第4章|脊椎疾患

整形外科学 第4章

4-1 脊柱の構造と靱帯

椎骨と脊柱管

  • 椎骨=椎体(前方の柱)+椎弓(後方の輪)。両者に囲まれた管が脊柱管で、中を脊髄・馬尾が通る
  • 椎弓から出る突起=棘突起(後方)・横突起(側方)・上下の関節突起(椎間関節をつくる)
  • 上関節突起と下関節突起の間の細い部分=峡部(関節突起間部)。ここが腰椎分離症の疲労骨折部位
  • 椎体間のクッション=椎間板。中心の髄核と周囲の線維輪からなり、髄核が後方へ脱出したものが椎間板ヘルニア

脊柱の靱帯 — 位置と制動する運動

靱帯位置緊張して制動する運動
前縦靱帯椎体の前面伸展(後屈)を制動
後縦靱帯椎体・椎間板の後面=脊柱管の前壁屈曲を制動
黄色靱帯上下の椎弓の間=脊柱管の後壁屈曲を制動
棘間靱帯隣接する棘突起の間屈曲を制動
棘上靱帯棘突起の先端を結ぶ最も後方屈曲を制動
横突間靱帯横突起の間側屈を制動

並び順は前から 前縦靱帯→椎体→後縦靱帯→黄色靱帯→棘間靱帯→棘上靱帯前縦靱帯だけが伸展を止め、後方の靱帯群はすべて屈曲を止める。

骨化して脊髄を圧迫する靱帯:後縦靱帯骨化症(OPLL)は頸椎に多く、黄色靱帯骨化症は胸椎に多い(胸髄圧迫で下肢の痙性麻痺)。

4-2 腰椎椎間板ヘルニア

基本像

  • 髄核が後方(後外側)へ脱出し神経根を圧迫する。好発高位はL4/5・L5/S1
  • 好発年齢は20〜40歳代の働き盛りで男性にやや多い。小児期に多いというのは誤り
  • 有症状の有病率は数%程度。「人口の約15%が罹患」は過大
  • 症状=腰痛+下肢への放散痛(坐骨神経痛)・しびれ。SLR(Lasègue)テスト陽性
  • 前屈・座位・重量物の持ち上げで椎間板内圧が上がり悪化する
  • 障害されるのは神経根=下位運動ニューロンなので弛緩性麻痺となり痙縮は生じにくい

「膀胱直腸障害は生じない」は誤り。馬尾が高度に圧迫されれば膀胱直腸障害を生じ、緊急手術の適応となる。また「Myerson徴候陽性」も誤りで、Myerson徴候(眉間反射の亢進)はパーキンソン病などの錐体外路徴候であり椎間板ヘルニアとは無関係。

自然経過と手術適応

  • 脱出した髄核はマクロファージに貪食され自然に吸収・退縮することがある。これが保存療法を第一選択とする根拠
  • 手術を考慮するのは ①進行性の筋力低下(麻痺の進行) ②膀胱直腸障害(馬尾症候群) ③保存療法に抵抗する難治性の激痛。とくに馬尾症候群は緊急

保存療法の進め方

時期適切な対応誤りとされる対応
急性期数日程度の短期安静と疼痛管理、軟性(弾性)コルセット急性期からの間欠牽引/急性期からの硬性コルセット/強い疼痛時の体操療法
亜急性期以降四つ這い位での一側下肢挙上(体幹安定化)、端座位での骨盤前後傾、腸腰筋・ハムストリングスのストレッチ、体幹筋の筋力訓練、TENS、ホットパック数か月間のベッド上安静(廃用症候群を招く)

肢位の指導は「何を問われているか」で答えが変わる。3つに分けて覚える。

  • 装具を問われたら…Williams型(屈曲位保持)は不適。屈曲は椎間板内圧を高めヘルニアを悪化させる。Williams型の適応は脊柱管狭窄症・分離すべり症
  • 就寝時の肢位を問われたら…「側臥位で腰椎伸展位をとる」は誤り。持続的な伸展位は髄核を後方へ押し出す。膝を軽く曲げた側臥位(腰椎軽度屈曲位)が正しい
  • 運動療法を問われたら…McKenzie法のパピーポジション(腰椎伸展運動)は椎間板への後方圧を減らす目的で用いられ、保存療法の一手段として適切

