第5章|変性・炎症性関節疾患

整形外科学 第5章

5-1 変形性関節症(OA)の基本

関節軟骨の摩耗・変性を一次的な病態とする退行変性疾患。滑膜炎は二次的に生じる。

  • 一次性(原発性)=明らかな原因疾患がなく、加齢と力学的負荷で生じるもの
  • 二次性=基礎疾患があるもの。外傷・臼蓋形成不全・発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)・感染・神経障害(Charcot関節)など
  • 好発は中高年〜高齢者。若年者には好発しない
  • 発症要因に遺伝的素因・家族集積性が関与する(「遺伝素因は認められない」は誤り)
  • X線所見=関節裂隙狭小化・骨棘・軟骨下骨硬化・骨嚢胞

「滑膜炎から軟骨の変性に至る」は関節リウマチの病態であってOAではない。OAは軟骨の摩耗が先、滑膜炎は後。この順序が入れ替えて出題される。

5-2 手指のOA — Heberden結節とBouchard結節

一次性OAが手指に出たものが変形性指関節症。中高年女性に多く、骨性の隆起(結節)を触れる。

結節・変形関節背景疾患
Heberden結節DIP(遠位指節間関節)一次性OA
Bouchard結節PIP(近位指節間関節)一次性OA
尺側偏位・スワンネック・ボタン穴MP・PIP・DIP関節リウマチ
Charcot関節(無痛性破壊)荷重関節が主神経障害による二次性

H(Heberden)=端=遠位DIP/Bouchard=PIP。選択肢に紛れる「遠位橈尺関節」「近位橈尺関節」は前腕回内外の関節、「中手指節関節(MP)」はRAの尺側偏位の座であり、いずれもHeberden結節の部位ではない。

Charcot関節は一次性OAではない。糖尿病性神経障害・脊髄癆などで痛覚が失われ、無痛のまま関節が破壊される二次性の関節症。

5-3 股・膝のOAとADL指導

  • 日本の変形性股関節症は二次性が多数。臼蓋形成不全・発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)を基盤とし、女性に多い
  • 変形性膝関節症も女性の有病率が高い(男性優位は誤り)。内反変形を伴う内側型が多い

荷重関節を守るADL指導の原則

場面正しい指導理由
T字杖健側(患側と反対)の手に持つ患側股関節の荷重と外転筋活動を減らす
階段の昇段健側から踏み出す患側に踏み込み荷重をかけない
階段の降段患側から下ろす健側で体重を支えながら下ろせる
椅子やや高めにする低い椅子は股関節を深く屈曲させ負担・疼痛が増す
椅子からの立ち上がり患側を前に出す手前に引くと患側への荷重が増える

杖と階段は「杖は健側/上りは健側・下りは患側」。荷重関節の保護という一本の原則で全選択肢を消去できる。

5-4 関節リウマチ(RA)の病態と全身症状

  • 全身性の自己免疫疾患滑膜炎が起点となり、軟骨・骨の破壊へ進む。中年女性に多い
  • 初発は手指・手・足趾などの小関節。股関節などの大関節に初発するのではない
  • 関節症状は左右対称性(非対称性は誤り)
  • 朝のこわばりが30分以上と長い
  • 手指はMP・PIP・手関節中心。DIPは侵されにくい(DIPの変形=OA=Heberden結節)

関節外症状・検査

  • 間質性肺炎=合併の多い代表的関節外症状で予後を左右する
  • 血管炎、貧血、Sjögren症候群の合併、リウマトイド結節(2〜3割程度。半数以上ではない)
  • 活動性の指標=CRP・赤沈・リウマトイド因子・抗CCP抗体

血清アルカリフォスファターゼ(ALP)は骨・肝疾患の指標であり、RAで高値になるとはいえない。RAの検査項目として選ばない。

5-5 分類基準と重症度分類(Steinbrocker)

2010年 ACR/EULAR分類基準の4本柱

  1. 腫脹または圧痛のある関節数(罹患関節数)
  2. 自己抗体(リウマトイド因子・抗CCP抗体)
  3. 急性期反応物質=炎症反応(CRP・赤沈)
  4. 症状の持続期間(罹患期間):6週未満/6週以上

この4項目に「朝のこわばり」は含まれない。朝のこわばり・対称性・リウマトイド結節・X線変化は1987年の旧基準にあった項目で、2010年基準から外れた。臨床所見としての朝のこわばりが重要であることと、分類基準の項目であるかは別問題。

Steinbrocker分類(ステージとクラスは別物)

段階ステージ(X線・関節破壊)クラス(機能・ADL)
骨破壊なし。関節近傍の骨粗鬆症(骨萎縮)のみほぼ正常に活動できる
軟骨破壊・関節裂隙狭小化。筋萎縮を伴うやや制限あるが日常・職業活動は可能
軟骨下骨の破壊(びらん)・変形身の回りはできるが仕事は行えない
線維性・骨性の関節強直ほぼ寝たきり・全面介助

ステージ=X線像/クラス=ADL・就労で別々に判定する。「X線で高度破壊・強直+身辺自立だが就労不能」ならステージⅣ・クラスⅢ。ステージⅣに特異的なのは強直で、骨粗鬆症はⅠ、軟骨下骨の破壊はⅢ、腱鞘炎や筋萎縮はステージ特異的な所見ではない。

5-6 RAの手指・足部変形

変形部位と肢位
スワンネック変形手指。PIP過伸展+DIP屈曲(白鳥の首)
ボタン穴(boutonnière)変形手指。PIP屈曲+DIP過伸展。PIP背側の中央索断裂で側索が掌側へ滑って生じる
尺側偏位MP関節で手指が尺側に偏位
ムチランス変形(オペラグラス手)手指。骨吸収で指が短縮し望遠鏡状になる高度破壊。脊柱の変形ではない
Z変形手の母指。MP屈曲+IP過伸展。足の母趾ではない
足部外反母趾・内反小指変形・開張足・外反扁平足

