第3章|下肢の外傷・変形性膝関節症

整形外科学 第3章

3-1 大腿骨近位部骨折

高齢者が転倒して股関節痛・起立歩行不能を訴えたら、まず疑う。高齢女性・骨粗鬆症・転倒が三大キーワード。

疫学と危険因子

  • 骨粗鬆症を背景に女性に圧倒的に多い。「男性に多い」は誤り
  • 発生原因は転倒が最多。交通事故ではない。軽微な外力でも折れる
  • 認知症は危険因子=判断力・注意力の低下が転倒を招く
  • 転位を伴うことが多く(転位は稀ではない)、観血的治療となることが多い

頸部骨折と転子部骨折の鑑別

大腿骨頸部骨折大腿骨転子部骨折
骨折線骨頭直下の頸部大転子〜小転子の間(転子間)
関節包との関係関節包内関節包外
血行骨頭への血流が頸部を逆行性に走り途絶しやすい血行豊富
合併症骨頭壊死・偽関節が多い骨癒合良好
おもな手術人工骨頭置換術(転位例)観血的整復固定術(骨接合・γ-nail等)
脱臼予防の指導人工関節になるため必要自分の関節なので優先度は低い

転子下骨折は小転子より遠位(骨幹近位部)で、転子間よりさらに遠位に骨折線がある。

エックス線での読み分け

  • 股関節脱臼=骨頭が寛骨臼から逸脱し関節の適合性が失われる。骨頭が臼蓋内にあれば脱臼ではない
  • 骨頭骨折は稀で、股関節脱臼に合併して生じることが多い
  • 近位部に骨折線がなければ恥骨・坐骨枝の脆弱性骨折を疑う。恥骨骨折は安静で保存的に治り予後良好だが、疼痛で離床が遅れ廃用に注意
  • 読影のコツは左右対称性の比較(骨折側は骨皮質の連続性が途絶する)。骨盤輪は前後2か所で損傷しやすい
骨盤で紛らわしい病名エックス線で見えるもの
恥骨骨折(恥骨・坐骨枝の脆弱性骨折)恥骨枝・坐骨枝そのものに骨折線。高齢者が尻もちをつき、股関節近位部に骨折線がないときの本命
恥骨結合離開正中の恥骨結合の間隙が開大する(骨折線ではなく「隙間が広い」所見)。左右の恥骨をつなぐ関節が離れた状態で、骨盤輪の高エネルギー外傷や分娩に伴う
腸骨骨折腸骨翼(骨盤上部の広い扇状の骨)に骨折線。恥骨・坐骨とは場所がまったく違う
大腿骨頸部骨折/転子部骨折股関節近位部に骨折線。ここに線がなければ恥骨枝を疑う

骨盤の設問は「どこに線が入っているか」を部位名で言えるかだけ。恥骨枝=骨折線/恥骨結合=すき間の開大/腸骨翼=上部の広い骨と、3つの場所を分けて覚える。

3-2 偽関節・阻血性骨壊死を起こしやすい骨折

原則はひとつ、血流が乏しい部位の骨折は癒合せず壊死する。栄養血管が遠位から近位へ逆行性に入る骨が該当する。

起こしやすい骨折理由・生じる病態
大腿骨頸部骨折関節包内。骨頭への血流が途絶し骨頭壊死・偽関節
手の舟状骨骨折栄養血管が遠位から近位へ逆行性→近位骨片の壊死・偽関節
距骨(頸部)骨折筋付着がなく血流に乏しい→距骨体の壊死
上腕骨解剖頸骨折骨頭への血行が断たれる
脛骨中下1/3骨折血行が乏しく偽関節になりやすい
起こしにくい骨折理由
鎖骨・肋骨血流が豊富で骨膜性仮骨ができやすく、保存療法でも癒合良好
踵骨海綿骨主体で血流豊富(圧潰変形や関節症は起きるが壊死は稀)
中手骨骨幹部・膝蓋骨血行が保たれる
楔状骨・立方骨骨折自体がまれで、壊死の好発骨ではない

上腕骨外科頸骨折で骨頭壊死はまれ。壊死リスクが高いのは解剖頸骨折。「上腕骨だから壊死」と丸暗記すると外科頸の選択肢で引っかかる。

高齢者の骨粗鬆症性骨折は大腿骨近位部・脊椎・橈骨遠位端・上腕骨近位部(外科頸)が好発。上腕骨近位部で転位が少なければ三角巾・バストバンドで安静固定し、早期から振り子運動へ移行する。肩はギプスで確実な固定が難しく、急性外傷への極超短波・超音波などの温熱は炎症・腫脹を助長するため不適。髄内釘は転位・粉砕例の手術法で、初期治療ではない。