4-3 腰椎神経根の高位診断

ヘルニア高位障害される神経根感覚障害の領域筋力低下反射
L1/2L2鼠径部・大腿前面腸腰筋
L2/3L3大腿前面〜膝内側大腿四頭筋膝蓋腱反射 低下
L3/4L4下腿内側〜内果大腿四頭筋・前脛骨筋膝蓋腱反射 低下
L4/5L5下腿外側〜足背(母趾側)前脛骨筋・長母趾伸筋変化なし
L5/S1S1下腿後面〜足部外側・足底下腿三頭筋・腓骨筋アキレス腱反射 低下

腰椎ではヘルニア高位の1つ下の番号の神経根が障害される(L4/5→L5根、L5/S1→S1根)。MRIは突出椎間の高さと突出側(左右)の2つを読む。

動作でみる高位の見分け

  • 踵を持ち上げる(つま先立ち=底屈)ができない → 下腿三頭筋 → S1
  • つま先を持ち上げる(踵立ち=背屈)ができない → 前脛骨筋 → L5
  • 母趾の背屈が弱い → 長母趾伸筋 → L5
  • 膝の伸展(大腿四頭筋)が弱い → L2〜L4、とくにL4

大腿四頭筋の筋力低下(L2〜L4)や長母趾伸筋の筋力低下(L5)はS1障害では起こらない。左右の取り違えも頻出で、圧迫側と症状側を一致させて選ぶ。

4-4 神経根の誘発テストと整形外科的テスト

腰椎・下肢の神経根テスト

テスト肢位・方法陽性で疑う病態
SLR(Lasègue)背臥位・膝伸展位のまま下肢を挙上坐骨神経の伸張。下位腰椎(L4/5・L5/S1)の椎間板ヘルニア
BragardSLRで疼痛が出た角度から少し下げ、足関節を背屈SLRの変法。腰椎椎間板ヘルニアの疼痛誘発テスト
大腿神経伸張テスト(FNST)腹臥位で膝を屈曲させる大腿神経の伸張。上位腰椎(L2/3・L3/4=L3・L4根)。大腿前面に放散痛
Kemp体幹を後側方へ伸展・回旋腰椎椎間関節・神経根障害

大腿前面の症状 → 腹臥位のFNST下腿後面・足部の症状 → 背臥位のSLR。図で肢位を問われたら「腹臥位で膝屈曲=FNST」「背臥位で膝伸展位のまま挙上=SLR」で即断。

部位別・テスト一覧(組合せ問題の常連)

テスト方法の要点陽性で疑う疾患・部位
Spurling頸椎を伸展・患側へ側屈させ頭部から軸圧(=椎間孔圧迫)頸椎症性神経根症
Jackson頸部を後屈・側屈させる頸椎の神経根症
Adson頸部を伸展・患側回旋し橈骨動脈拍動の減弱をみる胸郭出口症候群(前斜角筋)
Wright座位で両肩関節を過外転し橈骨動脈拍動の減弱をみる胸郭出口症候群
Morley鎖骨上窩を圧迫する胸郭出口症候群
Allen橈骨・尺骨動脈を圧迫して血行をみる手部の動脈開存
Yergason・Speed肘屈曲位で前腕回外に抵抗/肩屈曲に抵抗上腕二頭筋長頭腱炎
Drop arm他動的に外転した上肢を下ろせず落下する腱板断裂(棘上筋)
Chair・Thomsen手関節背屈などに抵抗を加える上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
Finkelstein・Eichhoff母指を握り込ませ手関節を尺屈de Quervain病(狭窄性腱鞘炎)
McMurray・Apley膝の回旋/腹臥位で下腿を圧迫・回旋膝半月板損傷(Apleyの牽引では側副靱帯)
Lachman・前方引き出し脛骨を前方へ引く膝前十字靱帯損傷
Thompson腹臥位で下腿三頭筋を握り足の底屈をみるアキレス腱断裂
Patrick(FABER)患側足部を対側膝に乗せ4の字にする股関節・仙腸関節の病変
Thomas対側股関節を最大屈曲させる腸腰筋の短縮(股関節屈曲拘縮)
Ober側臥位で外転・伸展位から下肢を下ろす腸脛靱帯(大腿筋膜張筋)の短縮

