限

外顆=外反肘/顆上=内反肘。「外は外、顆上は内」と対で覚える。外反肘は後年の尺骨神経麻痺の原因になる点まで問われる。

肘関節脱臼・肘内障

  • 肘関節脱臼は後方脱臼が約90%。前方は5%未満、内側・外側はごくまれ。「分散」という分類用語は存在しない
  • 肘内障=幼児(1〜4歳)の橈骨頭亜脱臼。手を急に引っぱられて発症し、腕を下垂して動かさなくなる。エックス線は正常で、徒手整復で即座に改善する

2-7 前腕の脱臼骨折 ― MonteggiaとGaleazzi

前腕で「骨折+脱臼」が同時に起こる冠名骨折はこの2つだけ。対で覚える。

名称骨折する骨脱臼する関節
Monteggia骨折尺骨骨幹部(近位)橈骨頭(小頭)の脱臼
Galeazzi骨折橈骨遠位骨幹部(遠位1/3)遠位橈尺関節(DRUJ)の脱臼

折れる骨と外れる側は必ず逆になる。Monteggiaは尺骨が折れて橈骨頭が外れるGaleazziは橈骨が折れて尺骨側(遠位橈尺関節)が外れる

「Monteggia骨折 ― 上腕骨」は誤り。前腕(尺骨)の骨折である。部位を問う組合せ問題では上腕骨と書かれて出る。

2-8 橈骨遠位端骨折 ― Colles・Smith・Barton

名称遠位骨片の転位受傷肢位特徴
Colles骨折背側(手背側)手関節背屈(伸展)位で手をつくフォーク状(dinner fork)変形。中高年女性・骨粗鬆症に多い
Smith骨折掌側手関節掌屈位で手をつく逆Colles骨折とも呼ばれる
Barton骨折背側または掌側橈骨遠位端の関節内骨折(脱臼骨折の形をとる)
chauffeur's骨折橈骨茎状突起の骨折

Colles骨折の正誤ポイント

  • 骨折するのは橈骨遠位端。尺骨遠位端ではない
  • 遠位骨片は背側転位。掌側転位はSmith骨折
  • 中高年女性(成人)に多い。小児より成人に多い
  • 合併症=正中神経損傷(腫脹・転位による圧迫で手根管症候群様のしびれ)、複合性局所疼痛症候群〈CRPS〉、長母指伸筋腱断裂

Garden分類は大腿骨頸部骨折の分類。「Colles骨折の分類にGarden分類を用いる」という選択肢は誤り。

2-9 手根骨・手指の外傷

損傷部位要点
舟状骨骨折手根骨転倒して手をついて受傷。血行に乏しく偽関節・骨壊死を起こしやすい。受傷直後のエックス線に写らないことがある
月状骨脱臼手根骨正中神経の圧迫を伴うことがある
Kienböck病月状骨月状骨軟化症(無腐性壊死)。外傷ではなく慢性の骨壊死
Bennett骨折第1中手骨基部関節内骨折+亜脱臼。母指CM(手根中手)関節に生じ、整復・固定を要する
Rolando骨折第1中手骨基部Bennett骨折の粉砕型

Bennett骨折は第1中手骨。月状骨・舟状骨・尺骨・橈骨はいずれも別の病態であり、選択肢に並んでも選ばない。

2-10 冠名骨折と部位の対応一覧

組合せ問題は上肢の知識だけでは解けず、全身の冠名骨折が並ぶ。ここで一括して押さえる。

骨折名部位内容
Colles橈骨遠位端背側転位・フォーク状変形
Smith橈骨遠位端掌側転位
Barton橈骨遠位端関節内骨折
chauffeur's橈骨茎状突起
Monteggia尺骨尺骨骨幹部骨折+橈骨頭脱臼
Galeazzi橈骨橈骨遠位骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼
Bennett第1中手骨基部関節内骨折+亜脱臼
Jefferson環椎(C1)前後弓が破綻する破裂骨折
Malgaigne骨盤同側の骨盤輪が前方(恥骨・坐骨枝)と後方(仙腸関節付近)で離断する不安定型。垂直不安定性を伴う
Duverney腸骨翼骨盤の骨折(骨盤輪は保たれる)
Straddle両側恥坐骨枝騎乗位骨折
Cotton足関節三果骨折(内果・外果・後果)
Dupuytren足関節腓骨遠位部骨折+脛腓靱帯損傷

ひっかけの定番=「Bennett―脛骨」「Jefferson―大腿骨」「Cotton―大腿骨/橈骨」「Dupuytren―第1中手骨」「Straddle―上腕骨」「Smith―上腕骨」「Duverney―橈骨」。骨盤に関わるのはMalgaigne・Duverney・Straddleの3つ足関節はCotton・Dupuytrenの2つとまとめて覚える。