3-3 人工骨頭置換術・人工股関節置換術後の管理

脱臼肢位は侵入路で決まる

侵入路脱臼肢位禁忌動作
後方アプローチ屈曲+内転+内旋低い椅子からの立ち上がり・しゃがみ込み・脚を組む・横座り・内股
前方アプローチ伸展+外旋患側を後ろへ引く・外向きにひねる
  • 靴下の着脱は股関節外旋位で行う。ソックスエイド・リーチャーなどの自助具、高い椅子・洋式トイレで過屈曲を防ぐ
  • 臥床時は外転枕で外転位を保つ。内転位に保つのは誤り
  • 椅子上や長座位で深く前屈して足に手を伸ばす、患側を反対の膝に乗せる(脚を組む)動作は後方脱臼の典型的な危険肢位

後方アプローチ後に行ってよい運動

  • 背臥位・膝伸展位での股関節外転運動(脱臼方向の内転と逆で、中殿筋強化になる)
  • 腹臥位での他動的な股関節伸展運動(後方脱臼を誘発せず屈曲拘縮を予防)
  • 座位で重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強(膝の運動なので脱臼肢位をとらない)
  • 全荷重が許可されていれば歩行器を用いた屋外歩行練習

術後スケジュール

  • 大腿四頭筋セッティングは術後翌日(早期)から。「術後1週から開始」は遅すぎる
  • 中殿筋の筋力トレーニングも早期から。「術後2週から」は遅い
  • 人工骨頭置換術はセメント・セメントレスとも早期荷重・早期歩行が原則。「術後3か月免荷」は誤り

転位のない転子部骨折の骨接合術後で優先度が高いのは、早期歩行練習・早期ROM練習・大腿四頭筋の等尺性運動・足関節の自動的底背屈(DVT予防)。脱臼予防肢位の指導だけは優先度が低い=人工関節ではなく安定性も高いため。

周術期のかかわり方|術前に「手術が心配」と訴えた患者には、まず感情を受け止める共感的応答(「手術を明日に控えて、いろいろ心配になりますよね」)。「大丈夫ですよ」という安易な保証、利点の説明、意図の決めつけ(「やめたいということですか」)は不適。情報収集は双方向で行い一方的に進めない。重度難聴なら聞こえる側から声をかけ質問を紙に書く、認知症なら同居家族からも聴取、生年月日は本人と診療録の両方で照合する。

退院時の住環境整備

  • 玄関の上がり框など段差の大きい場所には手すりを設置する
  • 敷居は解消(フラット化・スロープ化)する。「5cmに統一」ではつまずく高さのまま
  • じゅうたん(端に引っかかる)・スリッパ(脱げて踏ん張れない)・床に敷く布団(深いしゃがみ込みが必要)は避け、ベッドを継続する

3-4 股関節の構造と骨頭の血行

  • 股関節は球関節(臼状関節)で多軸性。顆状関節は膝関節
  • 寛骨臼は腸骨・坐骨・恥骨の3骨が癒合してできる。腸骨のみで構成されるは誤り
  • 寛骨臼は前外側(下方)を向いて開き、骨頭を深く包んで安定性を高める
  • 大腿骨頸部は関節包内にある。頸部骨折が関節包内骨折となり壊死しやすい根拠
靱帯位置はたらき
腸骨大腿靱帯(Y靱帯)関節包前面人体最強。伸展を制動し直立位の保持に有利
恥骨大腿靱帯関節包前下方外転・伸展を制動
坐骨大腿靱帯関節包後面内旋・伸展を制動
寛骨臼横靱帯寛骨臼切痕を橋渡し臼を輪状に閉じる
大腿骨頭靱帯(円靱帯)骨頭〜寛骨臼窩内部を骨頭栄養血管が走る=血液供給を伴う

股関節の靱帯で血液供給を伴うのは大腿骨頭靱帯だけ(閉鎖動脈の枝=大腿骨頭靱帯動脈)。ただし寄与が大きいのは小児で、成人の骨頭は主に内側大腿回旋動脈に依存する。だから成人の頸部骨折で骨頭壊死が起こる。