名前が似ているものを取り違えない。Thomsen=テニス肘/Thomas=腸腰筋/Thompson=アキレス腱断裂Spurlingだけが頸椎神経根で、Adson・Wright・Morley・Edenは胸郭出口症候群、Allenは手の動脈。

4-5 腰部脊柱管狭窄症・変性すべり症・分離症

腰部脊柱管狭窄症

  • 大半は加齢による後天性(骨棘形成・椎間板の膨隆・黄色靱帯の肥厚)。先天発症が多いというのは誤り
  • 圧迫されるのは馬尾・神経根=下位運動ニューロン
  • 症状=神経性間欠性跛行、下肢痛・しびれ、膀胱直腸障害(頻尿・残尿)、会陰部の熱感などの異常感覚
  • 腱反射は低下〜消失。亢進は誤り。痙性歩行・Babinski徴候・内反尖足も生じない
  • 前屈・座位・しゃがみ込みで軽快し、伸展(後屈)で増悪する。前屈位となる自転車は長く乗れる

誤りとして出される定番:「腰椎前屈で症状が増強する」(正しくは前屈で軽快)/「下肢の深部腱反射は亢進する」(正しくは低下)/「先天発症が多い」(正しくは加齢性の後天性)/「内反尖足を生じる」(内反尖足は痙性麻痺の所見)。

腰椎変性すべり症

  • 椎体が前方へすべって脊柱管が狭くなる。L4に多い。症状は脊柱管狭窄症と同じ
  • 歩行中に殿部から下肢に疼痛が出たときの正しい対応はしゃがみこむこと。前屈位で脊柱管が広がり症状が軽減する
  • 誤った対応=速度を速める/速度を遅くして歩き続ける/立ち止まって体幹を伸展する(さらに狭まる)/立ち止まって体幹を左右に回旋する(十分に広がらない)
  • 馬尾障害なので痙性歩行は生じない。一方で頻尿・下肢痛・間欠性跛行・会陰部の熱感はいずれも起こりうる

腰椎分離症

  • 分離するのは椎弓(峡部=上下関節突起の間)の疲労骨折。椎体・椎間板・棘突起・横突起ではない
  • 反復する伸展・回旋ストレス(スポーツ・重労働)で若年に生じ、伸展時腰痛が特徴。L4・L5に多い
  • 進行すると分離すべり症となる

上位/下位運動ニューロン障害の切り分け

上位運動ニューロン障害下位運動ニューロン障害
筋緊張痙縮あり弛緩性・痙縮なし
腱反射亢進低下〜消失
病的反射陽性(Babinskiなど)陰性
代表例脳梗塞・外傷性脳損傷・中心性頸髄損傷・胸椎黄色靱帯骨化症・頸椎後縦靱帯骨化症腰椎椎間板ヘルニア(神経根)・腰部脊柱管狭窄症(馬尾)

「痙縮を生じにくい疾患は?」と問われたら腰椎椎間板ヘルニア=神経根=下位=痙縮なしを選ぶ。脳・脊髄が障害される疾患はすべて痙縮を生じうる。

4-6 間欠性跛行の鑑別 — 神経性と血管性

血管性の正体は閉塞性動脈硬化症〈ASO〉末梢動脈疾患〈PAD〉の大半(9割前後)は動脈硬化を基盤とするASO=頻度が高い疾患で、「閉塞性動脈硬化症の頻度は低い」という肢は誤り。Buerger病(閉塞性血栓血管炎)は若年喫煙男性に生じる別カテゴリで、こちらが稀

比較点神経性(腰部脊柱管狭窄症・変性すべり症)血管性(閉塞性動脈硬化症=ASO/末梢動脈疾患=PAD)
姿勢の影響前屈・座位で軽快、伸展で増悪姿勢に無関係。立ち止まって安静にすると軽快
自転車前屈位なので長く乗れる同程度の運動量で症状が出る
足背動脈触知良好拍動の減弱・消失
主な検査MRI・脊髄造影ABI(足関節上腕血圧比)・トレッドミル歩行
対応屈曲位保持の装具・体幹屈筋強化・前かがみで休む監視下歩行運動療法・危険因子の管理

閉塞性動脈硬化症(ASO)/末梢動脈疾患(PAD)

