第2章|統合失調症

精神医学 第2章

2-1 統合失調症の基本像

  • 生涯有病率は約1%(およそ100人に1人)の内因性精神疾患
  • 好発年齢=思春期〜青年期(10代後半〜30歳前後)。中年期以後の初発はまれ
  • 性差=発症率に大きな差はなく男女ほぼ同等(男性のほうが発症年齢がやや早い傾向はある)
  • 発症様式=多くは前駆症状を経て潜行性(緩徐)に発症する。急性発症は少数派
  • 再発の環境因子として家族の高EE(感情表出)が知られる(2-6)

頻出の誤り肢 → 正しくは
「男性に多い」「男性の発症率は女性の約2倍」→ 男女ほぼ同等で、2倍という数値に根拠はない
「急性発症することが多い」→ 潜行性発症が多い
「中年期以後に発症することが多い」→ 思春期〜青年期が好発

2-2 経過の4期と前駆期の症状

時期主な症状キーワード
前駆期非特異的な不調。不眠・不安・焦燥・集中困難、知覚過敏(聴覚過敏・光過敏)自生思考(意志と無関係に思考が勝手に湧く)まだ特徴的でない漠然とした不調
急性期陽性症状が顕在化。幻覚(幻聴)・妄想・滅裂思考・興奮・昏迷(緊張病症候群)派手な症状が出そろう
消耗期(休息期)急性期後の疲弊。過眠・倦怠・意欲低下休養が最優先
回復期・慢性期陰性症状が前景。感情の平板化・意欲低下・自閉生活機能への関わり

前駆期を問う設問の答えは自生思考聴覚過敏。奇異な妄想・滅裂な思考・緊張病症候群は急性期、感情の平板化は慢性期の陰性症状であり、いずれも前駆期ではない。

2-3 陽性症状と陰性症状

陽性症状(本来ないものが加わる)陰性症状(本来あるものが失われる)
幻覚(幻聴が最多)・妄想感情の平板化(感情鈍麻)
連合弛緩・滅裂思考(形式的思考障害)意欲低下・無為
興奮・奇異な行動・緊張病症状会話の貧困・快感消失・自閉
薬物反応性は良好難治の傾向
急性期に目立つ慢性期に前景となる

連合弛緩は「思考の脈絡が失われる」という表現から陰性症状と誤りやすいが、形式的思考障害=陽性症状。逆に快感消失・会話の貧困は陰性症状

注意・記憶・遂行機能などの認知機能障害は、陽性・陰性のどちらにも収まらない第3の症状群として扱われる。作業療法が主に関わるのは陰性症状と生活機能。

2-4 病型

病型中核症状特徴・予後
緊張型興奮と昏迷=意志発動(精神運動性)の異常。カタレプシー・拒絶症・常同急性発症が多く予後は比較的良好
破瓜型(解体型)感情鈍麻・思考解体・無為など陰性症状が前景思春期発症・潜行性・予後不良
妄想型被害妄想・幻聴など陽性症状が中心発症年齢が高め(30歳前後〜)。人格荒廃は目立たず予後は比較的良好
単純型明らかな陽性症状を欠き、無為・自閉が緩徐に進行潜行性・予後不良
残遺型急性期を過ぎ、陰性症状が残る慢性の状態経過後半の状態像。意志発動の異常が主体ではない

「興奮や昏迷など意志発動の異常が主体」=緊張型。「思春期発症+陰性症状」=破瓜型。「妄想・幻聴中心で発症が遅い」=妄想型。

2-5 予後を分ける因子

予後良好予後不良
急性発症潜行性(緩徐)発症
明らかな発症誘因(ストレス因子)がある誘因が不明
発症年齢が高め若年発症
陽性症状が主体陰性症状が強い
女性男性
病前適応が良好・家族の支援あり病前適応不良・支援なし
DUP(未治療期間)が短いDUPが長い

DUP=Duration of Untreated Psychosis(発症から治療開始までの期間)。長いほど予後は不良で、早期治療が重要。

「急性発症は予後が悪い」→ 逆で急性発症は予後良好
「女性は男性より予後が悪い」→ 逆で女性のほうが予後良好
「発症から治療開始までの期間と予後は無関係」→ 誤り。DUPが長いほど予後不良
「潜行性の発症」「若年での発症」「強い陰性症状」はすべて予後不良因子で、予後良好の答えにはならない。