3-5 変形性股関節症・大腿骨頭壊死・Perthes病

変形性股関節症

  • 日本では二次性が多い(発育性股関節形成不全・寛骨臼形成不全・骨頭壊死などが背景)
  • 有病率は女性 > 男性。高齢になるほど女性が増える
  • 遺伝素因の影響を受ける。家族歴があると発症リスクが高まる
  • 重量物作業を伴う職業など過度な機械的負荷は確立したリスク要因
  • 肥満・加齢という共通因子をもつため変形性膝関節症の合併リスクは低くない
変形性股関節症変形性膝関節症
一次性/二次性二次性が多い一次性が多い
性差女性に多い女性に多い
背景寛骨臼形成不全・骨頭壊死・職業負荷加齢・肥満・内反(O脚)

一次性・二次性は股と膝で。「一次性が多い」を股関節症で選ぶと誤り、膝関節症で選べば正しい。セットで覚える。

特発性大腿骨頭壊死症

  • 最大の危険因子はステロイド薬の使用(約50%)。ほかにアルコール多飲・放射線照射
  • 好発は壮年期(40〜50歳代)。小児に多いは誤り
  • 両側性が約25〜40%=両側例は稀ではない
  • 進行例は骨切り術・人工股関節全置換術など手術適応が多い(手術適応は少なくない)
  • 進行すると屈曲拘縮・内旋制限・外転制限を生じ、可動域は保たれない

Perthes病

  • 4〜8歳の小児に生じる大腿骨頭の阻血性壊死。外傷でも感染症でもない
  • 男児に約4〜5倍多い
  • 股関節痛のほか膝の痛み・跛行。外転・内旋の可動域制限を生じる(制限は生じないは誤り)
  • 治療の核心はcontainment療法=変形した骨頭を寛骨臼に包み込んで球形に修復させる
  • 骨頭変形が残ると適合性が悪化し、将来二次性変形性股関節症になりやすい

3-6 下肢長計測と股関節の徒手検査

計測測定点含む範囲
棘果長(SMD)上前腸骨棘〜内果股関節を含む下肢全長
転子果長(TMD)大転子〜果部股関節を含まない(大腿骨+下腿の長さ)
  • SMDに左右差あり・TMDに差なし → 大転子より近位=股関節レベルの短縮。変形性股関節症(関節裂隙の狭小化)・骨頭壊死・股関節脱臼など。関連する検査はPatrick(FABERE)テスト
  • SMDもTMDも差あり → 大腿骨レベルの短縮
  • 大腿長・下腿長を分けて測ると、膝レベル・下腿レベルまで切り分けられる。両者に差がなければ膝関節裂隙の狭小化や足関節レベルの原因は否定できる

計算問題の解き方:転子果長=大腿長+下腿長。大腿骨・下腿骨に骨折や変形がなければ左右で同値になる。例)大腿長44.0+下腿長35.5=79.5cm。あとは股関節レベルの短縮ぶんだけ棘果長が短い組合せ(右83.0に対し左81.0)を選べばよい。

テスト調べるもの
Thomas股関節屈曲拘縮。背臥位で対側股関節を最大屈曲させ、検査側の大腿が床から浮けば陽性
Patrick(FABERE)股関節・仙腸関節の病変
Trendelenburg中殿筋の筋力低下
Allis膝の高さを比較し、大腿骨・脛骨の長さの差や股関節脱臼をみる
Ely大腿直筋の短縮(腹臥位で膝を屈曲すると殿部が浮く)
Gaenslen仙腸関節障害
SLR・Bragard坐骨神経痛・神経根症状
Buerger下肢の動脈血行障害(閉塞性動脈疾患)

3-7 変形性膝関節症の病態と所見

だれに・どんな変形が起きるか

  • 中高年(50歳以降)の女性に好発。肥満・閉経も危険因子。好発年齢20歳代は誤り
  • 原因の特定できない一次性が大半。二次性が多いのは股関節症
  • 日本人は内側型が多く内反(O脚)変形。外反変形を生じやすいは誤り
  • 狭小化するのは内側関節裂隙。外側裂隙の狭小化は誤り

エックス線の4徴

  1. 関節裂隙の狭小化(拡大ではない)
  2. 骨棘形成
  3. 軟骨下骨の硬化・肥厚
  4. 骨嚢胞の出現(消失ではない)