  • 好発部位は大腿動脈〜膝窩動脈(腸骨動脈・下腿動脈にも生じる)
  • 危険因子=喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症。男性に多い(女性に多いは誤り)
  • 症状=冷感・しびれ・間欠性跛行・安静時痛。「冷感はない」「安静時痛はない」「しびれ感はない」はいずれも誤り
  • 重症化すると潰瘍・壊疽に至り、下肢切断が必要になることがある
  • ABIは0.9以下で異常。ASOでは低下する。1.2〜1.3を超える高値は動脈石灰化による偽高値であってASOの所見ではない
  • 足背動脈は「拍動の減弱・消失」であって「リズムの不整」ではない(不整は不整脈の所見)
  • 下垂試験でみるのは皮膚色の変化(挙上で蒼白・下垂で発赤の遅れ)で、感覚異常の出現ではない
Fontaine分類症状
Ⅰ度無症状〜冷感・しびれ
Ⅱ度間欠性跛行
Ⅲ度安静時痛
Ⅳ度潰瘍・壊死(切断のリスク)

理学療法

  • Fontaine Ⅱ度(間欠性跛行)の第一選択は監視下歩行運動療法=トレッドミル歩行練習。痛みが出るまで歩く→休む→再開を反復し、側副血行路の発達と最大歩行距離の延長をねらう
  • 運動療法の前に最も重要な医学情報はABI。胸部CT・脊椎MRI・筋電図・下肢単純エックス線では虚血の程度を評価できない
  • 不適・禁忌=寒冷療法(血管収縮で虚血が悪化)、弾性ストッキングやコンプレッションポンプによる圧迫療法(圧迫は下肢静脈瘤・リンパ浮腫など静脈還流障害に用いる)、極超短波などの深部加温、PNFの最大抵抗運動、足底挿板、他動的関節可動域運動

動脈は「歩かせる・冷やさない・締めない」/静脈は「圧迫する」。この対比で選択肢を切ると迷わない。

4-7 頸椎の疾患

頸椎症性神経根症

  • 椎間孔が狭くなり神経根が絞扼され、上肢へ放散痛が出る
  • Spurlingテスト=頭部を患側へ傾け軸圧を加える椎間孔圧迫試験。陽性なら頸椎症性神経根症。Jacksonも同様
  • 神経根症では反射は低下する(亢進ではない)
頸神経根主な支配筋・反射
C5三角筋・上腕二頭筋反射
C6腕橈骨筋・手根伸筋
C7上腕三頭筋反射
C8手内筋

「C6/7間の外側型ヘルニアで腕橈骨筋反射が亢進する」は誤り。C6/7外側型が圧迫するのはC7神経根で、低下するのは上腕三頭筋反射。神経根症では反射は低下が原則。

頸椎椎間板ヘルニア

  • 椎間板の弾力が残る30〜50歳代に好発し、男性にやや多い。60〜70歳代好発・女性に多いはいずれも誤り
  • 下肢症状より上肢症状で始まることが多い
  • 外側型=神経根症(上肢の根性痛・反射低下)/正中型=脊髄症(手指の巧緻運動障害・歩行障害・腱反射亢進)
  • 「両肩関節を過外転すると橈骨動脈拍動が減弱」はWrightテストの所見=胸郭出口症候群で、本症の特徴ではない

頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)

  • 脊柱管の前壁である後縦靱帯が骨化して脊髄を圧迫=脊髄症(上位運動ニューロン障害)
  • 手指の巧緻性低下・痙性歩行・腱反射亢進・病的反射陽性。進行すると膀胱直腸障害
  • 誤りとして出るもの=下肢腱反射の消失(正しくは亢進)/間欠性跛行(腰部脊柱管狭窄症やASOの症候)/Wrightテスト陽性(胸郭出口症候群)/鉛管様固縮(錐体外路徴候)

中心性脊髄損傷(中心性頸髄損傷)

  • 高齢者に多い。頸椎症性の脊柱管狭窄が背景にある
  • 発生機序は転倒などによる頸椎の過伸展。過屈曲ではない
  • 骨折・脱臼を伴わない非骨傷性が多い
  • 麻痺は下肢より上肢が強い(皮質脊髄路の内側を走る上肢線維が障害されるため)
  • 仙髄回避により肛門括約筋の収縮や会陰部の知覚は比較的保たれる

