第5章|血液・免疫・体温・腎

生理学 第5章

5-1 血液の組成と血球の機能

血液=血球(赤血球・白血球・血小板)+血漿。ヘマトクリット=血液に占める赤血球の容積比。栄養素の運搬は血漿タンパク(アルブミン等)の仕事で、血球の役割ではない。血球はすべて骨髄の造血幹細胞に由来し、骨髄系(赤血球・顆粒球・単球・血小板)とリンパ系(B細胞・T細胞・NK細胞)に分かれる。

血球本来の機能系統
赤血球ヘモグロビンによる酸素運搬
血小板止血(粘着・凝集で一次止血栓)
好中球(顆粒球)細菌の貪食自然免疫
好酸球寄生虫感染・アレルギー自然免疫
好塩基球ヒスタミン遊離自然免疫
単球→マクロファージ貪食・抗原提示自然免疫
B細胞(リンパ球)抗体(免疫グロブリン)産生獲得・体液性
T細胞(リンパ球)感染細胞・移植片の傷害獲得・細胞性
NK細胞(リンパ球)ウイルス感染細胞・腫瘍細胞の傷害自然免疫

組合せ問題は機能をすり替えて出す。顆粒球=止血/血小板=貪食/単球=栄養素運搬/赤血球=細胞性免疫/リンパ球=細菌貪食はすべて誤り。赤血球=酸素運搬、血小板=止血、好中球・単球=貪食、B細胞=抗体、T細胞=細胞性免疫と1対1で対応させる。

「抗体を産生するのはどれか」で選択肢にリンパ球があればそれが正答。B細胞は形質細胞へ分化して抗体を分泌する。好中球・好酸球・赤血球・血小板は抗体を作らない。

5-2 血球の数値・寿命・産生

数(基準)寿命大きさ・核
赤血球約450〜500万/μL約120日直径7〜8μm・無核
血小板約15〜35万/μL約7〜10日直径2〜4μm・無核
白血球約4,000〜8,000/μL好中球は数日有核
  • 血小板は骨髄系幹細胞→巨核球の細胞質がちぎれて生じる細胞断片。核をもたない
  • 血小板が減ると一次止血が働かず出血時間が延長する
  • 20万/mm³(=20万/μL)は基準範囲内

「血小板の寿命は約120日」は誤り → 血小板は約7〜10日約120日は赤血球の寿命。この取り違えが最頻出のひっかけ。

5-3 止血と血液凝固

  1. 一次止血=血管内皮損傷でコラーゲンが露出→von Willebrand因子を介して血小板が粘着・凝集→血小板血栓
  2. 二次止血=内因系・外因系→第Ⅹa→プロトロンビン(第Ⅱ因子)→トロンビン→フィブリノゲン(第Ⅰ因子)をフィブリンに変換→網目状の血餅
物質正体
フィブリノゲン第Ⅰ因子。凝固因子。トロンビンでフィブリンになる
トロンビンプロトロンビン(第Ⅱ因子)の活性型。凝固因子
カルシウムイオン第Ⅳ因子。凝固の補因子(線溶系ではない)
von Willebrand因子血小板粘着+第Ⅷ因子の運搬。止血因子だが線溶系ではない
コラーゲン血小板粘着の足場。酵素ではない
プロテインC活性化第Ⅴ・第Ⅷ因子を不活化する凝固因子
アルブミン膠質浸透圧維持・物質運搬。凝固因子ではない
ヘモグロビン赤血球内の酸素運搬タンパク。凝固因子ではない
エリスロポエチン腎由来の造血ホルモン。凝固因子ではない
グロブリンγグロブリン=抗体。凝固・線溶とは別
凝固因子はⅠ〜ⅩⅢの番号で示される。ビタミンK依存性凝固因子=Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ(+プロテインC・S)。語呂は「肉(2・9)と納豆(7・10)」。検査は出血時間=一次止血(血小板)、PT=外因系、APTT=内因系の3本で切り分ける。

5-4 線溶系と抗凝固薬

  • 線維素溶解(線溶)=プラスミノゲン→(t-PA・u-PAで活性化)→プラスミン→フィブリンを分解。分解産物がFDP・Dダイマーで血栓症の指標
  • 凝固と線溶は逆向き。トロンビンは凝固側、プラスミンは線溶側。フィブリンは「溶かされる側」で作用因子ではない
  • t-PAは血栓溶解薬として臨床使用
薬・物質分類
ワルファリン経口抗凝固薬。ビタミンK依存性因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の合成を阻害。PT-INRでモニタ
ヘパリン・DOAC抗凝固薬
ビタミンKワルファリンの拮抗薬(抗凝固薬ではない)。過量出血時の解毒に投与
レボドパParkinson病のドパミン補充薬
アドレナリン交感神経刺激薬(昇圧・気管支拡張)
バクロフェンGABA-B作動性の抗痙縮薬