進行像は足し算(硬くなる・棘ができる・嚢胞ができる)と覚える。「裂隙の拡大」「骨嚢胞の消失」のような引き算の選択肢はすべて誤り。

関節構成体の変化

  • 軟骨摩耗に伴う炎症で滑膜が肥厚し、関節水腫を伴うことがある
  • 関節が不安定になるため靱帯はむしろ弛緩する。「関節靱帯の緊張」は誤り
  • 関節液は非炎症性で透明〜淡黄色混濁していれば化膿性関節炎などを疑う

「進行に伴う関節構成体の変化で正しいのはどれか」で軟骨下骨の肥厚と滑膜の肥厚が並んだ回では、滑膜の肥厚が正答とされた。軟骨下骨も実際には硬化・肥厚するが、この形式では滑膜肥厚を選ぶ。まず「消失」「拡大」「緊張」の3つを消すのが先。

症状

  • 初期は始動時痛=歩き始め・立ち上がりなど動作開始時に痛み、動いているうちに軽減する
  • 進行すると荷重時痛・持続痛になる。起立動作・階段昇降で強い
  • 疼痛と不活動により大腿四頭筋(とくに内側広筋)が萎縮し、支持性の低下がさらに不安定性を助長する

3-8 膝関節症の歩行・装具・手術

内反型でみられる歩行

  • 立脚相の外側スラスト=荷重時に膝が急に外側へ動揺する。O脚進行の指標
  • 立脚相の立脚側への体幹傾斜=重心を患側へ近づけ膝内反モーメントを減らす代償

内反膝でみられないもの:立脚肢の反張膝(矢状面の過伸展)、遊脚相の分回し(振り出し障害=麻痺や膝伸展拘縮)、遊脚側の骨盤下制(支持側中殿筋の弱化=Trendelenburg)。内反膝の所見は前額面の内反モーメントで説明できるものだけ。

足底板・靴の補正

病態補正
内反膝(O脚)・内側型膝OA外側ウェッジ(外側楔状足底板)で内側の荷重を外へ逃がす
外反膝(X脚)内側ウェッジ
踵骨骨棘踵部の荷重を軽減する補正(パッド挿入・くり抜き)
槌指趾の背側を支持して屈曲変形を矯正
外反扁平足内側縦アーチを支持・補強
内反足足の外側を支持
  • ロッカーバー=足関節の可動域制限を補い立脚期の転がりを助ける。内反矯正用ではない
  • メタタルザルバー=中足骨頭部の荷重を軽減する。膝内側痛には無効
  • トーマスヒール=踵の内側を前方へ延長した補正。内反膝の矯正には用いない

内反膝に内側ウェッジは逆効果(内反をさらに増強する)。「内側楔状足底板が有用な場合が多い」は誤りで、正しくは外側楔状足底板。

保存療法と手術

  • 保存療法の柱=大腿四頭筋(内側広筋)の筋力強化・体重管理・外側楔状足底板
  • 高位脛骨骨切り術(HTO)=内側型OAの荷重軸を外側へ移す関節温存術。エックス線では脛骨近位内側にプレートが入る
  • HTO術後は早期からのROM練習と大腿四頭筋の筋力増強+段階的な部分荷重。「骨癒合まで完全免荷」「2週の安静後にROM開始」はどちらも誤り
  • 抜釘はスポーツ復帰の必須条件ではない。荷重軸を矯正済みなので術後に外側楔状足底挿板は使わない
  • 進行例には人工膝関節置換術(TKA)

3-9 膝の靱帯損傷・半月板損傷

組織制動する動き徒手検査
前十字靱帯(ACL)脛骨の前方移動Lachman(最も感度が高い)・前方引き出し・pivot shift
後十字靱帯(PCL)脛骨の後方移動後方引き出し(膝90度屈曲で下腿近位を後方へ押す)・sag徴候
内側側副靱帯(MCL)外反外反ストレステスト
外側側副靱帯(LCL)内反内反ストレステスト
半月板McMurray・Apley圧迫テスト
腸脛靱帯Ober・Noble圧迫テスト

図の問題は力を加える向きで決まる。前方へ引けば前十字、後方へ押せば後十字、側方へ倒せば側副靱帯、回旋を加えながら伸展すればMcMurray=半月板。PCL損傷はダッシュボード損傷など脛骨前方への直達外力で生じやすい。