関節リウマチの脊椎病変

  • 関節リウマチは滑膜のある関節を侵す。頸椎で滑膜をもつのは環軸関節(C1-C2)
  • 最も多い脊椎病変は環軸椎亜脱臼。歯突起周囲の横靱帯などが緩んで生じ、脊髄症のリスクとなるため頸部の過屈曲を避ける
  • 黄色靱帯骨化・後縦靱帯骨化・脊柱側弯・腰椎椎間板ヘルニアはいずれも関節リウマチに特徴的な脊椎病変ではない

4-8 骨粗鬆症性椎体圧迫骨折と脊椎疾患の疫学

椎体圧迫骨折の典型像

  • 高齢女性が布団を持ち上げるなど軽微な外力で発症し、背部から腹部への帯状痛・寝返り困難(体動時痛)を訴える
  • 好発部位は胸腰椎移行部(T11〜L1)
  • 画像:エックス線で椎体の楔状変形、MRIで新鮮骨折はT1低信号・T2/STIR高信号
  • 病態は「骨粗鬆症」という基盤の上に「椎体圧迫骨折」が起きた状態=2つを合わせて答える
  • 理学療法:急性期は体幹コルセットによる固定と疼痛管理→回復期は過度な屈曲を避けた体幹伸展運動・バランス練習・骨粗鬆症対策(円背と身長低下の進行予防)

高齢者の急性背部痛で脊椎分離症・脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニアを選ばない。分離症=若年スポーツ選手の伸展時腰痛、脊柱管狭窄症=間欠性跛行、椎間板ヘルニア=下肢放散痛とSLR陽性で像が違う。

性差・好発年齢

女性に多い男性に多い
関節リウマチ(男女比およそ1:3〜4、30〜50歳代)
骨粗鬆症
変形性膝関節症(高齢女性)
全身性エリテマトーデス
強直性脊椎炎(若年男性・HLA-B27関連)
痛風
特発性大腿骨頭壊死(中年男性・ステロイド・アルコール)
大腿骨頭すべり症(肥満傾向の思春期男児)
腰椎椎間板ヘルニア(20〜40歳代)

自己免疫疾患(関節リウマチ・全身性エリテマトーデス・橋本病)は女性優位、と束ねて覚える。

4-9 体幹装具と運動療法

体幹装具

装具作用(保持する肢位)主な適応
Williams型腰椎の伸展を制限し屈曲位を保持する軟性装具腰部脊柱管狭窄症・分離すべり症
Jewett型3点固定で屈曲を制限し伸展位を保持胸腰椎の椎体圧迫骨折
Boston型胸腰仙椎装具(TLSO)側弯症
Milwaukee装具頸部までバーをもつ装具側弯症
Steindler型腰仙椎の固定腰仙部の支持
ハロー・ベスト頸椎の強固な固定頸椎(不安定性・術後)

誤りの定番:「Williams型=側弯症」「Milwaukee=腰部脊柱管狭窄症」「ハロー・ベスト=腰部脊柱管狭窄症」はすべて誤り。前屈で楽になる病態(狭窄症・すべり症)=Williams型(屈曲位)、圧迫骨折=Jewett型(伸展位)と、屈伸の向きを対にして覚える。

組合せ問題に出る他の装具

装具作用適応
交互歩行装具(RGO)左右の股関節の動きを連動させ交互歩行を可能にする二分脊椎・胸腰髄レベルの対麻痺。機能残存レベルTh12前後が適応。T10など上位は股関節周囲の随意性に乏しく実用歩行困難=不適
短下肢装具(底屈制動式)底屈を制動し踵接地から立脚を安定させる脳卒中片麻痺(下肢BrunnstromステージⅤ)
コックアップ・スプリント/Oppenheimer型手関節背屈の保持・補助橈骨神経麻痺(下垂手)
対立スプリント母指の対立位を保持正中神経麻痺(猿手)
ナックルベンダーMP関節の屈曲を補助尺骨神経麻痺(鷲手)
スウェーデン式膝装具膝の反張(過伸展)を防止反張膝
pogo-stick装具練習用の簡易義足下肢切断者