スワンネックとボタン穴はPIPの向きが正反対。「過伸展するのはどれか」と問われたらスワンネック=PIP、ボタン穴=DIP。DIP屈曲+PIP過伸展=スワンネック、DIP過伸展+PIP屈曲=ボタン穴、と肢位の組合せで一意に決まる。

ROM表記の読み方:伸展がマイナス(例 PIP伸展−45°)は伸展不足=屈曲位(屈曲拘縮)。伸展がプラスに大きい(例 DIP伸展30°)は過伸展。PIP伸展−45°・DIP伸展30°ならボタン穴変形。

フォーク状変形はRAではない → 橈骨遠位端骨折(Colles骨折)の変形。対するSmith骨折は庭シャベル(garden spade)状変形

また内反足はRAに合併しにくい → RAの足部変形は外反方向(外反扁平足・外反母趾)が典型。

5-7 RAの合併症・理学療法・装具

押さえるべき合併症

  • 環軸椎(環軸関節)亜脱臼=頸椎の不安定性。頸椎前屈で脊髄を圧迫し重篤化するため、前屈姿勢の予防が指導の中心。前屈を強いる動作・枕・訓練は禁忌
  • 指伸筋腱の皮下断裂=滑膜炎で腱が摩耗し手背で断裂(尺側の指から順に伸展不能)。RAに特徴的な合併症
  • 間質性肺炎(5-4参照)

運動療法の原則

  • 活動期(炎症の強い時期)=安静と等尺性運動疼痛関節への持続伸張運動は炎症を増悪させるため不適
  • 寛解期=関節可動域訓練・筋力増強へ進める
  • 手指変形に対しては超音波療法ではなく装具と関節保護で対応する

変形と装具の対応

変形装具・足底板
開張足(横アーチ低下)メタタルサルアーチサポート(中足骨パッド。中足骨頭のすぐ近位を下から支える)
扁平足(内側縦アーチ低下)アーチサポート(土踏まず支持)
外反母趾足底装具・中足部支持(金属支柱付短下肢装具は適応外)
膝の内反変形外側ウェッジ
膝の外反変形内側ウェッジ
足関節の内・外反Tストラップ(前額面の矯正)
後足部の内・外反Thomasヒール/逆Thomasヒール
脚長差踵補高

ウェッジは「厚い側と逆へ荷重を移す」。外側ウェッジ→内反膝、内側ウェッジ→外反膝。開張足は前額面ではなく横アーチの問題なので、ウェッジ・Tストラップ・ヒール修正では対応できない。

関節保護の原則(ADL指導・図問題の判断基準)

  1. 大きく強い関節で荷重を受ける:手指ではなく前腕・体幹、片手ではなく両手、荷物はリュックで両肩に分散
  2. 変形を助長する方向の力を避ける:ふた開け・雑巾しぼりなどのひねり・強い把持は尺側偏位やスワンネックを進める
  3. 自助具を使う:太柄の柄、てこ式オープナー
  4. エネルギーを保存し、同一肢位を長時間続けない

図で選ばせる問題は「手指の小関節にねじり・強い把持・体重が乗っていないか」だけを基準に消去する。手をついて支える/瓶のふたをひねる/はさみを母指示指で操作する/重い物を指で引っぱるは、いずれも不適。

5-8 まぎらわしい手指病変の鑑別

病態特徴
槌指(マレットフィンガー)突き指で終止腱断裂または末節骨基部背側の剥離骨折。DIPが屈曲位で垂れ自動伸展できない。治療はDIP伸展位固定
鉤爪(かぎ爪)変形尺骨神経麻痺など。MP過伸展+PIP・DIP屈曲
ばね指(弾発指)屈筋腱の腱鞘炎。屈伸時に引っかかり跳ねる。外傷性の変形ではない
Dupuytren拘縮手掌腱膜の肥厚による屈曲拘縮。糖尿病・アルコールと関連。RAの合併ではない
ボクサー骨折第5中手骨頸部骨折。拳で殴って受傷
Bennett骨折第1中手骨基部の関節内骨折・脱臼(母指CM関節)
Krukenberg前腕切断後に橈尺骨を分けて把持機能をつくる手術名。指の変形名ではない

RAと無関係な整形疾患もRAの選択肢に紛れる。脊椎分離症はスポーツによる椎弓の疲労骨折でRAとは関連しない。RAで問題になる脊椎病変は環軸椎亜脱臼

5-9 結晶性関節炎と化膿性関節炎

痛風偽痛風
沈着する結晶尿酸塩(尿酸ナトリウム)結晶ピロリン酸カルシウム結晶
好発中年男性(30〜50代)高齢者
好発関節足の母趾MTP(第1中足趾節)関節膝関節
背景高尿酸血症。肥満・過食・飲酒などメタボリックシンドロームに合併加齢・軟骨石灰化
  • 痛風は関節だけの病気ではなく多臓器に症状を起こす。痛風腎・尿路結石・皮下の痛風結節など
  • 女性に少ないのはエストロゲンが尿酸排泄を促すため。るいそう(やせ)ではなく肥満に合併しやすい
  • 化膿性関節炎=細菌感染。発熱と関節の発赤・腫脹・熱感を伴い、関節破壊が急速に進む緊急疾患

結晶の取り違えが定番の引っかけ。痛風=尿酸塩・男性・母趾偽痛風=ピロリン酸カルシウム・高齢者・膝