前十字靱帯損傷

  • 受傷機転は膝外反+下腿外旋。合併損傷が多く単独損傷は8割もない
  • 典型的な合併=unhappy triad(ACL+内側側副靱帯+内側半月板)。外側側副靱帯・後十字靱帯・膝蓋腱との合併は典型でない
  • 半月大腿靱帯(前半月大腿靱帯=Humphry靱帯/後半月大腿靱帯=Wrisberg靱帯)は、外側半月板の後角と大腿骨内顆をつなぐ副靱帯で、後十字靱帯に伴走する。ACL損傷に合併する典型的な損傷部位ではない——「ACLと一緒に切れるのは何か」と問われて選ぶのは内側側副靱帯と内側半月板だけ
  • 保存療法の最優先は大腿四頭筋の強化(膝の動的安定性を作り靱帯機能を代償する)。安静固定のみ・超音波療法・水中歩行練習は優先度が低い
  • 一方、ハムストリングスの収縮は脛骨を後方へ引きACLの緊張を低下させる=動的安定化筋として重要
  • 再建術は腫脹と可動域が回復した受傷後数週間で行うのが一般的。1年以降ではない
  • 受傷前レベルへのスポーツ復帰率は6〜7割程度で、9割以上には達しない

半月板損傷

  • McMurray=膝最大屈曲位から下腿を内旋・外旋しながら伸展し、クリック音・疼痛を誘発する
  • Apley=腹臥位・膝90度屈曲で下腿を圧迫しながら回旋牽引で陽性なら靱帯損傷と読み分ける
  • ロッキング(膝が伸びなくなる)も特徴
  • エックス線で異常がなくても軟部組織損傷は存在しうる。次に行う検査はMRI(CTは骨、関節造影は侵襲的、PET・SPECTは代謝評価で不適)

半月板の構造

  • 楔形で外縁が厚く内縁が薄い。これで大腿骨顆と脛骨の適合性を高める
  • 外縁(辺縁1/3・red zone)だけ血行がある→縫合による修復が期待できる。中央(white zone)は無血管で関節液から栄養され治りにくい
  • 内側半月板はC字状で内側側副靱帯と結合し可動性が低い→損傷しやすい。外側半月板はほぼO字状で外側側副靱帯とは連結せず可動性が高い
  • 線維軟骨でコラーゲン主体。プロテオグリカン量は関節軟骨(硝子軟骨)より少ない

3-10 アキレス腱と足部の外傷

アキレス腱断裂アキレス腱周囲炎
好発30〜50歳代のスポーツ愛好者。学童期・10歳代ではないランニングなどのオーバーユース。成人・男性に多い
訴え「後ろから蹴られた」感覚・断裂音、つま先立ち不能踵骨付着部近く=腱遠位部の痛み
Thompson(Simmonds)テスト陽性(腓腹筋を握っても底屈しない)陰性
治療足関節底屈位で固定し段階的に背屈を許可保存療法が第一選択踵補高(ヒールアップ)の足底板
  • 受傷直後の処置は足関節底屈位での固定+RICE(安静・冷却・圧迫・挙上)。保温・下腿の強擦マッサージ・下垂位での安静は増悪させるので不適。足底板では断裂腱の固定にならない
  • 高齢者では腱の変性が進むため日常活動の動作でも断裂する
  • 術直後から積極的な背屈可動域訓練を行うのは再断裂のリスク。底屈位固定が原則
  • 陳旧例は断端が退縮・瘢痕化して端々縫合が困難=腱移植・腱延長などの再建術の適応
  • ステロイド局所注射は腱を脆弱化させ断裂リスクを高める。予防にはならない
  • 周囲炎でつま先部を高くした足底板は逆効果(背屈が増えて腱の緊張が上がる)。過労性骨膜炎が原因ではない

踵骨骨折・距骨骨折

  • 踵骨骨折の受傷機転は高所からの墜落(軸圧)。両側性や脊椎圧迫骨折の合併に注意
  • 距骨下関節に及ぶ関節内骨折を保存的に治療すると関節面の不整が残り、外傷後変形性関節症が最も起こりやすい合併症になる
  • 凹足・踵足・内反尖足は神経筋疾患や麻痺による変形で、踵骨骨折後の典型的合併症ではない
  • 踵骨は海綿骨主体で血流が豊富=無腐性(阻血性)骨壊死は起こりにくい。足部で壊死を起こしやすいのは距骨