体操 — 名前と対象の対応

体操内容対象
Williams体操腹筋強化と腰椎屈曲方向の運動脊柱管狭窄症・椎間関節性の腰痛
McKenzie体操腰椎伸展方向の運動(パピーポジション)椎間板ヘルニアなどの腰痛
Frenkel体操床の足形などを目で見て合わせる反復運動=視覚による代償深部感覚障害による感覚性運動失調
Klapp体操四つ這い位で行う脊柱側弯症
Codman体操体幹を前傾し上肢を振り子状に振る肩関節周囲炎
Buerger-Allen体操・Böhler体操下肢の挙上と下垂を繰り返す閉塞性動脈疾患などの末梢循環障害

腰痛体操は方向で覚える:Williams=屈曲McKenzie=伸展Frenkel=失調・見て合わせると結びつけ、循環改善系(Buerger-Allen・Böhler)や肩(Codman)・側弯(Klapp)と混同しない。

4-10 徴候・異常歩行・腰痛予防の動作指導

徴候と障害部位

徴候内容示すもの
Lasègue下肢伸展挙上で下肢に放散痛腰椎椎間板ヘルニア(坐骨神経の伸張)
Lhermitte頸部の前屈で脊柱に沿って電撃様の痛み・しびれが走る頸髄病変・多発性硬化症(後索)
Uhthoff体温上昇(入浴・運動)で神経症状が悪化多発性硬化症。「体温低下で悪化」は誤り
Romberg開脚立位で閉眼すると動揺が増強深部感覚(脊髄後索)障害。小脳性失調は開眼でも動揺するため陽性化しない
Barré挙上保持した上肢が回内・下降する錐体路障害(運動麻痺)
Kernig股・膝屈曲位から膝を伸展すると抵抗・疼痛髄膜刺激徴候(髄膜炎・くも膜下出血)
カーテン徴候発声時に咽頭後壁が健側へ偏位迷走神経(咽頭)麻痺
内側縦束(MLF)症候群核間性眼筋麻痺脳幹の障害。後頭葉ではない
Brown-Séquard症候群同側の運動麻痺・深部感覚障害+対側の温痛覚障害脊髄の片側(半側)損傷。両側横断性ではない
Trendelenburg患側で片脚立ちすると遊脚側の骨盤が下制中殿筋(上殿神経 L4〜S1)の筋力低下

感覚性(脊髄後索性)運動失調

  • 深部感覚が重度に障害されると、開眼では立位保持できるが閉眼でふらつき(Romberg陽性)踵打歩行がみられる。運動麻痺や表在感覚障害を伴わないことがある
  • 運動療法はFrenkel体操(視覚で代償しながら反復して正確な運動を学習させる協調性訓練)

異常歩行と原因

異常歩行主な原因
Trendelenburg歩行中殿筋の筋力低下=変形性股関節症・先天性股関節脱臼・大腿骨頸部骨折
間欠性跛行腰部脊柱管狭窄症・閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)
鶏歩総腓骨神経麻痺(下垂足)
酩酊(よろめき)歩行小脳失調
小刻み歩行・すくみ足パーキンソン病・大脳基底核障害
はさみ足歩行両側の痙性(痙性対麻痺・脳性麻痺)
分回し歩行脳卒中片麻痺
踵打歩行深部感覚障害(脊髄後索)

Trendelenburg徴候は股関節そのものの病態で生じる。腰椎分離症・腰部脊柱管狭窄症・変形性膝関節症・変形性足関節症を選ばない。

腰痛予防の動作指導(労働災害予防)

  • 原則=膝を曲げて腰を落とす/背筋を伸ばす/荷物を体に近づける/支持基底面を広くとる/急なひねりを避ける
  • 床の荷物はしゃがみ込んで持ち上げるのが適切。膝を曲げることで腰椎の屈曲が減り、下肢の強い筋群を使える
  • 最も避けるべきは膝を伸ばしたまま腰を曲げて持ち上げる前屈姿勢=椎間板への圧迫が最大でリスクが最も高い
  • 椎間板内圧は臥位<立位<座位<前傾座位・前屈位の順に高くなる。背もたれを使わない前かがみの座位も腰椎前弯が崩れて内圧が上がる

図から作業姿勢を選ぶ問題は、「膝が曲がっている・背すじが伸びている・荷が体に近い」の3条件を満たすものを選べば決まる。