ワルファリンの作用を減弱させる=拮抗するのはビタミンK。ビタミンA・B₁・B₆・B₁₂・C・Dは無関係。ビタミンEはむしろ抗凝固作用を増強しうる。服用中は納豆・青汁・クロレラが禁忌(ビタミンK大量含有でINRが下がる)。

5-5 免疫の全体像

区分担当細胞特徴
自然免疫好中球・単球/マクロファージ・NK細胞・樹状細胞非特異的・即時。貪食と抗原提示
体液性(液性)免疫B細胞→形質細胞抗体(免疫グロブリン)を産生
細胞性免疫T細胞(キラーT・ヘルパーT)感染細胞・腫瘍細胞・移植片を直接攻撃
  • 「体液性免疫で作動するのはどれか」=B細胞。単球・好中球・マクロファージ・NK細胞はいずれも自然免疫で抗体を作らない
  • NK細胞は名前にリンパ球系だが自然免疫側。抗原特異性をもたず感染細胞を直接傷害する
対応を2行で固定する。抗体=B細胞(体液性)細胞傷害=キラーT・NK(細胞性・自然)

5-6 輸血・移植片対宿主病と赤沈

  • 輸血後GVHD=輸血血液中の生きた供血者リンパ球が生着し宿主組織を攻撃する重篤な合併症。発熱・皮疹・肝障害・汎血球減少をきたし致死率が高い
  • リスクが最も高いのは新鮮血(生きたリンパ球が最も多い)。血小板濃厚液>赤血球濃厚液・保存血(保存でリンパ球が機能を失う)>新鮮冷凍血漿(有核細胞をほぼ含まず最低)
  • 予防=輸血用血液への放射線照射でリンパ球を不活化

赤血球沈降速度(赤沈)

赤沈状態理由
亢進貧血・細菌感染・悪性腫瘍・膠原病・肝硬変フィブリノゲン/グロブリン増加、赤血球減少
低下(遅延)DIC・多血症・無フィブリノゲン血症フィブリノゲンの消費・減少、赤血球増加

5-7 血液・リンパ系の悪性腫瘍

  • 悪性リンパ腫=リンパ球(B・T・NK細胞)を発生母体とする腫瘍。リンパ節腫大などの腫瘤形成が典型的
  • 内訳=非ホジキンリンパ腫が約9割(うちB細胞性が7〜8割)、ホジキンリンパ腫が約5〜1割でReed-Sternberg細胞が特徴
  • 多発性骨髄腫=形質細胞(B細胞系の最終分化細胞)由来。T細胞由来ではない

多発性骨髄腫の4徴はCRABCalcium=Ca血症(骨破壊でCa放出)/Renal=腎障害/Anemia=貧血(骨髄が腫瘍で占拠され赤血球は増えない)/Bone=溶骨性病変による病的骨折(椎体圧迫骨折)。M蛋白産生で血清総蛋白は増加、尿中Bence Jones蛋白、頭蓋骨の打ち抜き像。理学療法では病的骨折に配慮した運動負荷が必要。

5-8 熱産生と熱放散

内容
熱産生骨格筋(ふるえ=シバリング・運動)と肝臓が二大器官。心臓ではない。甲状腺ホルモンは基礎代謝を上げ熱産生を増加。食事でも上昇(食事誘発性熱産生=特異動的作用)
熱放散皮膚からの放射・伝導・対流・蒸発(発汗・不感蒸泄)+呼気。呼気は加温加湿されて出るので放熱経路の一つ
  • 寒冷時=末梢血管収縮で皮膚血流が減り熱放散が低下(保温)+ふるえで産熱
  • 暑熱時=皮膚血管拡張+発汗で放熱。体温上昇時に骨格筋の産熱は抑制される(収縮するのは低体温時)
  • 温熱性発汗(運動時の発汗)はエクリン腺の分泌。アポクリン腺(腋窩など限局)ではない
  • 発汗・ふるえ・血管反応=自律性体温調節/衣服の調整・日陰へ移動=行動性体温調節
  • 精神性発汗も蒸発で熱を奪うため体温は上がらない
  • 体温が1℃上がると代謝は約13%(7〜13%)増加。1%ではない

5-9 体温調節の中枢・受容器・変動

  • 体温調節中枢=間脳の視床下部(視索前野・前部)。視床・延髄・中脳・小脳虫部・扁桃体・補足運動野はいずれも誤り(中脳=対光反射や姿勢反射、扁桃体=情動・恐怖、小脳虫部=体幹の平衡・姿勢制御、補足運動野=運動の計画・準備)。視床下部はほかに摂食・飲水・自律神経・概日リズム・下垂体を介した内分泌の中枢
  • 温度受容器は皮膚(末梢)だけでなく腹腔内臓・脊髄・視床下部などの深部にも存在する。「腹腔に受容器がない」は誤り
  • 日内変動=早朝〜夜間睡眠時が最低、午後〜夕方が最高(差0.5〜1℃)。午後のほうが高い
  • 核心温は直腸・鼓膜・口腔で測る。体表(皮膚温)は外気の影響を受け核心温にならない
  • 激しい運動では直腸温が40℃を超えることもある
  • 発熱=プロスタグランジンE₂により視床下部のセットポイントが上昇して起こる