2-6 高EEと家族心理教育

  • EE〈Expressed Emotion=感情表出〉=家族が患者に向ける感情の強さ。3要素は批判的コメント・敵意・情緒的巻き込まれすぎ(過干渉)
  • 高EEの家族のもとでは再発率が高くなる
  • 家族要因には家族への介入。家族心理教育で疾患の理解と対応を教え、EEを下げて再発を予防する
介入標的高EEへの直接効果
家族心理教育家族の知識と対応=EEそのもの◎ 第一選択
生活技能訓練(SST)患者本人の社会生活技能× 本人への介入
認知行動療法患者本人の認知・行動× 本人への介入
自律訓練法自己暗示による本人のリラクセーション×
レクリエーション交流・気分転換×

2-7 時期別のリハビリテーション

時期方針
急性期休養と抗精神病薬が優先。刺激を減らし、作業療法・表現療法は導入しない
回復期作業療法を開始。生活リズムの回復、短時間・単純・成功しやすい課題、対人交流の再開
維持期SST・デイケア・就労支援で社会復帰。服薬継続とストレス/生活リズム管理で再発予防

「絵画療法は統合失調症急性期に有効」は誤り → 表現性の高い療法は内面を強く刺激するため回復期以降に用いる。

2-8 まぎらわしい精神症状の用語

用語定義主にみられる場面
自生思考意志と無関係に思考が勝手に湧き上がる統合失調症の前駆期
離人症状「自分がやっているのに自分がやっている感じがしない」=自己や外界に対する現実感・実感の喪失解離性障害・うつ病・不安障害・統合失調症と幅広い
拒絶症働きかけや指示に反抗的・無反応に振る舞う緊張病
感情鈍麻感情の動きや反応が乏しくなる統合失調症の陰性症状
心気症状身体の些細な不調を重大な病気と過度に心配する心気症・うつ病
恐怖症特定の対象・状況に対する不合理で強い恐怖不安症群
昏迷意識は保たれるが自発的な運動・反応が消失する緊張型・重症うつ病

2-9 妄想の種類

妄想内容背景
心気妄想「不治の病にかかっていて助からない」うつ病(三大微小妄想)
罪業妄想「自分は罪深く取り返しがつかない」うつ病(三大微小妄想)
貧困妄想「金がなく破産する」うつ病(三大微小妄想)
誇大妄想自分の能力や地位を過大に評価する躁状態
血統妄想「自分は高貴な家系・有名人の子だ」躁状態(誇大妄想の一種)
迫害妄想・被毒妄想「危害を加えられる」「食べ物に毒を盛られた」統合失調症(被害妄想)

自己を過小評価=うつ過大評価=躁/他者から害される=統合失調症、で振り分ける。医師が否定しても確信を変えない点が「妄想」で、単なる心配(心気症状)と区別する。

2-10 好発年齢とリワークプログラム

疾患好発時期
統合失調症思春期〜青年期(10代後半〜30歳前後)
社交不安障害思春期〜青年期
神経性無食欲症思春期〜青年期の女性
うつ病幅広いが成人期中期(40〜60歳頃)に好発。役割葛藤や身体変化が誘因
血管性認知症高齢期(脳血管障害に伴う)

リワークプログラム

  • 対象=休職中で復職を目指す労働者。診断や就労状況で対象は限定される
  • 形式=集団療法として位置づけられ、作業や討議を通じて生活リズムと対人技能を整える
  • 時期=回復期から。急性期は休息が優先で参加させない
  • 実施主体=精神科医療機関のデイケア、地域障害者職業センター、企業(EAP)
  • 連携=主治医・産業医・職場との情報共有が復職に不可欠で、制限されない

「精神科医療機関では実施されない」「対象者は限定されない」「主治医との情報共有は制限される」「急性期から参加を推奨」はすべて誤り

2-11 精神科で用いる心理療法

技法原理・特徴
系統的脱感作法不安階層表を作成し、弛緩と組み合わせる(逆制止)
自律訓練法公式に沿った自己暗示で心身を弛緩させる。不安階層表は用いない
バイオフィードバック心拍・筋電図・皮膚温などの生体情報を本人に返し、オペラント条件付けで自律機能を随意的に制御する
生活技能訓練(SST)行動療法。モデリング・ロールプレイで社会生活技能を学習する
認知行動療法認知の偏りに介入し、行動を変える
精神分析的療法転移を分析・活用する

転移=患者から治療者へ向く感情、逆転移=治療者から患者へ向く感情。方向の違いが問われる。

「陽性転移の出現を目標とする」は誤り → 転移は治療過程で生じる現象であり、出現自体は目標ではない。
「逆転移を認識したときは治療を中止する」は誤り → 認識したうえで自己分析し治療に活かす。中止しない。