5-10 腎臓の構造・血流とネフロン

項目正しい値・関係
重量一側約120〜150g(300gは過大)
位置肝臓があるため右腎が左腎よりやや低位(左が下位は誤り)
皮質・髄質皮質に腎小体(糸球体)、髄質に腎錐体
腎血流安静時に心拍出量の約20〜25%(5%ではない)
ネフロン腎小体(糸球体+Bowman嚢)+尿細管(近位・ヘンレ係蹄・遠位)。糸球体と近位尿細管だけではない
接続Bowman嚢→近位尿細管(集合管に直接つながらない)。集合管はネフロンの遠位側で複数のネフロンが合流

5-11 尿生成=濾過・再吸収・分泌

尿生成の3過程=濾過(腎小体)→再吸収(主に近位尿細管)→分泌

  • 血液の濾過は腎小体で行われる。血球と血漿蛋白は正常では濾過されない。アルブミン(約66kDa)は分子量が大きく基底膜の陰性荷電にも阻まれ、水より濾過されにくい。尿に出れば蛋白尿・血尿=病的
  • GFR=約100mL/分(≒180L/日)最終尿は約1〜1.5L/日(99%以上が再吸収される)。「GFRが1〜1.5L/日」は最終尿との取り違え
  • 近位尿細管はNa⁺・グルコース・アミノ酸・HCO₃⁻・水を大量に再吸収。Na⁺は能動輸送、グルコースとアミノ酸はNa⁺共輸送
物質近位尿細管での扱い
グルコース再吸収率100%=最も高い
アミノ酸ほぼ100%再吸収
Na⁺全体で約99%(近位で約65%)
近位で約80〜90%
H⁺・アンモニア分泌(再吸収ではない)。酸塩基平衡の調節
イヌリン・クレアチニン再吸収も分泌もされない→GFRの指標
ミオグロビン尿中に出ると尿細管を傷害。生理的に再吸収される物質ではない

「集合管では尿を希釈する」は誤り → 集合管はADH作用下で水を再吸収し尿を濃縮する。「ADHは水の再吸収を減少させる」も誤り → 利尿の名のとおり水再吸収を増やし尿量を減らす。アルドステロンはNa⁺再吸収・K⁺排泄

5-12 腎臓の内分泌機能と慢性腎臓病

  • 腎が産生・分泌するのはレニン(傍糸球体細胞)・エリスロポエチン(尿細管周囲の間質細胞)・活性型ビタミンDの3つ
  • 混同しやすいホルモンの出どころ=メラトニン=松果体/カルシトニン=甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)/バソプレシン(ADH)=視床下部で産生し下垂体後葉から分泌。ADHは腎で作られず腎に作用する
  • エリスロポエチン産生の刺激=動脈血酸素分圧の低下(低酸素)。高地・貧血・呼吸器疾患で亢進する。EPOを動かすのは酸素だけと考え、ほかの「〜の低下」はすべて別のホルモンの担当として切り分ける
「〜の低下」という刺激反応するホルモンEPOとの関係
動脈血酸素分圧の低下エリスロポエチン(EPO)これだけが産生を促進する
血圧の低下レニン(傍糸球体細胞)→レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系無関係
血糖値の低下グルカゴン・アドレナリン(+成長ホルモン・コルチゾール)無関係。低血糖でEPOは増えない
血中カルシウム濃度の低下副甲状腺ホルモン(PTH)無関係
腎機能の低下EPO産生は低下して腎性貧血になる(促進ではない)

慢性腎臓病(CKD)=腎の6機能(老廃物排泄・血圧調節・酸塩基平衡・電解質調整・EPO産生・ビタミンD活性化)が落ちると考えれば導ける。蛋白尿(診断基準の一つ)・高血圧(レニン分泌亢進と体液貯留。低血圧ではない)・代謝性アシドーシス(酸排泄低下。アルカローシスではない)・低Ca血症/高P血症(活性型ビタミンD低下。高Caではない)・腎性貧血(EPO産生低下。亢進ではない)。

5-13 月経周期(凝固との関連)

時期主役ホルモン子宮内膜
月経期黄体退縮でプロゲステロン低下剥離・脱落
増殖期(卵胞期)エストロゲン再生・増殖
排卵LHサージ
分泌期(黄体期)プロゲステロン分泌活動・着床準備
  • 周期は約28日。分泌期(黄体期)は約14日でほぼ一定
  • 月経血は非凝固性=子宮内で線溶系が働き固まらない。凝固・線溶の理解がそのまま使える
  • プロゲステロンは基礎体温を上げ、二相性を作る(体温調節と結びつく)

「分泌期は10日間である」は誤り約14日。周期が長短するのは卵胞期側で、黄体期の長さはほぼ変わらない。